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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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この世界には想うしかない恋もある。



好きな人が好きな人を、強がりではなく好きになれたら良い――。
青春時代に翻弄される四人の少年少女は、かけがえのない存在を守るために、
日常からの『家出』を決意するのだが…。
舞台化もされた傑作恋愛小説『蒼空時雨』より遡ること10年。
高校生だった紀橋朱利は、友人との逃避行の果てに何を見出し、何を失うのか。
トイズファクトリーのアーティスト・秋 赤音とのコラボで綾崎隼が紡ぎ出す、
ロックで彩られたセンチメンタル・ラヴ・ストーリー。

***

好きな相手の幸せを自分を犠牲にしてでも貫くのが本当の恋だと言うけれど、
それってもう恋を通り越して愛だよな。
本作を読んで主人公のひとり、紀橋朱利の恋はその点でいえば
紛れもなく愛だなと思った。

本作の著者・綾崎隼氏は、若者向けの作品を書く作家であるせいか
私の年齢で読むと青臭い印象はあるし文章もうまいとは決して言えないけれど
構成力の妙には唸らされるものがあるし、
人の心、特に恋心を描き上げることに関しては紛れもない才能を持ったひとだと思う。
恋愛小説を書く作家さんの中では一番好きかも。
ミステリの要素もどの作品にも入っているのでミステリ好きなひとにも楽しめる。

朱利がこの物語のあとどんな人生を歩んだかを知りたいひとは、
著者のデビュー作である〝蒼空時雨〟を是非。
どちらもおすすめです。
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届くまで。



柔道の道場主の長男・晴希は大学1年生。
姉や幼馴染の一馬と共に、幼い頃から柔道に打ち込んできた。
しかし、無敗の姉と比べて自分の限界を察していた晴希は、
怪我をきっかけに柔道部を退部。
同じころ、一馬もまた柔道をやめる。
一馬はある理由から、大学チアリーディング界初の
男子のみのチーム結成を決意したのだ。
それぞれに事情を抱える超個性的なメンバーが集まり、
チームは学園祭での初舞台、さらには全国選手権を目指すが…。

***

最近では東川篤哉氏の〝謎解きはディナーのあとで〟なんかが
笑えるミステリとして大人気を博していますが、
私のここ最近読んだ小説の中で断トツに笑えたのは本作〝チア男子〟。
笑えるし泣けるし感動でゾクっとくるしで自分の中の感情がめまぐるしく変化して
存分に堪能させてもらった。
主要人物が16人も出てくるのに一人ひとりの人間描写が非常に巧みで
どの人物にも感情移入出来たし、キャラも立ちまくっていて読んでいて非常に楽しい。

漫画なんかでもそうだけど、自分にはまるで縁のない、興味もないスポーツとかを
とても魅力的にみせる、心から興味を持たせる作品というのがこの世には存在して
それらは皆紛れもなく傑作で、本作もその中のひとつだと思う。
チアリーディングなんてまるで興味のなかった私が大会を見に行ってみたいとまで
思ってしまったぐらいだから。

本作で朝井リョウさんの著作は全部読みつくしてしまって
もう読むものがなくなったのでそれが非常に残念。
確か今雑誌で新連載を始めたはずだからそれを手に取るか、
単行本が出るまで楽しみに待っておくか。。。

とにかく本作は傑作です。
非常におすすめ。
大学時代があまり楽しくなかった私にとっては主人公の彼らはちょっと、
いや、あまりに眩しすぎたけれど。
今あなたがここにいたらなんて言うのだろう?



春山で吹雪に遭遇した恋人たち、孤島に取り残された幼い姉弟、
居酒屋で安楽椅子探偵と出会った男……
彼らにもたらされた謎と奇蹟。
万華鏡のごとき9編を収録。

★収録作品★

 冷たいホットライン
 アイランド
 It's only love
 悲しみの子
 さよならシンデレラ
 桜前線れ
 晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)
 発音されない文字
 空耳の森

***

短編集ですが、〝七つの海を照らす星〟シリーズの続編が
収録されていたりして本著者のファンには嬉しい内容になっています。

ただいかんせん謎が弱い。
オチが簡単に読めるものや真相に無理があるもの、
それどころか結局何がどうなったのか(リドルということじゃなく、単に悪い意味で)
わからないまま終わってしまう話など、
各話のレベルが高いとは決して言えない。
そして七河氏の書く少女は、前から思っていたけれどどこか古臭い。
80年代のヤンキーっぽいんだよな。そのことに違和感を感じたりもした。

文章は非常に読みやすくきっと実力はある作家さんだと思うので
(現にデビュー作は大好きだし)本作はちょっと残念だった。

次回作に期待します。
内側からじゃ判らないものが絶対見えるはずなのだ。



真夜中の多摩川。
呪われたウナギ。
レインボーブリッジでの死の誘惑。
リアルなのに、どこか壊れた世界を生きるために「大事なこと」とは?

