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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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覚悟しておけ。



精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たちは、それぞれが脳に「傷」を持っていた。
試合中、突然マスコットガールに襲いかかり、殺人未遂で起訴されたプロ野球選手。
制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。
そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。
やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始める――。
人間の脳にひそむ闇を大胆に抉り出す、傑作長編ミステリ。

***

過去にドラマ化されてるんですね。知らなかった。

20年前(本書は88年発刊)の時点で精神病・脳障害というテーマをここまで描き切れる
著者の技量にはただただ感服。
現代では普通に使われている医学用語(〝性同一性障害〟etc.)が
本作中にはまだ存在しない等、やはり時代を感じる部分はあるものの、
徹底した取材に基づいたリアルな描写、テンポのよいストーリー展開に惹き込まれ、
一晩で一気に読みきってしまいました。

ただ惜しむらくは、作中で同時進行する複数の事件が、最後までほとんど絡まないこと。
一般にミステリやサスペンスでは、平行して進んでいた事柄が
終盤でねじり飴(変なたとえですいません)のように収束し一つの驚くべき真実を導き出す、
というのがパターンであり醍醐味であるわけですが、本作はラストまでほぼ平行線。
クライマックスで明かされる主人公のある重大な秘密も、
それがその他の事件と絡んでいればもっと面白かったのにな、と少し残念。

読んでいて違和感もいくつか。
一つは作中に登場する女性たちが総じて性欲過剰なこと。
まるで思春期の少年のように終始発情しっぱなしで、「女にしてはこれはなあ。。。」と苦笑。
一つは主人公である女医が、精神科医の割にそっち方面の知識が乏しい。
エイリアンハンド症候群ぐらい、医者である以上知ってなきゃ不自然。
さらに〝鏡〟や〝ボール〟に(病気の故に)てんかん発作並みの拒絶反応を起こす恋人を、
バッティング設備や鏡の迷路がある遊園地に連れていき挙げ句そのアトラクションをやらせ、
案の定恋人がパニックを起こしている最中にある人物に襲われ、
(当然ながら)恋人が助けてくれなければ「ここまで使えないとは思わなかった」って。。。
精神科医どころか恋人として、いや人として失格だってこれじゃ。
「女であることに違和感がある。ずっと男になりたかった」と語気荒く言う割には、
その片鱗があまり窺えずそれどころか平均より〝女性〟が強い印象だし。
上記の点にはやはり「著者が男だからなあ」という感想は否めなかった。

そして何より「そりゃないだろ」と言いたいのは、プロローグで登場する謎の人物Xが口にしたものと
まったく同じ台詞を吐く人物Aがおり、「お、口癖が同じ。じゃあX=Aだな」と確信していたら、
結局何の関係もないただの他人だった点。
伏線かと思うじゃん!(どうやら単に著者の言い回しがかぶっただけのようです)。
なので読むときは皆さんくれぐれも騙されないでください。
それ以外の伏線はさすがミステリ界の大御所、完璧過ぎてうならせてもらいましたけどね。。。

大脳生理学や心理学に興味のある人はもちろん(作中に登場する人間の脳&心理にまつわる
うんちくにはかなり驚かされます)、サイコホラー好きの人にもおすすめ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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