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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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中から、出さない。

 

アジアの西の果て、白い荒野に立つ矩形の建物。
いったん中に入ると、戻ってこない人間が数多くいると伝えられている。
その「人間消失のルール」とは?謎を解き明かすためにやってきた4人の男たちは、
果たして真相を掴むことができるのか?
異国の迷宮を舞台に描かれる、幻想的な長編ミステリー。 

***

アジア西の果て、それでイラクとの国境線に近いっていったら
おそらく舞台はイランでしょうか(作中では明確にされていませんが)。

まあとにかくそんな場所に建つ、豆腐そっくりの怪しげな建物。

tohu.jpg




←こんなん




ここ300年の間、その中に足を踏み入れた人間が忽然と姿を消してしまう事件が続発。
呪い? それとも人為的な力?
消失する人間としない人間の違い、そして神隠し現象発動の法則は?
それらの謎を解き明かすために、
オカマイケメン、小太りインテリ(いずれも日本人)、米国軍人、インテリ現地人の4人が
議論を戦わせMAZE(迷宮)の探索を重ねていきます。

仕掛けのある建造物を舞台に展開する本格ミステリ(綾辻行人氏の館シリーズや、
島田荘司氏の後期御手洗シリーズのような)かと思いきや、
物語中盤で探偵役の満が展開するのは超自然的なトンデモ推理。
しかし妙にリアリティがあり、読み手の恐怖を煽りながらも否応なしに作中に引き込んできます。

だからこそラストをああいったSFオチにしないでほしかったと個人的には思うのですが
(現実と非現実の間でいい感じに振れていた針が一気に非現実に傾いてしまい少し興醒め)
著者の恩田さんの作品には〝途中までミステリ、オチはSF〟といった体のものが
かなり多いので、それを念頭に置いて読むべきだった。
そうすればラストシーンは印象的かつ感動的なものとして受け止められてただろうにな。
本格推理だと思って読んだのが間違いでした。
ダ・ヴィンチ・コード的なエンディングを本作に期待しては駄目です。

それと細かい部分なのですが、破綻箇所がいくつかあったのも気になってしまった。
例を挙げると(ネタバレにつき薄字で)
★人間消失トリックに関する満の推理
 …〝侵入してきた男が最後のオスだと困るから、一人で入ってきた場合は殺さない〟
 ならどうしてロバートは消えたのか? 彼が最後のオスだった場合、MAZEが彼を
 取り込んだ時点でオスは全滅してしまうことになる。
★幻覚について
 …同じ麻薬を同時に服用したからといって見る幻覚まで同じということはない。
 なのになぜ満と恵弥はまったく同じ幻覚を見たのか?
 (それともこの不自然さも後のSF的展開に説得力を持たせるための伏線なのかな。
 現実にありえない空間なら現実にありえない植物が生えていても不思議じゃないし)

モチーフは面白く物語の緩急のリズムが絶妙なのであっという間に読み終えましたが、
〝佳作〟の範疇は出ないかな、というのが率直な感想です。
でも文章からにじみ出す独特かつ壮大な世界観は読んでいてとても心地よかった。
何だかPS2のゲーム〝ICO〟を連想したな。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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