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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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お気軽に。



芸術棟に、フルートを吹く幽霊が出るらしい――吹奏楽部は来る送別演奏会のため
練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。
幽霊を否定する必要に迫られた部長に協力を求められ、葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、
予想に反して幽霊は本当に現れた!
にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 
コミカル学園ミステリ。
第16回鮎川哲也賞佳作入選、期待の新鋭のデビュー作。

***

辛口のレビューになります。
あとがきにあったように、著者が本作を「いい出来」と本当に思っているのなら、
正直もうちょっと謙虚になることをすすめたい。もちろんそのひと言の中には
「習作として書いた割りには」という枕詞がつくのでしょうが、
本作は読み手にとっては少しも「いい出来」と思えるものではないからです。
タイトルセンスの秀逸さのみで佳作を持っていったんだろうと個人的には踏んでいる。

まず、謎がまったく面白くない。
「だから何?」級の謎を二つも提示されても読んでいてだるいだけ。
そして時々文章がくどい。
ファミレスでのウェイトレスのシーン、あそこまでウェイトレスを強調しなくても
よかったのでは(探偵役の伊神のキャラを読者に印象付けたかったのはわかるけど)。
〝ゲシュタルト〟〝ブロッケン〟等、マンガやラノベに出てくる知識をそのまま出してくる
センスもイタい(私が著者と同世代なため、著者がどこでその知識を仕入れてきたか
おおよその見当がついてしまい気恥ずかしいことこの上ない)。
探偵が終盤である人物を疑う根拠も、
中年男が目下の高校生にこんなに謙虚なわけがないから〟って
それを小説で言われてもこっちがわかるわけないだろっての。
ほかの小説じゃそんなキャラざらにいるよ。
現実だってあそこまで庇ってもらえばあんな風になる人もいるんじゃないの?
どうにも腑に落ちない。

あと、私は男勝りな女が好きな反面下品な女は嫌いなのですが、
世の中この二つを混同している輩が意外に多く、汚らしい(中身的な意味で)姉ちゃんが
「私ってぇ男っぽいからぁ~」とか言ってたりするのを眼にしてキレかけることしばしばですが、
自分を妊娠させた相手のことを「種馬」と称する本作の某女性キャラには
生理的嫌悪感さえ覚えてしまった。
やめろ作者。

犯人もトリックも悲しいほどあっけなくわかってしまうし。
内容もどちらかといえば〝理由あって冬は出づらい〟のほうが正しい気がするし。

でも全体的にほのぼのしい文章やあとがきから滲み出る人間性からいって
著者はきっといい人ではあるのだろうなと思う。

若い子はそれなりに楽しく読めるんじゃないかな。
でもはっきり言ってこれは大人の読み物じゃありません。
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恋しくてしかたなかった。



誰もが振り向くような自慢の恋人をエリート医師に奪われてしまった省吾。
あることからこの医師が彼女を殺してしまうと「知った」彼は、全てをなげうって奔走する。
そんな省吾の「執着」に、周囲の人間はあきれ、次第に離れていってしまうのだが…。
やがて、事態は思いも寄らない方向へ転じていく。
痛々しいほど真っ直ぐな気持ちだからこそ、つかむことのできた「真実」とは。

***

この小説の失敗点は二つ。
一つ、起承転結のページ配分を間違えたこと。
二時間ドラマでも、犯人が捕まった時間が22時ごろだと
「こりゃほかに真犯人いるな」「あとから新事実出てくるな」と勘付いてしまうものだけど、
本作がまさにそれ。
お陰で緊迫感がない上にオチもある程度読めてしまった。

二つ、主人公が元恋人を想う気持ちの強さが一番のテーマであるはずなのに、
肝心のその〝気持ち〟がほとんど伝わってこないということ。
まだ慕い合っていたころのエピソードなんかを挟んだりしてくれればこっちも感情移入できたのに
まったくそれがない。しかも相手の女性に魅力がないので(むしろ嫌いな部類)
「何でそこまで(こんな女に)執着すんの?」としか思えない。

終盤は読んでいて恥ずかしくなるぐらいのクサい展開&台詞のオンパレードだし。

決してつまらなくはないんだけど。。。電車の中でさらっと読む、とかにはいいかも。

それにしてもタイトルと内容がいまいち合ってない気がするのは私だけ?

