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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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。。。。。。

  

「ユーモアと心理学と不条理と論理を駆使した超絶推理!」
二階堂黎人氏、仰天!
ここはメンタル・クリニック<なみだ研究所>。
新米臨床心理士として働くぼくこと松本清は、最近目眩(めまい)に悩んでいる。
あいつ、波田煌子のせいだ。
貧相な知識にトボけた会話。こっちが病気になりそうなのに、
なぜか患者の心の悩みをズバリと言い当て、その病を治してしまう。
本当に彼女は伝説のセラピストなんだろうか。
そして今日もあの不思議な診療が始まった・・・・・・。

★収録作品★

 アニマル色の涙
 ニンフォマニアの涙
 憑依する男の涙
 時計恐怖症の涙
 夢うつつの涙
 ざぶとん恐怖症の涙
 拍手する教師の涙
 捜す男の涙
 
***

典型的〝本格推理もの〟。
サイコセラピスト波田煌子(なみだきらこ)も、肩書きがそうであるだけで
やっていることは完全に〝(安楽椅子)探偵〟だし、
語り部である彼女の助手の臨床心理士・松本もワトソン以外の何者でもない。
著者の鯨氏のこれまでの作風から、ラストにとんでもない暴走が
待ち構えているかもと怯えながら読んでいましたが(笑)、
そんなことはなく、ごくオーソドックスかつ良質の推理小説でした。
文体や扱われている事件も比較的軽めなので、
ミステリに興味のある人の入門書としてもいいかも。

それにしても。。。
〝探偵事務所〟の代わりに〝メンタル・クリニック〟を、
〝依頼人〟の代わりに〝患者〟を、
設定として持ってくる著者のセンスは素晴らしいとしか言いようがない。
煌子が解き明かすのはテレビのニュースで取り上げられるようなものじゃなく、
あくまで〝患者自身の中で起きている事件〟。
やや強引な推理もあるにはありますが、
彼女が持ち前の独特な思考回路を駆使して患者の悩みの根源を見抜き
彼らを心の闇から解き放つ様は見ていて爽快。
(まあ実際には、原因を理解しただけで救えるほど生易しいものじゃないけど、
それを言ったら野暮だしね。。。)
随所に盛り込まれた心理学うんちくも、初心者にも理解しやすいように
非常に分かりやすく書かれており、誰が読んでも楽しめるはず。
ところどころに地雷のように潜んだギャグにもさんざん爆笑させられました。

最終話のどんでん返しも、
一話目からちゃんと読み進めていれば「ああやっぱりそう来たか」と予測はついて
しまうものの、それでもやっぱり感動させられる。
次いで最後のページで明かされるある〝真相〟。
波田煌子が患者の謎を解き明かすたびに流す涙は、
やはり患者への深い共感と、救いたいと心から願う優しさから来ているんだなと
(しかもそのためには自己犠牲も厭わないんだなと)
思い知りこっちまでちょっと泣けてしまった。

波田煌子シリーズは本作以外にも二つ出ているので、それも近々読む予定です。


蛇足:
作中に出てくる精神療法の一環である〝サイコドラマ〟、
以前観たこの映画



がそれに近いことやってたなそういえば。
これも〝サイコドラマ〟だったんだろうか。
今度また観てみよ。

蛇足2:
本書の最後に書かれていた〝参考文献〟に
〝和風のお菓子〟と〝緑茶入門〟があったのが
何ともほほえましかった。
鯨統一郎さん好きだ@
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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