胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな
無数の折鶴が螺旋を描く―。
都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、
睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。
時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、深く沈められていたはずの狂気が
人を闇に引き摺り込む。善悪が混濁する衝撃の長編。
***
今更過ぎるレビュー。
巨大な悪と対峙する主人公、という著者の近著とは違う、
人間一人ひとりを深く掘り下げて書かれた物語。
私はミステリ作家を目指している手前、殺人を扱ったミステリを読むときは
その動機(ホワイダニット)に非常にこだわるのですが、
本作はその「動機」が犯人特有の初めて眼にするものだったので
「なるほど。。。そんな動機もあるのか。。。」と非常に唸らされた。
既に大人の中村氏が子供の心理をここまで描けることにも、氏の才能を
知っている身からしても脱帽。
ああそうだ、子供ってこうだ。。。とかなり深いところで納得させられた。
自分にとって眩し過ぎる人間と共に生きる人間の苦悩も描かれていて、
ああよくわかるとひどく納得させられた。
大人の心理も子供の心理もここまでリアルに、現実以上にリアルに描ける
著者のセンスにはただただ舌を巻くばかりです。
純文学として読んでもミステリとして読んでも面白いので非常におすすめ。
それにしても、私はたまにこの著者の才能が怖くなるときがある。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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