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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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必ずもう一度ループする。



なぜ俺たちは戻ってきてしまうんだ!?
半壊したラブホテル。廃墟探索サークルの男女5人を襲うタイムループ。
極限状況で剥きだしになるエゴ、渦巻く愛憎。
悪夢を脱するため、たったひとりの犠牲の山羊となるのは誰か?
驚愕の新感覚ホラー。

***

呪われた場所に超自然的な力で閉じ込められた五人。
脱出するにはひとりが犠牲にならなくてはならない。。。
という、ある種〝バトルロワイアル〟にも似たゼロサムゲームが
本作では展開されます。
やーそれにしても、あらすじにもあるとおり、極限状態におかれた人間というのは
本性が剥き出しになって不謹慎だけど非常に面白い。
誰かひとりが犠牲になれば抜け出せる地獄。
五人が五人、それは自分じゃないかと怯えながら
抜け出せない呪いのループを何度も繰り返していく。
延々とループする時間の中で、それでも著者は
とても細やかに五人のキャラクターの人と成り、心理状態を
一人ずつ描写しているので、読んでいて飽きが来ない。
単純にホラー小説なのかと言えばそうではなく、
ミステリの要素も群像劇的側面も併せ持っているので
どんなひとが読んでも楽しめるのではないかと思う。

恐怖のループ。
でもラストシーンを読んだときは、そのループ以上に怖いことが
この世にはあるのだと痛感し衝撃を受けた。
そして同時に、かつて直木賞候補にまでなった著者の作家としての力量を
まざまざと思い知らされた気がして打ちのめされた。

非常におすすめです。
本を読んでいてページを繰る手が止まらなくなったことなんて久しぶり。
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それはとてもステキなことだと思う。



神出鬼没の山手線探偵・霧村雨。
小学生助手のシホと自称ミステリ作家のミキミキさんと一緒に、
今日も難事件に挑む!メイドカフェで依頼された今回の調査内容は
『初恋の想い人』捜し。
しかし山手線探偵のニセモノ出現により、
思いもよらない未解決殺人事件に繋がっていく…。

***

知人の作家・七尾与史さん(作風どおりにめっちゃ気さくで楽しくていい感じに
エキセントリックな方です)の作品。
〝依頼人のおばあちゃんの初恋のひと探し〟と
〝70年前の殺人事件〟を絡めてさくさくテンポよく物語が進んでいく。
ポップなキャラに本格的な謎解きが絶妙に絡まって楽しくすいすい読むことが出来る。
作中に出てくる名前トリックにはかなり早い段階で気付いてしまったものの
70年前の事件の真相は予想外で全体に満喫出来た。
七尾さんの著作はお手軽に読めるミステリとして評価されがちだけど、
ダークさとポップさをこうも違和感なく融合させることが出来る手腕には
底知れないものを感じて改めてすごいよなーと感嘆させられる。
そんな私はポップさなどカケラもない彼の初期の著作
〝失踪トロピカル〟が一番好きだったりするのですが。

でもおすすめです。
ほかの著作の世界ともリンクしているので他の七尾作品を読んだことのあるひとには
より楽しめる内容になっています。

「明日から、もう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなものだし。バカンスだ」



人生の<小さな奇跡>の物語
夫の浮気が原因で離婚する夫婦と、その一人娘。ひょんなことから、
「家族解散前の思い出」として〈岡田〉と名乗る男と
ドライブすることに──(第一章「残り全部バケーション」)他、
五章構成の連作集。

***

相変わらず、いい意味で子供が仕掛ける悪戯のような趣を持った
伊坂氏の物語。
こういう、童心を忘れずにいられる大人、それも作家としての
それなりの地位を得た今も尚それを持ち続けていられるひとというのは
本当に貴重だなと思う。
小粒な物語ではあるものの、伏線の張り方も相変わらず絶妙で、
その後を読者の想像に委ねるリドルめいた終わり方も
マンネリといえばマンネリなのだろうけどそれでも私はやっぱり好きだ。

私は今運転免許を取るために自動車教習所に通っているのだけれど、
オートマのクリープ現象を体感するたびに、作中に出てきた
「レバーをドライブに入れておけば勝手に進む」
という言葉を思い出してほくそ笑んでしまいそうな自分を感じた。
まあ、レバーをドライブに入れるのが難しく、普段はどうがんばっても
ニュートラルかパーキングにしかレバーが入らない、というのも
考えものではあるけれど。
深くは考えないでおく。

おすすめです。
 
死に際にこそ、人は真価を問われるのかもしれない。

 