いまこそ人間らしさから脱出する時だ。



空から落とされた無数の黒い犬が戦争を終わらせ、人々を喰い殺す。
生きて戻った父は図書館を占拠し、凶行の限りを尽くす。
私は父と対峙することで自らの悲しみを獲ようとするが…。
表題作ほか、「血脈」「聖書の煙草」を収録。

***

大好きな田中氏の作品の中では唯一、いいと思えなかった作品。
文章もデビュー作に比べればだいぶこなれてきてはいるけれど、
心に訴えかけてくるものは初期の作品のほうがずっと上だった。
収録されている三つの短編のうち、どれも著者の言わんとすることがわからなかった。
敵兵の襲撃を犬に例えるのもイメージ湧きづらかったし、
三編共に登場する性描写が気持ち悪い(別にそこまで具体的に書かれているわけじゃ
ないのに、なぜか読んでいて気分が悪い)。

ていうか〝聖書の煙草〟。。。これたぶん半分は実話なんだろうなやっぱり。

この人の著作は(マザコンという意味ではなく)母親にこだわる主人公が多いけど、
やっぱり物語というのは書き手本人の実体験が滲み出てしまうものなのかな(どういう意味?
という人は著者の経歴参照)。
何はともあれ本編のお母さんが著者の母親をモデルに書かれたものだとしたなら、
自分はこういう母ちゃん好きです。
人か魔か。



猪丸家に突然、謎の女が現れる。その名は、葦子。
狐狗狸さんのお告げを伝える彼女が後妻に来てから、何かがおかしい…。
そんなある日、屋敷の二階で密室殺人が起きた。惨事の元凶は狐狗狸さんなのか、はたまた…。
旧家をおそった凄惨な事件を、刀城言耶が解明する(「密室の如き籠るもの」)。
表題作ほか、全4編収録。シリーズ最新作。

★収録作品★

 首切の如き裂くもの 
 迷家の如き動くもの 
 隙魔の如き覗くもの 
 密室の如き篭るもの

***

決して嫌いじゃないんだけど、どうしてこの人の著作が
毎回ミステリランキング上位に入るのかどうにも不思議。
本作も、偉そうに言わせてもらえば及第点というところ。
〝首切の如き~〟は発想は面白いけどどんだけ運任せだよってオチだし、
〝隙魔の如き~〟はもっと細密で大胆なトリックを黒田研二氏が既にやってるし。
あとの二つに至ってはインパクトが薄いため既に記憶がおぼろげ。
作家である主人公の担当編集の偲はウザくて好きになれないし(あの性格で名前が〝偲〟って、
当然狙ってるんだろうなあ。。。)。
あとこの作者相変わらず漢字使いすぎ。もうちょっと開いてください。
読みづらい。物語に集中できない。

どうも三津田氏の著作はタイトル負けしてる感が否めないんだよなー。。。

次こそは〝幻惑の如き魅せるもの〟を書いてください、三津田先生。
逃がすものか。



だれが見ても、あいつが犯人だった――幼女殺害事件に挑む新米刑事。
事件解決に傾ける情熱が、大きな疑惑に突き当たっていく。犯罪被害者の遺族として。
図地反転図形――図と地(背景)の間を知覚はさまよう。「ふたつの図」を同時に見ることはできない。
ひとたび反転してしまったら、もう「元の図」を見ることはできない。
乱歩賞作家の受賞第一作ミステリー。

***

犯人当てに重きを置いた物語ではないので、そういうものを期待して読むのは×。
自分も途中まで「こいつが犯人と見せかけて実はこいつか? いや、でも。。。」などと
本格推理を読んでいるばりに推理しながらページを繰り、最後で肩透かしを喰らったので。

とはいえ決してつまらないわけじゃないです。むしろかなり面白い。
あのデビュー作は一体何だったんだろうというほどの(失礼ですが)面白さ。
一気読みしてしまいました。

ただいかんせん、内容が地味かな。
せっかくの〝図地反転〟も、そこまで物語に活かし切れてないように思ったし、
オチも現実によくあることなので「何を今更」といった感もあった。
もうちょっとタイトルに絡めた壮大な仕掛けがあってもよかったのでは。
きっとそのほうが著者の伝えんとすることが
より大きなインパクトになって読み手に訴えたんじゃないかなと。

