不可視のものを視るための倒立。
戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。
蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。
少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。
手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、
物語は驚くべき結末を迎える…。
物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
***
とにかく文章が美しい。
ひとつひとつの言葉に無駄がなく、句読点ひとつひとつにまで意味がある。
登場人物たちの心理描写も、あまりに人間というものの核心を突いているので
読んでいて痛いほど。
これが〝熟成された文章〟というものなんだろう。長く文章を書き連ねてきた作家の
神髄を目の当たりにした気がした(著者の皆川さんは今年で79歳)。
ミステリとしては正直、弱い。
せっかく〝倒立〟をテーマにした物語なのだから、登場人物の死も
それに関係する死に方のほうがよりインパクトは強かったと思う。
けれどそれでも、ジャンルに関わらずひとつの〝物語〟として素晴らしい本作を、
読んで本当によかったと思った。
おすすめです。
特に女性には。
また、本作を気に入った人には桜庭一樹さんの〝赤朽葉家の伝説〟も
おすすめかも。どこが、とは言えないけどどことなく似ているので。
カレイドフォン。〝万華響〟。
戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。
蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。
少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。
手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、
物語は驚くべき結末を迎える…。
物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
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とにかく文章が美しい。
ひとつひとつの言葉に無駄がなく、句読点ひとつひとつにまで意味がある。
登場人物たちの心理描写も、あまりに人間というものの核心を突いているので
読んでいて痛いほど。
これが〝熟成された文章〟というものなんだろう。長く文章を書き連ねてきた作家の
神髄を目の当たりにした気がした(著者の皆川さんは今年で79歳)。
ミステリとしては正直、弱い。
せっかく〝倒立〟をテーマにした物語なのだから、登場人物の死も
それに関係する死に方のほうがよりインパクトは強かったと思う。
けれどそれでも、ジャンルに関わらずひとつの〝物語〟として素晴らしい本作を、
読んで本当によかったと思った。
おすすめです。
特に女性には。
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カレイドフォン。〝万華響〟。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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