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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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それ以外になにがある?



28のいま、輝いて見えるものなんか、なにひとつない――。
金もなければ希望もない、その日暮らしの28歳の俺と喜彦。
金をくすねてはソープランドに直行する日々。
思いがけず、大金が転がり込む話を嗅ぎ付けるが…。
金と暴力の腐った世界を疾走する若者たちの今。

★収録作品★

 第二の人生
 最高の一発
 みな殺しの夜
 天国いきのスローボート
 死を口ずさむ
 船橋スカイライン

***

〝このミステリーがすごい! 大賞〟という、ミステリ&エンタメバリバリの賞で
デビューした人にしては、なんというかもうとにかく文章がうまい。
端整だとか流麗だとかいう意味じゃなく、読み手をしてすぐ
「あ、東山彰良だ」と気づかせるような文体やスタイルを見事確立しているというか。
直木賞よりは芥川賞を獲ってほしい、そう思わせる不思議なミステリ作家さんです。

ヤクだのソープだの密売だの、作品のモチーフはかなりバイオレンスかつアウトローなもの
ばかりなのですが、そのさらに向こうに眼を凝らせば見えてくるきらりと輝く奥深いテーマ。
「こんなクサいこと、堂々と語れるかよ」とばかりに著者が敢えて表立っては描こうとしないそれが、
ちらちらと垣間見えるのが気になって仕方がなく、
そしてはっきりと視界に捉えることができたときの感動が心地よくて仕方がなく、
暴力や裏世界ネタがあまり好きじゃない私でも、あっという間に読み終えてしまっていました。
得た訓示(なんて固い言い方をすると主人公二人にしばかれそうですが)も多かったな。
たとえるなら私にとってこの物語は〝黒い聖書〟だった。

個人的に一番好き(という陳腐な単語で表現するのもなんですが)なのは
〝天国いきのスローボート〟。
ラストシーンがめちゃめちゃ格好いいのは最終話〝船橋スカイライン〟。
二十代後半の人と千葉県民(特に船橋在住のひと笑)には是非読んでほしい作品です。
おすすめ。

注:最初の一話以外はミステリじゃないので、ミステリ好きの人は注意。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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