あれは誰にも触れられていない、たしかに自分自身の声だった。
いつも前を行く彼と、やっと対等になれるはずだったのに――。
待望の最新長篇小説。
「もしかして、別れようって言ってる?」
ごくふつうに恋愛をしていたはずなのに、和歌と仙太郎の関係は
どこかでねじ曲がった。
全力を注げる仕事を見つけ、ようやく彼に近づけたと思ったのに。
母の呪詛。恋人の抑圧。仕事の壁。祖母が求めた書くということ。
すべてに抗いもがきながら、自分の道を踏み出す彼女と私の物語。
***
単に男性として見るだけじゃなく
「このひとに認められたい、対等になりたい」
と思って恋する女。
私も昔からそのタイプだったので、主人公の気持ちはとてもよくわかった。
でも何だか、このヒロイン好きになれない。
もちろんそれが著者の狙いなのかも知れないけれど、
女にもなりきれず物書きにもなりきれずどっちつかずで
読んでいて苛々するのです。
その人間臭さこそが著者の書きたいものだったのかも知れないけれど、
ほぼ魅力が皆無に感じられる点は失敗だったんじゃないかと思う。
まあ、どこかにいそうなリアリティ溢れる人間だからこそ、
ラストで彼女が言う「孤独」がひしひしと読者にも伝わってくるのかも知れないけど。
ただ、哲学的で自分に自信があってひとを見下したところがある男性というのは
私も付き合ったことがあるので、その相手の一言一句に傷つかないよう
構えてしまう、次に何を言われるのかと相手が口を開くたび、自分が何か言うたびに
びくついてしまう心理はとてもよくわかった。
実際ヒロインの恋人・仙太郎が彼女に向かって辛辣な言葉を発するとき、
いやそれが辛辣じゃなく何気ないひと言であっても、ぎくりとなって
ヒロインとシンクロするように傷ついてしまうという瞬間が何度もあったし、
そのあたりの描写はすごいと思う。
ただ、物書きの女性とその女性が恋する男性を描いた物語なら
貫井徳郎氏の〝新月譚〟のほうが遥かに深みもあって面白かった。
母が「物書き志望のあんたが読んだら面白そうだから」とすすめてくれたのですが、
私にはあまり楽しめませんでした。
決して駄作じゃないけどね。
いつも前を行く彼と、やっと対等になれるはずだったのに――。
待望の最新長篇小説。
「もしかして、別れようって言ってる?」
ごくふつうに恋愛をしていたはずなのに、和歌と仙太郎の関係は
どこかでねじ曲がった。
全力を注げる仕事を見つけ、ようやく彼に近づけたと思ったのに。
母の呪詛。恋人の抑圧。仕事の壁。祖母が求めた書くということ。
すべてに抗いもがきながら、自分の道を踏み出す彼女と私の物語。
***
単に男性として見るだけじゃなく
「このひとに認められたい、対等になりたい」
と思って恋する女。
私も昔からそのタイプだったので、主人公の気持ちはとてもよくわかった。
でも何だか、このヒロイン好きになれない。
もちろんそれが著者の狙いなのかも知れないけれど、
女にもなりきれず物書きにもなりきれずどっちつかずで
読んでいて苛々するのです。
その人間臭さこそが著者の書きたいものだったのかも知れないけれど、
ほぼ魅力が皆無に感じられる点は失敗だったんじゃないかと思う。
まあ、どこかにいそうなリアリティ溢れる人間だからこそ、
ラストで彼女が言う「孤独」がひしひしと読者にも伝わってくるのかも知れないけど。
ただ、哲学的で自分に自信があってひとを見下したところがある男性というのは
私も付き合ったことがあるので、その相手の一言一句に傷つかないよう
構えてしまう、次に何を言われるのかと相手が口を開くたび、自分が何か言うたびに
びくついてしまう心理はとてもよくわかった。
実際ヒロインの恋人・仙太郎が彼女に向かって辛辣な言葉を発するとき、
いやそれが辛辣じゃなく何気ないひと言であっても、ぎくりとなって
ヒロインとシンクロするように傷ついてしまうという瞬間が何度もあったし、
そのあたりの描写はすごいと思う。
ただ、物書きの女性とその女性が恋する男性を描いた物語なら
貫井徳郎氏の〝新月譚〟のほうが遥かに深みもあって面白かった。
母が「物書き志望のあんたが読んだら面白そうだから」とすすめてくれたのですが、
私にはあまり楽しめませんでした。
決して駄作じゃないけどね。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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