不確定。
それが結論。
コスプレする少女と同人誌に燃える少女。
凄絶ないじめを受ける少女といじめる少年。
そして人肉しか食べられなくなってしまった少女!
彼女たちの中に美しい転校生がやってきた日、惨劇の幕が開かれる。
密室に捨て置かれた血塗れの死体は錯綜する事件の序章に過ぎない。
美少女学園ミステリーの最果て作。
***
読後「ほーん。。。」という、何とも微妙な感覚に包まれた本作。
シリーズ第一作目はハチャメチャながらも一応の収束はしていて面白く読めたけど、
続編である本作は腑に落ちない点も多いわあらゆる要素をぎゅうぎゅうに詰め込みすぎだわで
あまり楽しめなかった。
作者の佐藤氏のオタクっぷりも大爆発でついていけないとこも多かったし。
(佐藤氏とは同い年なので時々意味のわかるネタもあって吹いたりしたけど)
何より佐藤氏は結構文章が冗長というかくどいので、ミステリなのに疾走感に欠けたし。
本作はたとえるなら
「すべてが同時進行のネバーエンディングストーリー」って感じ。
一話一話丁寧に書き綴っていくというよりは、最後の最後で畳み掛けるように
ありとあらゆる真相(しかも突拍子もないを通り越して支離滅裂)が暴露されるので
視点が定まらず眼と精神がチカチカした。
唯一の収穫は、一作目の主人公の姉・鏡稜子のキャラが前作より引き立っていたことと
(まあヒロインだから当然だけど)
稜子が何であんな能力を身につけたのかが(コトの真偽はさておき)わかったこと。
本の登場人物を自分の中にインストールしてしまう癖のある私としては、
作中の羽美という登場人物の最後には軽蔑するような羨ましいような共感するような
何とも言えない感情を抱いてしまった(まあそれはもうひとりの少女、砂絵にも言えることだけど)。
エナメルはいつか剥がれるから羽美の今後を想像すると恐ろしいけどね。
よくもまあこんな破天荒な物語を堂々と書けたなあという点では佐藤氏を評価したいです。
それが結論。
コスプレする少女と同人誌に燃える少女。
凄絶ないじめを受ける少女といじめる少年。
そして人肉しか食べられなくなってしまった少女!
彼女たちの中に美しい転校生がやってきた日、惨劇の幕が開かれる。
密室に捨て置かれた血塗れの死体は錯綜する事件の序章に過ぎない。
美少女学園ミステリーの最果て作。
***
読後「ほーん。。。」という、何とも微妙な感覚に包まれた本作。
シリーズ第一作目はハチャメチャながらも一応の収束はしていて面白く読めたけど、
続編である本作は腑に落ちない点も多いわあらゆる要素をぎゅうぎゅうに詰め込みすぎだわで
あまり楽しめなかった。
作者の佐藤氏のオタクっぷりも大爆発でついていけないとこも多かったし。
(佐藤氏とは同い年なので時々意味のわかるネタもあって吹いたりしたけど)
何より佐藤氏は結構文章が冗長というかくどいので、ミステリなのに疾走感に欠けたし。
本作はたとえるなら
「すべてが同時進行のネバーエンディングストーリー」って感じ。
一話一話丁寧に書き綴っていくというよりは、最後の最後で畳み掛けるように
ありとあらゆる真相(しかも突拍子もないを通り越して支離滅裂)が暴露されるので
視点が定まらず眼と精神がチカチカした。
唯一の収穫は、一作目の主人公の姉・鏡稜子のキャラが前作より引き立っていたことと
(まあヒロインだから当然だけど)
稜子が何であんな能力を身につけたのかが(コトの真偽はさておき)わかったこと。
本の登場人物を自分の中にインストールしてしまう癖のある私としては、
作中の羽美という登場人物の最後には軽蔑するような羨ましいような共感するような
何とも言えない感情を抱いてしまった(まあそれはもうひとりの少女、砂絵にも言えることだけど)。
エナメルはいつか剥がれるから羽美の今後を想像すると恐ろしいけどね。
よくもまあこんな破天荒な物語を堂々と書けたなあという点では佐藤氏を評価したいです。
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この世界に繋ぎとめて欲しい。
「今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。――自殺、するんだ」
「誰が、自殺なんて」
「それが――きちんと覚えてないんだ。自殺の詳細」
不可思議なタイムスリップで三ヵ月先から戻された依田いつかは、
これから起こる“誰か”の自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと
“放課後の名前探し”をはじめる――。
青春ミステリの金字塔。
***
先日観たニュース番組で、ストーカーに恋人を殺された男性が
マスコミのインタビューに答えてたのですが、
その受け答えがあまりに淡白なので「こんなもんかなぁ。。。」と違和感があったのですが、
改めて考えてみると〝自己陶酔号泣野郎〟よりはよっぽどましだなと結論付けた次第。
人は自分の近しい人の不幸を自分の中に取り込んで、それに泣いたり憤ったりしてみせることで
自己陶酔ワールドに入り込んでしまう。
よく急死した人の恋人とかのブログ等を見ると「ポエムなの?」と突っ込みたくなるような文章が
多いけど、それもその自己陶酔の一環。
自分が今まで付き合ってきた相手もそういう人ばかりだったので、
本作の〝彼〟が〝彼女〟に惚れてしまうのはかなり頷けてしまった。
自分の不幸を己の人生をドラマチックにするための手段として利用する人じゃなく、
ちゃんと痛みをわかってくれる人、わかろうとしてくれる人と私はいたい。
本作、ミステリというよりはほとんど青春小説ですが、
それが終盤で一気に翻るので青春小説・ミステリ小説どっちが好きな人にもおすすめ。
ただ、ちょっと(いやかなり)登場人物たちがやりすぎな気がしましたが。。。
あそこまでやられたら自分なら感謝の念より怒りが若干勝る。ていうか
本作を本当にいじめられてる子が読んだらかなりの高確率で壁に本ぶん投げると思う。
