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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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日本推理作家協会賞短編部門本年度受賞作・曽根圭介『熱帯夜』、田中啓文『渋い夢』収録。
2008年推理小説界の概況、ミステリー各賞の歴代受賞リストも付いた、
50年を超える歴史を誇る国内唯一無二の推理年鑑。

★収録作品★

熱帯夜/曽根圭介
渋い夢 永見緋太郎の事件簿/田中啓文
しらみつぶしの時計/法月綸太郎
第四象限の密室/澤本等
ケモノ/道尾秀介
パラドックス実践/門井慶喜
検問/伊坂幸太郎
駈込み訴え/石持浅海
前世の因縁/沢村凛
身代金の奪い方/柄刀一
モドル/乾ルカ
見えない猫/黒崎緑
ハートレス/薬丸岳
音の正体/折原一
リターンズ/山田深夜
夜の自画像/連城三紀彦

***

◆熱帯夜◆

既読につきこちら参照。

◆渋い夢 永見緋太郎の事件簿◆

これを書いたのが自分なら。。。! と悔しくてほぞを噛んだ音楽ミステリ。
ラストはちょっと無理にまとめた気がしないでもないけど名作です。
おすすめ。この話は読んでいるとどこからともなくジャズの演奏が聴こえてくる。

◆しらみつぶしの時計◆

既読につきこちら参照。

◆第四象限の密室◆

ミステリの密室パターンを象限でたとえるところが斬新。内容も面白い。
ラストは「それでいいんかい」と一瞬思ったけどまあいっか。
登場人物の言葉遣いに違和感があったところが唯一欠点といえば欠点。

◆ケモノ◆

既読につきこちら参照。

◆パラドックス実践◆

既読につきこちら参照。

◆検問◆

つまらなかった。
伊坂氏の本領はこんなものじゃないと思うのに。
シンプルすぎ。もうちょっと味付けがほしかったところ。
(あといい加減サムいギャグはやめてほしい。。。)

◆駈込み訴え◆

既読につきこちら参照。

◆前世の因縁◆

ラストはちょっといいけれどごくごくごく(一回多い)普通のミステリ。
本書に収録されるほどじゃないと思うのは自分だけだろか。

◆身代金の奪い方◆

読み終えるなり忘れてしまった。ので感想が書けない。
ていうかそのこと自体が感想。

◆モドル◆

既読にこちら参照。

◆見えない猫◆

文章がダサい。。。
オチも「はあ、そう来ますか、なるほどはいはいどうも、じゃあ次」としか思えない。
これが本書に収録される時点でミステリ界の不振を感じてしまう(言い過ぎかもだけど)。。。
今まで読んだ心理トリックの中では私の中では下のほう。

◆ハートレス◆

薬丸氏の短編はいつも楽しみにしてるぐらいなのに。。。
あまりに小粒。
もっと薬丸節の効いたものを次回は読みたい。

◆音の正体◆

ラストは驚かせたかったんだろうけど、やっぱなって感じ。
同じような物語なら本書収録の道尾秀介氏〝ケモノ〟のほうが遥かにうまい。

◆リターンズ◆

無理がある。いろんな意味で。
オチもすぐ読めた。

◆夜の自画像◆

文章艶やか、トリックも納得の一作。
さすがトリを飾るだけはある。
おすすめ。
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ねえ、帰りたいんだ。
本当はずっと帰りたかった。

 

「おまえは俺のこと、見つけられるって」
少女は踏み込んだ、愛と破壊の世界へ。デビュー10周年記念書き下ろし作品。

***

とにかく流される主人公だなー、主体性ないなー、と思って
上巻は読んでいてちょっとイラついたりしましたが、
下巻でその理由が明かされると納得がいって普通に読めた。
(まあもうちょっと早く主人公の過去はネタバレしてほしかったけど)

いつでも誰かしら主人公にとって都合のいい男がいて
何かあってもすぐに助けてくれる、っていうのがちょっとリアリティなかったけど、
中学生から二十代にかけて、ページを繰るごとにゆっくり、ゆっくりと成長していく
主人公の姿を見るのは切実でありながらもどこかほほえましかった。

