忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[138]  [137]  [135]  [130]  [127]  [126]  [125]  [103]  [102]  [101]  [99
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「あたしは、ずっと黙ってる。
あたしは、もう一度、忘れる」



人間は、死んだらどうなるの?
――いなくなるのよ――
いなくなって、どうなるの?
――いなくなって、それだけなの――。
その会話から3年後、凰介の母はこの世を去った。
父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。
夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。
そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。
父とのささやかな幸せを願う小学5年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?

***

どんでんに次ぐどんでんに次ぐどんでん返し。
って感じのミステリは往々にして登場人物や物語が複雑に入り組みすぎていて
(しかもそういうのに限って、文章もやたらと衒学的&小難しくて読みづらかったりする)
終盤にたどり着くころには「もういいよξ」と投げ出してしまいたくなったりするものが多いですが、
本作は内容も面白く一人一人のキャラの個性がたっていてそれでいて文体&全体の構成が
シンプルなので、余計なストレスを感じることなく最後まで一気に読み進めることができます。
しかも本当の意味で信用できる登場人物が一人もいないので
(「オイ誰が真の〝黒幕(シャドウ)〟なんだよ(@Д@;)」といった感じ)
事件の犯人どころか物語そのものの行き着く先が読めない面白さもある。

主人公の少年少女がちょっと大人びすぎ&賢すぎなのが違和感ありますが、
心理学・精神医学に興味のある人なら相当に楽しめる作品です。
(ただし本格的なその手のものを求めてる人には少し幼く感じるかも。
著者がまだ若い故か、精神病に関する描写にやや拙いところがあるので。
リアリティを求める人には多島斗志之氏の〝症例A〟のほうが○。
こちらは逆にエンタメ性は若干低めですが)。

本作は、トリックや事件に重きを置いて登場人物が皆記号化してしまっているなどといった
本格ミステリにありがちなこともなく、
道尾秀介氏ならではの深く暖かい人間ドラマがクサくなく盛り込まれているので、
真相に驚いてはいおしまい、なんてことにはならず、読後もじんわりと心に残り続ける。
おすすめです。

これから読むつもりの人は、その前に宮沢賢治の〝よだかの星〟を
青空文庫あたりで読んでおくとより一層内容に深みが増します。
PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
この記事へのトラックバック
TrackbackURL:
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]