人間なんてそんなもんなんだから。
ほら、人間という生き物は、こんなにも愚かで、哀しい。
数多のエピソードを通して浮かび上がる、人間たちの愚行のカタログ。
***
このブログにもいつも書いていることですが、
私がこの世で一番嫌うのは〝悪〟よりも〝俗悪〟な人間で、それはたとえば
何人もの人間を街中で殺傷した人間よりも、それによる被害者を
悪びれもせず平然と写メールで撮っているような無神経な連中のことです。
先日我が家の隣家の人が変死したのですが、それを面白おかしく話してまわっている
近所の中年女(主婦、とかおばさん、とか呼ぶ気にもなれないので。すいません)たちにも
正直心からの軽蔑を感じて吐き気がしたし。
綿矢りささんのデビュー作〝インストール〟でも、
主人公の少女が出会う小学生の少年の義理の母親が似たような感じで、
思春期の息子に向かって「男の子と女の子どっちが欲しい?」と訊ねてみたり
生理のときには風呂場の前にショーツとナプキンの組み合わせを一列に並べたり。。。
悪意がないから注意できない。でも悪意がないぶんよっぽどタチが悪い。
本作にはそういった連中ばかりがこれでもかと登場します。
初めて読んだときはあまりの苛立ちに本をぶん投げてやろうかと思いましたが、
ある程度年月が経っていい大人になった今読み返してみるとある意味面白い。
バカな人間たちを斜め上から見下ろしているような感覚で読んだ。
悪意なき悪意、法に触れない愚行のほうが、よほど人間を不快にさせることがあるよなと
本作を読んで改めて痛感。
本作を読み終えて、人間として一番〝愚か〟ではないと感じられたのが
一家皆殺し犯である、という滑稽さ。
犯人は純粋な〝悪〟だった。だから法の下に裁かれる(おそらく極刑)。
けれど人間としてより軽蔑に値するのは、その犯人よりも周囲の人間たちのほうなのだから
もう笑っちゃうしかありません。
ただひとつ疑問なのは、冒頭から既に惨殺された状態で登場する友季絵、彼女が
作中の〝愚行〟を本当にやりたくてやったのか、ということ。
案外彼女は人間そのものをこの物語の読み手と同じように高みから見下ろす立場にいて、
だから人間になどはじめから何の感情も抱いていなくて、
単に科学者がマウスでやるように「自分がこうしたら相手はどうするか」という〝実験〟を
無感情に淡々と行っていただけなような気がしてならない。
(〝ハサミ男〟に登場する女子高生が正にそんな感じでしたが、
友季絵にも彼女と同じ匂いをどうにも感じる)
なのでさまざまな人間が語る〝友季絵〟という一人の女性の人物像を、
その語りを疑うこともなく「そうか、彼女は本当に嫌な人間だったのだな」と思ってしまった時点で、
読み手側も自分の頭で考えるのではなく単なる情報だけで相手を判断してしまうという
〝愚行〟を犯してしまったも同じ。
おそらく友季絵があの世で笑っているでしょう。
ほら、人間という生き物は、こんなにも愚かで、哀しい。
数多のエピソードを通して浮かび上がる、人間たちの愚行のカタログ。
***
このブログにもいつも書いていることですが、
私がこの世で一番嫌うのは〝悪〟よりも〝俗悪〟な人間で、それはたとえば
何人もの人間を街中で殺傷した人間よりも、それによる被害者を
悪びれもせず平然と写メールで撮っているような無神経な連中のことです。
先日我が家の隣家の人が変死したのですが、それを面白おかしく話してまわっている
近所の中年女(主婦、とかおばさん、とか呼ぶ気にもなれないので。すいません)たちにも
正直心からの軽蔑を感じて吐き気がしたし。
綿矢りささんのデビュー作〝インストール〟でも、
主人公の少女が出会う小学生の少年の義理の母親が似たような感じで、
思春期の息子に向かって「男の子と女の子どっちが欲しい?」と訊ねてみたり
生理のときには風呂場の前にショーツとナプキンの組み合わせを一列に並べたり。。。
悪意がないから注意できない。でも悪意がないぶんよっぽどタチが悪い。
本作にはそういった連中ばかりがこれでもかと登場します。
初めて読んだときはあまりの苛立ちに本をぶん投げてやろうかと思いましたが、
ある程度年月が経っていい大人になった今読み返してみるとある意味面白い。
バカな人間たちを斜め上から見下ろしているような感覚で読んだ。
悪意なき悪意、法に触れない愚行のほうが、よほど人間を不快にさせることがあるよなと
本作を読んで改めて痛感。
本作を読み終えて、人間として一番〝愚か〟ではないと感じられたのが
一家皆殺し犯である、という滑稽さ。
犯人は純粋な〝悪〟だった。だから法の下に裁かれる(おそらく極刑)。
けれど人間としてより軽蔑に値するのは、その犯人よりも周囲の人間たちのほうなのだから
もう笑っちゃうしかありません。
ただひとつ疑問なのは、冒頭から既に惨殺された状態で登場する友季絵、彼女が
作中の〝愚行〟を本当にやりたくてやったのか、ということ。
案外彼女は人間そのものをこの物語の読み手と同じように高みから見下ろす立場にいて、
だから人間になどはじめから何の感情も抱いていなくて、
単に科学者がマウスでやるように「自分がこうしたら相手はどうするか」という〝実験〟を
無感情に淡々と行っていただけなような気がしてならない。
(〝ハサミ男〟に登場する女子高生が正にそんな感じでしたが、
友季絵にも彼女と同じ匂いをどうにも感じる)
なのでさまざまな人間が語る〝友季絵〟という一人の女性の人物像を、
その語りを疑うこともなく「そうか、彼女は本当に嫌な人間だったのだな」と思ってしまった時点で、
読み手側も自分の頭で考えるのではなく単なる情報だけで相手を判断してしまうという
〝愚行〟を犯してしまったも同じ。
おそらく友季絵があの世で笑っているでしょう。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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