『覚えててくれる?』
ある日突然、日本に「自殺自由法」が施行された。
しかし、国民は相変わらずの無関心だった。
それぞれの目的で、公共自殺幇助施設「自逝センター」に向かう人の群れ。
そして、それを取り巻く人間たちの思惑…。
「死ぬ自由」を得た人間たちの姿を、著者独自のビターテイストな文体で描く問題作。
***
ブラックユーモアを受け付けない人、または
自殺をネタにすること自体を笑い飛ばせない性質の人以外は、
まあそれなりに楽しく読める内容になっているのではないかと思います。
ですがいくらジャンルがユーモアでもそれが小説である以上一貫したひとつのテーマが
必要なわけで、でも本作は大勢の自逝者(本作では自殺希望者をそう呼びます)の顛末を
ただ淡々と書き綴っているだけで、本来そこから浮かび上がって見えてくるはずの
著者の言いたいことが見えてこない。〝自殺〟なんて重いものをテーマに書かれた小説である
以上、ただ面白ければいいってものじゃないと思うのですが。
それともあの〝彼女〟の生き様が全体を貫くひとつの教訓になっているのかな。。。
オチは今の日本社会を見事に風刺していて思わず苦笑してしまいましたが。
「ほんと、そんなもんなんだよなあ」と。
笑いネタやグロネタだけじゃなくちょっと真面目な自逝者エピソードでも入れてくれれば
もっと本作はいいものになったんじゃないかと個人的には思うのですが、まあでもそうしたら
ブラックユーモアじゃなくなっちゃうから無理か。
私は今ちょっと精神を病みがちなので、こんなもん読んで大丈夫かと軽く不安に思いながら
本作を手にとったのですが(じゃあわざわざ読むなよって感じですが)、読後逆に
〝自殺〟という行為がバカバカしく思えるようになってしまった。
自らを殺す、という行為にはやはり最低限の自己陶酔と自己憐憫、ドラマ性が必要ですが
これ読んだらそんなもの吹き飛んだもんな。
〝死〟に酔っているような人は読んでみると結構自分を客観視できていいかもしれない。
もちろん個人差はあるだろうから万人にはおすすめしませんが。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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