「いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。
太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった」
1973年に起こった質屋殺し。
最後に被害者と会った女がガス中毒死して、事件は迷宮入りする。
物語の主人公は、質屋の息子と女の娘。
当時小学生だった二人が成長し、社会で“活躍”するようになるまでを、世相とともに描ききる。
2人の人生は順風満帆ではなく、次々忌まわしい事件が降りかかる……。
***
部屋のロフトを掃除してたら出てきたのでぺらぺらめくっていたらいつの間にか読破してしまった。
東野氏の文章は読みやすいので800P超のボリュームも苦にならずあっという間。
あーそれにしてもほんと憧れるなこの〝負の絆〟。
本作の二人の主人公には、そのへんのクサい純愛小説カップルより
よっぽど強い精神の結びつきを感じる。
こういう異性が一人いてくれれば、自分だったら一生結婚しなくても〝独りきり〟で生きていけるな。
偽物の太陽で十分。
本当の太陽は、照らさなくてもいい汚くて無様な現実まで容赦なく照らし出すから。
〝偽日〟は実はこの世界を一番美しく見せるちょうどいい明るさなんじゃないかと思う。
ラストはドラマ版のほうが好きだったりするんですが。
主人公の一人、亮司に辛うじて救いがあるから。
インパクトでいったら原作に軍配があがるけど。
鋼鉄の鎧を心にまとって生き続けてきた雪穂が
終盤になって周囲にぽろっと本音を零したりするようになるのは、
遠からず自分が〝偽日〟を失うことを本能的に察知していたからかもしれないと考えると
切なくなる。
東野氏は〝容疑者Xの献身〟で直木賞を受賞してるけど、
献身の度合いでいったら本作の主人公のほうがよっぽど上。
相手への思いも〝恋愛感情〟なんて言葉じゃ片付けられないほど強いものだし、
本作はミステリというより究極の恋愛小説といったほうが正しい気がする。
もしくは人魚姫の男版(って書くとなんかあほみたいだけど割と的を射た表現だと思う)。
柴咲コウの歌うドラマ版の主題歌、
歌詞がまさに亮司です。
読み終えたあと思わず熱唱してしまいました。
読書中のBGMにどうぞ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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