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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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それは影。
それは闇。


 

過去の呪縛から逃れるため転校した神戸の小学校では、
奇妙な遊びが流行っていた。
「牛男」と呼ばれる猟奇連続殺人鬼の、次の犯行を予想しようというのだ。
単なるお遊びだったはずのゲームは見る間にエスカレートし、
子供たちも否応なく当事者となっていく――(表題作)。
新世代文学の先鋒が描き出す、容赦ない現実とその未来。
ボーナストラックとして書き下ろし二編を収録。 

★収録作品★

 大洪水の小さな家
 死体と、
 慾望
 子供たち怒る怒る怒る
 生まれてきてくれてありがとう!
 リカちゃん人間

***

限りなく現実離れしてるのに
現実世界よりずっとリアル。
だからメフィスト賞作家は大好きなのです。

とまあそれはいいとして、先日乗っていた電車が緊急停止した際に、
「人死んでねえの? なーんだつまんねえの」と
でかい声で言って笑ってるクソガキ♂を見ましたが、こういう
「俺ってワルなんだぜ~。人死んだら驚くより喜んじゃうんだぜ~」
的雰囲気を醸し出したいだけのガキはまだかわいいものなのです。
怖いのはそれを気取りでも何でもなくごく当然のように思考して
「なんだ。つまんない」と誰に聞かせるでもなくポツリとこぼす子供。
それが世の中で一番恐ろしい、悪意より上の狂気と呼ばれるものです。

本作に登場するのはそんな〝狂気〟を孕んだ子供ばかり。
激情に駆られた結果ではなく、
己の強さを誇示するためでもなく、
ただ何となく楽しそうだから悪いことをやる。
最近では何か事件を起こした子供が犯行の動機を訊かれて
「別に~。ただ何となく、楽しそうだったから」
と答えることが多くバカな大人どもがそれに本気で怯えていたりしますが、
あのガキども(暴言すいません)はただかっこつけて言ってるだけで
絶対に動機は(ストレスなり仲間内でのプライドなり)あるはずなのです。
でもこの物語の子供たちにはそれがない。

本作に登場する女教師のモノローグ、
「相手の感情がわからないって何て怖いことなんだろう」
まさに彼女と同じ感覚を読んでいて味わうことができます(え? 味わいたくないって?笑)。

この先こういう〝行為に動機を一切必要としない〟、
悪い意味で精神的に自給自足してしまっている(すべての感情が自己完結してしまっている)子供が
本当に増えていくのかもしれないな。
月並みだけど人間同士の関わりはどんどん希薄になっていってるし。
閉じこもって人と触れ合わない状態で生きていくにはそういう進化をするしかない。
今の子供たちを見ていても、友人同士で会話をしているというよりは、
相手の言葉にもっともリズムよく乗っかる言葉を絶妙のタイミングと言い方で返す、
ある種ラップバトルみたいなノリだけの上っ面な会話をしてる子が本当に多いしな。
相手の言葉の〝意味〟じゃなく〝響き〟だけを聴いてるみたいな。
(例:
A「昨日金落としてさ~」
普通なら「え、いくら?」「どこらへんで? ちゃんと見つかった?」「それは災難だったね」
とか返すとこを
B「うーわマジで? あー恵んじゃったね。どっかの誰かに恵んじゃったねソレ。
恵まれた相手今ごろお前に感謝して祈り捧げてるよ『キラ様。。。』ってアハハ」
↑妙にリアルですいません)
そこにはたぶん〝感情〟はない。

話変わって本作の小説としての評価をすると、
一つ一つの話は非常によく出来ているのですが、
それぞれのラストのニュアンス(というか文章表現)がかぶり気味だったので
一話目以降は新鮮味が感じられなくてちょっと残念。
それさえなければ読み終えるたびにもっと衝撃を受けられたのになー。
まあそれでもどれも十分に胸にずしんと響きましたが。

私的に一番好きだったのは最終話〝リカちゃん人間〟。
冒頭の不快さは作中一ですがエンディングの爽快感もまた作中一で、
その陰から陽、ImplosionからExplosion(しっくりくる日本語訳が思いつかなかったので
英語のまんまでごめんなさい)
へのコントラストがもう絶妙
&ヒロインと教師の関係が何だかインパクトが強くて好きで読み終えた未だに忘れられない。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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