個人的にはこの著者の作風は〝あられもない祈り〟みたいなほうが好きだけど、
本作もまあ楽しめました。

ラスト一行も残酷な美しさがあってすごく好き。

おすすめ。
それは嘆きの歌、
それは祈りの歌。



館を埋める108個の時計コレクション。
鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で10年前1人の少女が死んだ。
館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。
死者の想いが籠る時計館を訪れた9人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。
凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは?
第45回日本推理作家協会賞受賞。

***

度肝抜かれたー!
なんというトリック。そしてその一大トリックに整合性を持たせるために散りばめられた
無理のない(そして無駄のない)伏線の数々。
してやられました。
氏のデビュー作〝十角館の殺人〟のインパクトがあまりにすごかったために
あれを超すのはさすがに無理なんじゃ。。。とか思ってたけど
見事にそんな懸念覆されました。長くて途中はダレるんだけど(←京極好きに言ったら
怒られそうなひと言ですが)最後まで読んでよかった。

本格推理の中じゃ御手洗潔(/島田荘司)とか京極堂(/京極夏彦)とか火村英生(/有栖川有栖)
に比べて探偵役・島田清の影が薄い気がするんだけど、シリーズ読破していけば
だんだん個性的に見えてくるんだろうか。

何はともあれおすすめです。
夜の中にひとりで。



事故で妻と娘をなくした雪籐の運命は、美少女・遙と出会って大きく動き始める。
新興宗教をテーマに魂の絶望と救いを描く傑作長篇。

***

独白(モノローグ)が異常に長くてそれにページを割いているような本だった。
決して面白くないわけじゃないんだけど↑のせいで終始だれてしまった印象。
宗教(厳密には違うけど)興し話としても、肝心の教祖もそれ以外のキャラも魅力に乏しく
物語展開も地味(クライマックスである真相を明かされたときも「あーやっぱり」って感じで
驚きがないし)。

ほんと、つまんないわけじゃないんだけど。。。
いろいろと「惜しい」作品。
最後の一行は大好きですが。

勘弁してくれ。



モーさんの店は小さなショットバーで、繁華街から少し外れた雑居ビルの2階にある。
バーテンダーという職業柄、常連客の身の上話の相手になることが多いモーさん。
いつしかなしくずし的に「人生相談業」を始めるはめになったのだが、そのアドバイスが
おかしな波紋を巻き起こしていくことに…。
持ち込まれた相談の数々に、バーのマスターが出す答えとは?
ちょっぴり苦い読後感が後を引く、連作ユーモア・ミステリー。
 
★収録作品★

 妻が新型インフルエンザ恐怖症になってしまって困っています
 貸したお金を返してもらえず困っています
 カレシがいるのに他にも気になる男の人ができてしまいました
 子供が何を考えているのかさっぱり判りません
 キャバクラのコとつきあいたいんです
 ネットでデマを流され、迷惑しています
 妻が子供を産んでから、ずっかり太ってしまいました
 前の恋人から貰ったものを捨てずに使っていたら、今の恋人と喧嘩になりました

***

バーテンダー…もともと〝バーの優しい相談者〟を意味する言葉。
そんなバーテンが来客の悩みを解決する。。。というとシンプルな日常ミステリを
思い浮かべるかも知れませんが、さすがは蒼井上鷹氏、彼ならではの筆さばきで
話が進むごとに色濃くなっていくブラック・ユーモアを楽しむことができます。
ちょっと納得いかなかったり後味悪いラストだったりの蒼井氏の癖のある話作りが
性に合わない人も当然いるでしょうが、ハマるひとはけっこうハマるのでは(ちなみに自分は
「基本的には好きだけどたまに受け付けない話がある」という折衷派ですが)。
ミステリ読書レベル中級ぐらいのひとが一番読んでて面白いんじゃないかと思う。

がっつり一気読みよりも、夜中に一話、みたいなじわじわっとした読み方のほうがおすすめです。
主人公・モーさんの作ったカクテルを飲むような感じで。
母さん、死ぬな――。



