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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「物語じゃない人生なんて。」



97本の短編が収録された「N・P」。著者・高瀬皿男はアメリカに暮らし、48歳で自殺を遂げている。
彼には2人の遺児がいた。咲、乙彦の二卵性双生児の姉弟。
風美は、高校生のときに恋人の庄司と、狂気の光を目にたたえる彼らとパーティで出会っていた。
そののち、「N・P」未収録の98話目を訳していた庄司もまた自ら命を絶った。その翻訳に関わった
3人目の死者だった。5年後、風美は乙彦と再会し、狂信的な「N・P」マニアの存在を知り、
いずれ風美の前に姿をあらわすだろうと告げられる。それは、
苛烈な炎が風美をつつんだ瞬間でもあった。
激しい愛が生んだ奇跡を描く、吉本ばななの傑作長編。 

***

身体が弱く独特の魅力を持った少女・つぐみとその唯一の理解者・まりあのひと夏の体験を描いた
〝TUGUMI〟。
本作はそれと対を成す物語だと思う。
精神を病み、けれどそれ故の魅力を持つ少女・翠(すい)とその唯一の理解者・風美の、これもまた
ひと夏の物語なので。

『呪いとは自分自身にかけた自己暗示』、
この一文は、(私的ネタですが)正にその呪いに苦しめられている今の私には
痛切なひと言ですが、
きっとたぶんこの世の誰もが、大なり小なりそういった呪い、自分自身に課した枷に
足を引っ張られながら、それでもどうにか生きているんでしょう。
けれど、童話で言うなら〝王子のキス〟的呪いを解く要素はきっとどこかに存在するはずで、
それは誰かのさり気ないひと言だったりふと眼に入った景色だったり
家族や恋人や趣味や才能といった生きがいだったりするんでしょう。
でも何もせずに放っておいても自然と解ける場合もあるから不思議ですが(まあたぶんそれは
いわゆる〝忘却〟で、解決してくれたのは時間なのでしょうが)。

なかなかの傑作でした。
ラストの恋愛オチがちょっと中身を薄っぺらくしてしまっていたことを除けば。

ちなみに本作のタイトルにもなっている〝N.P(North Point)〟という曲、たぶんこれだと思う。

BGMにどうぞ

蛇足ですが、以前著者がエッセイで
「スピッツの〝ヒバリのこころ〟を聴いて、『草野マサムネくんはきっと
この小説を好きになってくれる!』となぜか思った」的なことが書かれていましたが、
実際のところどうなんでしょう?^^

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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