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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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暗い夜の中にこそ。



幻の夜を行く男と女。息もつかせぬ傑作長編!
阪神淡路大震災の直後に、出会った男と女。男が犯した殺人を知る女は、彼を徹底的に利用し、
野心を実現していく。だが彼女にも恐るべき秘密が・。
名作『白夜行』の興奮が再び!

***

本作を〝白夜行〟の続編ととるか否かは読者の手に委ねられるところですが、
私は素直に続編と捉えます。
でもそうすると、いやでも前作と本作を比べて読んでしまうわけで、
その上で評価を下すと本作は〝白夜行〟には遠く及ばない。
主人公もただヒロイン(あれをヒロインと称していいのかどうかはさておき)に流されているだけで
独自のポリシーを持たず魅力に欠けるし、
前作の亮司と雪穂にあった絆がない(まああの二人には共有する暗くて重い過去があったから
比べるだけ野暮なんだけど)。
ストーリーの進行スタイルもまんま〝白夜行〟の踏襲で、読んでいて飽きがくることもしばしば。
いや、踏襲というか、最初に謎を提起しといてあとになって思い出したように
〝実はあのときのあれはこういうわけだったんですよ〟と突然説明しだす展開の多さは
むしろ劣化ともとれる。
(劣化といえば、「何があっても彼女を守る」とどんな目に遭いながらも言っていた主人公が
突如考えを変えたり、←まあさすがにあそこまで徹底的に裏切られれば宗旨替えもやむないか?
「これからは男も自分を磨いて美しくする時代」と言っていたヒロインが
途中から「男が求める美は美しい女だけ」と全然違うことを言い出す等、
矛盾が多い点も気になった)
ラストも、主人公がなぜそこまでヒロインに入れ込むのかがわからず納得のいかないまま
読み終えてしまった(ヒロインの魔性がそうさせる、といってしまえばそれまでなんだけど)。

あと、ヒロインが雪穂かどうかをわからないままにしておくという著者の意図上
仕方ないことなのかもしれないけど、彼女が亮司のことをカケラも匂わせないのは
正直悲しかった。あれだけの絆で結ばれていた二人なだけに。。。
一応〝白夜〟の意味を持つ店を構えてはいるけどそれもだいぶ昔のことだし。
太陽を失くしても生き抜いている彼女の心に今も亮司は息づいているんだろうか。
彼の死を無駄にせず〝生きている〟そのこと自体が、まだ彼女が彼を忘れてはいない
何よりの証拠なんだろうか。

もし本当にヒロイン=雪穂なのだとして、もう既に40手前。
美を一番の武器にしている彼女も、次第に整形では追いつかないほど容貌が衰えてくる。
そう考えると〝幻夜〟というのは、主人公だけじゃなく彼女自身をも表す
タイトルなのかもしれない。
美しさが幻のように消えてなくなり本性が晒されたとき、彼女のたどる道は
よりいっそう険しいものになる。自らを支える男もおらず、生きる糧になるものもない。
どうしても憎めない彼女のそんな行く末を想像すると戦慄すら覚えてしまう。
けれど同時に、そんな局面さえも切り抜けていきそうな彼女の能力への期待も高まってしまう
わけだけど。
東野氏はもうさすがに続編は書かないだろうから、これこそ読者の想像に委ねられている部分
なんでしょう。

偽りの太陽も幻も消え、真の闇に対峙したとき、彼女は一体どうするのか、が。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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