「母さん死ぬな――」へなちょこ25歳がいざ一念発起!?
崩壊しかかった家族の再生と「カッコ悪すぎな俺」の成長を描く、勇気と希望の結晶。

***

人間の心理描写が絶妙で非常に面白く読めた。
鬱のひととは「死なない約束」をすると、罹るひとは生真面目な人間が多いから自殺に走らない、
ということも知っている著者に「もしや経験者(orその家族)なんじゃ。。。」とも思ってみたり。

ただ、主人公の人間としての成長には納得がいったものの
仕事はとんとん拍子すぎて挫折がないな、っていうのは気になったし、
家族&仕事ばなしに無理やり恋愛ねじこまなくても。。。とも思ったけど(ラストも
あっさりしすぎてもうひと描写ほしかったというのもある)、総じて高評価です。

おすすめ。
罪は消えないというのに。



失踪した母、殺害された父。そこから悲しみの連鎖は始まった。
私は“幸せ”ですか?
人間の“業”とは、そして幸福とは。乱歩賞作家が問いかける、予測不能の人間ミステリー。

***

つまらない。
としか感想が書けない。
ほかに書くことが思いつかない。

事件も地味、解決も地味、人間模様の描写も地味で、
たった300Pちょいを読むのに多大な苦労を強いられた。

鏑木氏の著書はデビュー作〝東京ダモイ〟から好きではなく、
でもスケールの大きさでいったら〝東京~〟のほうが圧倒的に上だった。
今回よかった点は文章が昔よりくだけてて読みやすかった、ってとこだけ。

おすすめしません。
そもそも〝見えない鎖〟って何? 本編にそんなの出てきたっけ?
私がぼんやり読んでたから気付かなかっただけ?
わからない。。。

でも最後の一行には震えました。無意識に「うまい!」とか叫んで。
この矛盾に満ちた、不公平で満たされた世界を。



稀代の作家たちが催す恐怖と幻想の饗宴! 
すべてのミステリーファンに贈る、三年に一度刊行される大好評アンソロジーの第三弾。
三カ月連続刊行の掉尾を飾るに相応しい当代きっての作家たちが集結。
ミステリーとホラー、ジャンルの間を自由自在に越境する才能が、
謎の奥に潜む狂気と恐怖を抉り出す。
ミステリーファン必携の豪華な一冊!

★収録作品★

 隣の四畳半/赤川次郎
 ゲバルトX/飴村行
 ちゃーちゃん/乾ルカ
 おねえちゃん/歌野昌午
 三つ、惚れられ/北村薫
 猫と死の街/倉知淳
 雪を待つ朝/柴田よしき
 十円参り/辻村深月
 引き立て役倶楽部の陰謀/法月綸太郎
 吉原首代売女御免帳/平山夢明
 冬の鬼/道尾秀介
 ろくろ首/柳広司
 身内に不幸がありまして/米澤穂信

***

◆隣の四畳半◆

サラリーマンの悲哀がよく書かれている。
こういうことって本当にあるんだろうな。
うちの父親もこんなことになったらどうフォローしようかと考えてしまった(笑。。。)。

◆ゲバルトX◆

タイトルからしてアレなのでどうなんだろうと思いながら読んだら案の定。。。
いや、楽しませてもらいましたが。
結局因果応報ってことか。
〝ゲバルトX〟っていうのが何なのか作中で説明がほしかった(たぶんヤツらの名前
なんだろうけど。。。)
交接シーンが何かアバターっぽい。

◆ちゃーちゃん◆

以前雑誌で読んでいたんですがやっぱり面白い。
シンプルな中に衝撃があっていい。
乾ルカさんはホラーを書かせたら天下一品だよなと思う。

◆おねえちゃん◆

よくあるネタだけど、物語のつくりがうまいので既視感を感じさせない。
理奈の狂ったキャラがよかった。
ほとんど二人の人間の会話なのでさくさく読める。

◆三つ、惚れられ◆

うーん。。。面白くない。
女の汚さみたいなのはよく書けていると思うけど。
ていうかこれってミステリ? ホラー?
どちらでもないと思うんだけど(強いて言えばほんのちょーっとだけホラーかなあ?)。

