「Coraggio,Maestro,Coraggio」
伝説のピアニスト、バローは生きていたのか?
40余年ぶりの新録音がCD化され、話題を呼んだ。
奇跡の楽壇復帰を仕掛けたのは、スイス在住の島村夕子であった。
しかし、ベストセラーを続けるCDに疑惑の影が。
美に憑かれた女のゆくところ、謎また謎。
最終章に衝撃的ラストが待ちかまえる音楽ミステリー。
***
本書の裏表紙にかの鮎川哲也氏のこんな賛辞が。
作者が第二作を書くかどうかは知らぬけれど、
この一遍だけでも、音楽ミステリーの作者としての氏の名は長く記憶されることだろう。
羨ましい(TT)音楽ミステリ作家を志す身としては
著者の宇山氏は愛媛の宇和島市職員で、
ピアニスト、エリック・ハイドシェック氏↓

の現地での再デビューコンサートに尽力された方とのことで、
本作もおそらくそういった経験を元に生み出されたものなんでしょう。
確かに氏の文章からは、単に資料を紐解いて書かれただけのものとは明らかに違う、
常に音楽を胸に抱いている人間のみが表現し得る匂い立つような旋律を感じ取ることができます。
物語は中盤まで一向に盛り上がりを見せず、
筆致にも独特の癖がありはじめのうちは正直読みづらいのですが、
そこさえ乗り越えてしまえばあとはもうページを繰る手が止まらない。
天才と呼んでも差し支えなく、人間的にも非常に聡明であるヒロインを
終始〝女〟としてしか見ることができず、取り巻きに嫉妬したりその美しさに見とれたりしてばかりの
主人公の男の器の小ささにはかなり苛々させられますが、
ピアノの調べや靴音、そういった数々の〝旋律〟から次々と事件の真相が導き出されていく様は
まさに音楽ミステリの真骨頂といった感じで、非常に楽しく読むことができました。
〝いくら天才とはいえその天才も一人の人間に過ぎない〟
といった一見当たり前のことも、ラストシーンを読んだときにはしみじみと胸に染み入ってきた。
むしろ同じ目線でものを見れる理解者がいないぶん、天才は普通の人間の何倍も孤独なんでしょう。
けれどどんなに孤独でも、心身も衰え惨めであっても、
自分がそれと共に生きていくと決めたものと一生涯かけて向き合い、
死をもっての〝神格化〟に容易に逃げ込んだりしない人間を、本当は天才と言うんだろうな。
人はどうしても後者をより持ち上げがちだけど。
天才ピアニスト・バローは、理解者の代わりに何万もの聴衆の温かな拍手を得て、
それに応える〝神宿る手〟を、ピアノの鍵盤上に滑らせることができた。
そして今後もきっとそうやって生きていく。
支える人なしじゃ生を繋げない。人が人であるが故の宿命だな。
話変わって本作のヒロイン、どうしても西本智実さん↓を彷彿とさせる。

去年サントリーホールに聴きにいった。最高だった。
彼女もまた〝神宿る手〟のもちぬしです。
なので彼女のファンの人も是非読んでみましょう。
まめちしき:
本編に登場するベートーヴェンの思い人〝テレーゼ〟は、
かの名曲〝エリーゼのために〟のエリーゼのこと。
ベートーヴェンがあまりに悪筆だったため、テレーゼがエリーゼと読み間違えられたんだそうです。
伝説のピアニスト、バローは生きていたのか?
40余年ぶりの新録音がCD化され、話題を呼んだ。
奇跡の楽壇復帰を仕掛けたのは、スイス在住の島村夕子であった。
しかし、ベストセラーを続けるCDに疑惑の影が。
美に憑かれた女のゆくところ、謎また謎。
最終章に衝撃的ラストが待ちかまえる音楽ミステリー。
***
本書の裏表紙にかの鮎川哲也氏のこんな賛辞が。
作者が第二作を書くかどうかは知らぬけれど、
この一遍だけでも、音楽ミステリーの作者としての氏の名は長く記憶されることだろう。
羨ましい(TT)音楽ミステリ作家を志す身としては
著者の宇山氏は愛媛の宇和島市職員で、
ピアニスト、エリック・ハイドシェック氏↓
の現地での再デビューコンサートに尽力された方とのことで、
本作もおそらくそういった経験を元に生み出されたものなんでしょう。
確かに氏の文章からは、単に資料を紐解いて書かれただけのものとは明らかに違う、
常に音楽を胸に抱いている人間のみが表現し得る匂い立つような旋律を感じ取ることができます。
物語は中盤まで一向に盛り上がりを見せず、
筆致にも独特の癖がありはじめのうちは正直読みづらいのですが、
そこさえ乗り越えてしまえばあとはもうページを繰る手が止まらない。
天才と呼んでも差し支えなく、人間的にも非常に聡明であるヒロインを
終始〝女〟としてしか見ることができず、取り巻きに嫉妬したりその美しさに見とれたりしてばかりの
主人公の男の器の小ささにはかなり苛々させられますが、
ピアノの調べや靴音、そういった数々の〝旋律〟から次々と事件の真相が導き出されていく様は
まさに音楽ミステリの真骨頂といった感じで、非常に楽しく読むことができました。
〝いくら天才とはいえその天才も一人の人間に過ぎない〟
といった一見当たり前のことも、ラストシーンを読んだときにはしみじみと胸に染み入ってきた。
むしろ同じ目線でものを見れる理解者がいないぶん、天才は普通の人間の何倍も孤独なんでしょう。
けれどどんなに孤独でも、心身も衰え惨めであっても、
自分がそれと共に生きていくと決めたものと一生涯かけて向き合い、
死をもっての〝神格化〟に容易に逃げ込んだりしない人間を、本当は天才と言うんだろうな。
人はどうしても後者をより持ち上げがちだけど。
天才ピアニスト・バローは、理解者の代わりに何万もの聴衆の温かな拍手を得て、
それに応える〝神宿る手〟を、ピアノの鍵盤上に滑らせることができた。
そして今後もきっとそうやって生きていく。
支える人なしじゃ生を繋げない。人が人であるが故の宿命だな。
話変わって本作のヒロイン、どうしても西本智実さん↓を彷彿とさせる。
去年サントリーホールに聴きにいった。最高だった。
彼女もまた〝神宿る手〟のもちぬしです。
なので彼女のファンの人も是非読んでみましょう。
まめちしき:
本編に登場するベートーヴェンの思い人〝テレーゼ〟は、
かの名曲〝エリーゼのために〟のエリーゼのこと。
ベートーヴェンがあまりに悪筆だったため、テレーゼがエリーゼと読み間違えられたんだそうです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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