私は裁かれている。
大好評アンソロジー「Story Seller」の姉妹編。
今回も、6名の超人気作家が豪華競演。オール読みきりで、
読み応え抜群の作品を詰め込みました。
あっと驚かされるミステリ、くすりと笑える話から、
思わず涙がこぼれる恋愛小説まで。
お気に入りが見つかったら次の本を探せる、作家別著作リストも完備。
★収録作品★
暗がりの子供/道尾秀介
トゥラーダ/近藤史恵
R-18ー二次元規制についてとある出版関係者たちの雑談/有川浩
万灯/米澤穂信
ジョン・ファウルズを探して/恩田陸
約束/湊かなえ
***
◆暗がりの子供◆
既読につきこちらを参照。
◆トゥラーダ◆
タイトルは「闘牛」の意。
闘牛の残酷な描写から始まって眉をひそめていたのですが、
もちろんそれはその後に続くある人間を描くための伏線。
闘牛になぞらえてひとりの人間の苦しみを描き出す、
その表現力には唸らされた。
悲しみの残る作品ですがとても印象的にも思う。
信じてもらえなかった人間というのは救われないんですね、
いろんな意味で。
◆R-18ー二次元規制についてとある出版関係者たちの雑談◆
エロ二次元作品が規制されていることについて
それはおかしいと独自の理論を展開する作家とそれを聞く編集者。
確かに、と納得出来る部分もあるにはあったけれど、
もし日本人が性衝動を日本人ならではの豊富な想像力で補うことによって
実際の社会で性犯罪を起こす衝動を抑えている、だから
二次元エロに傾倒しているからといってそれが現実の女性に
反映されることはない、という件は、
そんなに想像力が逞しいなら、むしろ現実の女の子を自分の好きな
エロ二次元キャラだと思い込む想像力も持ってそうなもので怖いけどな、と
思ってちょっと納得いかなかった。
エロ二次元キャラと現実の女性は見た目もリアクションも全然違うから
オタクたちの中で双方が重なることはない、と書いてはいたけれど、
それさえも凌駕する想像力を持っているのが人間ってものじゃないかと
思った。
下世話な話、頭の中に思い描いているのは完全な二次元キャラ、
でも感触だけは生身の女性、そういうことを欲するひともいるじゃないか、と。
まあそれなりに興味深くて面白かったですが。
◆万灯◆
本作中一番面白かった。
出だしは何かの裁判の被告が語ってでもいるのかと思いきや、
彼はもっと重いものに裁かれていることが徐々に明るみになる。
オチは読めてしまったけれど、それでも読者に結末を委ねる戦慄のラストには
ぞくっとした。
中盤までの舞台となる外国の描写もしっかりしていて魅力的で
臨場感たっぷりに読めた。
おすすめです。
◆ジョン・ファウルズを探して◆
ひとりの作家について書かれた、
小説ではなくエッセイ。
「小説じゃないの?」と最初は鼻白みましたが、
短いしねちねち悪い意味で掘り下げて書かれておらずさくっと読めるので
まあそれなりに楽しめた。
でも心に残るものは特になく。
これが小説じゃないから、というよりやはり
私には恩田陸作品はデビュー作「六番目の小夜子」以外
性に合わないんだなーと再確認。
◆約束◆
米澤穂信氏と同じ、外国を舞台にした物語。
ただ、近藤史恵さん、米澤氏の作品を先に読んでしまっていたせいか
そこまでその国の空気感が伝わって来ず。
けれど人間の心理の核心をさらっと、けれど読者の心のど真ん中を突くように
書いてみせる手腕は相変わらず。
ヒロインの恋人の人間的駄目さがかなりリアルなぶん、
ラストには心を動かされました。まあちょっと安直ではあるけれど。
しかも個人的な話、ヒロインと恋人の関係性が自分に似ていて
読んでいて苦笑いが浮かんでしまった。
それとも意外とこういう関係の男女って多いんだろうか。
人間って自分にとって都合よく立ち振舞ってくれる相手に好意を持つものな。
もちろん誰でもいいってわけじゃないんだけれど。
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