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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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その日、“魔眼の匣"を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は
予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に
「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。
外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた直後、予言が成就するがごとく一人が死に、
閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。
さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。
ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。

***

「エイリアン」は3で、「ターミネーター」は2で
続編作るのやめときゃよかったのにと今でも思うんですよね。
それでいけば本作は前回のデビュー作でやめときゃよかったのにと
思わずにはいられない。あれだけ綺麗にまとまってたのに、本作が出たことで
台無し。あの一作で完結していたからこそ「いい終わり方だな」と
思えたのに。出版社に「デビュー作があれだけ話題になったのだから、是非
続編を」とでも頼まれたんでしょうか。

そしてデビュー作と比べるとどうしても地味。盛り上がりがなく
淡々と(というかのろのろと)物語が進行していく。
伏線にも不要なものが多いし、若干とっ散らかった印象を受ける。
作者が好きなのか知らないけど文章がラノベっぽいのも薄っぺらく感じて
マイナス。「壁ドンなんたらかんたら」が出てきたときは
言っちゃなんだけど寒気がした。

何より主人公と探偵役に魅力がない。
探偵役の女性は中途半端な萌えキャラという感じで、見た目や仕草も
ラノベ系ミステリにありがちな「考え事をするときに特殊な萌え動作をする
超美少女」という手垢のついた設定。
これなら天祢涼氏の描く探偵「音宮美夜」のほうがまだ魅力的に思える。
そして前作から恒例になっている「登場人物の名前を覚えやすくするための
紹介」がまた出てくるのはまだしも、主人公の名前が一番覚えられないって
いうことが既に彼に魅力がないことを裏付けている。

犯人の動機も、驚きも共感も出来なかった。
無理あるだろ、小学生じゃないんだから、と。
そもそも本当に予言を信じてるなら、「五人目は何があっても絶対に
死なないはず」と考えて謎解きの直後誰か刺してるだろ。
だって四人以上は死なないって予言者が言ってるんだから。

そもそも予言というのは周囲に知られた時点で運命が変わっていくものだと
思うのに、登場人物全員がその点に言及しないのも不自然。
不自然といえば、3分の2ほど読み進めたところで
ちょっと漢字が読めるひとなら「あれ?」となる描写があるのに、
探偵役がその点について突っ込むのが遅過ぎることも気になった。
しかもそのいかにも「伏線ですよ」という描写に大した意味はなかったのも
肩透かしを食った気分になった。

そしてラスト1ページ。
「はいシリーズ三作目も出ますよー」といういかにもな宣伝の一文で
終わりますが、本作は本作でひとつの独立した物語なのだから、
それに合った余韻の残る終わり方にするべきだった。

丁寧にプロットを考える作家さんだとは思いますが、
今後彼の作品を読むことはもうないかな。
期待外れでした。
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警察を脅かす難事件――少女探偵は、二転三転する真実を見抜けるか!?

恩人の元警官が毒殺され、第一発見者となった道明寺一路巡査。
仇を討とうとする彼の前に、銀髪の美少女・音宮美夜が現れる。
音や声に色が視える共感覚を持つ彼女は、警察の手には負えない
難事件専門の探偵・ニュクスだった。
事件を追う二人に、犯人を名乗る人物は推理ゲームを挑み、
新たな被害者が生まれてしまう!
二転三転する真実の果て、一路が目にする衝撃の結末とは……!?

***

「キョウカンカク」「闇ツキチルドレン」に続く、
音宮美夜シリーズ第三弾です。
ほぼラノベなので(とはいってもそこまで文章は軽くない)あっという間に読める。

第一作、第二作に比べるとインパクトは薄くなってしまった印象ですが、
ライトミステリとして割と楽しんで読むことが出来た。
「ちょっとその理屈は無理があるだろ」と突っ込むこともしばしばだったし、
展開が読めてしまうところも多々あったりはしましたが。
特に連続殺人の真相はあまり納得いかず。
同著者の「希望が死んだ夜に」を読んだあとだっただけに
トリックやテーマの稚拙さが結構気になった。
あと重箱の隅をつつくようだけど、探偵・美夜が考え事をするときのポーズが
作中に何度も同じ表現で出てきて、「もうちょっと表現変えればいいのに」と
そのワンパターンさにも引っ掛かりを感じた。