秀人&椿のカップリングも、何か生理的に受け付けなくて出てくるたびにうんざりした。
そして本作の舞台のような田舎だか拓けてるのかわからない土地に住んでる私ですが、
そういう場所で起こる諸問題をつらつら書いてるのもあまりストーリーに関係ない気がして(&
普通に面白くなく)「このへんの描写削って一冊にまとめてくれよ」と思った。
あとひとつ苦言を言うなら、ラスト一行、ヒロイン・あすなのキャラがあのひと言で
ガラっと変わってしまって興ざめ。
いくらそれまでにいろいろあったとはいえ、突然相手の呼び名をあんな風に一足飛びで
変えるキャラじゃないだろ。最後の最後でキャラ変わる登場人物なんて初めて見たよ。
それまではいい感じだっただけに違和感&残念。
(まあ、それを抜きにしても、ちょっとしたミスで死ぬほどの罪悪感を感じたりと(克服はしますが)
完璧主義過ぎて引くところもありますが、こういうキャラ設定はこの話だけじゃないしなー
この作者の場合。。。「どうしてそこまで神経質になるの?」ってキャラがほんと多い。
神経質が昂じてノイローゼにまでなっている自分から見てもそう思えるんだから相当だと思う)
ところで著者の辻村さん、今回は珍しく文体がライトでしたが、
この人は初期のころの淡々と静かな筆致のほうが実力を発揮できる人だと思う。
少なくとも私はそっちのほうが好き。
ちなみに本作のコンセプト、どことなく彼女のデビュー作〝冷たい校舎の時は止まる〟に
似てますが、中身はまったくの別物なので〝冷たい~〟既読の人も大丈夫です。
個人的に、今まで読んだ辻村作品の中ではあまり感銘を受けない作品だったな。
ドビュッシー〝アラベスクNo.1〟。この曲聴くとどうしてもリリィ・シュシュを思い出すな。。。
「今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。――自殺、するんだ」
「誰が、自殺なんて」
「それが――きちんと覚えてないんだ。自殺の詳細」
不可思議なタイムスリップで三ヵ月先から戻された依田いつかは、
これから起こる“誰か”の自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと
“放課後の名前探し”をはじめる――。
青春ミステリの金字塔。
***
先日観たニュース番組で、ストーカーに恋人を殺された男性が
マスコミのインタビューに答えてたのですが、
その受け答えがあまりに淡白なので「こんなもんかなぁ。。。」と違和感があったのですが、
改めて考えてみると〝自己陶酔号泣野郎〟よりはよっぽどましだなと結論付けた次第。
人は自分の近しい人の不幸を自分の中に取り込んで、それに泣いたり憤ったりしてみせることで
自己陶酔ワールドに入り込んでしまう。
よく急死した人の恋人とかのブログ等を見ると「ポエムなの?」と突っ込みたくなるような文章が
多いけど、それもその自己陶酔の一環。
自分が今まで付き合ってきた相手もそういう人ばかりだったので、
本作の〝彼〟が〝彼女〟に惚れてしまうのはかなり頷けてしまった。
自分の不幸を己の人生をドラマチックにするための手段として利用する人じゃなく、
ちゃんと痛みをわかってくれる人、わかろうとしてくれる人と私はいたい。
本作、ミステリというよりはほとんど青春小説ですが、
それが終盤で一気に翻るので青春小説・ミステリ小説どっちが好きな人にもおすすめ。
ただ、ちょっと(いやかなり)登場人物たちがやりすぎな気がしましたが。。。
あそこまでやられたら自分なら感謝の念より怒りが若干勝る。ていうか
本作を本当にいじめられてる子が読んだらかなりの高確率で壁に本ぶん投げると思う。
秀人&椿のカップリングも、何か生理的に受け付けなくて出てくるたびにうんざりした。
そして本作の舞台のような田舎だか拓けてるのかわからない土地に住んでる私ですが、
そういう場所で起こる諸問題をつらつら書いてるのもあまりストーリーに関係ない気がして(&
普通に面白くなく)「このへんの描写削って一冊にまとめてくれよ」と思った。
あとひとつ苦言を言うなら、ラスト一行、ヒロイン・あすなのキャラがあのひと言で
ガラっと変わってしまって興ざめ。
いくらそれまでにいろいろあったとはいえ、突然相手の呼び名をあんな風に一足飛びで
変えるキャラじゃないだろ。最後の最後でキャラ変わる登場人物なんて初めて見たよ。
それまではいい感じだっただけに違和感&残念。
(まあ、それを抜きにしても、ちょっとしたミスで死ぬほどの罪悪感を感じたりと(克服はしますが)
完璧主義過ぎて引くところもありますが、こういうキャラ設定はこの話だけじゃないしなー
この作者の場合。。。「どうしてそこまで神経質になるの?」ってキャラがほんと多い。
神経質が昂じてノイローゼにまでなっている自分から見てもそう思えるんだから相当だと思う)
ところで著者の辻村さん、今回は珍しく文体がライトでしたが、
この人は初期のころの淡々と静かな筆致のほうが実力を発揮できる人だと思う。
少なくとも私はそっちのほうが好き。
ちなみに本作のコンセプト、どことなく彼女のデビュー作〝冷たい校舎の時は止まる〟に
似てますが、中身はまったくの別物なので〝冷たい~〟既読の人も大丈夫です。
個人的に、今まで読んだ辻村作品の中ではあまり感銘を受けない作品だったな。
ドビュッシー〝アラベスクNo.1〟。この曲聴くとどうしてもリリィ・シュシュを思い出すな。。。
たった一人きりで。
涼子の精神科クリニックに、発作を起すとトランス状態になり、手指を激しく動かす奇妙な動作をする
少女・あや香が訪れる。
同じ頃、涼子の学生時代の親友で、明晰な頭脳と美貌、そして旺盛な行動力を持つ祐美は、
留学先のアメリカで「不死の患者」と遭遇していた。2度にわたり死刑が執行されたが死に切れず、
全身を癌に冒されているにもかかわらず、その男には死が訪れない。
2人が直面した奇妙な患者たちに秘められたものは何か?
