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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ぼくらの手は自然に繋がっていた。



北海道の片隅。坂の上から美しい日本海を望むこの小さな街で、ぼくはちせと出逢った。
「ごめんなさい」が口癖のちせに、ぼくはつい邪険な態度をとってしまうけれど、ちせはかわいい。
不器用なぼくらは、いまどきの高校生には珍しく交換日記をしながら「つきあって」いる。
ある日ぼくは、ちせの異変に気づいてしまった。札幌の街で空襲に遭ったあの日、
戦火の瓦礫の中に見た制服姿の少女――ひとりで呆然と立ち尽くす彼女はまぎれもなく、
ちせだった――。
原作者・高橋しんとの強力タッグのもと、大ヒットコミック『最終兵器彼女』が、
新たな息吹をあたえられた至上の恋愛小説。

***

漫画のノベライズに最近は興味があって
ちょくちょく読んだりしてるのですが。。。

まだ筆の拙い新人作家が書くことの多いノベライズ本において、
本作はアニメの脚本を担当していたベテランが書いているのでなかなかに文章がうまい。
ただいかんせん、全7巻の物語を200Pちょっとに収めるのは難しかったようで、
原作のダイジェスト版みたいになっている感は否めなかった。
(そして『ああ、ラブ・ソングだ』のくだりはこの漫画の最大の見せ場だと思っていたので
そこをはしょられたことも痛かった。
あと関係ないけど『高校女子』という表現に違和感を覚えた。そこは『女子高生』でいいのでは。。。)

原作を読んだことのない人でもそれなりに楽しめるとは思うけど、
ほぼ亜光速で進んでいく物語のスピードに置いてきぼりを食らう人も多数いるのではと思う。

本作はあくまで原作に興味を持たせるためのもの、
私としてはそう解釈した。
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そして、破滅は循環する。



大ヒットSFアクション、初ノベライズ!!

玄野が地下鉄事故に遭う以前。目立たずに生きてきた高校生・大樹は死んだ。
だがそれは終わりではなく、負の連鎖の始まり。
大樹は、壮絶なガンミッションへと身を投じることに…。
本編第1話へと至る死闘と悪夢の記録を描く。

***

〝ガンツ〟第一巻第一話以前を描いた物語のノベライズ。



いいところ。
西と和泉の過去がちょっとだけわかります。
星人のバリエーションが豊富で楽しい(〝ひょうほん星人〟なんて漫画で書いたら
モザイクもんなぐらい怖いし)。
「過去にこんなことがあったのか」と思うことで〝GANTZ〟世界により深みが広がります。

残念なところ。
文章が淡白。&スピード感に欠ける。福井晴敏氏あたりが書いたらもっとよかったのではと思う。
絵が奥氏じゃない。代わりに書いているコザキ氏の絵も、うまいけどやはり原作と比べると
違和感が。
ストーリーに感動できない。キャラクターをもうちょっと書き込んでほしかった。ただ淡々と
進み、淡々と終わってしまった印象。

偉そうに言わせてもらえれば及第点というところかな。
ガンツ好きな人は読んで損はないです。
この世界に。
僕の側に。



大好きなのに、いつまでも一緒にいたいと思ったのに、
ぼくの心を一瞬で奪った君は“消えてしまった”。
君の存在を証明するのはたった数分のビデオテープだけ。それが無ければ、
君の顔さえ思い出せない。
世界中の人が忘れても、ぼくだけは忘れないと誓ったのに――。
避けられない運命に向かって必死にもがくふたり。
日本ファンタジーノベル大賞受賞作家による、切ない恋の物語。

***

ある歌に、
『嫌われていい 覚えていてくれるなら』
という歌詞があった。

ある漫画に、
自分のことを知る人間が皆死んでしまい孤独になって、
臨終の際にそばにいた相手に「私の名前を呼んでくれ」と頼み、
名前を呼んでもらって安心したように息を引き取る老人が描かれていた。

上記からもわかるように、当然ながら人間というものは
〝忘れられる〟ということを〝死ぬ〟ことより遥かに恐れる生き物だ。
なのに本作のヒロインはそんな〝誰からも忘れられる〟という宿命を背負っている。
クラスメイトも、挙げ句親までもが、彼女のことを〝忘れて〟いく。
そこに肉体の病のような苦しみはない。ただやるせないほどの心の痛みだけがある。

それが読み手にも伝染するのか、読んでいる間中胸が痛かった。
彼女に恋をする主人公のように、自分だけはこの物語をずっと覚えていようとさえ思った。
主人公を通して〝忘れる〟側の苦しみも自分の内側に流れ込んでくるようで、
ラブストーリー(本作はSFの要素も入ってますが)ではめったに心を動かされない私も
思わず鼻がつんとした。

個人的な話だけど、以前、心の支えにしている作家さんに手紙を書いて、
「あなたのことを覚えておく」と返事をもらい号泣したことのある私にとって、
ひどく共感できる内容だった。
いや、これは人間なら誰もが共感できる物語と思う。
生きていたって簡単に忘れられる、携帯のメモリに登録した人間を「誰だっけ?」と
どうしても思い出せない、そんなことが頻繁にある今みたいな世の中では特に。

おすすめです。
映画化してほしい。密かな名作になりそう。

闇が笑いだす。



恒川光太郎が五つの物語で世界を変える――。風を、迷いを、闇夜を、鳥を。
著者はわずか五編の物語で、世界の全部を解放してしまった――。
静謐な筆致で描かれた短編は、小説の新たな可能性を切り拓く!