ラストを読む限りまだまだ本作はシリーズ物として続いていきそうです。
ミステリ初心者にはおすすめかな。

あと、著者が坂本美雨の「Phantom Girl's First Love」が大好きだということは
よくわかりました。



「Phantom Girl's First Love」
そして、おそらく、それでいい。



美術教師の美穂には、有名人になった教え子がいる。
彼の名は高輪佑。国民的アイドルグループの一員だ。
しかし、美穂が覚えている小学校時代の彼は、おとなしくて地味な生徒だった――
ある特別な思い出を除いて。今日、TV番組の収録で佑が美穂の働く小学校を訪れる。
久しぶりの再会が彼女にもたらすものとは。

★収録作品★

 ナベちゃんのヨメ
 パッとしない子
 ママ・はは
 早穂とゆかり

***

タイトル通り、ふたりの人間がどこか噛み合わない過去の記憶について
会話でやり取りする、ということがテーマになった短編集。
私としては最初の二編がとても面白く読むことが出来た。

「ナベちゃんのヨメ」は、女子たちに仲間としては受け容れられるけれど
異性としては見てもらえないナベちゃんがその仲間たちに婚約者を紹介するという
話。婚約者のウザさ、怖さに読んでいる間はイラつくものの、
ラストはそうか、これでいいんだなと思わされるという、
才能ある作家さんに特有の「読者の価値観を覆す」という手法に見事にやられた。
「受け容れられるということを経験したことがない」人間の切なさを
これでもかと見せつけられる思いがした。

「パッとしない子」は、私自身が「先生」と呼ばれる職業に就いているぶん余計に
主人公に向けてかつての教え子・佑が放つ言葉の一つひとつが
抉るように胸に響いた。教え子に、いやそうじゃなくても誰かに
こんな言葉を言われたら、私だったら高い確率で当分の間寝込む。
そして一生その言われた言葉に呪縛されて二度と心から笑うことは出来ないと思う。
恐ろしい話だった。
やっぱり人間にとって一番怖いのは、肉体的に傷付けられることじゃなく、
言葉という凶器で精神を殺されることなんだなと改めて思った。

あとの二編はまあまあといったところ。
けれど最近「パッとしない」なと思っていた辻村さんの作品を見直す
きっかけになった作品だった。

おすすめです。


14歳の女子中学生が、同級生を殺害した容疑で逮捕された。
少女は犯行を認めたけれど、動機は語らない。果たして真相は…。
メフィスト賞作家が描く、社会派青春ミステリ。

***

この著者のデビュー作「キョウカンカク」は
最初図書館で借りて読み、気に入って手元に置いておきたくなって
購入した過去がありますが、その当時は正直
「面白いけどラノベっぽいな。何だかなあ」と思っていました。
そしてかなり久しぶりに著作を読み。。。

ハマった。

警察の捜査本部の会議である刑事が「携帯の操作をミスったものと思われます」
とか発言したり(「ミスった」とか普通言わないので)、
比喩表現がやや陳腐だったり、同じ表現が何度も繰り返し出てきたりと
文章の稚拙さは少しだけ気になったものの、それを補って余りある筆力で
一気に読ませる。先が気になって徹夜で読んでしまいました。
デビュー作はワントリックで引っ張る感じだったけど、本作はミステリとしての
構成がしっかりしていて著者の安定した実力を感じさせる。
また、著者がこの物語を通して訴えたいことがしっかりと伝わってくるので、
単なる娯楽作品以上のものに仕上がっている。
トリックはちょっと手垢が付いたものも出てくるけれど、ラストである人物が
激高して放った台詞には、まるで自分が言われたかのようなショックを受けた。
それだけ物語世界に入り込んでいたんでしょう。
括りとしては「社会派ミステリ」に入るのかも知れないけれど、そのへんの
著者の主張が激しくて物語の進行を邪魔するようなものではなく、
エンタメとして非常に面白く書かれているので、テーマがすんなり心に入ってくる。
「深みのあるミステリ」としてとても楽しませてもらった。

ちなみに本作、某ミステリマニアさんがツイッターでオススメしていたので
興味がわいて読んでみたのですが、そのマニアさんに感謝したい。
非常にお勧めです。
絶望を描いた物語ではあるけれど、決してそれだけではないので。


婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な"恋愛"小説。

***

ネタバレ書評です。

婚活で出会った男女の話だけど、要するに
「運よく好みの男と出会えて幸せな結婚が出来ました」
というだけの物語。

二部構成になっている本作。
一部は失踪した婚約者を探す主人公・架が色々なひとと会話するだけで
数百ページ費やします。
会話だけで物語を進めていく、登場人物の心理描写をするというのは
この著者の十八番なのですが、さすがに食傷気味に。
こっちがはっとするような言葉の表現やひとの心を描くのはうまいっちゃあ
うまいし、会話なしで地の文だけで物語を書かせるとつまらない作家さんなので
これもひとつのスタイルだと受け入れるべきなのですが、
デビュー当時からほぼこのスタンスだと「少しは変わればいいのに」と
思ってしまう。

