俺の過去はどこにある?
その水を飲むと過去を忘れてしまう忘却の川・レテ。
怜治はS大医学部で脳を研究している友人山村が記憶を消去する装置を開発中だと知り、
自分の記憶を消す決意をする。それは一世を風靡したバンド「レテ」のボーカルとして活躍した
栄光の二年間の記憶だった。
だが、過去と決別した怜治に連鎖するように、次々と奇妙な出来事が起きる!
前代未聞のアイデアと圧倒的なストーリーテリングで読者を魅了する驚愕の記憶ホラー。
第十一回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。
***
出だしを読んだときはかなり期待したのですが。。。
421Pを読み切ったという無意味な達成感しか結局は残らなかったというのが正直なところです。
淡々と整いすぎていてまるで資料集を読んでいるようだった同著者の乱歩賞受賞作
よりもエンターテインメント性が強く、単純な面白さだけでいえば
本作のほうが上なのですが、
なにぶんデビュー前の著作であるためか筆遣いや展開にかなり瑕疵が多い。
山田〇介並に拙い文章が頻出するし
(ほかにも〝~が鍵となる〟という表現や、
忘却の川をテーマにした話であるためか〝川〟に例えた比喩表現が多過ぎだったり)
登場人物の心理や物語の流れがぎこちなくて不自然だし
(例えば中盤では主人公が知らないはずだったことが終盤では前から知っていたかのように
描写されていたり、
新しいエピソードや人間がすべて唐突に出てくるので全体の統合性が無茶苦茶だったり)
キャラがあまりに主人公に都合よく動き過ぎていてまるでマネキンのようだし。
(主人公にホレている二人の女性があんなにあっさり仲良くなってしまうのは
いくらなんでも不自然過ぎるのでは)
瀬名秀明氏や鈴木光司氏のようなサイエンスホラー的展開も、
著者の独特な世界設定は確かに斬新で面白くは読めるものの
よくよく考えるとかなり矛盾点が多く、
またその世界観を説明するシーンにしても、やはり理系作家に比べると
筆が拙い印象は否めなかった。
(読みながら「著者の早瀬氏はたぶん文系の人だな」と感じてあとで見てみたら
やはり文系だった)
同じ日本ホラー小説大賞の佳作受賞作ならば、
こちらのほうがずっと面白かった。
あと、最低限量子力学の知識がないと本作はすんなり読めないです。
これから手にとるつもりの人は、せめて〝シュレーディンガーの猫〟ぐらいは
知っておくと吉。
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