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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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闇が来る。



美しいものは恐くなければならない。恐いものは美しくなければならない。
美しさの中に恐怖の構図が仕組まれていた「失鷺飛来図」。
絵の秘密をめぐり、女と男がたどる愛と恐怖の旅路。ホラー長編。

***

著者本人もあとがきで書いているように、本作は単なる〝ホラー〟というジャンルに
簡単に押し込めるような作品ではないです。
冒頭の静謐な闇を思わせる描写、それが物語が進むにつれ次第にサスペンスの様相を増し、
クライマックスでは〝スクリーム〟〝チャイルド・プレイ〟等のB級ホラー的展開をしますが、
全体を通してみれば非常に大きな〝哲学〟――
「人はこの生きづらい世の中にあって、どこまで己自身と向き合い、
恐怖と孤独に打ち勝って自分にしかできない何かを成し遂げ、遺せるか」
が見えてきます。
本作に登場する〝朱鷺飛来図〟という絵は、
視点を変えて見ることで地獄絵図に変化するといういわゆる〝騙し絵〟なのですが、
この物語も数年前初めて読んだときは私には単なる〝朱鷺の絵〟にしか見えなかったものが、
今回改めて再読してみてようやく、そこに隠された真実の絵が浮かび上がって見えてきた次第。
それにしてもこれに気づかないとは。。。幼かったなあ当時の自分。。。(言い訳すると初読が
相当大昔だったので。。。いや、でも気づく人は一回で気づくか。まだまだ修行が足らないな自分)。

何か夢があってそれに向かってがんばっている人、
苦しいことがあって前に進めずつらい思いをしている人、
そういった人たちに是非一度手にとってみてほしい作品です。
前者には〝一つのことを成し遂げるというのがいかに覚悟のいることか、けれど同時に
いかにやりがいがあり誇らしいことか〟を、
後者には〝生きる恐怖というのは己が生み出した妄想に過ぎない、
共に立ち向かえる相手を探し出すことができれば何も恐れることはない〟ということを、
本作は教えてくれるはずです。



追記:
表紙がこっちのほうが好きなのでハードカバーを紹介しましたが
文庫版も出てます。

追記2:
本作が書かれた15年前時点では生き残りが二羽、と書かれていたトキの現状が
このサイトで見れます。興味のある方はどうぞ。


ibis.jpg








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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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