二部の真実視点での物語も、上述のとおり地の文での展開が主なので
読んでて退屈だった。「青空と逃げる」のキャラが出てきたけど、あれは私は
つまらなくて途中で投げ出したので「ああ、そういえばこんなひとたち出てきたな」
としか思わず。
真実の「キスしたくないひととは結婚出来ない」という言葉に、
ある昔のギャグ漫画の「人間性とはセックス出来ないわ」を思い出した。
確かに、人間性がたとえ素晴らしかろうと「オス」として見れなかったら
恋愛・結婚は無理だよなあとそこは納得した。
でも、そういう「生理的に受け付けなかったら無理」という当たり前のことを
著者が「傲慢」と書いてしまうのはどうなんだろうなあと。

タイトルにもなっている「傲慢」と「善良」という言葉が
作中随所に出てきますが、そこは敢えてその単語を使わず、読者に
「ああ、これが人間の傲慢・善良なところなんだろうな」と考えさせる形をとっても
よかったんじゃないかと思う。読者の想像力を奪ってしまうし、何よりちょっと
単純過ぎる気がしたので。

不思議に思った点が三つ。
悪意の塊みたいな女友達たちと、何故架は親しいのか。
そして一部では人間に対する鋭い洞察力を見せた架を、ラストで真実が
鈍感扱いしているのは何故か。
架は一体どういう心境の変化をたどって、嘘吐いて失踪までした真実のことを
改めて本気で好きになったのか。
納得いく描写がなく、正直詰めが甘いと思った。

ラストは二部である場所が出てきた時点で読めるし、
何だか三流少女漫画みたいで興醒め。
この著者はもっと書けるひとだと思っていたけれど、やっぱり初期ほどのものは
もう書けないんだなとがっかりした。
親子の確執とか田舎コンプレックスをテーマにするのもいい加減もういいよと
思ったし。辻村さんが過去にそういうことがあったんだろうか。

今の時代、出会いが少なくて婚活してる社会人は多いと思うけど、
そういうひとたちからやる気を奪いかねない話だなと思ってしまった。

あまりおすすめしません。


麻美の彼氏の富田がスマホを落としたことが、すべての始まりだった。
拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。
麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。
セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して
麻美を陥れる狂気へと変わっていく。
いっぽう、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され……。

***

毒舌レビューになります。

近年稀にみるクソ小説だった。
図書館で借りて読んだけど、買わなくて本当によかった。
文章のあまりの下手さに山田悠介を久々に思い出した。
誰目線なのかわからない視点の混乱。プロと名乗るべきじゃない文法ミスの連発。
何のために書いたのかわからない無駄な伏線。かみ合わない登場人物の会話。

そもそも、どうして主人公が彼氏のスマホを探しているのか。
落とした彼氏本人が探せばいいじゃん。
それと、スマホを受け取りに行ったときに待ち合わせ先の店のひとから
「赤い服を着たあなたにスマホを渡せと言われました」って言われてるのに、
「何で私が赤い服を着てるって知ってるの?」と思いもしないところが変。
いや、そんなのほんの序の口で、とにかく「何でそこでそういう行動に出る?」
「どうしてそんな考え方をする?」とおかしな点が盛りだくさん。
ラストで明かされる過去を抱えていながら、彼氏をやたらと計算高い目で
見てるのも意味不明だし、見下してた彼氏を終盤では「愛してる」とか言い出すのも
主人公のキャラに一貫性がなくてイラつく。最後も無駄に美談にまとめ過ぎだし。
刑事コンビはそれなりに活躍するのかと思いきやただ状況を説明するだけの役。
というか刑事パートは前半「蛭蛭蛭蛭」うるさくて何かの伏線なのかと思いきや
全然どうでもいいし。山田悠介「リアル鬼ごっこ」の「豪華豪華豪華」描写を
思い出した。
あと言葉のチョイスが古すぎ。今どきの若い女が「ソバージュ」なんかかけるか。
(母に言ったら「お母さんでももうソバージュとは言わないわ」と言っていた)
スマホが浸透してる時代なのに未だにFacebookの使い方を知らない主人公も
意味がわからない。ていうかもうFacebook自体古いのに題材にされても。
クライマックスの、同じシーンを主人公視点と犯人視点から書いた描写も、
「同じ台詞二回読まなきゃいけないのかよ」とうんざりした。ああいう表現を
したいならもっと文章に工夫を凝らさなきゃ駄目だろ。ネットのレビューを見たら
その「場面の重複」を「編集ミス」だと思ってる読者もいたぞ。
レビューといえば本作のことを「作家を目指すひとにとってのお手本のような作品」
と書いているひとがいてげんなりした。何なの今の読書家ってそこまで堕ちてんの?
Amazonのレビューが高評価なのがまったくもって信じられないんだけど、
この愚作を面白いと思うひとがあんなに存在するの?
いやそもそも眼が肥えたひとならこんな本最初から手に取らないか。