◆猫と死の街◆

好きな作家なのにいまいち入り込めず。
登場人物が軒並みウザいのがその一因か。
犯人の〝動機〟も一見新しいようでいてよくよく考えるとそうでもない。
凡作。

◆雪を待つ朝◆

淡々と進んでいくポエティックな話。
だからこそ最後の一行が映える。
ミステリというよりはホラー。

◆十円参り◆

ショートショート的面白さ。
オチは途中で読めてしまうけどそれでも面白かった。
私もやってみようかな十円参り。。。

◆引き立て役倶楽部の陰謀◆

翻訳ものに明るくないので読んでいて苦痛だった。
同じく海外ミステリを読みつけない人は、せめてアガサ・クリスティの生涯だけでも
Wikiあたりで調べておくことをおすすめします。

◆吉原首代売女御免帳◆

舞台を現代から江戸時代に変えただけで物語がここまで面白くなることに感心。
よく新人賞で(内容が面白くなくても)時代ものっぽいのが受賞することが多々あるけれど、
そのほうがいい味出るからなのかもなー。

◆冬の鬼◆

日記を逆さまに読むなんてややこしい手法で
よくもまあここまで魅せられる作品が出来たなと感心。
やっぱり道尾作品はいい。

◆ろくろ首◆

ミステリにしたいのかホラーにしたいのかわからず。
あまり楽しめなかった。

◆身内に不幸がありまして◆

そこまでするかー?!ってオチが恐ろしくも興味深い作品。
これも以前一度読んだことがあるのですが何回読んでも面白い。
ゾクゾクっとくるミステリ。
God bless you.

 

全財産は、三円。転落はほんの少しのきっかけで起きた。
大手証券会社勤務からホームレスになり、寒さと飢えと人々の侮蔑の目の中で閃く――
「宗教を興す」。
社会を見つめ人間の業を描きだす著者の新たなる代表作、誕生。

***

のほほんとした荻原氏の作風で上下巻組はきつかった(せめて〝噂〟ぐらいの疾走感が
あれば。。。)。
冒頭は「おー面白くなりそうだぞ」と期待を持たせる展開なのに、
結局物語の風呂敷はろくに広がらないまま、ちゃきん寿司みたいにちまっと畳まれて終わる。
ところどころに張られた伏線の回収もなし。
主人公が教祖に仕立て上げた仲村もキャラが中途半端で、作中で描かれる〝魅力〟に
説得力がない。
中途半端といえば龍斎の関西弁も死ぬほど中途半端で読んでいてストレス溜まった。
(ていうか本作、登場人物のキャラから話の展開からすべてが中途半端なのですが。。。
どうしちゃったんだろう荻原氏。。。)

同じ宗教を興すばなしなら篠田節子さんの〝仮想儀礼〟のほうが数百倍面白い。

おすすめしないというほどではないけど心には何も響いてこない作品でした。
(終盤からラストにかけての『著者書くの飽きたの?』的ショボ展開には何度かキレかけたけど)

相も変わらず。



友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている
十九歳の貫多。或る日彼の生活に変化が訪れたが……。
こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか――。
青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と痛飲、そして怨嗟と因業を渾身の筆で描き尽くす、
平成の私小説家の新境地。  

***

大きな看板の下で
時代の移ろいを見ていたいな

と歌ったのは宇多田ヒカルですが、
本作の主人公はお水のキャッチが持っている看板より冴えない小さな看板を背負って生きている。
プライドが保てない。プライドを捨て切れない。
自分より上に見えるものをやっかんで攻撃しながら、イソップの狐みたいに
「あの葡萄は美味しくないに違いない」と惨めな悪態をついて生きている。
看板は見向きもされない。たまにそれを眼にした人は「嫌なものを見た」という顔で
さっさと通り過ぎていく。
身につまされる物語だった。
興味深く、一気に読めた。

ただ、これが芥川賞受賞作だと言われると「?」としか思えない。
抜きん出たものが感じられない。
たぶんあと数ヶ月もすれば内容は頭の中で薄れていってしまうんじゃないか。
そんな風に思えてしまう小説でした。

文章に癖はあるけど、意外と読みやすいのでまあおすすめ。

プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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