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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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私は命をかけて、あなたのものになりますね。



晴れて第一志望の教育学部に入学した榛名なずなだったが、
大学生活は苦労の連続だった。
それでも弱音を吐くことは出来ない。彼女には絶対に譲れない夢がある。
何としてでも教師にならなければならない理由があるのだ。
そんな日々の中、彼女はとある窮地を一人の男子学生に救われる。
寡黙で童顔な、突き放すような優しさを持った同級生。
二つの夢が出会った時、一つの恋が生まれ、その未来が大きく揺れ動いていく。
愛と死を告げる、新時代の恋愛ミステリー。

***

綾崎隼氏の独特な伏線の張り方は
著作を全部読むうちにわかってしまっていたので、
本作もオチに速攻気付いてしまい真相がわかったときも驚きはなく残念。
また、主人公の彼らふたりが元々知り合いでないことにも違和感がありまくり
フィクション臭さが読んでいる間中付き纏った。
物語的にもありがちな病気ものの域を出ていないし。
綾崎氏は本作を執筆するにあたって古今東西の難病ものを
読み漁ったというけれど、その割には、というかそんなことをした故か、
個性の感じられない一作になってしまっている気がした。
唯一嬉しかったのは〝ノーブルチルドレン〟シリーズのあのふたりに
再会できたことかな。

綾崎氏の著作の中では一番の低評価。
せっかくの初単行本なのに。。。
次回作に期待します。

追記;
でも作中に登場する、
「愛するひとが呼んでくれる自分の名前は世界で一番美しい」、
これには同意。
ごく個人的な話になりますが、私は今の相手が自分を初めて
名前で呼んでくれたときのことが未だに忘れられなかったりするので。
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「夢幻の花という意味だ。
追い求めると身を滅ぼす、そういわれた」



独り暮らしの老人が殺された。
遺体の第一発見者である孫娘の梨乃は祖父の死後、
庭から消えた黄色い花のことが気にかかり、
事件の真相と花の謎解明に向けて動き出すが…。

***

さすが大御所、一見ばらばらに見えるピースが
気持ちいいほどピタッピタッとはまっていくクライマックスからラストにかけては
圧巻。
見事にはまりすぎていっそ都合がよすぎるように感じてしまうぐらい。
ただ、タイトルにもなっている序盤で登場する黄色いアサガオに
そこまでの謎の気配が感じられず、従って興味も湧かず
花の正体がわかる終盤までだらだらと読んでしまったことは否めない。
ひと言で言うと物語を貫く謎自体に魅力がないように感じられた。
登場人物の行動にも「普通はそうはしないだろ」という
不自然なものが散見されもしたし。
そして面白いは面白いのだけれど作品としてはやや小粒。
もっと〝白夜行〟並の壮大な物語を東野氏が書いてくれることを
願ってやまない。

それなりに楽しめた、といったところ。
笑って。



中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。
誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。
「僕」はキヨコの存在が気になり、あとを尾行するが…。
少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在。
そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは――。
メフィスト賞受賞の著者による書き下ろし。
心に刺さる、青春の物語。

***

デビュー作〝プールの底に沈む〟が非常によく感銘を受け、
続く第二作〝角のない消しゴムは嘘を消せない〟がつまらなすぎて
肩透かしを食い、
三作目にあたる本作はどうだろうと期待半ば不安半ばで読み始めたのですが、
当たりでした。とてもいい作品だった。

ひとによっては鼻につくだろう村上春樹ばりの会話の洒脱さも
既に慣れていたので気にならず読み進められたし、
現実世界に浸透している価値観を緩やかに覆される独特の世界観も
心地よかった。
いい意味で中高生ぐらいの教科書に載っていそうなエンタメと純文学の
中間のような物語なのだけど、さり気なくミステリの要素も入っていて
ジャンルの壁を越えて楽しめる。
あちこちに何気なくばら撒かれていた伏線の回収も見事。
オチに漂うさわやかさと切なさはデビュー作を彷彿とさせるものがあり
デビュー作ファンとしては嬉しい限りだった。

