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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「狂気に対抗するのは狂気じゃない、正気です」

 

ゴシック様式の尖塔が天空を貫き屹立する、流氷館。
いわくつきのこの館を学生サークル『あかずの扉』研究会のメンバー6人が訪れたとき、
満天驚異の現象と共に悲劇は発動した!
第12回メフィスト賞受賞。 

***

冒頭にかの島田荘司氏の著作〝斜め屋敷の犯罪〟の一文が掲げられているのを
不思議に思っていたのですが、著者の霧舎氏は彼のお弟子さんらしいですね。
理想の人間が御手洗潔の私としては羨ましい限り。

という戯言はまあいいとして。。。
小説家の〝弟子〟というのが具体的にどういうものなのかは知りませんが、
著者のデビュー作である本作、読んでいて〝島田荘司〟を彷彿とさせる箇所は少しもなかった。
それは素直にすごいと思う。
文体や作風が〝似てしまう〟という弊害を避けて
一人の作家から小説の書き方を学ぶのはかなり難しいことだと思うし。

ただ、かといって本作に特にオリジナリティ溢れる部分があるかといえばそうでもなく、
メフィスト賞受賞作にしてはむしろ地味なほど。
筆致・構成・キャラクター・ストーリー、そのすべてにおいてとりたてて真新しい部分もなく、
もうほんと典型的〝本格推理小説〟といった感じでした。

そして肝心の内容ですが。。。
正直私には楽しめなかった。
まず導入部分の〝謎の提起〟がひどく漠然としているので
(富豪の老人がミステリツアーを企画した理由が本当に復讐のためなのかどうかが曖昧、等)
ストーリーの主軸が見えず話に入っていきづらかったし、
全体的にあまりに突っ込みポイントが多いのも読んでいて少しつらかった。
(いや普通そこでそんな行動とらないでしょ、
それだけの手がかりからそこまで推理するのは無理でしょ、
そんなことに気づかない人間まずいないでしょ、
等理不尽な点が登場人物のほとんど(故人含む)に見受けられる)

建物を用いたトリックにしても、文章で読むには仕掛けが入り組みすぎていて
把握に時間がかかるせいで
「うわあそうだったのかあ!」
とすぐに驚けないし。
〝斜め屋敷の犯罪〟で使用されていたトリックは、同じ建物トリックでも
ひどくシンプルで分かりやすかった(かつ壮大だった)ため、
明かされたときには大声で叫んだものですが、本作にはその爽快感がない。

作中にばらまかれた謎に関しても、それぞれが妙にこんがらがっている上に
あまり興味を惹くものがないので、クライマックスで探偵役がそれら一つ一つを解き明かす
段になってもあまりテンションが上がらずぼんやりと読み飛ばすように読んでしまった。

そして何より一番きつかったのは、物語の端々で著者の〝顔〟が見えてしまうこと。
例を挙げていえば本作にはユイという女子高生が登場するのですが、
著者が彼女に萌えまくっているのがこれでもかとばかりに伝わってくる。
彼女の描写にやたら気合が入っていることからもそれが窺えるし、
主人公の青年と彼女のやり取りなんか、(やったことないですが)ギャルゲーのようで
読んでいて恥ずかしくなってしまった。
それ以外にも、探偵役がキメすぎだったり出てくる台詞がクサすぎだったり、
著者の意図(ああここで泣かせたいんだろうな、ここで(嫌な言い方ですが)
格好つけたいんだろうな、といった狙い)が過剰なまでに丸分かりなので、
小説じゃなく著者の日記を盗み見てしまっているような気分になることもしばしば。
某有名ブログにて、管理人さんがある小説をして

著者の「どうだ!」といった内面が全く現れていない。
それはすごい才能だと思われる。

と感想を述べていましたが、それでいったら本作は正反対。
なのでどうにも読みづらかった。
(有栖川有栖氏の著作も恋愛描写がすごいクサいけど、
書き手のあからさまな思惟みたいなものは感じたことがないなそういえば。
この違いは何なんだろう)

書けない作家さんでは絶対にないとは思いますが、
たぶんしばらくは彼の著作は手にとらないかな。。。
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こんばんは!かな?(^^); 
このくらいの時間になるともうだいぶ暗くなってきましたね…お邪魔します!

