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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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でも、誰かに会いたかった。



亡くなった父が残したもの……喫茶店、星型の天窓、絆、そして、奇跡。
三男三女母ひとり。ささやかな一家が出会う、ひと夏の奇跡の物語。
家族が"家族を卒業する"とき、父の残した奇跡が降り注ぐ……。

***

よすぎて著者に惚れそうになった。
物語を読んでここまでじんわりと温かい気持ちになったこと、
涙が出そうになったことは本当に久しぶりだ。
著者がまだ大学生ということもあって文章は若干若書きだけど、
それさえも今現在の自分を小説に刻み付けておこうと著者がわざとやっているように感じる。

本作の構成は、琴美、光彦、凌馬、小春、るり、真歩の六人のきょうだいのモノローグが六編という
作りなのだけど、それぞれのキャラがしっかり立っていて、
デビュー作〝桐島、部活やめるってよ〟でもそうだったけど
こういう構成の物語を書かせたら右に出る者はいないなと感心させられた。
それぞれの人生を、彼らの今は亡き父親を軸に描き出す筆力にも脱帽。

文中に、三人称にしてはおかしいところがところどころ散見されるのだけど、
読み終わったあと、あれはもしかしたら主人公たちの父親の視点だったのかも知れないなと思って
しみじみした気持ちになった。

そしてラスト、琴美の章の彼女の夫の温かな采配。
感動です。私もこんな夫がほしい。

非常におすすめです。
是非一読を。
(私は時間が経ったら二読も三読もしちゃいそうだな。。。)
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「乾杯しましょう。
私たちの明るい未来に」




犯罪という名の、人生の好機。
大金入りのバッグの忘れ物を預かった男。
暴力団への借金に苦しむ刑事。
DVをはたらく夫に殺意を抱くデリヘル主婦──
其々が複雑に絡み合うクライム・ミステリー!

***

さしてインパクトのないエピソードの連なりに過ぎない物語が
終盤で一挙に怒涛の収束を見せる。
そこからはもう終始唸らされっぱなしだった。
短編集〝あげくの果て〟で著者の大ファンになった私ですが、
本作も構成の妙に感嘆。こういうのを書かせたら本当にうまい作家さんだと思う。
ただ、内容が少し地味なのと狙って書いているのだろうギャグや言い回しがサムいのが
気になるといえば気になった。

〝あげくの果て〟ほどじゃないけれどなかなかの佳作。
小粒だけどきっちりとまとまったミステリを読みたいひとにおすすめ。

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「ご来店ありがとうございます」



ご不要になったあなたの能力お取り替えします。北の街の路地裏に、その店はあった――。
ハンサムでもないのに異常に女にもてる、就職した会社が必ずつぶれる。
古い自分を脱ぎ捨てるため、「ばくりや」を訪れた者たちの運命は。

★収録作品★

 逃げて、逃げた先に
 雨が落ちてくる
 みんな、あいのせい
 狙いどおりには
 さよなら、ギューション
 ついてなくもない
 きりの良いところで

***

自分の能力と他人の能力を取り替えてくれる
〝ばくり(北海道の方言で『交換する』の意)屋〟。
ホラーありミステリあり涙あり笑いありの技巧さまざまな七編で
たっぷり満足出来る内容になっています。
最終話のラストの締め方もあっと驚く衝撃仕様でうまい。
〝世にも奇妙な物語〟好きなら絶対にハマること請け合い。
デビュー当時から実力はすごかったけど、
今回のこの作品で特に著者の成長を感じた。
直木賞受賞も遠い日のことではない気がする。

非常におすすめです。
「『やーめた』って、一緒に、言いたくない?」



セックスが辛く、もしかしたら自分は男なのではと思い、男装をするフリーターの里帆。
そんな曖昧な里帆を責める椿は、暗闇でも日焼け止めを欠かさず肉体を丁寧にケアする。
二人の感覚すら共有できない知佳子は、生身の男性と寝ても
人間としての肉体感覚が持てないでいた――。
十九歳の里帆と二人の“アラサー”女性。三人が乗る「ハコブネ」は、
セクシャリティーという海を漂流する。

***

人間誰しも
「今自分が見て、聞いて、触れている世界は、ほかの皆とは違う世界なんじゃないか?
自分は自分の、自分だけの、妄想の世界を生きてるんじゃないか?」
と思うものですが(えっ思わない?)、
それを見事描き出してくれているのが本作。
自分の中にある何とも言えない感覚を代弁してくれている著者の言葉(文章)に、
終始心地よく浸ることができた。