不老不死が実現した社会。しかし、法律により100年後に死ななければならない――
“生存制限法”により、100年目の死に向き合うことになった日本。
“死の強制”をつかさどる者、それを受け入れる者、抗う者、死を迎える者を見送る者…
自ら選んだ人生の結末が目の前に迫ったとき、忘れかけていた生の実感と死の恐怖が、
この国を覆う。
その先に、新たに生きる希望を見出すことができるのか!?
構想10年。最高傑作誕生。

***

うーん。。。
ネットとかでよく見る二次創作の域を出ていないように感じた。
内容以前にとにかく思ったのは、文体が自分に合わないということ。
シリアスな内容に反して「――っ!」というちっちゃい「っ」の多用は漫画っぽくて
作風にそぐわなかったし、何より体言止めの乱発&やたらと多い改行に
「本気で書いてんの?」と偉そうにも思ってしまった。
数々のエピソードがクライマックスで収束するのかと思いきや
結局最後までほぼ飛び飛びで
単に著者がその場その場で書きたいことを思いつくままに書いているだけ、といった
感じもしたし。
ネタバレになるので詳細は伏せますが、あの病気がラストでいかにもご都合主義に
反乱を起こすのもどうかと思ったし。

何が言いたいのかはわかるけど作品に終始一貫したテーマがなく
エンタメに走りたかったのか読み手に警鐘を鳴らしたかったのか
どうにも掴み切れない中途半端な作品になってしまっている気がした。

唯一よかったのは仁科ケンのキャラかな。
まあ、彼のことももうちょっと掘り下げてほしかったけど。。。

あまりおすすめしません。
その後ろに山が見える。

 

南アルプス夜叉神峠で起こった親子心中事件で生き残った少年が、
その後成長して「マークス」を名乗り、連続殺人を犯す。
「マークス」には、ある事件に関係するキーワードが隠されていた。

***

大変な読書家であるにも関わらずめったに本を進めてこない知人が
「とにかく秀逸だから。ラストの風景が何とも言えないから」
と大絶賛するので読んでみた直木賞受賞作。

。。。うち震えた。
骨太な文章、壮大な構成、そして何より
まさに知人の言うとおりの切なくも美しすぎるラストシーンに
しばらく読後の余韻から抜け出せなかった。
読み終えたあとも何度もそのシーンを思い出して涙が出そうになった。

ミステリとしても一級品、ドラマ性から鑑みても傑作と呼べる部類のものです。

非常におすすめ。
ミステリはもちろん、ダークヒーローが好きな方にも是非。
ここは、すべての動物が魂の生まれ変わりを祈る場所のひとつなんだよ――。



廃墟となった遊園地、ここは秘密の動物霊園。
奇妙な名前の丘にいわくつきのペットが眠る。
弔いのためには、依頼者は墓守の青年と交渉し、
一番大切なものを差し出さなければならない。
ゴールデンレトリーバー、天才インコ、そして……。
彼らの“物語”から、青年が解き明かす真実とは。
“ハルチカ”シリーズで人気の著者が描く、せつなすぎるミステリー!

★収録作品★

 カマラとアマラの丘‐ゴールデンレトリーバー‐
 ブクウスとツォノクワの丘‐ビッグフット‐
 シレネッタの丘‐天才インコ‐
 ヴァルキューリの丘‐黒い未亡人とクマネズミ‐
 星々の審判

***

久々にここまで良質の、そして深いミステリを読んだ。
動物の死に生き物の尊厳という大きなテーマを絡めて紡がれた四つの物語。
どれもが心に深々と突き刺さってくるようで、
たとえは変だけどいい意味で読んでいて精神が不安定になった。
それだけ揺さぶられたということなんだろうな。

ちょっと文体がポエティックに過ぎるきらいがある点と、
すべての短編が会話主体で形成されているため
全体としてみると物語に抑揚がないという点は気にはなったけれど、
総じて高得点。

久々にかなりのおすすめです。是非。
「物理的には可能だ」



『虚像の道化師 ガリレオ7』を書き終えた時点で、
今後ガリレオの短編を書くことはもうない、ラストを飾るにふさわしい出来映えだ、と
思っていた著者が、
「小説の神様というやつは、私が想像していた以上に気まぐれのようです。
そのことをたっぷりと思い知らされた結果が、『禁断の魔術』ということになります」
と語る最新刊。

★収録作品★

 透視’みとお)す
 曲球(まが)る
 念波(おく)る
 猛射(う)つ

***

過去のガリレオシリーズに比べると科学風味が若干薄れていて、
最終話〝猛射つ〟などでは湯川の人間味(それも人情溢れる、というのではなく
怖い側面)を堪能することも出来ます。
ただ最終話は、ページ数の都合上しょうがないのかもしれないけれど
各登場人物のキャラやエピソードがどれも中途半端になってしまっていた感が
あったのが残念。
そして東野作品を読後必ず思うことだけど、
物語自体は面白いのに印象に残る文章がない。
文章が簡潔すぎるんだよな。
ものすごい才能を秘めた東野氏の、会心の一文というのに出会ってみたい、
というのがここ最近の私の願いです。

