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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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〝末裔〟に危機が迫ったとき、大阪国は立ち上がる。



このことは誰も知らない――四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、
東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。
秘密の扉が開くとき、大阪が全停止する!?
万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。

***

大阪というところは何だかちょっとニンゲンが同じ日本の中でも(よくも悪くも)浮いてるなあ、
と大阪出身の母と話すことがよくあり、なのでふざけて大阪のことを〝大阪国〟と呼んだり
していたのですが(2chなんかでも、(どちらかというと揶揄を込めてだけど)同じように呼ばれたり
してる)、その〝大阪国〟がじゃあ本当にあったとしたらどうする?という、本作はそんな感じの物語。
しかもたった一人の人間を守るためだけに大阪国だけでひっそりと一致団結し、
それ以外には微塵も情報を漏らさない。ここまでくるともうSF。ファンタジー。
でも、著者の万城目氏はかなり筆力の高い作家さんなので、そんな設定にも違和感なく
最初から最後まで現実味たっぷりに読むことができた。

〝プリンセス・トヨトミ〟と〝国民〟たちが絡むエピソードなんかも
ちょっとぐらいは盛り込んでほしかったけど、
著者の狙い上それはやっぱり無理かな(敢えて両者を接触させない、というのがキモだと思うので)。

キャラクターは、松平・鳥居・旭のトリオが最高にいい味出しててよかった(旭のルックスを
要所要所で、しかもほぼ同じ単語で褒めているのがちょっと鼻についたけど←ああもうわかったよ、
みたいな)。
茶子と大輔の関係性もいい。どっちが守る役で守られる役なのかよくわからない感じが。

何だかんだでおすすめです。
今後映画も借りてきて観てみよっと。
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永遠に癒えることのない痛みを。



ドンデン返しのラストのあまりの絶望に背筋も凍る、
推理作家協会賞短編部門候補作「オムライス」他、
冷静沈着だが重い過去を持つ刑事夏目が謎を解決する7短編。

★収録作品★

 オムライス
 黒い履歴
 ハートレス
 傷痕
 プライド
 休日
 刑事のまなざし

***

〝オムライス〟〝黒い履歴〟〝ハートレス〟はそれぞれ雑誌で読んだことがあり、
そのときはごく普通の短編として面白く読んでいたのですが、
本作を手にとって初めてこの物語が連作短編として繋がっていることに気付かされた。
それは、自分の子供をハンマーで殴られ植物状態に追い込んだ犯人を捕らえるために
人知れず静かに奔走する主人公・夏目の物語。
徐々に明らかになっていく事件の詳細と犯人像に、夢中になりページを繰る手が止まらず
一気に読み切ってしまった。
書き下ろしである最終話は、かなりあと味が悪いものの社会派の香り漂う秀作として
非常に興味深く読めた(それにしても希という少女はあまりに不遇に感じたけど。
両親共に殺人犯とは。。。)。

個人的な意見としてはタイトルがあんまりよくないと思う。
もうちょっとインパクトのあるタイトルを冠せばもっと注目された作品だろうに。

おすすめです。
薬丸氏は今後台頭するだろう小説家として以前から眼を付けているので
是非もっと活躍してほしい。
新作を楽しみに待つことにしよう。
永遠になるまで。



密室に女優の死体――自他殺不明、凶器不明、動機不明。
ミステリをこよなく愛し、並外れた“空想”力を持つ大学生・雨崎瑠雫と、
彼女に片思いの宇都木勇真は謎を解くべく、行動を開始した。
左遷された訳ありの刑事、女優の夫、各々の思惑が交錯する中、さらなる事件が…
史上最兇の密室に隠された真相とは?
進化する本格ミステリ。

***

。。。。。。。。。。。。
これ、本当にプロの書いたもの?
読んでいてあくび連発だった。
文章はうまくない、物語の流れも不自然、ストーリーにも興味を惹かれない、
挙げ句終盤のどんでん返しに次ぐどんでん返しも蛇足すぎて面白いどころか疲れる。
今まで何の説明も伏線もなかったものが突然ぽんと出てきたりもするし。

同氏のデビュー作〝キョウカンカク〟は図書館で借りたものを読後
改めて購入してしまったほど面白かったのに。。。
明らかにクオリティが落ちてる。
デビューしたてでまだ実力が不安定なのかも知れないけど、にしても今回はひどかった。

才能はあるひとだと思うので、次回作に期待。
あ、ちなみに、〝キョウカンカク〟シリーズを読んでから本作を読むと
ちょっとだけ楽しいです(ニヤリとできます)。
あまりにしずかな、それが僕たちの革命。



少年が小説家になった理由。
コンビニ強盗との奇妙な共同作業。
ふたりぼっちの文芸部員の青くてイタいやりとり。
謎の鍵にあう鍵穴をさがす冒険。
ふと迷いこんだ子どもたちだけの夜の王国。雪の上の靴跡からはじまる不思議な出会い。
集英社WEB文芸「RENZABURO」の人気企画「オツイチ小説再生工場」から生まれた6つの物語。

