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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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また大地が私たちを試そうとしている。



私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった――。
大地はまた咆哮をあげるのか?
震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。
原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、
巨大地震が襲う。
来るべき第二の激震におびえながら、大学キャンパスに暮らす学生たちは、
カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。
極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。未来版「罪と罰」。

***

大地震が既に起き、そして近いうちにまた起きることがわかっている
世界が舞台の物語。
あの震災以降、作中に地震のことを書く作家は増えてはいたけれど、
ここまでド直球に地震そのものを小説にしてしまう作家さんは
初めて見たように思う。
直接震災を経験したわけではないのにこんな話を書いてしまう勇気、
というか自信は、やはり芥川賞作家ならではなんだろうか。

肝心の内容は、大震災によって荒廃した世界観は
まあまあよく描かれているけれど(文化の非統一感はあるけれど)、
人間の書き込みが足りずどのキャラもいまいち印象に残らない感じは
受けた。
あと作中に「絶望」という単語が何度か出てくるのだけれど、
その使い方が陳腐にも感じた。
やはりこういった世界を描くのは相当に難しいのだと
読んでいて思わされた。
私は東日本大震災の被災者なので(直撃した地域に比べれば
全然被害は少なかったけれど、街中の電気が停まり交通も
ストップした)読んでいて
「いや違う、あの地震はこんなものじゃなかった」と感じることが
多かった。

逃れようもなく恐ろしいものに対峙してしまった、
その傷を癒せないまま抱えて「再発」に怯え生き続ける、
そんな恐怖はよく伝わってきたけれど。
たぶん綿矢さんにもそういう経験が少なからずあるんだろうな。

ラストは微妙でした。
というかありがち。
セックスして「それでも人間は生きていく」みたいな終わり方って
どうなんだろうねー。確かに性行為は生の根源だけどもさ。

とかいろいろ書きましたが嫌いじゃないです。
まあおすすめかな。
震災に実際に罹災したひと以外には。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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