★収録作品★

 風を放つ
 迷走のオルネラ
 夜行の冬
 鸚鵡幻想曲
 ゴロンド

***

前作はあまりに心動かされるものがなくて
「どうしたんだ恒川光太郎!」
と思ったけれど今回はよかった。
恒川節がちゃんと戻ってきていて、独特のダークファンタジーな世界観を堪能することができた。

一番恒川氏らしかったのは〝夜行の冬〟。
この作家さんに現実と隣り合わせの不思議・恐怖を書かせたら天下一品だなーと改めて思う。
〝鸚鵡幻想曲〟は後半から、〝ゴロンド〟は終始一貫して
現実離れしていてちょっと入り込みにくかったけど、それでもなかなか楽しく読めた。
〝ゴロンド〟が気に入った人は〝プシスファイラ〟なんかも楽しめるんじゃないかと思う。
(難しくてちょっと読む人選ぶけど)

それにしても恒川氏、ほんとよくこんな話思い付くよな~。
デビュー作〝夜市〟に出てくる〝学校蝙蝠〟〝永久放浪者〟とかもそうだけど
実際には存在しないものへの名付けのセンスもすごい(今回は名称どころか
〝竜語〟まで出てきます)。
尊敬する。

おすすめです。

僕は今どこにいるのだ?

   

暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、
天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。
僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、
激しく混乱し、動揺していた。
限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。

***

「気なんか抜けない。抜いたらバラバラになって自分が自分じゃなくなってしまう」
「失望するのが嫌だから友人は敢えて作ろうとは思わない」
等の台詞にまずやられた。著者に心を読まれているのかと思った。
まあ、私を含め多くの人間が考えることを細密に描写しているからこそ
本作は世界的に人気があるのでしょうが。

(ファッションセンスを除けば)本作が23年前に書かれたものだということも信じられない。
いい曲を聴いたときと同じ、古臭さがまったくない。
本物というのはこういうものなんだなと、改めて感銘を受けた。

でも本作を読んで一番感じたのは
〝去るものは日々に疎し〟
ということ。
結局は精神疾患に苦しむ、ほとんど会えない女性よりも、
身近な別の女を選んじゃうんだもんな主人公は。。。
いやなリアリティだなほんともう。。。
対して、作中を通して常に主人公に都合のいい女や友人が用意されていたことには、
フィクション臭さを感じずにいられなかった。
〝泥土〟描写や最後の数行には主人公の抱く闇が垣間見れてまだよかったけど。

納得いかない部分も少しはあり、でも長年読み続けられてきた良作であることに
間違いはないと思う。

そして、所詮死んだら忘れられる、憶えてくれてはいてもそれは既に過去のものとして。。。
って考えるとまだまだ死ぬわけにはいかないなと思う。

直子と同じ、心を病んでいるfvの極私的感想でした。

そしてそこから身を投げるの。
気流を翼がとらえて舞い上がる。



児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜は、多忙な仕事に追われながらも、
学園の日常に起きる不可思議な事件の解明に励んでいる。
そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、
校舎屋上からの転落事件が影を落とす。
警察の見解通り、これは単なる「不慮の事故」なのか?
だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、
学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。
鮎川哲也賞作家が描く、季節を彩る五つの謎。『七つの海を照らす星』に続く、清新な本格ミステリ。
 
***

ほのぼのした日常系ミステリかと思いきや、
一つひとつの物語が繋がって、やがて壮大かつ感動のサプライズへ。
シリーズ第一作である前作がのほほんとしていたので見事騙されました。
この著者は本当に短編と短編を繋げて
まるで違う様相を呈した長編へと持っていくのがうまいなあ。
見習いたいものです。

まあちょっと謎解きがくどかったり言葉遊びが過ぎたりという感はあったけど。
おすすめです。

hanamizuki.jpg








今度こそ逃がさない。



古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵・御陵みかげ降臨!
因習深き寒村で発生した連続殺人。
名探偵だった母の跡を継ぎ、みかげは事件の捜査に乗り出した――。

