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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ありがとう。



妻も、読者も、騙される!
『悪人』の作家が踏み込んだ、〈夫婦〉の闇の果て。
これは私の、私たちの愛のはずだった――。
夫の不実を疑い、姑の視線に耐えられなくなった時、
桃子は誰にも言えぬ激しい衝動に身を委ねるのだが……。
夫婦とは何か、愛人とは何か、〈家〉とは何か、妻が欲した言葉とは何か。
『悪人』『横道世之介』の作家がかつてない強度で描破した、狂乱の純愛。
本当に騙したのは、どちらなのだろう?

***

作中の仕掛けには速攻気付いたので
種明かしされたときも「ああやっぱりな」と驚きはなく残念。
ただ、種を明かされてから改めて読むと
人間の心というものがいかに移り変わりやすいのかということがわかって
うんざりとした気持ちになる。
そしてその移り変わった気持ちを、相手に申し訳ないと思うより先に
自己陶酔して正当化してしまう、人間の身勝手さ、気持ち悪さというものも
目の当たりにした気がして思わずため息が出た。
全体に地味な物語なのですが、そのぶん登場人物たちのひと言、一挙一動が
リアルに迫ってきて、ヒロイン・桃子と一緒に笑ってみたり、傷付いてみたりと、
妙な臨場感があった。
「過去の亡霊」に共感したが故に憑りつかれたのか、憑りつかれたが故に
共鳴したのか、どちらともとれる終盤のシーンもなかなかに鬼気迫るものがあって
面白い。
桃子が拾ってくる猫・ピーちゃんは、おそらく失くしてしまった子供の代わりで、
ピーちゃんという名前も、生まれた子に付けようと思っていたもののあだ名か何か
なんだろうと思ったら少し切なくなった。
ラスト一行の桃子の台詞は心に沁みる。
人間、相手のたったひと言で自分でもびっくりするぐらい救われるものなのに、
それがなかなかもらえなくて苦しんだりするのだから単純なんだか繊細なんだか
わからないよな、本当に。
言葉が過ぎても言葉が足りなくてもうまくいかずにすれ違ってしまう、
人間て難しいものです。

吉田作品の中ではパンチはないほうだけど、おすすめ。
ラストにちょっとご都合主義なところがあるのはいただけないけど。
捨てる神あれば拾う神あり、といったところなんでしょうか。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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