百歩譲って作者がまだ若いなら今後の伸びしろに期待出来るんだけど、
作者56歳って。。。56歳でこんな文章しか書けないなんて、
今まで一体何してたの?と思わざるを得ない。

こんなゴミが新人賞の最終選考候補に残るなんて、もう日本の文壇終わりかもなあ。。。
ここ数年読んだ中で最もおすすめしません。
おかしな表現はどこか探して推敲する間違い探しドリルとしては役に立つかもね。


裏稼業として人の記憶を取引する「店」で働く銀行員の良平と漫画家志望の健太。
神出鬼没のシンガーソングライター・星名の素性を追うことになった悪友二人組は、
彼女の過去を暴く過程で医者一家焼死事件との関わりと、星名のために命を絶った
ある男の存在を知る。調査を進めるごとに浮かび上がる幾多の謎。
代表曲「スターダスト・ナイト」の歌詞に秘められた願い、
「店」で記憶移植が禁じられた理由、そして脅迫者の影…。
謎が謎を呼び、それぞれの想いと記憶が交錯し絡み合うなか辿り着いた、
美しくも残酷な真実とは?
大胆な発想と圧倒的な完成度が選考会で話題を呼んだ、
第5回「新潮ミステリー大賞」受賞作!

***

新潮ミステリー大賞受賞作は、伊坂幸太郎氏、道尾秀介氏、貴志祐介氏という
大好きな作家さんたちが選考委員を務めているということもあって
全作読んできましたが、すべての作品に期待を裏切られてきたというのが本音。
「サナキの森」はラノベに毛が生えたような婦女子系本格もどき。
「レプリカたちの夜」は文章力と独特の世界観はすごいけれど
まったくミステリではなく単純に面白くないシュールSF。
「夏をなくした少年たち」は登場人物たちの心理描写は卓越しているけれど
ミステリとしてははっきり言ってゴミ。

というわけで本作もさして期待せずに手に取ったのですが。。。

面白かった。
文章が読みやすいのでサクサク読める。
登場人物は皆どこかで見たようなキャラばかりで個性がないけれど
彼らの会話に時折センスが感じられる。
何よりもちゃんとミステリしていて、新潮「ミステリー」大賞受賞作として
納得のいく内容だった。

伏線は一見何気なく張られているけれどそれが後にどう物語に繋がっていくかは
読めてしまうし、「実は〇〇でした」という展開になったときも
正直「うん、知ってた」と思えてしまうところが多かったし、
本作最大の謎も見当がついてしまったのでミステリとしての「そうだったのか!!」
という驚きはなかったけれど、それでも著者の緻密に物語を組み立てる構成力は
素直にすごいと思ったし最後まで楽しく読むことが出来た。
歴代受賞作の中で一番面白く、受賞したことに納得がいく作品だった。

長い黒髪に麦わら帽子に白いワンピースの少女、というのが出てきたときは
テンプレ過ぎるだろとちょっと鼻白んだけど。
あとこの著者、昔の漫画「マインドアサシン」読んだことありそう、と思った。

記憶を扱ったミステリだと、本作が肌に合うひとは織守きょうやさんの
「記憶屋」も楽しめると思います。


常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。
双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、そして、
彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。
僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。

***

図書館で予約していたものの、待ちきれず買ってしまった本作。
買った三日後に図書館から「来ましたよ」と連絡が来るという間の悪さながらも、
伊坂氏の本だから手元に置いておきたいしな、と思って買ったものを読んだら、
後悔した。

「ラッシュライフ」に見られた伏線の妙もなく、
「重力ピエロ」「アヒルと鴨のコインロッカー」のような切なさも
帯に書かれていた「切ない」の表記にも拘わらず見受けられず、
作中のエピソードがただただ退屈で読むのに時間がかかり、読了後の感想は
「。。。何だこれ」。