***

ちょっと特殊な恋愛模様を書かせたら天下一品ですね、麻耶氏は。
とのっけから書いてみましたが別に本作はラブストーリーではありません。
純然たる(? ちょっと飛び道具入ってるかな?)本格推理小説です。
一部と二部の構成が似ててちょっとダレるところもあったけど
この著者(偉そうなこと言わせてもらえば)文章と構成うまくなったなと思う。
 (〝夏と冬の奏鳴曲〟なんか読みづらかったもんなあ、正直。。。)

独特の世界観と
「うおっここでそうくるか!」という突拍子のなさを味わいたい人にはきっと最高の小説。

まあおすすめです。

suikan.jpg












そのさきに待ち受けているもの。



二つの館に強制的に集められた七人の「プレイヤー」たちに「主催者」は命じる――
「今から起きる殺人事件の犯人を当てよ」――もちろん、被害者もプレイヤーの中から選ばれる。
二つの館で起きる事件を、互いにもう一つの館より早く、解決しなければならないのだ。
不正解の代償は「死」! 過酷きわまるデス・ゲームの幕が開く! 究極のサバイバル・サスペンス!

***

おかしな単語や文章表現がところどころ(というか結構頻繁に)出てくる。
主人公たちの行動が「え? そこでそう動くか?」と説得力のないものが多い。
ゲームの主催者が主人公たちに与えた〝ヒント〟、
序盤からクライマックスまでさんざん引っ張ってくれた割には
結果は「そんなんわかるわけねーだろ!」レベル。そしてなぜ主人公たちは
それを理解してるの?っていう。
そして極め付けはラスト。ネタバレにつき字は伏せますが
どうやって人の記憶の一部分をあんな見事に消したんだよ主催者たちは。あり得ない。

ドラマ化されたこともある本作、確かにドラマや映画にするには
わかりやすい娯楽性のある物語とも思いますが、
ミステリ好きが読めば腹の立つレベルの内容と思う。
(いや、普通に娯楽小説が好きでミステリ的部分なんて気にしません、ってタイプでも
「何だこの真相。このオチ」とひとによってはムカつくかも。

あまりおすすめしません。

本作を読むんだったら〝インシテミル〟か〝CUBE〟を私は推します。
ここにいるよ。



そのソフトを使えば誰でも「理想の人物」を生み出せるという…。
ストリートライブでおぼろげな記憶の中にいる「彼」を歌う佐川夏実。
大学のサークルで世の中に流布する都市伝説を研究する伊神雄輝。
二人の前に現れた奇妙なソフトによって、運命は大きく揺さぶられていく。

***

全体に説明的というか文章のリズムが重いので(難しい、というわけじゃない)
読んでてあまり楽しくなかった。
〝理想の人間を生み出せるソフト〟という設定には惹かれるものがあるけど、
盛り上がるべきところでいつもストップがかかってしまうという構成の至らなさには
かなりイライラさせられた。
主人公の男はムカつくしオチは尻切れトンボというか説明不足で突っ込みどころありまくりだし。

それなりに楽しめはしたけどこの内容で400Pはちょっと長すぎ。
せめて300P以内に収めてほしかった。

著者には失礼だけど瀬名秀明氏か鈴木光司氏あたりが書いたら名作になったのではと思う。
忘れられない。



夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。
木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。彼女は、それでもとても美しかった。
陽炎のように儚い一週間の中で、僕は彼女に恋をする。あれから十三年…。
僕は彼女の思い出をたどっている。「殺人」の罪を背負い、留置場の中で――。
誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかに蘇る。第42回メフィスト賞受賞作。

***

メフィスト賞受賞作の割にミステリというよりは純文学寄りの内容だったけど、
よかったです。ミステリを期待して読み進めていたのでちょっと肩透かしは食らったけど、
ラブストーリーで感動したのは本当に久々かもしれない。

それはたぶん、登場人物たちの男♂と女♀の部分だけじゃなく
〝人間としてのその人〟も丁寧に書き込まれているから。
ちょっと人物設定や文体が村上春樹氏に似てしまっている気はしたけど、
かなりの筆力を持った新人さんであることに変わりはなく、
安心して物語世界に身を委ねることができた。

知り合った場所や知り合ったときの肩書きや互いの年齢、性別、(服装等を含んだ)外見。。。
そんなさまざまな要素が絡んで、人と人との関係は形作られていく。
もし別の出会い方をしていたら二人の関係を表す単語(恋人、友人、etc.。。。)は
変わっていたかもしれないし、すぐに別れていたかもしれない。逆により親密になってたかも。
そういった人間の関係性の脆さや、そして逆に関係性に縛られない絆の強さ、
その両方を本作には教えてもらった気がする。

素敵な話でした(何よりタイトルが秀逸だ。読後ぞくぞくっとなった)。
おすすめ。



おまけ:
本作に主題歌を付けるとすれば絶対にこれだと思う。

プロフィール
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kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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