***

芥川賞候補作品。
舞城氏は私の中で芥川賞を獲ってほしい作家さんナンバー1なので
受賞を逃したのはひどく残念。
。。。が、本作での受賞は正直厳しかったんじゃないかというのが
この作品を読んでの感想。
毎回軽い文体の中に深いテーマを持たせるというのが彼の持ち味なはずなのに、
今回のこの作品からはそういったものが何も伝わってこないのだ。
ひとつひとつのエピソードは面白いけれどそのそれぞれに繋がりがない。
ただ思いついたショートショートを書き並べてみましたといっただけの印象。
前回の芥川賞候補作〝短編五芒星〟を読んだときも
テーマ性の薄さは感じたのだけど今回はそれが顕著になっている感じ。
タイトルにもなっている〝美味しいシャワーヘッド〟も、
冒頭で主人公がシャワーヘッドを飲み込むという行為をフェラチオに例えるところから
話は始まるのだけど、だからといってその後そのエピソードが話に活かされることもなく
性をテーマにした話でもないので繰り返すけど本当に
舞城氏は本作を通して何が言いたかったのかな、という印象だった。

まあ、強いて本作から著者の言わんとすることを汲み取るとすれば
「世の中には言葉に出来ない感情がたくさんあるし
だからといってそれを無理に言葉にすることもないんじゃない?」
ってことかな。
正直だから何だって話だけど。

楽しめませんでした。
残念。
次回作に期待。
俺たちは、人知れず決意していくようになる。



影を宿しながら光を探る就活大学生の切実な歩み。
あなたの心をあぶり出す書下ろし長編小説。

***

怖い。
芸術に年齢は関係ないというけれど、
若干23歳でここまでのものを書きあげられる朝井リョウという作家のことが、
彼のデビュー以来ずっと怖かった。
大好きだけれど同時に脅威も感じていた。
だから本作での彼の直木賞受賞の一報を聞いたときには、
自分の認めている作家が認められたという嬉しさ以上に、
物書きを志す身として焦りと置いていかれたような孤独感にも襲われた。

ここまで人間心理を巧みに、登場人物たちの言動だけではなく
地の文にまで滲ませることが出来る筆力。
良質のミステリでも読んでいるかのようにきれいな伏線の回収と物語のまとめ方。
ただただ圧倒されるばかりだった。

そして何より朝井氏の魅力は、
これだけ認められる作家になっていながら普通の人間と同じ目線で
物事が見られるということ。
決して自らの肩書きに驕ることなく、「何者」かになれた今でも
決して本来の自分を見失わない。
気取った言葉で己の書く物語を粉飾したり、よりよく見せようとしない。
そのままの彼でいてほしいと、ファンとしては思った。

非常におすすめです。
そして朝井リョウさん、改めて、直木賞受賞おめでとうございます。
事件は、何度でも人を試す。



昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、
刑事部と警務部が全面戦争に突入。
広報・三上は己の真を問われる。
究極の警察小説!

***

盛り上がり方が非常に緩やかなので640Pというボリュームは
正直きついものがあった。
長編(特に本作のような大長編)ならではの渾身のクライマックスもなく
事件の真相は小粒だし。
主人公・三上と記者たちのやり取りが物語のほとんどを占めているのだけれど
警察VS報道記者のエピソードにあまり興味のない身としては
あまり楽しんで読むことも出来なかった。
著者の横山秀夫氏の持ち味である人間ドラマも
過去の作品に比べるとやや希薄だった気がした。
唯一胸を打たれたのは三上の妻・美那子の
失踪した娘・あゆみへの想いを表す言葉だけ。
ああ確かにそうだよなあ、と物語の主体を外れたところで感銘を受けてしまった。
でもその言葉は特に本筋に絡んでこないので、
そのひと言が物語のテーマを象徴するようもっと本作の内容に絡めれば
よかったんじゃないかなと個人的には思った。

横山作品の中ではあまり楽しめませんでした。
期待していただけに残念。
そのスピードの先にあるかもしれない世界で。



「輝くような人生の流れに乗るためのボートは、どこにあるんだろう」。
誕生日を間近に控えた大晦日の朝、3年間一緒に暮らした彼が出て行った。
その原因は……。

デビュー作で山本周五郎賞を受賞した実力派作家が「家族」を描く、待望の第3作。
表題作書き下ろし。

★収録作品★

 クラウドクラスターを愛する方法
 キャッチアンドリリース

***

あの〝ふがいない僕は空を見た〟を書いたひとと同一人物?
それにしてはレベルが下がりすぎなような。。。
デビュー作の出来が突出していてそれ以降は駄目、という作家さんは
正直ほかにもいるけど、
本作の著者はそれが(言っては悪いけど)顕著。
本作は著者の三作目の著作にあたるのだけど、
二作目も薄味でもうほとんど記憶に残っていないし、
本作にいたっては内容をちょっとタイトルに絡めているだけで
何が言いたいのかさっぱりテーマが見えてこなかった。
文章は上手いと思うけど、ただそれだけ。
書ける作家さんなのだとは思うから今後に期待したいです。

