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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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大体女がなんだっつの。
女なんかただの女だっつの。




娘の緑子を連れて豊胸手術のために大阪から上京してきた姉の巻子を迎えるわたし。
その三日間に痛快に展開される身体と言葉の交錯!

★収録作品★

 乳と卵
 あなたたちの恋愛は瀕死

***

4月といえばイースター(復活祭)の季節ですねえ。。。
となんだかたまご繋がりでふと思い出してみたり。

慢性的なストレスだの鬱屈だのをどうにか取り払いたいといった願望は、
人間の複雑な脳を経由すると妙におかしな方向にねじまがって表に顕れてしまうもので、
主人公の姉・巻子の場合それは〝豊胸手術〟だったんでしょう。
別に胸がでかくなったから女としての自信が取り戻せるとか幸せになれるとか
そういう具体的なことを考えてるわけじゃまったくなく、
「これさえやったら何かを乗り越えられる」
的な根拠のない希望、言い換えれば人生の目標や指針だとかいった、
そういうものが欲しかっただけだったんでしょう。
まあ一種の自己暗示・おまじないのような感じで。
それは巻子に限らずこの世のすべての人間がそうであるように。

巻子の娘・緑子(この名前は樋口一葉を敬愛する川上未映子さんの、
〝たけくらべ〟の主人公・美登利へのオマージュなのかな?)が筆談でしか人と会話しない、という
設定は本作中で唯一リアルさを欠いていて浮いている感じがしたし、
途中で出てくる冷蔵庫内の大量の卵がラストへの伏線であること、そしてそれがどう使われるかにも
すぐに思い至ってしまったので、
その点では物語が薄く感じられ、この著者やっぱりまだ若いなあ、と思ってしまったりもしたけど、
地の文までが関西弁の独特なリズムを持った文体は読んでいてかなり楽しかったし(私の親が
大阪出身なせいもあるけど)、
使う単語の選び方も(だいたい純文学の人はみんなそうなんだけど特に)絶妙で感心&感動しきり。
著者本人もこんな風にコメントしてます。



女なんか魂の上に身体をかぶって、その上にさらに服や化粧をかぶって生きてる、
ほんと〝卵〟みたいな構造の生き物なんだよな。

精神面とか生き方とかじゃなく、あくまで〝生き物〟としての女を描ききっているところに
この小説の真価がある。これは芥川賞に値する。
読んでよかった。

PS:
同時収録作〝あなたたちの恋愛は瀕死〟は。。。
「そのまんま」。これ以外の感想が思い浮かばない。
そのまんまのことをそのまんま描写できる彼女の手腕が怖い。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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