四十六番目の密室は葬られた。
45の密室トリックを発表した推理小説の大家、真壁聖一が殺された。
密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿であった。
彼は自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか?
推理作家・有栖川有栖とその友人で犯罪学者・火村英生のコンビが怪事件の謎に迫る!
新本格推理小説。
***
作家アリスシリーズ第一弾。
最近もっぱら小説を書く上での私の指南書と化している有栖川作品。
本作も魅力的なキャラクターとどこまでも読者にフェアなストーリー展開に
安心して最後まで楽しく読み進める(&勉強する)ことができました。
本作は、本格推理というよりはそれ自体を暗にモチーフに据えたメタ本格(密室)小説といった体で、
(有栖川氏も後書きで言及されています)
既存のトリックや本格推理論を作中に散りばめて一枚の絵を浮かび上がらせるような、
ある種パズル的な趣向が凝らされています。
なので普段本格物を読みつけている人ならより一層面白く読むことができる。
そして本作ではたびたび〝天上の(つまりは究極の)推理小説〟というものについての言及があり、
ラストでその片鱗がちらっと出てくるのですが、それはほんの氷山の一角に過ぎなくても
その下には恐ろしいほど巨大な氷山が眠っていそうな、そんな壮大な感覚を
味わわせてくれる描写でかなりドキドキさせられました。
見えないからこそ読む者それぞれの頭の中で膨らむ世界。
「私はこの命題を驚くべき方法で証明できるが、書くスペースがないのでやらない」
と言い残して死んだ17世紀の数学者・フェルマーの〝最終定理〟が
思わず頭に浮かんでしまった。
未解決のこの定理が過去数百年の間いったい何人の数学者を触発し続けたことか。
有栖川氏も(彼の場合は意図的にですが)、本作を発表することによって
後進のミステリ作家たちに発破をかけたのかもしれない。そしてたぶん自分自身にも。
〝フェルマーの最終定理〟は既に解明されてしまいましたが、こちらのほうは
今後どうなるんでしょうか。
(ミステリ作家を志す身でこんな他人事みたいなコメントしてる場合じゃないですが)
〝天上の推理小説〟、あれば読んでみたいような、でも読むのが怖いような、
どうにも複雑な心境だな。
でもトリックなんてそれがどんなに秀逸であっても時代の流れと共に廃れていくものだから、
もし永劫にわたってあらゆる読み手を納得させ続けられるミステリなんてものがあるなら、
それは人間の筆によるものじゃない気もする。
〝天上の〟推理小説、言い得て妙だな。
おまけ:
本作にて事件解決のキーとして使われていたミニマム・ミュージック。
読書中のBGMにどうぞ(落ち着きませんが)。
45の密室トリックを発表した推理小説の大家、真壁聖一が殺された。
密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿であった。
彼は自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか?
推理作家・有栖川有栖とその友人で犯罪学者・火村英生のコンビが怪事件の謎に迫る!
新本格推理小説。
***
作家アリスシリーズ第一弾。
最近もっぱら小説を書く上での私の指南書と化している有栖川作品。
本作も魅力的なキャラクターとどこまでも読者にフェアなストーリー展開に
安心して最後まで楽しく読み進める(&勉強する)ことができました。
本作は、本格推理というよりはそれ自体を暗にモチーフに据えたメタ本格(密室)小説といった体で、
(有栖川氏も後書きで言及されています)
既存のトリックや本格推理論を作中に散りばめて一枚の絵を浮かび上がらせるような、
ある種パズル的な趣向が凝らされています。
なので普段本格物を読みつけている人ならより一層面白く読むことができる。
そして本作ではたびたび〝天上の(つまりは究極の)推理小説〟というものについての言及があり、
ラストでその片鱗がちらっと出てくるのですが、それはほんの氷山の一角に過ぎなくても
その下には恐ろしいほど巨大な氷山が眠っていそうな、そんな壮大な感覚を
味わわせてくれる描写でかなりドキドキさせられました。
見えないからこそ読む者それぞれの頭の中で膨らむ世界。
「私はこの命題を驚くべき方法で証明できるが、書くスペースがないのでやらない」
と言い残して死んだ17世紀の数学者・フェルマーの〝最終定理〟が
思わず頭に浮かんでしまった。
未解決のこの定理が過去数百年の間いったい何人の数学者を触発し続けたことか。
有栖川氏も(彼の場合は意図的にですが)、本作を発表することによって
後進のミステリ作家たちに発破をかけたのかもしれない。そしてたぶん自分自身にも。
〝フェルマーの最終定理〟は既に解明されてしまいましたが、こちらのほうは
今後どうなるんでしょうか。
(ミステリ作家を志す身でこんな他人事みたいなコメントしてる場合じゃないですが)
〝天上の推理小説〟、あれば読んでみたいような、でも読むのが怖いような、
どうにも複雑な心境だな。
でもトリックなんてそれがどんなに秀逸であっても時代の流れと共に廃れていくものだから、
もし永劫にわたってあらゆる読み手を納得させ続けられるミステリなんてものがあるなら、
それは人間の筆によるものじゃない気もする。
〝天上の〟推理小説、言い得て妙だな。
おまけ:
本作にて事件解決のキーとして使われていたミニマム・ミュージック。
読書中のBGMにどうぞ(落ち着きませんが)。
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この記事へのコメント
お聞きになりましたか?