★収録作品★

 小説のつくり方
 コンビニ日和!
 青春絶縁体
 ワンダーランド
 王国の旗
 ホワイト・ステップ

***

一般のひとからの応募プロットから、乙一氏が気に入ったものを選んで
リメイクした短編集。
乙一+一般公募のプロット=化学反応で傑作が!? と期待して読み進めたものの、
どうにもプロットが乙一氏の個性を消してしまっているような感じがした。
融合の面白さよりも、乖離の違和感だけが目立ったというか。

唯一乙一氏らしかった最終話〝ホワイト・ステップ〟も、
よくよく考えればまんま同氏の著作〝ZOO〟の〝SO-far そ・ふぁー〟だし。

それなりに読めるのですが、おすすめするほどではないかな。
あーはやく完全オリジナルのミステリを書いてくれ乙一さん。
「バッカじゃないの?」



静岡県浜松市で、人間が生きたまま次々と焼き殺される、残虐な連続放火殺人事件が起こる。
被害者は、元ヤクザ、詐欺師、OL、主婦、歯科医など様々で、何の手がかりもない。
それなのに、県警からやってきた高慢ちきな美人刑事・黒井マヤは、
殺人現場で「死体に萌える」ばかりで、やる気ゼロ。
相棒の代官山脩介は、そんなマヤに振り回されながらも、被害者の間で受け渡される
「悪意のバトン」の存在に気づくが――。

***

ふざけたタイトルですが中身はしっかりとしたミステリ。

デビュー作〝死亡フラグが立ちました!〟よりずっと面白く読めた。
ページを繰る手が止まらず一気読み。
かなりハイレベルな構成力で、10人以上もの人間が続々と殺されていくストーリーを
破綻なく、かつスピーディーに書き切っていてただもう圧巻のひと言。

ただ少し残念だったのは、タイトルにまでなっているどS刑事・マヤが
そこまでドSじゃなかったこと。
彼女はドSというか毒舌変態娘、と呼んだほうがしっくりくる気がする。
(プラス、ちょっとツンデレ)

あと、中ボスが簡単に読めてしまうこと。
そして、ラスボスがただ普通に物語を追っていくだけじゃ絶対に読めない人物であること。
そこらへんのバランスがもうちょっとどうにかなればよかったのになあというのが正直な感想。

でも何だかんだ言って面白かったです。
おすすめ。



ちなみに本作が面白かったひとは、貫井徳郎氏の〝乱反射〟及び
映画〝バタフライ・エフェクト〟がおすすめ。

更にちなみに、著者の七尾氏は同じ小説教室の先輩なのですが、
気後れしてまだ一度も喋ったことがありません。。。
いつかきっと。
ピアノの響きは導く。



シューマンの音楽は、甘美で、鮮烈で、豊かで、そして、血なまぐさい――。

シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。
彼に焦がれる音大受験生の「わたし」。
卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。
現場に居合わせた修人はその後、ピアニストとして致命的な怪我を指に負い、
事件は未解決のまま30余年の年月が流れる。
そんなある日「わたし」の元に、修人が外国でシューマンを弾いていたという
「ありえない」噂が伝わる。
修人の指にいったいなにが起きたのか――。
野間文学賞受賞後初の鮮やかな手さばきで奏でる書き下ろし長編小説。

***

以前一度読んだときには、中盤まで続くわけのわからない音楽うんちくに辟易して
(マジで、クラシックからPOPSまで、音楽をずっと演ってきた自分でさえもちんぷんかんぷん)
途中で投げ出してしまった本作。
でも中間地点を抜けると一気に読みやすくなるとの某サイトのレビューに力を得て
今回読破した次第。

この著者はちょっと文章がくどいところがあって、同じ言い回しの反復とかも
正直鬱陶しかったんだけど、そこに眼を瞑ればまあ面白かったかな。
ただ、物語半ばの、天才少年・修人がピアノを弾く見せ場のシーンの描写はあまりうまいとは思えず
「音楽小説なのに。。。」とちょっと肩透かしだった。
(田中啓文氏や乾ルカさんはそこらへんかーなーりうまい。興味のあるひとは是非
〝永見緋太郎シリーズ〟及び〝四龍海城〟を)

純文学とミステリの融合作品としてはクオリティが高いと思うけど。
そして、音楽家であるにも関わらず〝音楽〟がいつしか聴こえなくなっていく恐怖の描写。
そこは、さすが芥川賞受賞作家だなと思った。

まあおすすめです。



おまけ:
BGMにはこちらをどうぞ↓

現実とも非現実ともつかない世界を。



植物状態になった患者と、コミュニケートするための医療器具
「SCインターフェース」が開発された日本。
少女漫画家の淳美は、自殺未遂を起こして数年間意識不明に陥っている弟の浩市と
対話を続けている。
「なぜ自殺を図ったのか」という淳美の問いかけに、浩市は答えることなく月日は過ぎていた。
そんなある日、謎の女性からかかってきた電話によって、
淳美の周囲で不可思議な出来事が起こりはじめる…。
『このミステリーがすごい!』大賞第9回(2011年)大賞受賞作。