期待の新人作家が放つ、ホラーとヒューマン・ドラマが渾然一体となった傑作。
***
自分がとても尊敬する、知り合いの作家さんの著作です。
本作に使われているいくつかのファクターについて
(偶然にも)以前小説を書くために勉強しまくっていたせいか、
作中に張られた伏線にはかなり早い段階で気づいてしまった。
それでもラストの〝涙〟のシーンには泣きそうになったし、
もし自分に事前知識がなければもっと心を揺さぶられたのにと思うと悔しい。
それにしても著者のルカさんは個性的な男性の描写がうまい。
偏見かも知れないけど女性作家の描く男性像は型に嵌まってしまいがちなことが多いので、
この才能は貴重だと思う。
主人公の元同棲相手、特に派手な台詞やアクションをぶちかますわけでもないのに
いっそすがすがしいほどに嫌な奴すぎて笑える。
ストーカーの行動にも、鳥肌立ちつつ爆笑してしまった。
確かにあんなことされたらマヨネーズ食べられなくなるよな。。。
(私もあるトラウマから豚肉が食べられなくなったことがある。克服したけど)
ファンタジック・ミステリですが、大人の女性の精神的成長を描いた作品としても読めます。
人は自分が認める誰かに生き方やポリシーを揺さぶられがちだけど、
こんな風に自分ひとりの力で立てたらいいなと常々思っていたので染みた。
本作の元のタイトル〝カウントテン〟とうまく絡ませて表現されているところもよかった。
ただ、あくまで個人的には、ラスト1ページは要らなかった気がする。
そこは読者の想像で十分に補えたと思うから。
あと、主人公の友人の終盤での、「何で私じゃ駄目だったんだろう」というひと言。
主人公より聡明で頭が回るのにどうしてそれがわからないの? と違和感が。
頭脳は友人、けれど感情を読み取る術は主人公のほうが長けていた、という設定だとしても
物語全体を通して切れ者だった彼女がそのシーンだけ鈍感でちぐはぐな印象を受けた。
その点以外は非常に面白く一気に読めた。
次はおそらく短編集かな。楽しみにしてます、ルカさん。
(ところで作中に出てくる犬のレナードは、やっぱり〝レナードの朝〟から来てるのかな?)
それにしてもプロメテウスとかアトラスとかイクシオンとか。。。
ギリシャ神話の神様って皆揃いも揃って拷問されまくりだよな。。。
涼子の精神科クリニックに、発作を起すとトランス状態になり、手指を激しく動かす奇妙な動作をする
少女・あや香が訪れる。
同じ頃、涼子の学生時代の親友で、明晰な頭脳と美貌、そして旺盛な行動力を持つ祐美は、
留学先のアメリカで「不死の患者」と遭遇していた。2度にわたり死刑が執行されたが死に切れず、
全身を癌に冒されているにもかかわらず、その男には死が訪れない。
2人が直面した奇妙な患者たちに秘められたものは何か?
期待の新人作家が放つ、ホラーとヒューマン・ドラマが渾然一体となった傑作。
***
自分がとても尊敬する、知り合いの作家さんの著作です。
本作に使われているいくつかのファクターについて
(偶然にも)以前小説を書くために勉強しまくっていたせいか、
作中に張られた伏線にはかなり早い段階で気づいてしまった。
それでもラストの〝涙〟のシーンには泣きそうになったし、
もし自分に事前知識がなければもっと心を揺さぶられたのにと思うと悔しい。
それにしても著者のルカさんは個性的な男性の描写がうまい。
偏見かも知れないけど女性作家の描く男性像は型に嵌まってしまいがちなことが多いので、
この才能は貴重だと思う。
主人公の元同棲相手、特に派手な台詞やアクションをぶちかますわけでもないのに
いっそすがすがしいほどに嫌な奴すぎて笑える。
ストーカーの行動にも、鳥肌立ちつつ爆笑してしまった。
確かにあんなことされたらマヨネーズ食べられなくなるよな。。。
(私もあるトラウマから豚肉が食べられなくなったことがある。克服したけど)
ファンタジック・ミステリですが、大人の女性の精神的成長を描いた作品としても読めます。
人は自分が認める誰かに生き方やポリシーを揺さぶられがちだけど、
こんな風に自分ひとりの力で立てたらいいなと常々思っていたので染みた。
本作の元のタイトル〝カウントテン〟とうまく絡ませて表現されているところもよかった。
ただ、あくまで個人的には、ラスト1ページは要らなかった気がする。
そこは読者の想像で十分に補えたと思うから。
あと、主人公の友人の終盤での、「何で私じゃ駄目だったんだろう」というひと言。
主人公より聡明で頭が回るのにどうしてそれがわからないの? と違和感が。
頭脳は友人、けれど感情を読み取る術は主人公のほうが長けていた、という設定だとしても
物語全体を通して切れ者だった彼女がそのシーンだけ鈍感でちぐはぐな印象を受けた。
その点以外は非常に面白く一気に読めた。
次はおそらく短編集かな。楽しみにしてます、ルカさん。
(ところで作中に出てくる犬のレナードは、やっぱり〝レナードの朝〟から来てるのかな?)
それにしてもプロメテウスとかアトラスとかイクシオンとか。。。
ギリシャ神話の神様って皆揃いも揃って拷問されまくりだよな。。。
それでいい。
友人、家族、世界、愛――すべてを置き去りにして、
鬣の生えた少年スプリンター・成雄は、速さの果てを追う!!
そこに何があった?
何が見えた??