おすすめ。
私たちはきっと長く続かないだろう。
兄妹の遊びが長くは続かないように。




かたときも離れたくなかったのに――。
結婚が運ぶ幸せと不幸せ。六つの短篇。
二十歳のとき彼に出会い、二十一で結婚した。いっときも離れたくなかった。
子どもが生まれ、いつしか私たちは冷えていった。
やがて理想的な恋人を得て、ふと気づく。
ほんとうは、夫とだけ愛しあいたかった――。
結婚のあとさきをめぐる女たちのひりつく心。
『マザーズ』でドゥマゴ賞を受賞の著者による最新短篇集。

★収録作品★

 試着室
 青山
 ポラロイド
 仮装
 婚前
 献身

***

女流作家は結婚や出産を経ると作風が変わる、
しかもどちらかというと保守的で悪いほうに、
というようなことを知人とよく話しているのですが、
この金原ひとみさんも最近大人しくなっちゃったなあと思っていたら
結婚・出産したことを知ってやっぱりなと思ったのですが、
本作ではその印象を払拭された。
女性としての変化だけじゃなく、単に年齢を重ねたことによって
作風が荒々しいものから地に足の着いたものに変わったということも
あるのだろうけど、それでも本作には
彼女の紡ぐ物語の核を成す狂気やいい意味での「下品さ」みたいなものに
また出会うことが出来たと感じられた。
それどころか人間の内面描写力は格段に増していて驚きもした。
痛々しいほど繊細で弱い女主人公たちの心理の描き方は秀逸で
そこは昔と変わっておらず嬉しくもなったり。
夫を愛しすぎるあまり、二人きりでいたりあまり、
自分が産んだ子供が邪魔で恋愛がぐらつき精神が不安定になる。
そんな、普通に読んだら勝手すぎるだろと思えるようなことも、
金原さんが書くと「そうだよなあ、邪魔だよなあ」と変に納得させられてしまうから
恐ろしい。

いいもの読ませてもらった。
おすすめです。
きっと魔法が起きる。



絵画、建築、神学、図像学、そして……
ヨーロッパの叡智の結晶たちに
新たな解釈と発見とを見出す「知」と「心」の旅。
その橋渡しは「最新科学」――
17世紀のフランスと近未来の沖縄。
ふたつの時代に生きるふたりの女性、アナと鈴が、
旅の果てに辿り着いた驚愕の真実とは――!?

***

アナと鈴、生きる時代も国籍も違うふたりの女性の物語が
交互に描かれていく本作、
終盤に差し掛かるころに一見まったく接点のない
彼女たちの関係性が明らかになります。
ただ、本を読み慣れていないひとだとその関係性を含め
物語自体の言わんとしていることがわからない可能性は高い。
特に純粋なエンタメを期待して手に取ったひとは
何が何やらちんぷんかんぷん、もしくは
著者・ひいては物語の言わんとしていることがわかったとしてもそれを楽しめない、
そんな状況に陥る確率大。

専門的なうんちくをこれでもかと書き連ねていても
それはそれで理解出来ないなりに面白い、という小説は数多存在しますが、
本作のうんちくは個人的にはあまり魅力を感じられなくて楽しめず、
特に著者の年齢は知らないけれど若者の描写が古臭くそこにも馴染めなくて、
いろいろ気になる点はあったけど
著者独自の世界観を構築することには十分成功していると思うし
その世界観に入り込むこともすんなり出来たので割と好きな作品ではある。
ヒロインのひとりであるアナには大袈裟でなく聖母マリアのような
母性の象徴を見る思いで同じ女性として憧れを抱いたし、
構成的に見ても伏線の回収もうまい。
上述のとおり基本うんちく小説だけど文体が柔らかいので
内容の割にまあ読みやすいし。

