いまひと度の銃声。
英都大学推理研初の女性会員マリアと共に南海の孤島へ赴いた江神部長とアリス。
島に点在するモアイ像のパズルを解けば時価数億円のダイヤが手に入るとあって、
早速宝捜しを始める三人。
折悪しく嵐となった夜、滞在客のふたりが凶弾に斃れる。
救援を呼ぼうにも無線機が破壊され、絶海の孤島に取り残されたアリスたちを更なる悲劇が襲う!
***
学生アリスシリーズ第二弾。
自ら推理するでもなくただ物語が流れるに任せて読み進めるだけの私にも珍しく
犯人がわかった小説。
伏線があからさまだとか謎の練り込みが足りないとかそういうわけじゃ決してなく、
ただ有栖川氏の文章がうますぎるが故に。
最後まで犯人がわからない推理小説というのには二種類あって、
一つ目はもちろん作中に仕掛けられたトリックが秀逸であるもの。
二つ目は、人間関係や文章がごちゃごちゃし過ぎていて読者に推理の余地を与えず
煙に巻いてしまうもの。
実は本格推理というジャンルには、得てしてこの後者のパターンが多い。
登場人物をどんどん出して各々を複雑に絡ませ、文や物語の構成も妙にややこしくして
読者の頭がついていけずにぼんやりとなってきたところで探偵役にすべてを語らせる。
自力で真相にたどり着けなかった(というかそこに至る前に
脳を無駄に疲れさせられてしまった)読者は
「なるほどそうだったのか。自分にはとても思いつかない。すごいトリックだ」
などとぼやけた頭のまま勘違いしてしまう。
もちろんこんなの本当のミステリじゃない。
そこへいくと有栖川氏の文章は非常に読みやすい上に一文一文のインパクトも強く、
作中にばらまかれた謎解きのためのキーも一度読んだらまず忘れないし
事件の全体も把握しやすい。更にトリック自体は決して奇抜なものじゃないので、
順を追って考えていけば確実に犯人にたどり着ける。
「こいつが犯人だったのか! わからなかった!」
「なんて奇想天外なトリックなんだ!」
と驚きたい人には向かないけど、
ただ純粋に自分の頭で事件の全貌を解き明かしたいって読者にとっては
これ以上フェアな小説はそうないんじゃないかと思う。
まあただ、銃を林に隠すというのは(ネタバレ気味なので薄字で)どうかとは思ったけど。
だってアリスたちがお宝探しのために島内を散策してる以上それってかなりリスク高い行為だし、
犯人以外の誰でも出来得ることであるぶんその手段は面白み&意外性に欠けるきらいはあった。
犯人がロングスカート履いて内腿にでも銃を縛り付けてくれてたりとかしたら
「ああそれは確かにあの人にしかできないわー」と心底納得いったんだけどな。
あとは犯人が寝つきがいいか悪いか、眠りの深さの度合いも分からない相手と
犯行当夜にあっさりと一緒に寝ようとしたのにも不満。マリアに気づかれたらそこでアウトなのに。
それを逆手にとって己のアリバイにしようとしていたようにも見えないし。
(なんか伏せ字ばかりでうざくなってしまった。ごめんなさい)
なんだかんだでかなり楽しく読むことができましたが。
なんか安心して身を任せられる感じで読んでる間妙に心地よかった
有栖川氏はキャラの造形も文章も自分の小説のお手本にしたいほど好きな作家さんで
今自分の中で再読ブームが到来中なので、今後氏の著作のレビューが増えるかもしれません。
英都大学推理研初の女性会員マリアと共に南海の孤島へ赴いた江神部長とアリス。
島に点在するモアイ像のパズルを解けば時価数億円のダイヤが手に入るとあって、
早速宝捜しを始める三人。
折悪しく嵐となった夜、滞在客のふたりが凶弾に斃れる。
救援を呼ぼうにも無線機が破壊され、絶海の孤島に取り残されたアリスたちを更なる悲劇が襲う!
***
学生アリスシリーズ第二弾。
自ら推理するでもなくただ物語が流れるに任せて読み進めるだけの私にも珍しく
犯人がわかった小説。
伏線があからさまだとか謎の練り込みが足りないとかそういうわけじゃ決してなく、
ただ有栖川氏の文章がうますぎるが故に。
最後まで犯人がわからない推理小説というのには二種類あって、
一つ目はもちろん作中に仕掛けられたトリックが秀逸であるもの。
二つ目は、人間関係や文章がごちゃごちゃし過ぎていて読者に推理の余地を与えず
煙に巻いてしまうもの。
実は本格推理というジャンルには、得てしてこの後者のパターンが多い。
登場人物をどんどん出して各々を複雑に絡ませ、文や物語の構成も妙にややこしくして
読者の頭がついていけずにぼんやりとなってきたところで探偵役にすべてを語らせる。
自力で真相にたどり着けなかった(というかそこに至る前に
脳を無駄に疲れさせられてしまった)読者は
「なるほどそうだったのか。自分にはとても思いつかない。すごいトリックだ」
などとぼやけた頭のまま勘違いしてしまう。
もちろんこんなの本当のミステリじゃない。
そこへいくと有栖川氏の文章は非常に読みやすい上に一文一文のインパクトも強く、
作中にばらまかれた謎解きのためのキーも一度読んだらまず忘れないし
事件の全体も把握しやすい。更にトリック自体は決して奇抜なものじゃないので、
順を追って考えていけば確実に犯人にたどり着ける。
「こいつが犯人だったのか! わからなかった!」
「なんて奇想天外なトリックなんだ!」
と驚きたい人には向かないけど、
ただ純粋に自分の頭で事件の全貌を解き明かしたいって読者にとっては
これ以上フェアな小説はそうないんじゃないかと思う。
まあただ、銃を林に隠すというのは(ネタバレ気味なので薄字で)どうかとは思ったけど。
だってアリスたちがお宝探しのために島内を散策してる以上それってかなりリスク高い行為だし、
犯人以外の誰でも出来得ることであるぶんその手段は面白み&意外性に欠けるきらいはあった。
犯人がロングスカート履いて内腿にでも銃を縛り付けてくれてたりとかしたら
「ああそれは確かにあの人にしかできないわー」と心底納得いったんだけどな。
あとは犯人が寝つきがいいか悪いか、眠りの深さの度合いも分からない相手と
犯行当夜にあっさりと一緒に寝ようとしたのにも不満。マリアに気づかれたらそこでアウトなのに。
それを逆手にとって己のアリバイにしようとしていたようにも見えないし。
(なんか伏せ字ばかりでうざくなってしまった。ごめんなさい)
なんだかんだでかなり楽しく読むことができましたが。
なんか安心して身を任せられる感じで読んでる間妙に心地よかった
有栖川氏はキャラの造形も文章も自分の小説のお手本にしたいほど好きな作家さんで
今自分の中で再読ブームが到来中なので、今後氏の著作のレビューが増えるかもしれません。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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