――誰がいた。
***
月並みな表現になるけど、走る、という行為を通して「生きるとは?」ということを描いた物語。
「動いて動いて動きまくれ! そしたらあとから結果はついてくる」、
そんな単純だけど難しいことが、舞城氏独特の感性で表現されている。
各章ごとに主人公・成雄のたどる人生や人間関係が微妙にズレているのは、
たぶん彼の足が速すぎて光速超えちゃって四次元に突入することで
何度もパラレルワールドに足を踏み入れている、ひとりでいくつもの人生を生きている、
そういうことなんじゃないかなと個人的には解釈している。
でもその中のどの世界にも、成雄にとって最愛の女性(同一人物)との出会いはあるわけだけど。
。。。まあ、動きまくってればいやでも出会える、
出会いたいなら動きまくれ、
異性だけじゃなく友人でも何でも、手に入れるための手段はそれだということなんでしょう。
その出会いが必ずしもいいものであるとは限らないけど。
そういえば前に音速で走るマシンを発明して自らそれに乗ってたおじさんが外国にいたけど、
マシンが飛び出して停まったときにおじさん鼻と耳から血ー出してたな。
本作に登場する音速ランナーたちは大丈夫なんだろうか。
唯一それだけが気になった。
「結果はあとからついてくる」をモットーに掲げつつ、その結果さえも置き去りにしてしまうほど
俊足のランナー・成雄。
その速さは彼が本来持ってるであろう人間らしい感情も追いつけないほど。
しょっちゅう何かと不要なもの(特に自分の気持ち)に追いつかれてはのしかかられてる
自分には憧れの存在。成雄はすごい。
読んでてスカっとする物語。
友人、家族、世界、愛――すべてを置き去りにして、
鬣の生えた少年スプリンター・成雄は、速さの果てを追う!!
そこに何があった?
何が見えた??
――誰がいた。
***
月並みな表現になるけど、走る、という行為を通して「生きるとは?」ということを描いた物語。
「動いて動いて動きまくれ! そしたらあとから結果はついてくる」、
そんな単純だけど難しいことが、舞城氏独特の感性で表現されている。
各章ごとに主人公・成雄のたどる人生や人間関係が微妙にズレているのは、
たぶん彼の足が速すぎて光速超えちゃって四次元に突入することで
何度もパラレルワールドに足を踏み入れている、ひとりでいくつもの人生を生きている、
そういうことなんじゃないかなと個人的には解釈している。
でもその中のどの世界にも、成雄にとって最愛の女性(同一人物)との出会いはあるわけだけど。
。。。まあ、動きまくってればいやでも出会える、
出会いたいなら動きまくれ、
異性だけじゃなく友人でも何でも、手に入れるための手段はそれだということなんでしょう。
その出会いが必ずしもいいものであるとは限らないけど。
そういえば前に音速で走るマシンを発明して自らそれに乗ってたおじさんが外国にいたけど、
マシンが飛び出して停まったときにおじさん鼻と耳から血ー出してたな。
本作に登場する音速ランナーたちは大丈夫なんだろうか。
唯一それだけが気になった。
「結果はあとからついてくる」をモットーに掲げつつ、その結果さえも置き去りにしてしまうほど
俊足のランナー・成雄。
その速さは彼が本来持ってるであろう人間らしい感情も追いつけないほど。
しょっちゅう何かと不要なもの(特に自分の気持ち)に追いつかれてはのしかかられてる
自分には憧れの存在。成雄はすごい。
読んでてスカっとする物語。
つまり、幻滅からの逃避。
50年前、日本画家・香山風采は息子・林水に家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残して
密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、
現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。
二つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。
***
ミステリパートは今まで読んだS&Mシリーズの中で最低だった。
アンフェア過ぎるにもほどがある。
何だ、記憶の混乱って?
何だ、子どもの言い回しの妙って?
ていうかこんなの正直ミステリじゃないし。
560P読んだ時間と体力と精神力返してほしい。
(犬が吠えた理由だけはまあ評価できるけど。。。)
。。。と、言いたいところなのですが、
それを補うかのようにストーリーパートにかなりの進展があったので、
まあ±0というところでしょうか。
いやー、(萌絵も言ってたけど)犀川助教授があんなにも単純だったとは。。。
萌絵の計略には正直ムカつきましたが(自分も一度友人にやられてぶち切れた経験があるので)
それであの面白い展開になったのだからまあいいか、というところ。
犀川先生、自分の気持ちに少しずつ気づき始めています(というか気づくことを自分に
許し始めています)。
事件のほうのトリックはさておき、鍵のトリックは面白かったなー。
でんじろう先生に頼んで是非あれを作ってみてほしい。
ミステリとして読まなければ楽しめる一作。
単純に犀川&萌絵のコンビが好きな人にはおすすめです。
50年前、日本画家・香山風采は息子・林水に家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残して
密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、
現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。
二つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。
***
ミステリパートは今まで読んだS&Mシリーズの中で最低だった。
アンフェア過ぎるにもほどがある。
何だ、記憶の混乱って?
何だ、子どもの言い回しの妙って?
ていうかこんなの正直ミステリじゃないし。
560P読んだ時間と体力と精神力返してほしい。
(犬が吠えた理由だけはまあ評価できるけど。。。)
。。。と、言いたいところなのですが、
それを補うかのようにストーリーパートにかなりの進展があったので、
まあ±0というところでしょうか。
いやー、(萌絵も言ってたけど)犀川助教授があんなにも単純だったとは。。。
萌絵の計略には正直ムカつきましたが(自分も一度友人にやられてぶち切れた経験があるので)
それであの面白い展開になったのだからまあいいか、というところ。
犀川先生、自分の気持ちに少しずつ気づき始めています(というか気づくことを自分に
許し始めています)。
事件のほうのトリックはさておき、鍵のトリックは面白かったなー。
でんじろう先生に頼んで是非あれを作ってみてほしい。
ミステリとして読まなければ楽しめる一作。
単純に犀川&萌絵のコンビが好きな人にはおすすめです。
たいせつでやわらかなもの。
仲良しだったコジマとキジマ、愛犬と共に野原を駆けめぐった少年の日々。
やがて二人は別の道を歩むようになるが、決して忘れない言葉があった。
幼いころ、森に住む老人に聞いた「盾、シールドが必要だ」という謎の言葉が意味するものとは――。
自分で自分を守るしかないのか、それとも…?