あとは、肉親を殺された遺族の悲しみがあまり伝わってこなかったことも
物語を地味にみせてしまっている一因だと思う。
客観的にしか読めないんだよな。登場人物の心理にまで入り込めない。
被害者がまだ生きていたころの家族との交流をもっと描写してくれていれば、
小説世界により深く入り込めていたのに、とちょっと残念。

でも一読の価値ありです。
ちなみにタイトルの読みは〝ずちはんてん〟じゃなく〝ずじはんてん〟。
ラ・メメント・モリ。
高らかに歌いたい。




22歳の女性作家・リンが新たに執筆を依頼されたのは自伝的創作=オートフィクションだった――。
なにものによっても埋めることのできない、深い孤独を抱えた彼女が語り始めた
「オートフィクション」は抹殺したはずの過去を描き出す。
切り取られたいくつかの季節と記憶。通り過ぎる男たち。
虚実が錯綜し破綻した世界の中で、彼女が見いだしたものとは。
著者渾身の傑作長編。

***

正直今までの金原作品の中で一番つまらなかった。
「ひょっとしてこれ作者の自伝なんじゃ?」――そう思わせるものが〝オートフィクション〟、
なのに本編はどうやっても作り物の〝小説〟としか思えない(唯一主人公が16歳時の物語が
金原さんの実際の経歴を参照してはいたけど、言っちゃえばまあそれだけだし)。
「これほんとにフィクション?」と思わせる手法は、舞城王太郎氏のほうが遥かに上。
(彼の作品は読んでいて何度「これ作者の実体験じゃ?」と思わされたことか。
氏曰く、やはりよく言われるらしい)

つまらないけどどう考えてもノンフィクションにしか思えない小説、
明らかにフィクションだけど読んでいて面白い小説、
このどちらかなら読んでもいいけど、本作ははっきり言って
〝フィクション丸出し&つまらない〟
という一番どうしようもないものなので、彼女の作品の中では正直一番読む価値なし。

何よりもキツかったのは、金原さんにしては作中に使われる言葉選びがセンスないこと。
〝太陽、それは魔物……。〟
この一文が出てきたときは、思わず我が目を疑った。
もちろんギャグで書いてるんだよね?と思いたくても前後の文脈からいって明らかにマジだし、
一体どこの素人(しかも昭和初期生まれ)が書いたポエムだ、と。
音楽のリズムの表現も拙いし。。。

やっぱり彼女の書いた作品は〝ハイドラ〟が(個人的に)一番だな。

あと今は若いからいいけど、この作家将来中年になってもこの作風だと読んでるこちらもキツい。
そろそろ性的なテーマから離れたものを書いてもいいのでは。ていうか読みたい。

金原さん、新境地を拓いてください。
お願い、私と一緒に殺して。



「F」から始まり今ここに終結、そして拡散?
萌絵たちが訪れたテーマパークで次々と起こる不可解な事件の背後には。
日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。
パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。
萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は……。
S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。

***

正直本作を読むぐらいなら、この映画を観たほうがよっぽどいいです。
トリックがあまりにあんまりすぎる。
まだ犀川と萌絵という二人の主人公をシリーズを通して見てきたからこそ読破できたし
最後はそれなりに感動したけど、この作品のみを単品で読んだミステリファンは
高確率で腹立つと思う。
萌絵も犀川と同じ天才ならではの多重人格でした〟なんていう
後付けにもほどがある設定が最終巻になって唐突に出てくるし、
天才天才言われてる割りにその天才ぶりの描写が甘い登場人物ばっかりだし(石持浅海氏には
負けるけど)。
女の登場人物の喋り方はキモいし萌絵がシリーズ中一番ムカつくし。
(「空き缶なんて無粋なものに口つけて飲み物なんて飲めない」なんて言う人が
よくファミレスで食事なんかできるよな。
そもそも何でこの人友達いるの? 究極自己中&男至上主義、
私だったら無人島に二人きりでも絶対お近づきになりたくない)

唯一はっとさせられたのは作中に登場するゲームで最後に得られる宝の意味がわかったとき
ぐらい。
(まーあとは萌絵の人格が壊れるところを初めて見られたこととか)