毎回思うのですが執筆活動をされながら、一日何冊くらいの本を読まれているのですか?(^^);

それとも「読む日」をもうけて執筆とは別の日にいっきに読まれているのでしょうか…
どちらにせよブログの更新も含めてすごいスピードなんだろうなぁと!!(><);

最近本をゆっくり読む時間がとれないのでこちらで
面白そうな本をチェックさせていただいています!
物を書くかたの意見なので参考になります♪(^^)

それではまた、執筆活動頑張ってください!!
ジンタ URL 2007/11/05(Mon)16:48:41 EDIT
そしておはようさんです^○^ 
ようこそようこそ^○^
隠居部屋のようなブログなのでお客さん大歓迎です@←切ない

今はもっと書く力をつけたくて勉強のために読書オンリーの日々なんですよ。でもまったく書かないと筆力衰えるので本の感想アップしてるのです@
でも私は遅読のほうですよ(一日にせいぜい150Pぐらい)。ただでさえ遅いのにわからない単語拾ったり人物や風景の描写方法とか頭の中で反すうしながら読んでるので。。。だからレビューはけっこう前に読んだやつとかも多いです@
ちなみに一度新作書き始めたら一切読書はしないですよ! どうしても影響されちゃうので。。。^^;

ていうか私こそジンタさんの作品仕上げのスピードに驚き中ですよ!
よくぞ短期間にここまでのものを何作も。。。! とかここのところずっと思ってました。
やっぱり〝集中力〟ですか?
私はおそろしいほど集中力ないからなあ。。。(追い詰められない限りは)

ちなみにジンタさんには(ヒマなときでいいので)恒川光太郎氏の〝夜市〟とか読んでみてほしいです^^
恒川氏の小説は
筆致が絵画的で
ストーリーがファンタジックで
ジンタさんのような絵を描く人には合うと(個人的には)かなり思います。
(彼の最新作〝秋の牢獄〟に出てくる〝魔法使いの祖母に育てられた幻術師の少女・リオ〟という設定も、ジンタさんぽい! と私的に思ってしまったぐらいだし@)
それ抜きにしても普通におすすめですが^○^
最初図書館で借りて読んだときにあまりの切なさと感動に衝撃を受けて即本屋で買ってきたほどです。
いつかラフな鉛筆描きでもいいので是非ジンタさんにあの小説の絵を描いてみてほしいですよ! ていうか頼むから描いてくださいm(__)m!

と、ラフな恐喝をしてみたところで(笑)長くなってしまったので今日はこれぐらいで^^;
また遊びにいきます@
fv 2007/11/06(Tue)05:52:53 EDIT
無題 
なるほど、やっぱり書いているときに他の人の
作品を読むと影響を受けてしまいますよね(^^);
私も漫画のときはそうでした、最近漫画をあまり読まなくなったのもそのときのクセが抜けてないからかもしれません。

>恒川光太郎氏の〝夜市〟
今ネットでいくつか検索してみたのですが、
ジャンルはホラーなのですね、ちょっと乙一さん的なノスタルジーな感じがしそうで面白そうです!!

ラフな恐喝(笑)もお受けしたくなりました、
やっぱり小説などで頭の中に描かれた情景を描くのは楽しいので!!
fvさんの理想にかなう絵が描けるかは解りませんが、今度読んでみたいと思います!
(ただやっぱり文庫が出てくれるととってもありがたいのですが!!金銭的に!TェT)
「秋の牢獄」のほうの「幻術師の少女」という響きも…そそられます!!(><);

私の絵は小さなサイズのものが多いので!そこにチマチマと描き込んでいく作業が好きなのです。
特別絵が上手いというわけではなく力押しで描き進めているほうなので、調子のいいときに描いてしまわないと後が詰まるというか、だれてしまうというか。(^^);

やっぱりいろいろな作品に触れることが一番の勉強ですね、
目やお体も大事にしながら、読書してください!!
それではまた、お互い頑張りましょう♪(^ェ^)
ジンタ URL 2007/11/06(Tue)14:52:30 EDIT
無題 
マンガ。。。
ジンタさんのマンガ本気で読んでみたいです。
マンガはもう描かないんですか?
もし書いたら是非! 是非読ませてください!
確かに絵も影響されますよね。私も歌の仕事で某歌手に歌い方が似てる似てると仕事先の人に昔よく指摘されてました(未だに少し似てるし。。。)。
うちのインコは私の声にだけ反応するんですが、その歌手の歌を聴かせたらやっぱり反応したので、歌い方だけじゃなく声質も似てるみたいですが。。。

>特別絵が上手いというわけではなく

またまた謙遜を!
とかベタなことは敢えて言いませんが(笑)、そんな風に自分を見られる人は絶対にこれからも伸びていきますよ(えらそうですが)。
私の知る限り、歌の世界でも小説の世界でも才能ある人ほど謙虚ですから!

&もう既に検索してくれたと思いますが
参考までに(うっとうしく笑)恒川光太郎氏参考サイト↓
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200710-02/
単行本高いですからね~!
くれぐれも無理なく@
図書館とか行くことあったときにでも是非借りてやってください。
そしてもし絵を描いてもらえた日には飛び上がって喜びます!(恐喝again)

日和、私はアニメを先に観たので
原作でハリスがごく普通に喋ってることに妙に違和感がありました笑

「絵の具のにおいで眠れない」、
なんかリアルでいい感じなので将来小説のネタに使わせてもらいます!(まじで)

今映画を一本観おわって疲れ果ててしまいました@
ではではまた!
fv 2007/11/07(Wed)00:09:32 EDIT
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自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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