世界から疎外されている。
世界に囚われている。
「ポンパ!」 突如失踪してしまった叔父が発する奇声!
アパートに残された叔父の荷物を引き取りに行った主人公は、そこで叔父の残した日記を見つける。
現代において小説を書く試みとは何なのか?
その創作の根源にある問いに、自身の言葉を武器に格闘し、練り上げられていく言葉の運動。
精緻にはり巡らされた構造と、小説としての言葉の手触りを同居させた、著者の大胆な試み。
読書家としても知られる各氏をうならせた、驚異の才能のデビュー作!
***
私は集団で会話するというのが苦手で、
何故かというと会話というものは人数が多ければ多いほど
話されるテーマが単純になり流れの細かな修正も利かず、
まるで予め決められた脚本通りに喋っている気がしてきて怖くなるからなのですが
(話し相手たちがロボットみたいに感じられるというか、
自分たちをマリオネットのように操っている見えない上位次元の誰かの存在を感じるというか)
私にとってのその〝集団〟が〝世界〟にまで膨らんでしまったのが
本作に登場する主人公の〝叔父〟なのではないかと思う。
自意識が過剰な人間にとっては、
まるで芝居をしているような瞬間、つまり自分が素の自分でなくなる瞬間というのは
(たとえば恋人相手に、ただの〝人間〟としてではなく〝性〟ある自分として接するとき、
もしくは勤務中等、パブリックな自分として行動しているとき、
要するに〝作られた舞台〟の中に身を投じなければならなくなったとき)
ひどく苦痛であり生理的嫌悪感すら伴う。
〝叔父〟が夫婦でくつろいでいるときに奇声を発するのはそういった感情の所以だと思う。
現実世界で展開されるうすら寒い三文芝居を打破するため、
その場の雰囲気や会話の流れに沿わない言葉を敢えて口にする。
つまり〝アドリブ〟。そうすることで見えない何かに抵抗する。
〝凡庸〟とは確かに怖いもので(才能やルックスや肩書の話じゃなく、あくまで〝人〟として)、
私も正直先の読める言動しかしない人間には尋常ならざる嫌悪を感じることがある。
なので近所でその日の天気やつまらない噂話しかしないおばさんに話しかけられたり
異性とファッションの話だけして十分楽しそうな友人と会ったりすると
決して大げさでなく恐怖で脂汗が流れる(←先日友人宅でその発作に見舞われ
恥ずかしくも泣き出してしまいみんなにどうしたんだと驚かれた。どうにか誤魔化した)。
冠婚葬祭等の改まった席でも、
自分がアドリブの一切利かない空間に押し込められたことに対する苦痛と
周囲の人間の決まり切った機械的・芝居的所作に耐えられず叫び出したくなることがある。
本作の〝叔父〟はそういった傾向が私よりずっと顕著で
ハトにエサをやる老人相手にすら精神的発作を起こす人間であり、
その凡庸なもの・芝居めいたものに対する恐怖心や嫌悪の度合ははかり知れない。
読んでいて苦しくなる。
そういった意味ではこの小説は、自意識過剰な人間にしか理解できない、
非常に読み手を選ぶ小説であると思う。
ただ、うまく〝叔父〟にシンクロできた読者は、自分の中のもやもやをはっきりと文章に
してもらえたようで安堵を感じることは間違いない(私がそうだった)。
敢えてドキュメンタリータッチで書かれた本作、ノンフィクションとしての体を貫くならば
〝あの日~〟といったいかにも小説的(作中の言葉を借りていうならば〝作為的〟)な表現も
省いたほうがよかったのではと思うけれど、
やはり本質はあくまで小説である以上、そのあたりはしょうがないのかな。
純文学は客観的な感想が難しいですが、私にとっては良作でした。
上記の私の経験談を読んで引かなかった人、むしろほんの少しでも共感してくれた人には
おすすめします。
世界に囚われている。
「ポンパ!」 突如失踪してしまった叔父が発する奇声!
アパートに残された叔父の荷物を引き取りに行った主人公は、そこで叔父の残した日記を見つける。
現代において小説を書く試みとは何なのか?