やーしかし改めて振り返ってみると、
犀川→煙草吸い過ぎ・コーヒー飲み過ぎ・口元を斜めにして笑い過ぎ。
萌絵→ワガママ言い過ぎ・上目遣いし過ぎ・一応大学で一般教養取ってるだろうに常識なさ過ぎ。
犀川妹&反町愛→喋り方腐女子過ぎ・ラリってる並みにテンション高過ぎ。
四季博士→喋り方が禅問答過ぎ・屁理屈多過ぎ(これは犀川も)。
こればかりがやたら眼についた物語だったなあ。。。

S&Mシリーズでおすすめできるのはやはり
処女作〝すべてがFになる〟と、何より〝今はもうない〟のみです。

犀川と萌絵の独特のラブラブっぷりは最後まで嫌いじゃなかったけど。
ずっと逃げられない。



死んだ妻に会いたくて、霊現象探求所を構えている真備。その助手の凛。
凛にほのかな思いをよせる、売れないホラー作家の道尾。
三人のもとに、今日も、傷ついた心を持った人たちがふらりと訪れる。
友人の両親を殺した犯人を見つけたい少年。
拾った仔猫を殺してしまった少女。
自分のせいで孫を亡くした老人…。
彼らには、誰にも打ち明けられない秘密があった。

★収録作品★

 流れ星のつくり方 
 モルグ街の奇術 
 オディ&デコ 
 箱の中の隼 
 花と氷

***

氏のデビュー作〝背の眼〟とその続編〝骸の爪〟に登場する
名探偵・真備庄介シリーズ最新作。短編集です。
探偵とワトソン役のキャラは御手洗潔シリーズに近いので
御手洗が好きな人なら読んでつまらないということはないはず。

以下、各話ごとのレビュー。

◆流れ星のつくり方◆

初めて読んだとき感動のあまり
ワードで写本までしてしまったほど(私は作家を目指しているのでいい作品は写本する癖がある)。
フィニッシング・ストロークものとしてはかなりの秀作だと思う。
こんな話が書けたらなあと今でも思い続けてます。

◆モルグ街の奇術◆

柿の種バリケードには笑った。
道尾氏ひょっとして〝ウミガメのスープ〟から着想を得た?
自分は本を持ってるのですがそこに本編によく似たトリックが出てきたので。。。
ラストはなかなか爽快です。

◆オディ&デコ◆

ポップでこじゃれたタイトルと思いきや真相はそうだったなんて。。。
タイトルも謎解きのヒントの一つ。頭の片隅に置きつつ推理してみてください。
まあ真相そのものはちょっとショボめですが。。。

◆箱の中の隼◆

今どき録音にカセットテープを使う人がいるかと突っ込むのは野暮だろうか。。。
そして内容とタイトルがちぐはぐな気がするのは私だけだろうか。。。
というか言い方は悪いけどこの著者はいろんな病気をミステリに織り込むのがうまいよな。

◆花と氷◆

真備の過去が垣間見える、ちょっと切ない物語。
老人が誤って孫を死なせてしまう事件はけっこう頻繁に起きているのを眼にするし、
そのたびにやるせなさを感じてきたけど、
こうして物語にされるといよいよもってその感情が増す。
数年前に孫にラジコン飛行機を披露してやっていたおじいちゃんが
孫の頭部に飛行機をヒットさせてしまい死なせてしまう事件があって、
おじいちゃんは茫然自失で取調べにもろくに答えられない状態だと報道されていたけど、
そのおじいちゃんや親御さんたちが少しでも回復してくれていることを願う。

それにしても、本当に苦しい目に遭った人間は、
たぶん大過なく人生を送ってきた人間と親しくなるのは難しいだろうな、と
本編を読んで改めて思った。
私の周りは苦労人が多いけど、やっぱり似た境遇の友人が多いし。
でもそれでも構わないから、彼らには幸せになってほしい。

本編に話を戻しますが、私はデキ婚好きじゃないです。
(人間がかなり古風なので。。。)
ああ。生きている。生きている。



「ゆれる」で世界的な評価を獲得し、今、最も注目を集める映画監督が、
日常に潜む人間の本性を渾身の筆致で炙りだした短編集。
2009年公開映画「ディア・ドクター」に寄り添うアナザー・ストーリーズ。