不安と希望をあわせ持つすべての人に贈る、心温まる物語。
***
巷では村上春樹氏の新作〝1Q84〟が騒がれている今日この頃ですが、
一方の私はWムラカミの龍氏のほうの著作である本作が気になり手に取った次第。
一応は童話ですが、どちらかというとやや大人向け。
ちっちゃい子は普通に理解が難しい内容かも(でも大きくなるにつれて「あのときのあの文章は
そういうことだったのか!」と気づくだろうから読んでおいて損はないですが)。
シールド=自分を守るもの。
自分の何を?
それは心だったり、プライドだったり、身体だったりと様々ですが
RPGゲームに出てくる様々な盾の中から自分に合ったものをセレクトするように、
どの盾が今の自分に一番必要なのかを自覚しながら生きていくんだよ、というのが
本作の基本テーマです。
それはとても難しいことだし、そのときは最強の盾だと思ってもあとになって要らなくなったりと
〝唯一の盾〟が存在しない以上必要に応じて自分で取り替えていかなきゃならないのですが、
そこは自分の中心にある〝たいせつでやわらかなもの〟の声をちゃんと聞いて
選び取っていく必要があります。
でも本当に理想的なのは、盾が要らないぐらい自分の〝たいせつでやわらかなもの〟を
鍛えることなのですが。
でもそこまで強くなってしまったら、
盾=大切な人
も不要になってしまうので寂しいか。
自分を強くしてくれる温かなものはやっぱり手放したくないものです。
因みに余談ですが私は剣はたくさん所持してるのですが盾はひとつも身につけてないので、
〝たいせつでやわらかなもの〟が一撃でやられてしまうのでちょっとヤバめです。
今必要な盾はもうわかってるから探さなきゃな。
仲良しだったコジマとキジマ、愛犬と共に野原を駆けめぐった少年の日々。
やがて二人は別の道を歩むようになるが、決して忘れない言葉があった。
幼いころ、森に住む老人に聞いた「盾、シールドが必要だ」という謎の言葉が意味するものとは――。
自分で自分を守るしかないのか、それとも…?
不安と希望をあわせ持つすべての人に贈る、心温まる物語。
***
巷では村上春樹氏の新作〝1Q84〟が騒がれている今日この頃ですが、
一方の私はWムラカミの龍氏のほうの著作である本作が気になり手に取った次第。
一応は童話ですが、どちらかというとやや大人向け。
ちっちゃい子は普通に理解が難しい内容かも(でも大きくなるにつれて「あのときのあの文章は
そういうことだったのか!」と気づくだろうから読んでおいて損はないですが)。
シールド=自分を守るもの。
自分の何を?
それは心だったり、プライドだったり、身体だったりと様々ですが
RPGゲームに出てくる様々な盾の中から自分に合ったものをセレクトするように、
どの盾が今の自分に一番必要なのかを自覚しながら生きていくんだよ、というのが
本作の基本テーマです。
それはとても難しいことだし、そのときは最強の盾だと思ってもあとになって要らなくなったりと
〝唯一の盾〟が存在しない以上必要に応じて自分で取り替えていかなきゃならないのですが、
そこは自分の中心にある〝たいせつでやわらかなもの〟の声をちゃんと聞いて
選び取っていく必要があります。
でも本当に理想的なのは、盾が要らないぐらい自分の〝たいせつでやわらかなもの〟を
鍛えることなのですが。
でもそこまで強くなってしまったら、
盾=大切な人
も不要になってしまうので寂しいか。
自分を強くしてくれる温かなものはやっぱり手放したくないものです。
因みに余談ですが私は剣はたくさん所持してるのですが盾はひとつも身につけてないので、
〝たいせつでやわらかなもの〟が一撃でやられてしまうのでちょっとヤバめです。
今必要な盾はもうわかってるから探さなきゃな。
それぞれの場所へ。
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。
開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。
凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。
でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。
第31回メフィスト賞受賞作。
***
とにかく登場人物一人ひとりを丁寧に描写する作家さんだと思う。
だからこの人の書く物語に出てくるキャラを、読後一人として忘れたことはない。
そしてそれぞれのキャラに纏わるエピソードづくり、それがもう本当にうまい。
非常に印象的で、それだけでひとつの独立した物語になってしまうような挿話を
次々と持ってくる想像力、これだけで上中下巻(文庫版は上下巻)飽きることなく一気に読める。
最初から最後まで読んでいて本当に楽しかった。
辻村作品は「ああこの世界を離れたくないなあ」と、いつだって自分に思わせる。
ただ彼女の著作に総じて見られる欠点として、
〝ヒロインが守られすぎ〟ということがある。
ヒロインの周囲には常に見た目もよく人間性も兼ね添えているナイトが必ず複数存在する。
それも男として女を守るというだけならまだしも、本来理解できるはずのない
〝異性の心理〟を見事読み取ってその上でヒロインを心配したりするものだから、
「同性ですら難しいそれを異性がやるのはちょっとなあ」と違和感を感じる。
叙述トリックもちょっと食傷気味。実力は十分にある人なのだから、もうそろそろ違う手法で
読み手を驚かせてみてほしい。
女同士が付き合う上での精神的葛藤の描写のうまさは相変わらず鳥肌が立つほど。
きっと著者自身がかつてそういうことに悩んできた繊細な人なのだと思う(まあ繊細じゃなきゃ
小説なんて書けないけど。。。)。
女ならではの精神の弱さ・ずるさ・したたかさ。。。そういったものが本作の〝犯行〟の動機に
なっているのはなかなかに面白かった。まあ〝犯人〟はちょっと詰めが甘いけど、
そこはまだ高校生で子どもだったからということで納得しておきます。
ラストのお祭りシーンでの二人の会話には青臭さを感じてしまい
読んでいてちょっと恥ずかしくなりましたが、それを抜きにすればすごくよくできた
物語だと思う。
人は誰でも常に何かに囚われて生きていて、だけどその見えない檻を
誰にも見せずに生きている。
本作の校舎みたいな場所に閉じ込められれば、人間はもっと相手を(特に嫌いだったり