***

ミステリというよりはSF。
ここまでの設定を考え付いた独自性は本当にすごいと思うけど、
読み物として面白いかと言われれば若干首を捻らざるを得ない。
序盤はぐいぐい引き込まれたものの、物語が進むにつれ
どこまでが現実でどこからか非現実かがわからなくなってくるので(とはいってもそれが
著者の狙いなのですが)、作中で大きな出来事があっても「どうせ非現実なんでしょ」と
薄いリアクションで読んでいる自分がいた。
主人公の弟が海で溺れたときの回想シーンもしつこくてちょっと辟易(〝赤い竹竿〟って単語、
作中で何度見たことか)。
半ばまで読んだあたりでオチはだいたい予想がつくし。
〝このミステリーがすごい!〟大賞の受賞作なのだから、もうちょっとミステリしてても
よかったんじゃないかと思う。

文章力はさすがに大賞受賞に堪えるものでしたが。

ミステリとして読まなければまあおすすめです。

ちなみに本作が面白かったひとは、〝クラインの壷〟(岡嶋二人)と映画〝バニラ・スカイ〟も
おすすめです。


おまけ:
マグリット〝光の帝国〟。
hikarino.jpg












ハグしよう。



平成の家族小説シリーズ第2弾!
完璧すぎる妻のおかげで帰宅拒否症になった夫。
両親が離婚するらしいと気づいてしまった娘。
里帰りのしきたりに戸惑う新婚夫婦。
誰の家にもきっとある、ささやかだけれど悩ましい6つのドラマ。

★収録作品★

 甘い生活?
 ハズバンド
 絵里のエイプリル
 夫とUFO
 里帰り
 妻とマラソン

***

まだ独身の自分でも登場人物たち(主に夫婦)の気持ちが手に取るようにわかった。
まるで自分のことのようにのめり込み、最後まで非常に楽しく読めた。
ちょっと尻切れトンボで終わっている話も数話あるのだけど、全体的には高評価。
当たり前のように過ぎていく日々、当たり前のようにそばにいる家族。
そんな「当たり前」がさり気なくもリアルに描かれているからこそ、
登場人物たちが遭う様々なトラブル、そしてそれを乗り越えた感動、家族への暖かい思いまでもが
臨場感たっぷりに伝わってくる。
とてもいい物語を読ませてもらった。

おすすめです。

余談だけど最後の一話、あれ絶対著者自身がモデルなんだろうなー。
それぞれの時間の流れがここにある。



信州にある「24時間、365日対応」の病院では、今日も奇蹟が起きる。
「一止とハルさん」の新たな物語。

***

神様のカルテ〟シリーズ第二段。

いやー相変わらず面白い。
医者になる頭脳と小説家としての才能、天は二物を与えるもんなんだなあ(←著者のこと)。
前作より登場人物の魅力・小説としての面白さがレベルアップしているように感じた。
主人公・栗原一止(いちと)の奥さん・ハル(愛すべき癒しキャラ)の登場頻度が増えていたのも
非常によかった。
本当に夏川氏は魅力ある人物やエピソードを書くのがうまいなと思う。
夏川氏の書いた本シリーズじゃない物語も読んでみたいけど、それでもやっぱり
この〝神様のカルテ〟シリーズも末永く続けていってほしい。

今笑って泣ける小説といえば本作をおいてない。
それぐらいおすすめです。

映画、観に行こうかなー。
静かな世界へ。



時を隔てた二つの殺人。謎は解け、愛だけがそこに残った――。
生活のため手話通訳士になった荒井は、刑事事件に問われたろう者の法廷通訳を引き受け、
そこで運命の女性・手塚瑠美に出会う。
第十八回松本清張賞最終候補作に加筆修正。感動の社会派ミステリー。

***

何かあらすじ↑が実際の内容と違う気がするんだけど。。。皆さん注意してください。
こんなラブストーリーまがいの物語じゃないです。
もっとヒューマンな話です。

感想を言うなら、ストーリーそのものより、作中に出てくる手話に関しての薀蓄に
「へえーそうなんだー」と感心してしまう、そんな物語だった。
というか本作、松本清張賞よりも江戸川乱歩賞向けだと思ったのは自分だけだろうか。
乱歩賞好きなひとは読めば絶対楽しめると思う。

自分は聞こえるのに両親は耳が聞こえない、そんな子供のことを
〝コーダ〟というそうですが、私にはまさにコーダの知人がいるので、
その知人に本作を勧めてみたいと強く思った。
コーダとして生きる苦しみが、本作を読むことによって少しでも解消すればいいなと。

聞こえないつらさより聞こえることによるつらさを描き出した、
本作は斬新な物語だと思う。

おすすめです。
因みに本作を手にとったひとは、必ずあとがきを読みましょう。
物語に深みを感じること請け合いです。
プロフィール
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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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