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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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今も抱いている。



11年前に起こったハイジャック事件の人質だった聖子は、小学6年生となり、
那覇空港で命の恩人と再会を果たす。そこで明かされる思わぬ事実とは…。
「月の扉」事件のその後を描く。座間味くんが活躍する7編を収録。 

★収録作品★

 貧者の軍隊
 心臓と左手
 罠の名前
 水際で防ぐ
 地下のビール工場
 沖縄心中
 再会

***

個人的に大好きな作品である



の続編です。

前作で顔見知りとなった大迫警視と座間味くん(あだ名)、
今はたまにぶらりと飲みに行く仲。
酒の肴に大迫が語る解決済み(のはず)の事件に隠された真相を、
座間味くんが独自の視点と持ち前の頭脳で次々と解き明かしていく。
主人公を過剰に持ち上げて描く癖のある石持氏にしては珍しく(なんて言うと失礼ですが)
本作の座間味くんは背伸びのない等身大の魅力に溢れ、
物語の一つ一つも短編らしく小気味よく、それでいて印象に残るものも多くて、
とても面白く読むことができました。

話ごとのレビュー↓

◆貧者の軍隊◆

オーソドックスな本格ミステリといった感じ。
その年の傑作ミステリ短編を集めたアンソロジー〝ザ・ベスト・ミステリーズ〟にも
収録されている作品なので、物語の質は保証つき。
まあ悪く言ってしまえば、可もなく不可もなくなのですが。

◆心臓と左手◆

思いつきそうでなかなか思いつかないようなトリックが秀逸。
表題作だけあって、作中一まとまりがありインパクトも強かった。
今の時代だからこそできる犯罪。自分も試してみたくなってしまった(←危険因子)。

◆罠の名前◆

ラブストーリー+ミステリ、といったところ。
表題作と同じく、まずはそのタイトルセンスに感嘆。
石持氏はタイトルつけが非常にうまく、自作小説にイモタイトルしかつけられない私としては
羨ましい限り。
ストーリーも十分に面白く、そしてちょっと切ないです。
女性におすすめかな。

◆水際で防ぐ◆

著者の社会への皮肉りを感じる一品。
ミステリとして捉えるよりも、作中に込められた石持氏の思惟を汲み取って読むのが
楽しい。

◆地下のビール工場◆

座間味くんの発想の逆転には大いに意表を突かれましたが、
これもミステリとしては正直どうかな?
むしろほんのりホラーテイスト。

◆沖縄心中◆

本作で一番納得いかなかったのがこれ。
人間の心理描写がグチャグチャで不自然。
こんな心の動き方するヤツいないだろ~? と突っ込み入れながら読んでました。
連載後期に来て石持氏もしや息切れ?

◆再会◆

冒頭の少女のモノローグが美しいです。惹き込まれた。
でもだからこそ、作中に仕掛けられた謎&その種明かし部分の分かりにくさが残念。
本シリーズの締めであり、座間味くんと前作で彼が救った少女の再会という深いテーマも
孕んでいるのに、全体に薄っぺらで著者の言わんとすることも今ひとつ掴めなかった。
そもそもこの短編だけは理詰めじゃなく、ストーリー重視で描いてほしかったな。
座間味くんもうちょい空気読めよと。



なんだかんだ言っておすすめですが。
表紙も前作に引き続き美麗です。
あー座間味くんみたいな打てば響く頭脳の持ち主と友達になってみたいな。
彼はつくづく魅力的なキャラだ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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