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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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絶対に忘れない。



実家で飼っていた愛犬・ブックが死にそうだ、という連絡を受けた僕は、
彼女から「バイクで帰ってあげなよ」といわれる。
ブックは、僕の2ストのバイクが吐き出すエンジン音が何より大好きだった。
四年近く乗っていなかったバイク。彼女と一緒にキャブレターを分解し、
そこで、僕は彼女に「結婚しよう」と告げる。
彼女は、一年間(結婚の)練習をしよう、といってくれた。
愛犬も一命を取り留めた。ブックの回復→バイク修理→プロポーズ。
幸せの連続線はどこまでも続くんだ、と思っていた。
ずっとずっと続くんだと思っていた――。

***
 
理論尽くしのミステリばかり読んでいるせいか、
私はラブストーリーというジャンルはかなり冷めた目で読んでしまう。
主人公の恋人たちが悲しんだり喜んだりで盛り上がってても
「はっ(←鼻で笑う音)、お忙しいこった」と嘲笑をかますタイプだ。
本作もラブストーリー、しかも恋人の病死ものということで、
かなり偏見を持って読み進めていた。というか著者が好きな中村航氏でなければ
絶対に手にとっていなかった。映画化されたということで更に偏見も
増していたし。
でも、主人公の藤井くんと恋人の淡々としつつも微笑ましいやり取りを
見ているうちに徐々にふたりに惹き込まれ、ところどころに差し挟まれる
はっとするような文章にも胸を打たれ、ラストの藤井くんが
スケッチブックを見返すシーンでは思わず涙ぐんでしまっていた。
ああ、ありがちな恋人との死別ものでも、個性と才能のある作家が書くと
こういう風になるんだ、と思った。
私も死ぬまでに誰かにとっての(出来れば今の恋人にとっての)
揺るぎない「you」になれたらいいな、と憧れてやまなかった。
でも私と相方は幸いに身体は健康だし、藤井くんが本当なら夢見ていた
「we」を目指してがんばっていきたいなと思う(私事で恐縮ですが)。

それにしても、若さのせいもあるんだろうけど、
プロポーズされても「まずは結婚の練習をしよう」とがっつかず、
うはははは、と豪快に笑う藤井くんの彼女は本当に好ましいひとだったな。
やっぱり神様は優しくて魅力あるひとを気に入って自分の元へ
連れていってしまうんだよな。

「絶対に開かない箱」を人生で得ることの出来た藤井くん、
そして彼の恋人は、とてもとても幸せだったと思う。
藤井くんにはその箱を大切に胸に抱きながら新しい幸せを見つけてほしい。

おすすめです。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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