主人公の双子が幼少時父親から虐待を受けていたという設定も、
描写不足でそこまで痛ましくは思えず共感出来なくて、
序盤の「ウサギのぬいぐるみ」の伏線も何だかわざとらしく感じて
それが回収されるときには「何で犯人こんなもの取っておいてるの?」と。
双子の片割れ・風我が、実の叔父から水攻めという虐待に遭っている恋人を
水族館デートに連れていこうとしてるのも違和感がありまくりだったし。
ていうか双子の父親は結局どうなったんだ?という尻切れトンボ感も拭えず。

ラストの優我目線での語りはちょっとうまいなと思ったけど、
伊坂氏の本領はこんなものではないはずなのに、と残念に思った。
あとほかの伊坂ファンがどう思ってるかは知らないけど、もうほんといい加減
ダジャレを作中に散りばめるのはやめてほしい。
 
ヤフオクで売ります。
殺されるかもしれないけど、殺す?



計画は完璧なはずだった。
仲間が仲間を殺すまでは――。

那須高原にある保養所に集まった、絵麻をはじめとする10人の男女。
彼らの目的は、自分たちを不幸に陥れた企業「フウジンブレード」の幹部3人を、
復讐のために殺害することだった。計画通り一人目を殺した絵麻たち。
次なる殺人に向けて、しばしの休息をとった彼らが目にしたのは、
仲間の一人の変わり果てた姿だった――。
裏切り者は誰なのか? そしてその目的は?
史上最悪の復讐劇が今始まる!

***

「何でそこでその行動になるんだ?」とか「カリスマ的人物が
全然カリスマに見えない」とか、突っ込みどころ満載なものの
独特の感性やテーマがありそれなりに好きな作家さんの新作。

けれど本作はその「独特の感性」が鳴りを潜め、ごく普通のクローズドサークルものに
なってしまっていたのが残念。
主人公たちの復讐の動機も、「それは復讐したくなるよな」と共感するほどの
ものではないので、感情移入することも出来ず。

犯人もわかったところで驚くようなものではなく、何より
犯人が連続殺人を成功させた理由というのがかなり陳腐。
いや普通そこは被害者も警戒するだろと、突っ込みどころは相変わらずあった。

素人でもわかる当たり前のことを探偵役が話すと
「なるほど、そんな考え方があったのか! すごい!」と周りが絶賛するのも、
「扉は閉ざされたまま」とかのころから変わってないなーと思ってしまった。

あと細かいですが、「ひゅっと息を飲んだ」「ぶんと音をたてて首を振った」
という表現が多すぎて、もうちょっと表現の幅を増やせばいいのにと
僭越ながらも思ってしまった。

内容も、タイトル「崖の上で踊る」とうまく絡んでいないし。

読みやすくさくさく読めた点だけが評価ポイント。
あまりおすすめしません。
ぼくは今も目覚めたまま、きみの夢を見ている。



美丘、きみは流れ星のように自分を削り輝き続けた…
平凡な大学生活を送っていた太一の前に突然現れた問題児。
大学の準ミスとつきあっていた太一は、強烈な個性と奔放な行動力をもつ美丘に
急速に魅かれていく。
だが障害を乗り越え結ばれたとき、太一は衝撃の事実を告げられる。
彼女は治療法も特効薬もない病に冒されていたのだ。
魂を燃やし尽くす気高い恋人たちを描いた涙のラブ・ストーリー。

***

ヒロインが不治の病で死ぬという話は最早お約束ですが、
本作はそれでも著者の表現力・リーダビリティが如何なく発揮されていて
お涙頂戴もののクサさも薄くすいすい読める。

ただ、似た設定の話ならよしもとばななさんの「TUGUMI」のほうが
ヒロインのインパクトや魅力は圧倒的に強かった。
それを受け止める恋人も。
主人公が美丘を好きになった理由はわかるのだけど、逆に美丘が何故
主人公に惹かれたのかがいまいちわからず、そこをもう少し書いてほしかったかな。

あと、後半で残された時間を惜しむようにセックスしまくる
主人公ふたりですが、そこにもうちょっと切実さのようなものがほしかった。
著者は「言わなくてもわかるだろ」と思ったのかも知れないけど、
「ヤリ過ぎだろ」と思ってしまったので。
加えて、美丘の病気が進行するたびに泣きながら抱き合う、っていう
ワンパターンな描写もどうかと。
まあこの話が現実でもほかにどうしようもないだろうけど。

本作の一番評価したい点は正直内容より表紙だったりする。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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