でもおすすめ。
だからとりあえず、今日だけ。いまだけ。



愛し合って一緒に住んでるのに、婚姻届を見ただけで顔がひきつるってどういうこと!?
好きなのにどうしてもすれ違う二人の胸の内を、いやんなるほどリアルに描く連作2篇。
ひりひり笑える同棲小説。

***

恋人たちはとても幸せそうに手を繋いで歩いているからね
まるですべてのことがうまくいってるかのように見えるよね
本当は ふたりしか知らない

という浜崎あゆみの歌詞が、読んでいる間中頭の中を巡っていた。
付き合っている、とか同棲している、結婚している、そういうひと言は
聞くひとを「そっか、幸せなんだね」と思わせるけど、
どのふたりの間にも同じように苦しいことがあって、
一緒にいることでストレスを感じたり傷ついたりすることもあって、
やはり恋愛といえども対人関係のひとつなんだなと
改めてしみじみ思わされた。

先日友人と話をしたとき、好きな相手の過去のことや
今後のふたりのことを考えて不安になるということを聞いたけど、
本作は過去や未来じゃなく「今」に目を向けてその輝きを大事にしろと
直截に訴えてくる。
言われるまでもない当たり前のことなんだけど、
それは実はとても難しいことで、
それを文字にして言われることでちょっと心が楽になる心地がした。

先読みのしすぎなんて意味のないことはやめて
今日はおいしいものを食べようよ
未来はずっと先だよ
僕にもわからない

という宇多田ヒカルの歌詞を今は念頭に置くとするか。

恋愛って難しいし悩むし傷つくし不安も不満も多いし、
でもやっぱりいいものだ。そう思っているしこれからもそう思いたい。
WHAT YOU HEAR HERE
WHAT YOU SEE HERE
WHAT YOU LEAVE HERE
LET IT STAY HERE!




一九三九年十一月二日、ワシントンDCの森で、娼婦の死体が発見された。
被害者は木の枝に吊るされ、女性器の周辺をえぐられたため、
股間から内臓が垂れ下がっていた。
時をおかず第二の事件も発生。凄惨な猟奇殺人に世間も騒然となる中、
意外な男が逮捕され、サンフランシスコ沖に浮かぶ孤島の刑務所、
アルカトラズに収監される。
やがて心ならずも脱獄した男は、奇妙な地下世界に迷い込む――。

***

猟奇殺人の犯人は誰ぞや?という本格ミステリかと思いきや、
犯人はあっさり判明、それからは一転ファンタジーの世界へ。
というかファンタジーならファンタジーでそのままいってほしかったのに、
ラストで「これは全部現実だったんですよ」という悪い意味で衝撃のオチに。
しかもそのオチに無理がある。
どう考えてもそれは無理だろ、という、フィクションにしても納得のいかない
リアリティのないものになってしまっていた。
また、主人公が変質者なので彼が幸せになることにいまいち納得がいかない。
つまり彼に感情移入出来ない。
ありがちだけど彼が多大なるトラウマでも背負っていれば
同情心が湧いて応援したくなったかも知れないのにそれもない。

島田荘司氏の著作にしては芳しくないなというのが正直な感想。
やっぱり彼には正統派な本格ミステリを書いてほしいものです。
いや、彼にとっては本作は壮大なトリックを施した本格ミステリなのかも知れないけど
長年のファンとしては納得がいかなかった。

次回作に期待。
生きているかぎり、ひとりぼっちじゃない。



早期解決を確実視された殺人事件。容疑者の若者は何のために逃げ続けるのか?
驚愕と感動のラストが待つ、乱歩賞作家による逃亡劇。

***

悪い意味で二時間ドラマを観ているようだった。
文体も内容も陳腐。
薬丸氏の著書は読みやすさがウリだと思うのだけど、
読みやすいを通り越して中身が薄っぺらくなってしまっていた。
ちょっとうまい素人が書いた、という感じ。
キャラにも深みがないのでまったく感情移入出来ないし。
児童養護施設の子供たちについてももうちょっと掘り下げて描写すれば
いいものになったに違いないのに、尻切れトンボで終わってしまってるし。
。。。うーん、あまりに印象に残らなさすぎてこれ以上特に書くことはないな。
軽いミステリを楽しみたいひとにはおすすめかな。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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