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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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私の声じゃ、届かない。

 

優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、
暗い恋の闇路へと迷い込んでしまった…。
同じ大学に通う仲間、浅葱と狐塚、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、
思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。
掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が待っているのか。

***

まだ10歳にも満たない、非常に若い作家さんです。

。。。嘘です。うるう年生まれってなんかいいよね。。。



くだらない冗談はさておき、今私が女性作家で一番ハマっているこの人。
相変わらず面白い面白い。上下巻組ですが長いなんて少しも感じず、むしろ
「何で〝中〟がないんだよ。。。」と物語が終わってしまうことを惜しく思ってしまったほど。
文章うまいわ構成力すごいわ憧れの作家さんです。とても同い年とは思えない(思いたくない。
眼をつぶらせてほしい。)

彼女がすごいのは、何より人間を描くその手腕。
個性的なキャラクターを生み出すことのできる作家さんはたくさんいますが、
この著者の書く人間はキャラクターが〝濃い〟んじゃなく〝深い〟。
登場人物それぞれが持つ人間性の描写力は、そこいらの純文学作家を凌駕するほど。
しかも、いそうでいない、いなさそうでいる、という境界ギリギリの性質のキャラばかりなので、
彼らと接しているうちに、自分が現実にいるのか想像の世界にいるのか、だんだんわからなく
なってくる。トリップする。それが非常に心地いい。物語自体もありそうでない、なさそうである、
全体にそんな雰囲気なので、要するに辻村深月という作家の生み出す世界そのものが
気持ちいいんだろうと思う。いつまでも浸っていたくなる。

〝見立て殺人〟に〝二重人格オチ〟というふたつのモチーフはありがちだけど、そして
月子と孝太が実は兄妹でしたオチにするには(一応伏線は張ってあるものの)アンフェアな点が
多々あったけど、それでも作中の一つひとつのエピソードがとても魅力的なので許せてしまう。
でも終盤の心理学うんちくは正直いらなかったかな。そのへんの精神科医やカウンセラーなんか
目じゃないほど人を見抜く感性を持っていることがその文章から伝わってくるのに、
この著者は文献なんかに頼る必要はなかった。終始一貫、辻村さんの想像で書いてほしかった。
想像といえば、本作一番最後のページが読み手への問いかけめいた終わり方になっているのに
ゾクっとした。作中の見立て殺人の〝クイズ〟はすべて最後のこれのためにあったんだな。

ラブストーリーが基本的に嫌いな私が思わず涙ぐみそうになってしまった一作。
浅葱(本作の登場人物)、あなたは格好いいです。どうか幸せになってほしい。

それにしても作中に出てくる数式、
iとθの間に〝sin〟の文字があるけど、これに〝罪〟の意味があるのが
偶然だろうけどとてもそうは思えない。あまりにこの作品を象徴しすぎていて。



余談ですが、私も小学生のとき超大切に飼ってたカイコにハエが卵産み付けて
死んじゃったという苦い記憶が。カイコがパンパンに膨らんで中から幼虫が出てきたのは
今でもいいトラウマです。。。


asagi.jpg









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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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