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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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おまえに近づいてゆくために、力を。



1982年、8月17日、夜。暴風雨の首尾木村北西区で、ほとんどの村民が虐殺される
大量殺人の発生が警察に伝えられる。しかし悪天候と現場に通じる2脚の橋が流れたため
地区は孤立、警察の到着は翌日になってからだった。
かろうじて生き延びたのは中学3年の少年少女3人と彼らが通う分校の教諭ひとり。
被害者は、3人の家族ら14名で、そのうち11人が鎌で喉を掻き切られていた。
不明な点もあったが、犯人は、事件当日、逃走後に事故死した英会話教室の外国人講師と
断定された――。
そして9年後、ひとりのフリーライターが生き残った者たちへの取材を開始するや、
ふたたび猟奇的な殺人事件が起こる。凶器はまたもや鎌だった…。

***

性描写がすごいとのレビューが多かったので「純文学ならまだしも、ミステリでまでそういうのは
ちょっとなあ。。。」と微妙に構えていたのですが、純文の、既にエロというよりはグロの領域に
達している過激な描写に既に慣れてしまっていたらしく、それほどのインパクトは感じませんでした。
なのでよっぽど年齢が若い人以外は、その手の小説が苦手でもたぶん割かし平気で読めます。
文章も達筆なのにどこかラノベ的口語体で読みやすいし。

ただ、事件の真相がことごとく〝主人公たちが記憶喪失から醒める〝ことで明かされるという手法は
ちょっとあまりにあんまりな気が。それじゃ別に誰が何の努力をしなくても、
著者の明かしたいタイミングで記憶を取り戻させれば済むことになっちゃうし。
しかもこれだけの長編の割に、明かされる真相は短編推理小説並にシンプルで、どちらかといえば
陳腐なものだし(陳腐といえばラスト一行も、正直一度どこかで読んだことがあるような、
手垢のついた凡庸な文章でした)。

起きる出来事よりも人間心理に謎を解く鍵が隠されている物語なのに、その肝心の心理描写が
「普通そこでそういう心境になるか~?」「その感情の流れはおかしくないか~?」と
突っ込まずにはいられない不自然なものが多く(ヒロイン・繭子が特に)、
最後までどうにもすっきりしないまま読了。
終盤で、ダン・ブラウンやアダム・ファウアーあたりが書きそうな洋モノミステリ的シーンが
唐突に出てきたときには、それまでの古きよき日本的雰囲気をかもし出していた本作の和風世界が
コント並みに崩壊して思わず吹き出してしまったし。

多くの時間と精神力を費やしてまで読むほどの小説ではなかったというのが私の感想。
これでページ数が半分だったら普通におすすめなのですが。
600P分の収穫はないです。←うまいこと言ってみた
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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