ただ、繰り返しますが絵画のように全体に抽象的な物語なので、
読書の初心者にはおすすめしません。
読解力に自信があるひとにだけ手にとることをおすすめします。

まあとかいって、
わたしも全部を理解出来たわけじゃないんだけどね、ホントコ。(←知るひとぞ知る)
あなたに会えてよかった。




世界が終わっても、
ずっと一緒にいるよ。

終末論が囁かれる荒廃した世界で、
孤独な女性のもとに現れたのは、
言葉を話す不思議な赤毛のサルだった――。
ひとつ屋根の下、奇妙で幸せな
一人と一匹の“ふたり暮らし”がはじまる。
一日一杯のミルクをわけあい、
収穫を待ちわびながらリンゴの木を育て、
映画を観る約束をする――。
しかし、隠された彼の“秘密”が明かされるとき、
物語は終わりとはじまりを迎える……。
赤毛のサルの正体は? そして彼が現れた目的とは?
壊れかけた世界で見える、本当に大切なもの――
不条理で切ない絆を描き出す寓話ミステリー。

***

シズカというひとりの女性と人語を解する赤毛ザル・ノーマジーンとの
ユーモラスでほのぼのしたやり取りがほとんどを占める本作、
やはりポプラ社から出ているだけあって
小説というより童話めいた話なのかな、と思っていたのですがとんだ勘違いだった。
第二章でノーマジーンのある重大な秘密が明かされたとき、
そのときの衝撃とやるせなさはもう何物にも代えがたい。
退廃的ながらもメルヘンチックだった世界が一変し、
ページを繰るにつれて増していっていたノーマジーンへの愛情がぐらつくのは
まさにヒロイン・シズカと同じ気分。
そして真実を知ったシズカが選んだ道、それは何だか
飼い主とペット、雇い主と介護者、そんな関係を超えた、まるで
「恋人同士」を見ているように切なくて、月並みな表現だけど胸を打たれ、
読み終えたあともしばらく物語の余韻から抜け出すことが出来なかった。
とてもとても素晴らしい物語だった。

非常におすすめです。
やっぱり初野晴さんは素敵な作家さんだな。
これからもついていきます。
これから、行く――。




とある屋敷で暮らす美しい姉妹のもとにやってきた「わたくし」が見たのは、
対照的な性格の二人の間に起きた数々の陰湿で邪悪な事件。
ついには妹が姉を殺害するにいたったのだが――。
“羊の皮を被った狼”は姉妹どちらなのか?
圧倒的な筆力で第七回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる
“羊”たちの饗宴。

★収録作品★

 強欲な羊
 背徳の羊
 眠れぬ夜の羊
 ストックホルムの羊
 生贄の羊

***

うまいです。
女の嫌な部分をこれでもかと描き出しているのですが
その描写があまりに的確なので読んでいていっそ小気味いい。
そうそう女ってこうだよね、とほくそ笑みながら読破してしまいました。

ただ、著者が脚本家出身のひとであるせいか、
「~は~した」という文章を「~は~する」と現在形で表記することが多く、
それがあまりに無機質な印象を受けて馴染めなかったのと、
〝ストックホルムの羊〟はタイトル&本作の全体の構成から
(そして服部まゆみさんの著作にそっくりなものがあることから)
すぐにオチが読めてしまったのが残念。
そして最終話〝生贄の羊〟は、これまでの短編を無理に繋げようとして
失敗しているので、そんな試みをせず普通に〝羊〟をテーマに
物語を書いてくれたほうがよかったのに、と僭越ながらも思ってしまった。

でもここ最近読んだミステリの中ではダントツに面白くて一気読みでした。
おすすめ。
しかし、僕は言葉をとめない。



島に生まれ育った人々が織りなす、心の奥底を揺さぶる連作短篇集。
日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作「海の星」収録。