苦手な相手を)違った視点で見れるのに、と、少しやるせなくなってしまった。
ところで一番最後のあのシーンは、幽霊、もしくは幻、そういう解釈でいいのかな。
こんな風に突き詰めるほうが野暮なのかな。
何にせよ気持ちのいいシーンだった。
因みにこのマンガに収録されている〝Field of dreams!〟および〝Escape from!!〟は
本作とまったく同じ趣旨の物語なので、本作が面白く読めた人には非常におすすめ。
追記:2018年再読。
ラストのあのシーンは、「死んだあのひと」が精神世界から解放されたのだと
今更ながらわかる。
そして深月と景子にイラっときた。ひとの迷惑を微塵も考えないメンヘラと
男っぽさを前面に出しながら実は誰よりも「女」が強いあいつに。
でもやっぱりいい物語であることに変わりはない。
辻村氏の最新作「青空と逃げる」はつまらな過ぎて読むのが苦痛で
早々にほっぽりだしたので、このころみたいな物語をまた書いてほしいなあと
切に願う。
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。
開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。
凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。
でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。
第31回メフィスト賞受賞作。
***
とにかく登場人物一人ひとりを丁寧に描写する作家さんだと思う。
だからこの人の書く物語に出てくるキャラを、読後一人として忘れたことはない。
そしてそれぞれのキャラに纏わるエピソードづくり、それがもう本当にうまい。
非常に印象的で、それだけでひとつの独立した物語になってしまうような挿話を
次々と持ってくる想像力、これだけで上中下巻(文庫版は上下巻)飽きることなく一気に読める。
最初から最後まで読んでいて本当に楽しかった。
辻村作品は「ああこの世界を離れたくないなあ」と、いつだって自分に思わせる。
ただ彼女の著作に総じて見られる欠点として、
〝ヒロインが守られすぎ〟ということがある。
ヒロインの周囲には常に見た目もよく人間性も兼ね添えているナイトが必ず複数存在する。
それも男として女を守るというだけならまだしも、本来理解できるはずのない
〝異性の心理〟を見事読み取ってその上でヒロインを心配したりするものだから、
「同性ですら難しいそれを異性がやるのはちょっとなあ」と違和感を感じる。
叙述トリックもちょっと食傷気味。実力は十分にある人なのだから、もうそろそろ違う手法で
読み手を驚かせてみてほしい。
女同士が付き合う上での精神的葛藤の描写のうまさは相変わらず鳥肌が立つほど。
きっと著者自身がかつてそういうことに悩んできた繊細な人なのだと思う(まあ繊細じゃなきゃ
小説なんて書けないけど。。。)。
女ならではの精神の弱さ・ずるさ・したたかさ。。。そういったものが本作の〝犯行〟の動機に
なっているのはなかなかに面白かった。まあ〝犯人〟はちょっと詰めが甘いけど、
そこはまだ高校生で子どもだったからということで納得しておきます。
ラストのお祭りシーンでの二人の会話には青臭さを感じてしまい
読んでいてちょっと恥ずかしくなりましたが、それを抜きにすればすごくよくできた
物語だと思う。
人は誰でも常に何かに囚われて生きていて、だけどその見えない檻を
誰にも見せずに生きている。
本作の校舎みたいな場所に閉じ込められれば、人間はもっと相手を(特に嫌いだったり
苦手な相手を)違った視点で見れるのに、と、少しやるせなくなってしまった。
ところで一番最後のあのシーンは、幽霊、もしくは幻、そういう解釈でいいのかな。
こんな風に突き詰めるほうが野暮なのかな。
何にせよ気持ちのいいシーンだった。
因みにこのマンガに収録されている〝Field of dreams!〟および〝Escape from!!〟は
本作とまったく同じ趣旨の物語なので、本作が面白く読めた人には非常におすすめ。
追記:2018年再読。
ラストのあのシーンは、「死んだあのひと」が精神世界から解放されたのだと
今更ながらわかる。
そして深月と景子にイラっときた。ひとの迷惑を微塵も考えないメンヘラと
男っぽさを前面に出しながら実は誰よりも「女」が強いあいつに。
でもやっぱりいい物語であることに変わりはない。
辻村氏の最新作「青空と逃げる」はつまらな過ぎて読むのが苦痛で
早々にほっぽりだしたので、このころみたいな物語をまた書いてほしいなあと
切に願う。
きみはいったい、だれなんだ?
第3回本格ミステリ大賞受賞のほか「このミステリーがすごい!」第2位など話題をさらい、
合計100万部を誇る乙一の代表作「GOTH」。
2008年12月20日に全国公開された映画「GOTH」の試写を観て
インスピレーションを受けた乙一が、急遽、「GOTH」の後日談と言える新作小説を書き下ろした。
単行本刊行から6年、執筆時から7年ぶりのことであり、
旧作を振り返らないことで知られる乙一にとって、今回の書き下ろしは非常に稀有なことといえる。
***
〝GOTH〟はマンガ版まで持っているぐらい大好きな作品で
それの番外編ということで大喜びで手にとったのですが。。。
あまりカタルシスは得られなかった、というのが正直なところ。
〝GOTH〟という物語の軸であるミステリ部分はなりを潜め(犯人も全然猟奇的じゃないし)、
文章もまだ頻繁に作品を発表していたころの乙一氏のそれに比べて
やや理屈っぽくなってしまっている(&冒頭が〝ZOO〟とかぶってる)。
感性で物語を書く作家さんだったのに、この変化は一体? と首を捻ってしまった。
どちらかというとミステリというより、主人公の〝僕〟〝森野〟そして〝犯人〟、
それぞれの内面を描くことに重きを置いていたような印象を受けた。
まあ犯人の心理の掘り下げはなかなか興味深かったものの、
〝僕〟と〝森野〟の人間性についてはオリジナルのほうで既に書かれているので
それの再確認をしただけ、といった感じでしたが。
ていうか本編よりも彼女↓の存在のほうがインパクト強かった。こんな子が存在するとは。。。
ちなみに今回のこの番外編は、オリジナルの〝GOTH〟単行本のカバー裏の写真に
乙一氏は着想を得て書いたものではないかと踏んでるんだけど。。。どうかな?
