僕が、人間である証拠を。
カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、
現地のストリートチルドレンに拾われた。
「迷惑はな、かけるものなんだよ」
過酷な環境下でも、そこには仲間がいて、笑いがあり、信頼があった。
しかし、あまりにもささやかな安息は、ある朝突然破られる――。
彼らを襲う、動機不明の連続殺人。
少年が苦難の果てに辿り着いた、胸を抉る真相とは?
激賞を浴びた『叫びと祈り』から三年、
俊英がカンボジアを舞台に贈る鎮魂と再生の書。
***
舞台がカンボジア、主人公たちがストリートチルドレンという設定にしたのは
著者が単にそういう国に興味があるからだろうか、と思っていたけど、
違った。そうしなきゃ書けないミステリだからだ。
梓崎氏のデビュー作を読んだときにも「すごいトリック思い付くな」と
舌を巻いたものだけど、本作の「犯人」の殺人の「動機」にも
打ちのめされた。あまりにやるせない。
こんな悲しい動機があっていいんだろうかと、
真相がわかった瞬間しばらくページを捲る手が止まった。
物語に登場する少女がいつも傘をさしている理由とか、
第六章「空の涙」のタイトルのその本当の意味とか、
わかるたびにいちいち胸をつかれた。胸が痛かった。
主人公・ミサキが何度か繰り広げる推理は「そりゃ違うだろ」と
まるわかりなのでミスリードされることはなく「このあとにもっとちゃんとした
真相が語られるんだろうな」と気付けてしまうのでそこがちょっと残念だったし、
あと、シビアながらも抒情性豊かに進んでいた物語が
後半のひとりの青年の唐突な登場によっていきなり本格ミステリ化してしまうのも
どうかと思ったけど(ていうかあの青年、゛叫びと祈り〟の彼だよね絶対)、
全体的にはクオリティの高い物語だった。
本作を入れてまだ二冊しか本を出していない新人作家さんで
文章力や構成力もまだ拙いけど、この梓崎優という作家は
これからぐんぐん伸びてくるひとだと思う。
次回作が楽しみ。
おすすめです。
カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、
現地のストリートチルドレンに拾われた。
「迷惑はな、かけるものなんだよ」
過酷な環境下でも、そこには仲間がいて、笑いがあり、信頼があった。
しかし、あまりにもささやかな安息は、ある朝突然破られる――。
彼らを襲う、動機不明の連続殺人。
少年が苦難の果てに辿り着いた、胸を抉る真相とは?
激賞を浴びた『叫びと祈り』から三年、
俊英がカンボジアを舞台に贈る鎮魂と再生の書。
***
舞台がカンボジア、主人公たちがストリートチルドレンという設定にしたのは
著者が単にそういう国に興味があるからだろうか、と思っていたけど、
違った。そうしなきゃ書けないミステリだからだ。
梓崎氏のデビュー作を読んだときにも「すごいトリック思い付くな」と
舌を巻いたものだけど、本作の「犯人」の殺人の「動機」にも
打ちのめされた。あまりにやるせない。
こんな悲しい動機があっていいんだろうかと、
真相がわかった瞬間しばらくページを捲る手が止まった。
物語に登場する少女がいつも傘をさしている理由とか、
第六章「空の涙」のタイトルのその本当の意味とか、
わかるたびにいちいち胸をつかれた。胸が痛かった。
主人公・ミサキが何度か繰り広げる推理は「そりゃ違うだろ」と
まるわかりなのでミスリードされることはなく「このあとにもっとちゃんとした
真相が語られるんだろうな」と気付けてしまうのでそこがちょっと残念だったし、
あと、シビアながらも抒情性豊かに進んでいた物語が
後半のひとりの青年の唐突な登場によっていきなり本格ミステリ化してしまうのも
どうかと思ったけど(ていうかあの青年、゛叫びと祈り〟の彼だよね絶対)、
全体的にはクオリティの高い物語だった。
本作を入れてまだ二冊しか本を出していない新人作家さんで
文章力や構成力もまだ拙いけど、この梓崎優という作家は
これからぐんぐん伸びてくるひとだと思う。
次回作が楽しみ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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