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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「その先」の未来を。



ロボットメーカーに勤務する水沢依奈は、特装機体開発室の秘書を命じられた。
室長である佐原シンの変人ぶりに頭を悩ませる依奈だったが、
佐原の作る「ロボット」の秘書となってしまう。
実はそれは兵器であったのだ…。

***

機械が書いた小説だ、そう言われれば信じてしまったかもしれない。
いい意味で無機質でメカニカルな文体。新しい。
SFの賞を受賞している割りに内容は結構淡々としていて、
ロボットをモチーフに据えて人間と比較することで、〝人類〟という生き物の抱える
性や葛藤、汚さや美しさを丁寧に描き出した秀作だった。

登場人物たちもそれぞれに個性があり、一度出てきたキャラは絶対に忘れない。
特に佐原室長のキャラは奇天烈すぎてかなりの愛着を抱いてしまった。
そんな彼と主人公の、第三章における攻防戦はあまりに面白くて爆笑。
でもそのユーモアが、悲しい結末をより際立たせるスパイスとなって終盤に活きてくるのが
作者の巧い、そして残酷なところだよな。。。

綿の詰まった布を〝ぬいぐるみ〟だと言って可愛がることができる。
死んだ大切な生き物の一部や写真を〝お守り〟だと言って大切にすることができる。
すべてのものには魂があるという八百万の神信仰がまかりとおったこの日本という国の人間が、
本作に一番感動できる素質を持っているのではと思う。

人間味溢れるラストは決して嫌いじゃないけれど、ああいうオチを持ってくるなら
もうちょっとあのふたりの絡みがほしかったところ。ちょっと唐突に思えたので。

でも、主人公が突然転属になった理由、主人公の認知症の父親の叫び声の本当の意味、
それがわかったときには自然と頬が緩んでしまった。
いつの時代も人間が一番に必要とするものは進んだ技術でも便利な道具でもなくやっぱり
〝これ〟なんだよなあ。

ロボット工学にも詳しいけれど、人間の心もとてもよく知っている作家さんだと思う。
もりみくれさん。
あなたの書いたこの物語にもっと長く浸っていたかった(本作は短いので。。。)。
しばらくしたらまた読み返します。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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