いやーそれにしても、本作は本当に〝森の夜〟の話だったなー(ていうか森野の夜?)。
もちろん狙ってるんだろうけど。。。
第3回本格ミステリ大賞受賞のほか「このミステリーがすごい!」第2位など話題をさらい、
合計100万部を誇る乙一の代表作「GOTH」。
2008年12月20日に全国公開された映画「GOTH」の試写を観て
インスピレーションを受けた乙一が、急遽、「GOTH」の後日談と言える新作小説を書き下ろした。
単行本刊行から6年、執筆時から7年ぶりのことであり、
旧作を振り返らないことで知られる乙一にとって、今回の書き下ろしは非常に稀有なことといえる。
***
〝GOTH〟はマンガ版まで持っているぐらい大好きな作品で
それの番外編ということで大喜びで手にとったのですが。。。
あまりカタルシスは得られなかった、というのが正直なところ。
〝GOTH〟という物語の軸であるミステリ部分はなりを潜め(犯人も全然猟奇的じゃないし)、
文章もまだ頻繁に作品を発表していたころの乙一氏のそれに比べて
やや理屈っぽくなってしまっている(&冒頭が〝ZOO〟とかぶってる)。
感性で物語を書く作家さんだったのに、この変化は一体? と首を捻ってしまった。
どちらかというとミステリというより、主人公の〝僕〟〝森野〟そして〝犯人〟、
それぞれの内面を描くことに重きを置いていたような印象を受けた。
まあ犯人の心理の掘り下げはなかなか興味深かったものの、
〝僕〟と〝森野〟の人間性についてはオリジナルのほうで既に書かれているので
それの再確認をしただけ、といった感じでしたが。
ていうか本編よりも彼女↓の存在のほうがインパクト強かった。こんな子が存在するとは。。。
ちなみに今回のこの番外編は、オリジナルの〝GOTH〟単行本のカバー裏の写真に
乙一氏は着想を得て書いたものではないかと踏んでるんだけど。。。どうかな?
いやーそれにしても、本作は本当に〝森の夜〟の話だったなー(ていうか森野の夜?)。
もちろん狙ってるんだろうけど。。。
さあ、引き金を引こうか。
妹が首を吊った、とイカレた母親からの電話。愉快そうな侵入者は、妹の陵辱ビデオを見せたうえ、
レイプ魔たちの愛娘がどこにいるか教えてくれる。僕はスタンガンを手に捕獲を開始。でも街には
77人の少女を餌食にした“突き刺しジャック”も徘徊していた――。
世界を容赦なく切り裂くメフィスト賞受賞作。
***
【flicker】…揺らぐ光。点滅。ちらつき。
純文学寄りになってからの著作しか読んでなかったので、
佐藤氏のデビュー作である本作を読んで「うおーこんなん書いてたのかー!」と
違和感ありまくり、でもかなり楽しかった。
って、「楽しい」なんてうかつに言っちゃいけない内容ではあるんですが。。。
そもそもどうして本作だけ未読だったかというと、図書館に唯一これだけが置いてなかったからで、
何でデビュー作なのにこれだけないんだよ、続編は普通にあるのにこれは一体どういうことだよ、と
常々思っていたんですが本作を読み終えて納得。
一応ラノベのカテゴリーに入る、子供がすぐ手にとれちゃうこれを、
図書館に置いておいたら確かにまずいわ。
あらすじを読んでもらえばその意味はだいたいわかると思うけど、
読む子によっちゃ潜在意識下のやばいスイッチがONになっちゃう可能性がなきにしもあらず。
今さらそういうものにアイデンティティを揺るがされる心配もない私としては
非常に面白く読めましたが。
突き刺しジャックの殺人の動機なんか斬新でインパクト強くてしかもかなり切ないし。
主人公が傷ついた犬と自分をクロスオーバーさせるクライマックスには
現在の佐藤氏の純文学性が垣間見えた気がしておっと思わせられたし。
ラスト一行なんて最早どうリアクションしていいかわからないし(読み終えた本に対する
リアクションに困ったことなんて初めてかも)。
佐藤氏と同じメフィスト作家である辻村深月さんの某作品を先に読んでしまっていたせいで
後半のある〝真相〟にはあまり驚けませんでしたが、
「あーメフィスト作家って考えつくネタまでかぶるんだなー」と妙な感動をしてしまったりもした。
(上のふたりと同じネタ使ってたメフィスト作家が実はあと一人いたりする)
読者にすり寄ってこず、どこまでも突き放して「ついてきたけりゃついてくれば?」的な
スタンスを常に崩さないメフィスト作家の著作はもう本当に心底好きです。
人を選ぶかもですがおすすめ。
余談:
ていうかなんか本作にすごいFFⅩと似てる部分あるんだけど(パクリとかそういうことじゃなく
作中で連発されるある台詞がかぶってる)、
発売したの同時期だしたぶん偶然なんだろうなあ。。。でもすごいな。
妹が首を吊った、とイカレた母親からの電話。愉快そうな侵入者は、妹の陵辱ビデオを見せたうえ、
レイプ魔たちの愛娘がどこにいるか教えてくれる。僕はスタンガンを手に捕獲を開始。でも街には
77人の少女を餌食にした“突き刺しジャック”も徘徊していた――。
世界を容赦なく切り裂くメフィスト賞受賞作。
***
【flicker】…揺らぐ光。点滅。ちらつき。
純文学寄りになってからの著作しか読んでなかったので、
佐藤氏のデビュー作である本作を読んで「うおーこんなん書いてたのかー!」と
違和感ありまくり、でもかなり楽しかった。
って、「楽しい」なんてうかつに言っちゃいけない内容ではあるんですが。。。
そもそもどうして本作だけ未読だったかというと、図書館に唯一これだけが置いてなかったからで、
何でデビュー作なのにこれだけないんだよ、続編は普通にあるのにこれは一体どういうことだよ、と
常々思っていたんですが本作を読み終えて納得。
一応ラノベのカテゴリーに入る、子供がすぐ手にとれちゃうこれを、
図書館に置いておいたら確かにまずいわ。