伊坂幸太郎さんの放送、
ファンのかたとしてはいかがでしたでしょうか?
(もし放送をお聞き逃しでも、ネットのストリーミング放送は
来週の月曜日まで聞けるはずですので!^^;)
私の印象は、とても信頼できる尊敬に値する作家さんだな、と。
登場人物に愛と責任を持ってお話をつくられるているかたのようなので、
「作家さんはこうあるべき!」と嬉しくなってしまいました。(^^)
私は絵でも漫画でも小説でもそれが感じられないと
好きな作品にはならないので…。
『重力ピエロ』は次に買う小説に決定しそうです、
『夜市』も忘れてはいませんが!(><);
それではまた!
ところでfvさんはスタバで執筆、
などはできるほうですか?
私は人がいるところだと集中できないので
外での作品作りは絶対に無理です!!
ファンのかたとしてはいかがでしたでしょうか?
(もし放送をお聞き逃しでも、ネットのストリーミング放送は
来週の月曜日まで聞けるはずですので!^^;)
私の印象は、とても信頼できる尊敬に値する作家さんだな、と。
登場人物に愛と責任を持ってお話をつくられるているかたのようなので、
「作家さんはこうあるべき!」と嬉しくなってしまいました。(^^)
私は絵でも漫画でも小説でもそれが感じられないと
好きな作品にはならないので…。
『重力ピエロ』は次に買う小説に決定しそうです、
『夜市』も忘れてはいませんが!(><);
それではまた!
ところでfvさんはスタバで執筆、
などはできるほうですか?
私は人がいるところだと集中できないので
外での作品作りは絶対に無理です!!
46番目の密室/有栖川有栖
返事遅くなってごめんなさい!
体調を崩し、現在進行形でくたばり中ですξ
でも伊坂さんラジオは聴きましたよ~もちろん!
ハルイチさんの言うとおり、本当に小説のまんまの人だなあと思いました。なので声や喋り方を聴いてもまったく違和感がありませんでした^^
飾れない素朴な人なんだなあという印象でしたね~。
ジンタさん、本当にラジオのこと教えてくれてありがとうでした!
伊坂さんがスタバに出没するのはファンの間では確かに有名なんですよ笑
なので私も以前友人が仙台に転勤になったとき、伊坂さんに遭遇するために泊まりにいく計画とか立てたことあります(結局その前に友人がこっちに戻ってきてしまったのでやりませんでしたが)。
作品に作り手の人間味を感じることって確かに大切ですよね。
私は重力ピエロ(買いますか? やった! ぜひ読んでください@)で主人公が老婆に挨拶されたとき
「おはようと挨拶された」
じゃなく
「おはようと挨拶してくれた」
と表現しているのを読んで「この作者の人間性が好きだなあ」と心底思いました(ただ残念なことに、これは単行本版のみの表現で、文庫版では文章が変わってるんですよねTTなんで変えるのさ伊坂さん)
ちなみに私は外での執筆はたとえ図書館であろうと無理です><家でしか書けません。なので大作家がホテルとかに缶詰めで執筆とかしてるの見ると違う意味で感心します笑
では元気になったらまた遊びにいきますね!
本調子じゃないもので文章変かもでごめんなさい><
それでは!
体調を崩し、現在進行形でくたばり中ですξ
でも伊坂さんラジオは聴きましたよ~もちろん!
ハルイチさんの言うとおり、本当に小説のまんまの人だなあと思いました。なので声や喋り方を聴いてもまったく違和感がありませんでした^^
飾れない素朴な人なんだなあという印象でしたね~。
ジンタさん、本当にラジオのこと教えてくれてありがとうでした!
伊坂さんがスタバに出没するのはファンの間では確かに有名なんですよ笑
なので私も以前友人が仙台に転勤になったとき、伊坂さんに遭遇するために泊まりにいく計画とか立てたことあります(結局その前に友人がこっちに戻ってきてしまったのでやりませんでしたが)。
作品に作り手の人間味を感じることって確かに大切ですよね。
私は重力ピエロ(買いますか? やった! ぜひ読んでください@)で主人公が老婆に挨拶されたとき
「おはようと挨拶された」
じゃなく
「おはようと挨拶してくれた」
と表現しているのを読んで「この作者の人間性が好きだなあ」と心底思いました(ただ残念なことに、これは単行本版のみの表現で、文庫版では文章が変わってるんですよねTTなんで変えるのさ伊坂さん)
ちなみに私は外での執筆はたとえ図書館であろうと無理です><家でしか書けません。なので大作家がホテルとかに缶詰めで執筆とかしてるの見ると違う意味で感心します笑
では元気になったらまた遊びにいきますね!
本調子じゃないもので文章変かもでごめんなさい><
それでは!
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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