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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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大丈夫、行けるよ。



中学二年生の名倉祐一が部室の屋上から転落し、死亡した。
屋上には五人の足跡が残されていた。
事故か? 自殺か? それとも…。
やがて祐一がいじめを受けていたことが明らかになり、
同級生二人が逮捕、二人が補導される。
閑静な地方都市で起きた一人の中学生の死をめぐり、
静かな波紋がひろがっていく。
被害者家族や加害者とされる少年とその親、学校、警察など
さまざまな視点から描き出される傑作長篇サスペンス。

***

部室の屋上から転落死した中学二年生の名倉。
何故彼が死に至ったのかということが、現在パートと過去パートが
交互に展開されていく中で徐々に明らかになっていきます。
そして名倉が何故いじめられていたのかということも
物語が進むうちにわかってくる。
冒頭で名倉が遺体で発見されるシーンは、子供の死ということもあり
非常に痛ましいのですが、こう言っちゃなんだけど
次第に「こりゃいじめられるわ」という側面を彼が見せてくるので、
彼に嫌がらせをしていたほかの子供たちの言い分もわかってくるのが
奥田氏の筆力を見せつけられたようで怖い。
とはいえ大人から見れば名倉のいやな部分なんて微々たるものだし、
でもそれが鼻について仕方ない、イラついて仕方ないとまで
思ってしまうのが感情過多で異物を排除しようとする「子供」という
生き物なんだな、と考えて怖くなった。
案外こんな些細な理由でいじめられっ子は取り返しのつかない窮地に
追いやられるのかも知れないな、と思ってしまった。
それにしても、子供のいない身ではわかりかねますが、
加害者の親たち、誰ひとり子供に「本当に名倉をいじめたのか。
何故そんなことをした」と理由を問いただし諭そうとしないのが
気にかかった。全員が「うちの子は何も悪くない」と眼を背けて
「うちの子こそが被害者だ」と他人ばかり攻撃する。
そりゃ自分の子が加害者になったら余裕はなくなるかも知れないけど、
もし本当に我が子が問題行動を起こしたのなら
それを見て見ぬふりで放置するほうが将来的に考えるとよっぽど
怖いことだと思うんだけど。

明確な悪や善が存在しない、裁きにくいこういった犯罪は、
意外とこの世に多いものなんだろうなと非常に考えさせられました。
興味深く一気読みさせてもらいました。
後味は悪いけれどおすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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