あらすじを読んでもらえばその意味はだいたいわかると思うけど、
読む子によっちゃ潜在意識下のやばいスイッチがONになっちゃう可能性がなきにしもあらず。
今さらそういうものにアイデンティティを揺るがされる心配もない私としては
非常に面白く読めましたが。
突き刺しジャックの殺人の動機なんか斬新でインパクト強くてしかもかなり切ないし。
主人公が傷ついた犬と自分をクロスオーバーさせるクライマックスには
現在の佐藤氏の純文学性が垣間見えた気がしておっと思わせられたし。
ラスト一行なんて最早どうリアクションしていいかわからないし(読み終えた本に対する
リアクションに困ったことなんて初めてかも)。
佐藤氏と同じメフィスト作家である辻村深月さんの某作品を先に読んでしまっていたせいで
後半のある〝真相〟にはあまり驚けませんでしたが、
「あーメフィスト作家って考えつくネタまでかぶるんだなー」と妙な感動をしてしまったりもした。
(上のふたりと同じネタ使ってたメフィスト作家が実はあと一人いたりする)
読者にすり寄ってこず、どこまでも突き放して「ついてきたけりゃついてくれば?」的な
スタンスを常に崩さないメフィスト作家の著作はもう本当に心底好きです。
人を選ぶかもですがおすすめ。
余談:
ていうかなんか本作にすごいFFⅩと似てる部分あるんだけど(パクリとかそういうことじゃなく
作中で連発されるある台詞がかぶってる)、
発売したの同時期だしたぶん偶然なんだろうなあ。。。でもすごいな。
「その先」の未来を。
ロボットメーカーに勤務する水沢依奈は、特装機体開発室の秘書を命じられた。
室長である佐原シンの変人ぶりに頭を悩ませる依奈だったが、
佐原の作る「ロボット」の秘書となってしまう。
実はそれは兵器であったのだ…。
***
機械が書いた小説だ、そう言われれば信じてしまったかもしれない。
いい意味で無機質でメカニカルな文体。新しい。
SFの賞を受賞している割りに内容は結構淡々としていて、
ロボットをモチーフに据えて人間と比較することで、〝人類〟という生き物の抱える
性や葛藤、汚さや美しさを丁寧に描き出した秀作だった。
登場人物たちもそれぞれに個性があり、一度出てきたキャラは絶対に忘れない。
特に佐原室長のキャラは奇天烈すぎてかなりの愛着を抱いてしまった。
そんな彼と主人公の、第三章における攻防戦はあまりに面白くて爆笑。
でもそのユーモアが、悲しい結末をより際立たせるスパイスとなって終盤に活きてくるのが
作者の巧い、そして残酷なところだよな。。。
綿の詰まった布を〝ぬいぐるみ〟だと言って可愛がることができる。
死んだ大切な生き物の一部や写真を〝お守り〟だと言って大切にすることができる。
すべてのものには魂があるという八百万の神信仰がまかりとおったこの日本という国の人間が、
本作に一番感動できる素質を持っているのではと思う。
人間味溢れるラストは決して嫌いじゃないけれど、ああいうオチを持ってくるなら
もうちょっとあのふたりの絡みがほしかったところ。ちょっと唐突に思えたので。
でも、主人公が突然転属になった理由、主人公の認知症の父親の叫び声の本当の意味、
それがわかったときには自然と頬が緩んでしまった。
いつの時代も人間が一番に必要とするものは進んだ技術でも便利な道具でもなくやっぱり
〝これ〟なんだよなあ。
ロボット工学にも詳しいけれど、人間の心もとてもよく知っている作家さんだと思う。
もりみくれさん。
あなたの書いたこの物語にもっと長く浸っていたかった(本作は短いので。。。)。
しばらくしたらまた読み返します。
ロボットメーカーに勤務する水沢依奈は、特装機体開発室の秘書を命じられた。
室長である佐原シンの変人ぶりに頭を悩ませる依奈だったが、
佐原の作る「ロボット」の秘書となってしまう。
実はそれは兵器であったのだ…。
***
機械が書いた小説だ、そう言われれば信じてしまったかもしれない。
いい意味で無機質でメカニカルな文体。新しい。
SFの賞を受賞している割りに内容は結構淡々としていて、
ロボットをモチーフに据えて人間と比較することで、〝人類〟という生き物の抱える
性や葛藤、汚さや美しさを丁寧に描き出した秀作だった。
登場人物たちもそれぞれに個性があり、一度出てきたキャラは絶対に忘れない。
特に佐原室長のキャラは奇天烈すぎてかなりの愛着を抱いてしまった。
そんな彼と主人公の、第三章における攻防戦はあまりに面白くて爆笑。
でもそのユーモアが、悲しい結末をより際立たせるスパイスとなって終盤に活きてくるのが
作者の巧い、そして残酷なところだよな。。。
綿の詰まった布を〝ぬいぐるみ〟だと言って可愛がることができる。
死んだ大切な生き物の一部や写真を〝お守り〟だと言って大切にすることができる。
すべてのものには魂があるという八百万の神信仰がまかりとおったこの日本という国の人間が、
本作に一番感動できる素質を持っているのではと思う。
人間味溢れるラストは決して嫌いじゃないけれど、ああいうオチを持ってくるなら
もうちょっとあのふたりの絡みがほしかったところ。ちょっと唐突に思えたので。
でも、主人公が突然転属になった理由、主人公の認知症の父親の叫び声の本当の意味、
それがわかったときには自然と頬が緩んでしまった。
いつの時代も人間が一番に必要とするものは進んだ技術でも便利な道具でもなくやっぱり
〝これ〟なんだよなあ。
ロボット工学にも詳しいけれど、人間の心もとてもよく知っている作家さんだと思う。
もりみくれさん。
あなたの書いたこの物語にもっと長く浸っていたかった(本作は短いので。。。)。
しばらくしたらまた読み返します。
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