この村田さんという作家さんは、人間が己の内側に抱え込んでいる
うまく言い表せないもやもやとしたものを文章にして物語の中に組み込むのが非常にうまい。
彼女の作品に、他人に大っぴらには言えない自分の考えと共通するものを読み取って
よき理解者に出会えたように感じている読者は意外と多いんじゃないかと思う。

個人的には、里帆の求めているセックスの方法は
既に知佳子が実践しているような気がしたんだけどほかの読者はどう思ってるんだろう。
気になるところだ。

それにしても、ふたりの主人公・知佳子&里帆の間に
椿というキャラクターを挟んだところはうまいと思う。
自分に〝女性〟を見出せなくて悩む里帆、自分に〝人間〟を見出せなくて悩む知佳子、
その真ん中で当たり前に〝女性〟も〝人間〟も持っているんだものな、彼女は。
(それでも彼女は彼女なりに苦しい思いを抱えているわけだけど)
非常にバランスのいい人物配置だと思った。

おすすめです。
せめてもの償いとして。



市役所の戸籍係をしている夫と美人ではないが清楚で控えめな妻。
平和で波風の立たない人生をこよなく愛する夫婦の前に、突然現れた妻の学生時代の女友達。
女流評価家として活躍するスキャンダラスな女の登場が平穏な家庭をいつのまにか
破滅的状況に追い込んでいく…。
推理作家協会賞受賞の表題作。
ありふれた日常に潜む愛憎が殺意を纒ってあなたの背後に忍び寄る恐怖の瞬間。
傑作サスペンス6編。

★収録作品★

 菩薩のような女
 転落
 男喰いの女
 妻の女友達
 間違った死に場所
 セ・フィニ――終幕

***

昔よりはましになったものの、未だに
「女性作家の書くミステリはつまらない」
という偏見を持っている私の常識を見事覆してくれた短編集。
面白くて一気読みしてしまった。
個人的に好きなのは表題作〝妻の女友達〟と〝間違った死に場所〟。
特に後者は中島らもさんなんかが書きそうな、そして女性作家が書いたとは思えないような
ぶっとんだ話で(でも巧みに伏線が張られているため話の整合性はしっかりしてる)、
凄惨な結末にも関わらずむしろ爽快に感じてしまった。
表題作のほうは、読み終えたあと、どす黒いいやーな感情が湧き出してきた。
いやー、女ってほんとただでは転ばんわ。。。コワイコワイ

非常におすすめです。
真の友とは。



親友が大事なものをすべて奪っていく――。
父を殺された14歳の冬。容疑者は親友の父親だった。
刑事による警官殺し。若者二人の人生は激変し、二度と交差しないはずだった。
さらなる事件が起きるまでは。

***

鏑木氏の作品は読むたびに「つまらなかった。。。」と読んだことを後悔するのだけど
あらすじが面白そうなせいで「次こそは当たりかも」とまた手にとってしまう、という
そんな感じなのですが、
本作も例にもれずつまらなかった。。。
(〝親友が、大事なものを、すべて奪っていく〟というコピーに見事に騙された)

タイトルが〝真友〟なのに主要登場人物であるふたりの青年の心の交流なんか
ほとんど描かれてないし(ラストにサムい殴り合いするだけ。いつの時代の青春ドラマだ)
ずっと行方不明だったひとがあっさり出てきたりして拍子抜けだし
ミスリードは拙いし(何が『逆に』だ←意味は読めばわかります)
真相も「へえ、そうだったんだ」で終わるようなものだし
第一部はまあまあ面白いけど第二部の捜査パートが壊滅的につまらなくて何度も寝かけたし
ミステリとしてもヒューマンストーリーとしても失格だと思う。

おすすめしません。
鏑木氏の小説は今度なるべく手にとらないようにしよう。。。
もう少しで届く。



老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」
敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。
逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。
絶望と希望を照らす作家・道尾秀介がおくる、心に染みる人間ドラマ!

***

文章はあまりうまくないけれど読者に伝えるべき言葉、読者に響く言葉を
選びとって紡ぐのがうまい作家さんだと思っていたのだけど、
今回はその表現力が失速。文章に魅力を感じられず物語に入り込めない自分がいた。
純文学テイストでそれなりの魅力はあるのだけど、それだけに本物の純文学と比べてしまい
見劣りを感じてしまったのかも知れない。
著者が言いたいことは読み取れたけれど、それが作中に十二分に表現しきれてしない感じがした。
みのむしのたとえもありがちだし。
あとは物語展開のベタさがなかったらな。。。

