馬鹿みたいだったけど、
あれが恋愛じゃなかったらあたしは恋愛を知らない。
あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。
25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に
割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが…。
誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。
芥川賞候補の表題作の他、その前日譚である短編「あの明け方の」を収録。
★収録作品★
生きてるだけで、愛。
あの明け方の
***
まず言いたいのは、この話の主人公はうつ病じゃないだろってこと。
精神疾患っていうのはどの病気でも根っこは繋がってるから
もちろんうつに似た症状も作中で描写されてはいるんだけど、
基本的にこのヒロインはうつではなくて〝境界例(ボーダーライン)〟。
たとえ軽度だとしても、うつ病の人間はここまで他人を責めたり外出したりできません。
まあ多少苦しさから人に八つ当たりしたり攻撃的になったりするけど、このヒロインはちょっと凄すぎ。
むしろ自分を認めてくれない相手への執拗な攻撃や自分と人の間に異常なまでの隔絶を感じるのは
まさにボーダーの人の特徴。
本谷さんは大好きな作家さんですが、そのへんはちょっと認識不足な気がした。
でもやっぱり、この著者は本業が戯曲作家であるせいか
文章のリズムがとても心地よく表現がいちいちクソ面白い(汚い表現すいません)。
しょっぱなからもうずっと、ページを繰るたびに腹を抱えて笑わせてもらった。
(特に最近、映画〝シャイニング〟を観たばっかりだったので、作中にそれが出てきたときは
笑いすぎて腹がねじ切れるかと思った)
そしてヒロインの恋人である津奈木、彼のキャラが秀逸。
ものすごく普通の人なのに実はそうじゃないんだよというオーラが彼の内面から滲み出していて、
そんな風に彼の秘められた魅力を読者に伝えられる本谷さんの力量にはただただ舌を巻くばかり。
ふたりの(たった一度しか出てきませんが)デートの際の会話もものすごく好きです。
私はこんな会話をしてくれる人と(冗談抜きで)結婚したい。
(ちなみに読んでいる間中、脳内では津奈木がずっと加瀬亮さん(左)↓で再現されてました。
もし本作が映画化されるなら、キャストは是非彼でいってほしい)
終盤の屋上でのシーンはちょっと芝居がかっている気もしたけど、
ラブストーリーを北斎の〝富嶽三十六景〟と絡ませて収束させる手腕は大したもの。
今度からあのザッパーンな絵を見るたびにこの物語が浮かぶ気がする。
ヒロインの「津奈木はあたしと別れられていいね。あたしはあたしと別れられないのに」という台詞や、
ラストはちょっと切ないですが、津奈木の台詞が一条の光となって
暖かい終わり方になっています。
人は他人にわかってもらえなくても、わかろうとしてくれる人がいるだけで
生きていける生き物なんだと思う。
ヒロインの内面を照らし出すべく灯されたほのかな光は、最後には消えてしまったけれど。
それでも彼女はこれからも生き続けていけるのだと、個人的には確信しています。
かなりおすすめ。
(ただ、同時収録の〝あの明け方の〟を読むとヒロインのあまりの恵まれっぷりと
その割りにひどいわがままっぷりに殺意が湧くので、
もしまた読み返すとしてもたぶん表題作だけだろうな)
おまけ:
シャイニング笑い(笑)。
あれが恋愛じゃなかったらあたしは恋愛を知らない。
あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。
25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に
割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが…。
誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。
芥川賞候補の表題作の他、その前日譚である短編「あの明け方の」を収録。
★収録作品★
生きてるだけで、愛。
あの明け方の
***
まず言いたいのは、この話の主人公はうつ病じゃないだろってこと。
精神疾患っていうのはどの病気でも根っこは繋がってるから
もちろんうつに似た症状も作中で描写されてはいるんだけど、
基本的にこのヒロインはうつではなくて〝境界例(ボーダーライン)〟。
たとえ軽度だとしても、うつ病の人間はここまで他人を責めたり外出したりできません。
まあ多少苦しさから人に八つ当たりしたり攻撃的になったりするけど、このヒロインはちょっと凄すぎ。
むしろ自分を認めてくれない相手への執拗な攻撃や自分と人の間に異常なまでの隔絶を感じるのは