その創作の根源にある問いに、自身の言葉を武器に格闘し、練り上げられていく言葉の運動。
精緻にはり巡らされた構造と、小説としての言葉の手触りを同居させた、著者の大胆な試み。
読書家としても知られる各氏をうならせた、驚異の才能のデビュー作!
***
私は集団で会話するというのが苦手で、
何故かというと会話というものは人数が多ければ多いほど
話されるテーマが単純になり流れの細かな修正も利かず、
まるで予め決められた脚本通りに喋っている気がしてきて怖くなるからなのですが
(話し相手たちがロボットみたいに感じられるというか、
自分たちをマリオネットのように操っている見えない上位次元の誰かの存在を感じるというか)
私にとってのその〝集団〟が〝世界〟にまで膨らんでしまったのが
本作に登場する主人公の〝叔父〟なのではないかと思う。
自意識が過剰な人間にとっては、
まるで芝居をしているような瞬間、つまり自分が素の自分でなくなる瞬間というのは
(たとえば恋人相手に、ただの〝人間〟としてではなく〝性〟ある自分として接するとき、
もしくは勤務中等、パブリックな自分として行動しているとき、
要するに〝作られた舞台〟の中に身を投じなければならなくなったとき)
ひどく苦痛であり生理的嫌悪感すら伴う。
〝叔父〟が夫婦でくつろいでいるときに奇声を発するのはそういった感情の所以だと思う。
現実世界で展開されるうすら寒い三文芝居を打破するため、
その場の雰囲気や会話の流れに沿わない言葉を敢えて口にする。
つまり〝アドリブ〟。そうすることで見えない何かに抵抗する。
〝凡庸〟とは確かに怖いもので(才能やルックスや肩書の話じゃなく、あくまで〝人〟として)、
私も正直先の読める言動しかしない人間には尋常ならざる嫌悪を感じることがある。
なので近所でその日の天気やつまらない噂話しかしないおばさんに話しかけられたり
異性とファッションの話だけして十分楽しそうな友人と会ったりすると
決して大げさでなく恐怖で脂汗が流れる(←先日友人宅でその発作に見舞われ
恥ずかしくも泣き出してしまいみんなにどうしたんだと驚かれた。どうにか誤魔化した)。
冠婚葬祭等の改まった席でも、
自分がアドリブの一切利かない空間に押し込められたことに対する苦痛と
周囲の人間の決まり切った機械的・芝居的所作に耐えられず叫び出したくなることがある。
本作の〝叔父〟はそういった傾向が私よりずっと顕著で
ハトにエサをやる老人相手にすら精神的発作を起こす人間であり、
その凡庸なもの・芝居めいたものに対する恐怖心や嫌悪の度合ははかり知れない。
読んでいて苦しくなる。
そういった意味ではこの小説は、自意識過剰な人間にしか理解できない、
非常に読み手を選ぶ小説であると思う。
ただ、うまく〝叔父〟にシンクロできた読者は、自分の中のもやもやをはっきりと文章に
してもらえたようで安堵を感じることは間違いない(私がそうだった)。
敢えてドキュメンタリータッチで書かれた本作、ノンフィクションとしての体を貫くならば
〝あの日~〟といったいかにも小説的(作中の言葉を借りていうならば〝作為的〟)な表現も
省いたほうがよかったのではと思うけれど、
やはり本質はあくまで小説である以上、そのあたりはしょうがないのかな。
純文学は客観的な感想が難しいですが、私にとっては良作でした。
上記の私の経験談を読んで引かなかった人、むしろほんの少しでも共感してくれた人には
おすすめします。
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この記事へのコメント
こんにちは!!
書き込みはお久しぶりです、いきなりの話で
申し訳ないのですが、お知らせしたかったので!
毎週月曜日にbay-fmで
ポルノグラフィティの新藤晴一さんが
「カフェイン11」というラジオ番組をしています。
(23:00~23:50)
まだ日程は未定のようですが、近日中に
伊坂幸太郎さんがゲストに来られるようです!
