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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「そうだね。自分っていう病気は一生治らないんだよ」



私は最上俊平、私立探偵である。ペット専門の探偵ではないのだ。
ある日、若く美しい女性が事務所を訪れてきた。
ペット捜しなら、もう――「うちの猫を捜してほしいんです」
はい喜んで。一ヶ月ぶりの仕事ではないか。
しかもそうこうするうち、「ブロンドで青い目の若い」秘書まで雇えることに。
え、な、なんだこいつは!?
おまけに猫捜しも、ただの猫捜しではなくなっていくのだった……
あの名作『ハードボイルド・エッグ』続編!

***

前作〝ハードボイルド・エッグ〟の帯に
「感涙必至! 決して電車の中で読まないように」的な注意書きがあり、
ひねくれものの私は「そんないかにもお涙頂戴な小説で泣くものか」と
憎たらしく鼻で笑い飛ばしながら読み始めたのですが、終盤で
まんまと号泣。

一ページ目から爆笑シーンてんこもりなせいで、
よけいこのシリーズは泣かせどころが涙腺に来るのです。
(塩をふりかけたスイカのごとく

そう、この〝エッグシリーズ〟、基本的には〝コメディ〟ミステリ。
今回も冒頭からハラが痛くなるほど笑わせてもらいました。
小説で爆笑するなんて夏目漱石の〝坊ちゃん〟以来。
〝明日の記憶〟等シリアスな著作も多々ある荻原氏ですが、
やっぱりこの人といえばユーモアだよなあ、と本作を読んで改めて実感。
何というかもう〝物語〟以前に〝文章〟が面白いのです。
これって実はすごいことだと思う。氏の才能のほどが伺えます。

どうしようもなくカッコつけてるけどどうしようもなくお人好し、
とぼけた性格をしてはいるけど
卵みたいに他人を拒絶する殻もかぶっていれば
悲しい過去を白身が黄身を包み込むように隠してもいる。
それでもぺしゃんと潰れてしまわず
ペット捜しにコロコロとあっちこっち転がりまわる柔軟でしぶとい固ゆでたまご。
そんな探偵・最上俊平のキャラも、男女問わず好きにならずにいられない。

前作の彼の相棒は80過ぎのおばあちゃんでしたが、
今回は十代のギャル・茜。
前作と同じくやはり一筋縄ではいかない相手ですが、
このでこぼこコンビのやり取りは微笑ましくユーモアもあって絶妙。
ただちょっと彼女の出番が少なかったことと、
彼女の喋りが80年代のスケバンぽくて違和感があったのがアレでしたが、
それでも十分に魅力的で愛せるキャラです。
というかこの物語の登場人物はみんながみんな愛すべきキャラすぎる。
どうしようもなく。

前作で最上俊平には孤独から脱して幸せになってほしいと思っていたので、
今作の希望を予感させるラストには満足しました。
サニーサイドアップ。
彼はようやく卵の固い殻をやぶって目玉焼きに昇格できたのかもしれないな。

私は素晴らしい小説に出会うと
読み終えたあとに(スタンディングオベーションのごとく)拍手をしてしまうという
妙な性癖があるのですが、
本作にも惜しみない拍手を送ってしまいました。
久しぶりにそうしたいと思える物語にめぐり合えた。

ものすごくおすすめです。
一作目を読んだことない人は是非! こっちも一緒に読んでね。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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