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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「世界には銃声よりも音楽の方が似合う。そうお思いでしょう?」



1993年、夏。カンボジア。
NGOのスタッフたちが地雷除去を続ける中、突然の地雷の爆発音が轟いた。
これは、純然たる事故なのか?
表題作を含め、「対人地雷」をテーマにしたミステリー6編と、処女作短編を収録。 

★収録作品★

 地雷原突破
 利口な地雷
 顔のない敵
 トラバサミ
 銃声でなく、音楽を
 未来へ踏み出す足
 暗い箱の中で

***

率直に言って石持浅海氏は、
大好きであり同時に大嫌いでもある作家さんです。
この複雑な愛憎模様(笑)の理由は、氏の著作には
大いに惹かれる部分と腹立たしいほど気に入らない部分の両方が揃っているから。

まず後者の具体例を挙げると、
石持作品は
★登場人物がやけに持ち上げられて描かれる
 …その言動から十分に魅力は読み取れるのに、
 「彼は天才だ」「ただ者ではない」
 等と過剰に地の文で説明する。
 &カリスマ設定のキャラが全然そう見えないことも多い。
★議論があさっての方向にいく
 …事件の真相について登場人物たちが推理する際、
 その議論がまったく見当違いの方向へ発展することが多々ある。
 (ズブの素人でも決して迷い込まないだろう方向へ)
これさえなければ大好きなのに

ちなみに↑の2つ目は本作収録〝銃声でなく、音楽を〟に顕著。
「そんなまわりくどい議論しなくてもとっとと○○○○を○○れば(ネタバレにつき伏せ字で)
1分で解決するんじゃ。。。
「たったそれだけの材料からどうしてそんな超推理が。。。
と心中でツッコミ入れながら読んでしまった。
(というかこの短編はそれ以外にも何かとおかしい。
文章が雑だったり、〝美談〟として書かれている話が別に美談でも何でもなかったりetc.)

でも全体で見れば良作です。
「対人地雷廃絶!」という著者の主張がちょっと前に出すぎていて
〝物語〟でなくなってしまっている部分もあるにはあるけど、
その主張にうまくミステリを絡めることで
〝地雷〟という兵器の残酷性を読む者に伝え、興味を持たせ、真剣に考えさせる、
そんな力を秘めた小説であることは確かだと思う。
(〝利口な地雷〟読了後、私もしばらく対人地雷というものについて考え込んでしまったし)

石持氏が物語に織り込むテーマやそのテーマの下で行動し思考するキャラたちは
毎回魅力があって大好きなので(それが私がぶちぶち文句言いつつも氏の新作が出るたび
手にとってしまう理由でもある)、その点は本作も非常に楽しませてもらいました。

ちなみに
〝地雷原突破〟
〝利口な地雷〟
〝暗い箱の中で〟
の3作は氏のデビュー前の著作。
そうとは思えないほど文章がしっかりしてる。尊敬するなー

ちなみに(again)
私的に一番おすすめの石持作品はやっぱりこれ↓



大好き通り越して崇拝さえしています。
(どうやらカリスマらしい男性が全然カリスマに見えない点をのぞいて)
石持作品といわずこれまで読んだミステリ小説の中でも1、2を争うほどに好きな作品。
蛇足ですが表紙は文庫版より新書版↑のほうがきれいです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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