ちなみにこの著者、
大人よりも少年少女を書かせたほうが魅力が際立つような気がする。
表題作より併録の〝キャッチアンドリリース〟の子供たちの描き方のほうが
(まだ)遥かによかったし。
次回作は子供を主人公にした作品を書いてほしいな。
だから、ママ、この手を離さないで――。



「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」
著者入魂の、書き下ろし長編。
持つものと持たないもの。欲するものと欲さないもの。
二種類の女性、母と娘。
高台にある美しい家。暗闇の中で求めていた無償の愛、温もり。
ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。母の願いだったから。
心を込めて。私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました──。
それをめぐる記録と記憶、そして探索の物語。

***

原則として、「母性」と「女性」は両立し得ないと思っている。
男のために我が子を捨てたり虐待したりする女がいるように、
「女性」であるために「母性」を簡単に捨て去る女は確実に存在する。
もちろん「母性」を内包した「女性」として愛する男性に接する女性はいるけれど。

本作は、それと同じように
「母親」であることと「娘」であることは両立し得ないことを謳っている。
どちらかでありたいなら、残るもうひとつを放棄しなければならない。
けれど親に甘え、守られたいと思う気持ちと我が子を慈しみ、育てたいと思う気持ちは
どちらも女性には備わっているものであり簡単には手放すことは出来ず、
その狭間で悩む人間は多いのだろうなと本作を読んで改めて思った。

守り、慈しみたいと思うことと、
守られ、愛されたいと思うこと。
そのふたりの相反する気持ちを同時に満たすのはとてもバランス感覚が必要で
難しいことだ。

私はまだ独身で子供もいないけれど、
将来「母親」という立場に立つだろう身において
今から非常に身につまされる話だった。

おすすめです。特にもちろん女性に。
ミステリ要素も入っているので男性にもおすすめ。
そして、僕はここにいる。



僕、宮野隆也が通うさいたま工科大学附属高校の選抜クラスに、
転入生としてやってきたのは二足歩行のロボットだった。
これは病気のため学校に来られない一ノ瀬梨香という少女を、
遠隔操作で動くロボットを通じて登校させる実験だという。
僕たちは戸惑いつつも“彼女”の存在を受け入れ、
実験は順調なすべりだしを見せたが、小さな疑念がクラスに不協和音をもたらし、
悲劇は起こった。
近未来を舞台にした、学園ミステリ。

***

前々から殺人の動機に独特の理由を持ってくる作家さんではあったけど、
今回はちょっと納得いきかねるものがあった。
それぐらいのことで人殺しせんでも。。。と。
これだけセキュリティが完備された近未来の学園で
連続殺人が看過されるっていうことにもかなりの違和感を感じたし。
著者の石持氏は設定がいいし文章力もあるだけに
細かな瑕疵や倫理観がおかしい部分が非常にもったいないといつも思う。

ちなみに今回も当然のごとく出てきた
「○○はひゅっと息を飲んだ」。
最初は「いつまで同じ表現使うのさ」といらついていましたが
最近はこれぞ石持節と楽しみですらある。
私も変わったもんだ。

電車の中とかでさらっと読むにはまあまあ楽しめる一作。

ていうか本作のこのタイトルって
何か森博嗣氏のスカイ・クロラシリーズっぽいよな。どうでもいいけど。
ただ、おそらく、これが最初で最後の恋なのだ。



洋楽専門誌にビートルズの評論を書くことだけが、社会との繋がりだった鈴木誠。
女性など無縁だった男が、美しいモデルに心を奪われた。
偶然の積み重なりは、鈴木の車の助手席に、美縞絵里を座らせる。

***

さすがベテランだけあって、肩に力の入らない読みやすい文体で
一気に読ませる。
三分の二ぐらいまでは悪く言えばだらだらと間延びした描写が延々と
続くのだけど、終盤を読んだ時点でそれはこのラストを描くための
長い長い布石だったのだなと気付かされ驚かされた。
淡々としつつも猟奇的な物語が、最後の最後で切ないどんでん返しを見せる。
ラスト一行を読んだときには、やりきれないような、それでいて「よかったね」と
頬笑みを湛えた拍手を贈りたくなるような、何とも複雑な気分にさせられた。

周りの人間がどう評しようとその幸せが紛い物であろうと、
本人がそれを幸せと心から感じることが出来るならそれは間違いなく
〝幸せ〟のひとつの形であるのだろう。

この手の話は東野圭吾氏や歌野昌午氏も書いていて
決して目新しくはないのだけれど、それでも心を大きく揺さぶられるのは
偏に著者の力量所以なのだろうと思う。

面白かったです。

ただ、本作を読んだ私の知人も言っていたことだけど、
鈴木誠さん、どうやって免許取ったの?
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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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