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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「完璧な状態でのこすために大事に抱えこんでいたら、
大勢の人に見てもらえないわ」




精神科医の榊は、病院の問題児である少女・亜左美を担当するが、
前任者の下した診断に疑問を抱きはじめる。
彼は臨床心理士の由起と力を合わせ、亜左美の病根をつきとめようとするが…。

***

少し昔、〝統合失調症〟がまだ〝精神分裂病〟と呼ばれていた時代の話なので
医療方針や医師の精神病への見解等に若干古くさい部分はありますが、
著者の本作を著するにあたっての徹底的な取材ぶりは圧巻のひと言。
これは本職の人(精神科医)でも違和感なく読めるんじゃないでしょうか。

ただ惜しむらくは、あまりに真に迫りすぎていてどこかドキュメンタリーチックというか、
ドラマ性がちょっと少なめ。まあ悪くいえば〝地味〟な話。
某美術館所蔵の狛犬の像の真贋問題を絡めることで話を盛り上げようとしているのは
わかるんですが、正直むしろその部分が蛇足になってしまっている。
話がつまらないので真贋の真相がわかったところで「ふーん」としか思えず、
挙げ句ラストには一切出てこず。要するに尻切れトンボ。結局あれは何だったんだ? という感じ。
美術館パート抜きで精神病棟パートのみのほうが普通に面白かったと思う。

&ミステリをよく読む人なら、あまりに主人公の榊医師に都合よく動きすぎな登場人物たちと
簡単に先の読めてしまうストーリー展開にあっけにとられること必至なので(←言い過ぎだけど
事実)、
あくまで普通のエンターテインメントとして読むことをおすすめします。

ラストは。。。結局榊医師が患者を救ったのは
〝医師として〟なのか〝男として〟なのかが曖昧なまま終わってしまったのが個人的には不服。
前者なら傑作、後者なら陳腐な駄作、と完全に読後の感想が変わってくるので。
〝医師として救った〟のだと読者にはっきりとわからせるためには、〝彼女〟じゃなく
もう一人の患者を榊の相手役として持ってくるべきだったと思う。

とかいろいろごちゃごちゃ書きましたが、文章は非常にうまく
精神疾患についてもかなり緻密かつ正確に描写してあるので、
精神医学に興味がある人はもちろん、〝精神病〟というものをよく知らず
偏見を持っているような人にも是非読んでほしい物語です。
偏見持つような人はそもそも自分のそれが偏見だなんて気づかないだろうけど

(そういえば蛇足ですが、
昔私がちょっと塞ぎこんでいたときにそれを過剰に心配したうちの母が
勝手に市役所かどこかのカウンセラーに私のことを相談しにいって、そのカウンセラーに
「娘さんは統合失調症の可能性があります」
と言われたのは今となっては懐かしい話。
ていうかいい加減過ぎだろそのカウンセラー。。。
誤診は怖いですよ(本作にもそう書いてあります)。
みなさん心の病になったら最低三つは病院をハシゴしてくださいね。というお話でした)
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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