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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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何かの神のように。



舞台は近未来の島国・R帝国。
ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。
だが、何かがおかしい。
国家を支配する絶対的な存在″党″と、謎の組織「L」。
やがて世界は、思わぬ方向へと暴走していく――。
世界の真実を炙り出す驚愕の物語。

『教団X』の衝撃、再び! 全体主義の恐怖を描いた傑作。

***

ひっさしぶりのレビューです。
執筆モードに入りまくっていて本が読めていなかった中、
久々読破出来た本作。

私は政治に明るくないので政治的観点からは物は言いませんが、
普通にSF感覚で読めて面白かった。
中村文則作品の特徴に、主人公を通じた著者の人間性の「剥き出し」ということが
挙げられるけれど、
本作はその「剥き出し」に加えて著者の「主張」が籠められているのを感じた。
そして速度。物語に速度があるとするなら、中村氏はどんどん
そのスピードを増していっている。本作はもはや「疾走」に近い。
中村氏に手を引かれるようにして、一気に読み終えてしまった。

漫画「ドラゴンヘッド」でもそうだけれど、安定を失った世界でこそ
人はその真価を問われるもので、そんな世界で自分を見失わずに生きる
四人の主人公の姿には胸を打たれた。
私もサキやアルファのように気高く、矢崎のように人間の誇りを失わず、
栗原のようにこんな世の中にあっても自分を否定せず生きたいと強く思った。
「彼氏だな」
「おあいこだね」
の台詞には、息苦しいこの実際の世界の中でも人間らしく生きようとする
中村氏の優しさが垣間見えるようで、この人は弱いけれど強い人だ、と感じた。
人間というものを常人より強く意識し、またその本性を敏感に感じ取れてしまう、
中村氏はそんなひとではあるけれど、それでも人間を否定しない。
作中に「人間なんてこんなもんだと思っているから逆に優しく出来る」
というような表記が出てくるけれど、本当に人間が嫌いならそもそも初めから
小説なんか書かないし、このひとは人間を肯定したいが故に苦しんでいるんだろうなと
いうことが痛いほど伝わってきた。
ラスト一行は中村氏の叫びとなって直接鼓膜に響いてくるようで苦しかった。

おすすめです。
本作が好きなひとは、漫画「ドラゴンヘッド」「ぼくの地球を守って」も
おすすめ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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