現在伊坂さんご本人への質問なども募集されているので、
興味がおありでしたら下記アドレスなどを
チェックされてはいかがかと。
http://mo-on.com/bayfm3/index.cgi?ve=2072028112313001701&PackBack=1743553&PackID=1743553&essid=qnENj63RsetLSUsvYmgWXQ
※ネットストリーミング放送も放送日の深夜から
翌週更新されるまでは聞けますが、音楽などは
カットされてしまいます。↓
http://www.bayfm.co.jp/ip/index.html
放送日が決まってからお知らせすればいいのですが、
もし忘れていたら申し訳ないので(^^);
というかすでに知っていたらごめんなさい。
それではまた!!
申し訳ないのですが、お知らせしたかったので!
毎週月曜日にbay-fmで
ポルノグラフィティの新藤晴一さんが
「カフェイン11」というラジオ番組をしています。
(23:00~23:50)
まだ日程は未定のようですが、近日中に
伊坂幸太郎さんがゲストに来られるようです!
現在伊坂さんご本人への質問なども募集されているので、
興味がおありでしたら下記アドレスなどを
チェックされてはいかがかと。
http://mo-on.com/bayfm3/index.cgi?ve=2072028112313001701&PackBack=1743553&PackID=1743553&essid=qnENj63RsetLSUsvYmgWXQ
※ネットストリーミング放送も放送日の深夜から
翌週更新されるまでは聞けますが、音楽などは
カットされてしまいます。↓
http://www.bayfm.co.jp/ip/index.html
放送日が決まってからお知らせすればいいのですが、
もし忘れていたら申し訳ないので(^^);
というかすでに知っていたらごめんなさい。
それではまた!!
おおー!
ありがとうです!!
情報も嬉しいし何より気持ちが嬉しいです(*>○<*)ファンだと覚えててくれてありがとうです!
だいぶ前に、買った音楽雑誌の〝アーティストのおすすめグッズプレゼントコーナー〟でポルノグラフィティが伊坂さんの〝チルドレン〟って小説を出してたんですが、もしかしてハルイチさんがファンだったんですね?!なんかウレシ@
伊坂さんの生声なんて聞いたことないからめっちゃ楽しみですよ><
(生声聞きたさに直木賞の発表日は一日テレビに張り付いてたんですが結局受賞を逃してしまう、ということがたびたびあったのでξ)
ちょくちょくチェックして楽しみにしてます!!!
伊坂さんが出た日にはぜひ一緒ににやにやしながらラジオを聴きましょう!笑
なんだか忘れてそうだなこいつと思ったら声かけてやってください^^;←死ぬほど楽しみにしてても当日に限って忘れ去って寝てたりとかするので。。。
(&今度また読書感想文コーナーがあったら参加してみようかな。たのしそうだー)
PS:
そういえば小説現代が思い出したように今になって印税を送ってきてくれたんですが(笑)、直後にパソコンが壊れ修理したために泡と消えました。タイミングがいいのか悪いのか。。。(TT)
パソも直ったしまた遊びいきますね!
情報も嬉しいし何より気持ちが嬉しいです(*>○<*)ファンだと覚えててくれてありがとうです!
だいぶ前に、買った音楽雑誌の〝アーティストのおすすめグッズプレゼントコーナー〟でポルノグラフィティが伊坂さんの〝チルドレン〟って小説を出してたんですが、もしかしてハルイチさんがファンだったんですね?!なんかウレシ@
伊坂さんの生声なんて聞いたことないからめっちゃ楽しみですよ><
(生声聞きたさに直木賞の発表日は一日テレビに張り付いてたんですが結局受賞を逃してしまう、ということがたびたびあったのでξ)
ちょくちょくチェックして楽しみにしてます!!!
伊坂さんが出た日にはぜひ一緒ににやにやしながらラジオを聴きましょう!笑
なんだか忘れてそうだなこいつと思ったら声かけてやってください^^;←死ぬほど楽しみにしてても当日に限って忘れ去って寝てたりとかするので。。。
(&今度また読書感想文コーナーがあったら参加してみようかな。たのしそうだー)
PS:
そういえば小説現代が思い出したように今になって印税を送ってきてくれたんですが(笑)、直後にパソコンが壊れ修理したために泡と消えました。タイミングがいいのか悪いのか。。。(TT)
パソも直ったしまた遊びいきますね!
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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