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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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誰が誰を捉えたのか。



最愛の息子が失踪した直後、愛人の男が事故で死んだ。もしかして、息子が殺した…?
亡霊のように現れる過去の絆。
第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品に加筆して単行本化。

***

数年前に一度読んだものを再読。
やっぱうまいなあ。。。と読後感慨に浸っていました。
自分が歳くったぶん〝母親〟としての年輩(というと失礼ですが)女性の心理が
以前より読み取れるなっていて嬉しい。

著者が割りと(ってこれまた失礼ですが)年齢のいっている人なので
〝新人〟といってもそれなりに小説読み書きの鍛錬は積んでいる方なんでしょうが、
これがデビュー作というのが信じられないほど文章がうまい。そしてミステリとしての
構成力が非常にハイレベル。
最後まで真相が掴めない、勘に頼ろうにもその勘すらうまく働かない、
そんな巧妙な物語世界に最後まで緊張感を保ったまま読み進めることができた。

一人一人のキャラの立ち方もすごいし(ナズナの父ちゃん最高に好きです。この著者は
こういう所帯くさい&人間くさいおっさんの描写がほんとうまいよなー)、
それぞれに魅力があるので誰が登場するシーンも楽しい。それだけじゃなく
誰もがその内に何かしらの狂気を秘めているのでどの人物がどこでどういう行動に出るか
わからない、いい意味でキャラを〝信頼できない〟、その読者と登場人物たちとの間の
距離感も、馴れ合いがなくてすごく心地よかった。

そしてラストで主人公・佐知子が目にする〝気の狂いそうなほど奇妙な光景〟。
私なら本当に気が狂ってしまうかもしれない。
人を本当に狂わせるのは恐怖や孤独じゃなく〝切なさ〟なのかもしれない。
そんな風に思った。

少し難を言うなら主人公が(いくら息子が心配とはいえ)ちょっと自己中心的に過ぎること、
(まあ、だからこそあのラストシーンが光るんでしょうが)
&三人称で書かれた小説とはいえほとんど主人公・佐知子視点の文章なので
佐知子の思考に読み手であるこちらが誘導されてしまいがちなこと(つまり佐知子が
「~に違いない」と断定するように思考するので(しかもそれが地の文で書かれているので)、
読み手は自分で推理するより先にその考えに無意識に従ってしまうこと)。
そしてつまらないケチをつけるなら擬音が全部カタカナなこと。〝メソメソ〟〝ヒタヒタ〟
〝トボトボ〟。。。意外とダサいんですね、小説でこういう表現をすると。

でも相変わらずの傑作でした。
さらに歳とったらまた再読してみるつもりです。
読むたびに新しい発見がある、非常によくできた小説ですこれは。

それにしても佐知子の息子の文彦はかっこいい。。。
これは何歳になって読んでも変わらないだろうなあ。。。(変わらなきゃショタでやばいけど)。

sotoori.jpg







衣通姫。






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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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