★収録作品★

 みかんの花
 海の星
 夢の国
 雲の糸
 石の十字架
 光の航路
 

***

島という閉塞的な場所を舞台に描かれた連作集にしては、
その特殊な舞台設定を活かし切れておらずほとんどが「いじめ」をテーマに
物語が展開するのが残念に思った。
収録作「海の星」は、日本推理作家協会賞受賞作だけあって
シンプルながらもとてもきれいにまとまっているけれど
結局海の星が何だったのか(たぶん海ほたるだと思うけど)
読者の想像にお任せしますよー的にぼかすわけでもなく
単なる説明不足のまま話が終わってしまうし
推理作家協会賞にしてはインパクトがなさすぎる気もした。

いつまでもデビュー作の「告白」と比べてはいけないのだろうけど、
告白のような毒とインパクトのある作品をもう一度読みたいと
やはりどうしても思ってしまう。
本作は毒を込めないことにしたのだろうけど、
それがちょっと物足りない気がした。

それなりに整ってよく書けた物語だと思うけど、
たぶん一ヶ月後にはすべての短編の内容を忘れている自信がある。

可もなく不可もなく、といった感じでした。
見てろよ、白。泣き喚け。



捨て子の「白」を拾ったがために、大きく狂いはじめる主人公の人生。
村八分に遭い、クラスメイトからの陰湿ないじめを受けた主人公は、
村を捨て、港町に流れついたのち、やがて、
暴力とセックスの蔓延する大都会・東暁<TOGIO>を目指す……。
悪事に手を染めながらも、社会の最下層で生きる彼が唯一気にかけていたのは、
村に置いてきた白のことだった。

***

このミステリーがすごい!大賞の大賞受賞作なのに、
ミステリじゃありません。純文SFです。
なのでエンタメやミステリを期待しているひとは肩透かしを食います。
でもジャンル違いなのに大賞を受賞したのも頷けるぐらい
壮大かつ秀逸な物語です。
強烈なインパクトを受けるのはラストの真相がわかったときだけなのですが、
そこに至るまでの淡々とした筆致はすべて
そのラストのためにあったのだなと気付かされたときのしてやられた感は
半端ない。

本来一番描くべきはずの人物の描写をほとんどせず、
その人物に最大の影響を与えた人間を主人公に物語を紡ぐ。
そのほうが、元々主人公になるはずだったその「人物」への想像力が
より増して魅力的に見えるのだということを本作の著者はとてもよくわかっている。
作中の比喩表現なんかを見てもわかるように、
かなり個性的で非凡なものを持っている作家さんだと感じました。

殺人やセックスシーンが割と多いので苦手なひとは苦手かも知れませんが、
ラストの壮大な驚き、それがもたらす快感を味わうためにも
是非一読してほしい作品です。

おすすめ。
もっと声を大きくして、
あなたに言えば良かった。




顔の左側をおおったアザ。
からかいの対象にされ、恋愛はあきらめていた。
けれど、映画監督の飛坂逢太と出会い、世界がカラフルに輝きだす。
24歳にして恋愛経験値ゼロの理系大学院生アイコ。
女性に不自由しないタイプの飛坂の気持ちがまったくわからず、
時に暴走したり、妄想したり、大きく外したり。
一途な彼女の初恋の行方は…!?
切なくもキュートなラブ・ストーリー。

***

鈍感、なんだと思う。
彼女の周りの人間が言うみたいに、「堂々としている」とかじゃなくて。
顔のアザにも負けないぐらい恋愛に一途、というよりは、
そこまで深く自分のアザのことを捉えてないから相手に積極的になれる、
そんな気がした。

付き合っているのに片想いみたいだ、って気持ちは
誰しも経験したことがあると思うし私ももちろんあるので
本作は読んでいてひりひりしたし主人公のアイコと一緒に傷ついたり怒ったり
嫉妬したりと気持ちが休まる暇がなかった。正直読んでいて苦しかった。

クサい部分もあるにはあるしご都合主義な展開も散見されるのだけど
それでもラストには感動したし、
傷を負っているからこそ相手の傷をも理解し受け入れることが出来る、
そんなことも改めて知って自分の欠点を誇らしく思うことさえ出来た。

おすすめです。
やっぱり島本理生さん好きだ。
プロフィール
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kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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