それなりにおすすめです。
「このくそだわけええっ」



22万部突破、俳優・妻夫木聡さんも絶賛『さよならドビュッシー』に登場した
玄太郎おじいちゃんが主人公になって大活躍! 
脳梗塞のため車椅子に乗った大手不動産会社社長の香月玄太郎。
彼が所有する土地の家から死体が見つかった。完全密室の状況であり、
捜査は暗礁に乗り上げてしまう。警察が頼りにならないと感じた玄太郎は、
介護者のみち子を巻き込んで犯人探しに乗り出す! 
ほか、高齢者ばかりを狙う通り魔の謎や、銀行強盗犯との対決など、
要介護探偵の名推理が冴え渡る連作短編集。

★収録作品★

 要介護探偵の冒険
 要介護探偵の生還  
 要介護探偵の快走(チェイス)
 要介護探偵と四つの著名
 要介護探偵最後の挨拶

***

最初はウザいおじいちゃんのことが読み進めるごとに好きになっていく。
若干ミステリ部分が弱いけど(そして主人公が博識すぎで推理力ありすぎだけど)、
なかなかの秀作だった。
特に〝要介護探偵と四つの署名〟はラストが爽快で思わず笑みが浮かんでしまった。
内容をやたら政治に絡めたり(主人公の玄太郎翁が権力者だから仕方ないのかも知れないけど)
難しい表現を連発したりしなければもっと読みやすくなっただろうと個人的には思う。

それにしても、著者のデビュー作〝さよならドビュッシー〟を読んだあとに本作を読むと
〝要介護探偵最後の挨拶〟ってタイトルやラスト数行がひどく切なく思えてしまう。。。
本作を手に取ろうとしている方で〝さよなら~〟を未読のひとは、是非読んでおいてほしい。
(もしくは本作を読んだあと、必ず〝さよなら~〟も読んでほしい)

おすすめです。
漆黒の闇に向かって。



人生をやり直したかったのだ。
ネットカフェ難民相沢仁は、闇の提示板で募った仲間と軽井沢の金持ちの屋敷に押し入った。
だが物色中、仁は何者かに頭を殴られて昏倒。ようやく独り逃げた彼は報道で、屋敷が全焼し、
三人の他殺体が発見されたと知る。
家人には危害を加えないはずが、おれは仲間にはめられた。
三人殺しでは死刑は確実。正体も知らぬ仲間を、仁は自力で見つけねばならなくなった…。

***

ミステリとしては薄味だし、構成も全体的にちょっとごちゃついていて
まとまりが悪かったなというのが一番の印象。
登場人物も酒の名前で呼び合っていたりして何かダサいし(コナンじゃあるまいし)
主人公を含めた登場人物たちにもまったく魅力を感じない。
同じ設定でも東野圭吾氏あたりが書けば面白くなったんじゃないかと思う。
それとこれは個人的意見だけど、
〝悪いことをすれば結局最後には泣きを見るんだよ~〟というテーマ性が
説教くさくてちょっと鼻白んだ。
勧善懲悪は嫌いじゃないけど、教訓くささをもっと消してラストを〆てほしかった。
あと犯人の設定をもっと練ってほしかった。いきなり「実はこうだったんですよ~」って
ぽんと犯人を出されてもこっちは「あ、はあ、そうでしたか。。。」ぐらいのリアクションしか出来ない。
「ええっ!? こいつが犯人だったの!?!?」ぐらいのびっくりを読者は求めているのだから
その期待に応えてもっと犯人の背景について書き込むなりところどころに伏線を張るなり
してほしかったと思う。

まあ楽しめましたが。
頭使わないでミステリ読みたいひとにはおすすめ。
「失礼ながらお嬢様――お嬢様はアホでいらっしゃいますか」



「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」
令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦。ユーモアたっぷりの本格ミステリ。

★収録作品★

 殺人現場では靴をお脱ぎください
 殺しのワインはいかがでしょう
 綺麗な薔薇には殺意がございます
 花嫁は密室の中でございます
 二股にはお気をつけください
 死者からの伝言をどうぞ

***

Amazonでは酷評されているみたいだけど、どうしてだろうと首をひねってしまう。
個人的にはよかった。毎晩寝る前に一話ずつ読むのが楽しみな習慣になっていた。

確かに本屋大賞を獲るには深みというか重厚さが足りないとは思うけど、
あと犯人の動機がどれもとってつけたようで読者が推理しようのない話が多いとも思うけど、
ポップな世界観は読んでいて非常に面白かった。
短編が一本調子にならないように、主人公コンビがディナーのあとに謎を解くだけだったのが
事件現場まで出向いていったりするのもちゃんと味つけしているなあと著者の細やかな
気配りを感じてよかった。

金持ちばかりが出てくるのにはちょっとくどさを感じたけど。

個人的にはおすすめです。
最近出た2を読むのも楽しみ。
プロフィール
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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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