★収録作品★

 1983年のほたる 
 ありの行列 
 ノミの愛情 
 ディア・ドクター 
 満月の代弁者

***

ひと言で言えば〝惜しい〟小説。
どれも決して悪い物語ではないのに、読者の心の琴線にあと一歩届かない、的な。
〝ありの行列〟なんて某女性漫画家の著作にまったく同じシーンがあるので
パクリだとこそ思わないものの「ふーん」という感じだったし。

前作〝ゆれる〟がかなりよかったこともあり(初読時はそうでもなかったのに
読み終えてしばらく経ってもなぜか頭から離れず
思わず買ってしまったという逸話あり)、
そこまで響かなかったというのが正直なところ。
文章もシンプルなのに読みづらい部分がたまに出てくるし。

表題作〝ディア・ドクター〟は、唯一西川節を感じて感動したけど
(特に主人公の弟が結婚式で涙を流すくだりはかなりきた)
それも結局は兄弟間の関係に感動しただけで、
肝心の〝僻村の医者〟を描いた部分にはぴくりとも心が反応せず。

ああ、今気づいたけど、〝ゆれる〟もそうだしこの人は兄弟を描くのがうまいのかも。

西川さんが本作で芥川賞を獲らなくてよかった。
彼女にはもっといい作品でもし獲るなら獲ってもらいたい。
君の出番だ。



天才が同時代、同空間に存在する時、周りの人間に何をもたらすのか?
野球選手になるべく運命づけられたある天才の物語。
山田王求はプロ野球仙醍キングスの熱烈ファンの両親のもとで、生まれた時から
野球選手になるべく育てられ、とてつもない才能と力が備わった凄い選手になった。
王求の生まれる瞬間から、幼児期、少年期、青年期のそれぞれのストーリーが、
王求の周囲の者によって語られる。
わくわくしつつ、ちょっぴり痛い、とっておきの物語。
『本とも』好評連載に大幅加筆を加えた、今最も注目される作家の最新作!!

***

偉人伝というものはその当人の人生をある程度前もって知っているからこそ
読んで感動するのであって、「これから偉人になる人」をいくら書かれても
感情移入することは難しい。
だから本作は二回読むことをおすすめします。

とか書いてるけど実は序盤を読んでいるころには
「何かムカつくしストレス溜まるし全部読んだらボロクソに書いてやろう」
と黒いことも考えてました。
登場人物は隙あらば屁理屈ばかり口にするし(まあそれが伊坂氏の持ち味ではあるのですが、
今まではそれがちゃんとキャラの魅力になってたのに、今回はただウザいだけ。
特に主人公の友人の男の子に「主人公は野球選手になるのか」と訊かれて
「ひまわりの種にひまわりになるのかと質問するか」と冗談めかすでもなく真顔で返す母親は
ウザいを超して大人としてどうかと思った。ほんと、奇を衒えばいいってもんじゃない)。
台詞の合間に英語を挟んでくる男も、あれを本気で面白いと思って書いてるんだとしたら
正直作者はただのイタい人。
島田荘司氏の〝最後の一球〟は野球にまったく明るくない私が読んでも面白くて感動もしたのに
本作は野球小説としてはかなり微妙だったし(寝そうになったし)。

ところが
「あー伊坂氏の小説を読んで初めて本格的にプロ作家目指すようになったのに
幻滅を感じるなんて悲しいな。。。」
と思いつつ読み進めたところ、次第に微妙に面白くなってきてラスト2Pには涙が出そうになった。
それまでの展開や構成が軽くぐだぐだ気味なので
野球風にいえば〝サヨナラホームラン〟に騙された気がしないでもないけど
終わりよければすべてよし。
こうして物語は、人というものは、途切れることなく続いていくんだなあ。。。

ただ言っておきたいことは(著者本人に伝わるはずもありませんが)、
伊坂さん、いくら学生時代純文学に傾倒していたとはいえ
あなたの筆致や作風じゃ純文テイストは取り入れても空回るだけなので
やめたほうがいいとファン的には思います。
&以前雑誌のインタビューで「動じない人間が好きだからどうしてもそういうキャラばかり
書いてしまう」と言ってましたが
最近のあなたのキャラは動じなさ過ぎて逆に不気味です。人間味欠けてて感情移入しづらい。
最後に、有名な作家の言葉の引用の連発はやめてください。
私はあなたが自分自身で考えて生み出した言葉が好きです。
その言葉をもっと聞きたいから。
プロフィール
HN:
kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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