まさにボーダーの人の特徴。
本谷さんは大好きな作家さんですが、そのへんはちょっと認識不足な気がした。
でもやっぱり、この著者は本業が戯曲作家であるせいか
文章のリズムがとても心地よく表現がいちいちクソ面白い(汚い表現すいません)。
しょっぱなからもうずっと、ページを繰るたびに腹を抱えて笑わせてもらった。
(特に最近、映画〝シャイニング〟を観たばっかりだったので、作中にそれが出てきたときは
笑いすぎて腹がねじ切れるかと思った)
そしてヒロインの恋人である津奈木、彼のキャラが秀逸。
ものすごく普通の人なのに実はそうじゃないんだよというオーラが彼の内面から滲み出していて、
そんな風に彼の秘められた魅力を読者に伝えられる本谷さんの力量にはただただ舌を巻くばかり。
ふたりの(たった一度しか出てきませんが)デートの際の会話もものすごく好きです。
私はこんな会話をしてくれる人と(冗談抜きで)結婚したい。
(ちなみに読んでいる間中、脳内では津奈木がずっと加瀬亮さん(左)↓で再現されてました。
もし本作が映画化されるなら、キャストは是非彼でいってほしい)
終盤の屋上でのシーンはちょっと芝居がかっている気もしたけど、
ラブストーリーを北斎の〝富嶽三十六景〟と絡ませて収束させる手腕は大したもの。
今度からあのザッパーンな絵を見るたびにこの物語が浮かぶ気がする。
ヒロインの「津奈木はあたしと別れられていいね。あたしはあたしと別れられないのに」という台詞や、
ラストはちょっと切ないですが、津奈木の台詞が一条の光となって
暖かい終わり方になっています。
人は他人にわかってもらえなくても、わかろうとしてくれる人がいるだけで
生きていける生き物なんだと思う。
ヒロインの内面を照らし出すべく灯されたほのかな光は、最後には消えてしまったけれど。
それでも彼女はこれからも生き続けていけるのだと、個人的には確信しています。
かなりおすすめ。
(ただ、同時収録の〝あの明け方の〟を読むとヒロインのあまりの恵まれっぷりと
その割りにひどいわがままっぷりに殺意が湧くので、
もしまた読み返すとしてもたぶん表題作だけだろうな)
おまけ:
シャイニング笑い(笑)。
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そこは、なにごとかの境界を越えた、どこか。
仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。
地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。
千葉県北部を旅する天才幼児の物語。
東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、
奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女――。
物語に没入した“俺”は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。
***
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。
第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞。
第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞。
第15回電撃大賞銀賞受賞。
。。。なんかもう正直やる気失せますね、こういう人に出てこられると。
こういう人は創作の才能はもちろん、各賞ごとの傾向やカラーを読むのがうまいんだろうな。
それもかなり重要な才能だから。
というわけでどんなもんだろうと手にとってみた本作。
結論から言うと、そこらのプロよりずっとうまいです。
たまーに入る若者言葉が(私も一応二十代なのですが)鼻につきますが、それも
地図男の〝語り〟であって地の文ではないからまあ許容範囲。
ダ・ヴィンチ文学賞はミステリの賞じゃありませんが、
多分にミステリ要素を含んでいるのでミステリ好きの人にもおすすめ。
終わり方もさわやかでとても好きです。
本作や〝火薬と愛の星〟みたいな、遠回りな、あまりに遠回りな恋愛話はすごく好き。
ただ。。。著者の真藤氏、おそらく影響受けてるよね?
古川日出男と舞城王太郎に。
特に前者の。
だって古川氏の著作〝ロックンロール七部作〟に文体が激似なんだもん(そして会話のノリは
舞城氏)。
最近の新人さんは、筆力はすごいんだけど新鮮味がないって人が多いので
そこだけはちょっと残念。
彼の別の著作も読んで改めて判断したいところですが。
余談:
東京23区合戦で皆が自分の身体に入れてる刺青だけど、
どれがオリジナルでどれが勝利の結果入れたものだって
どうやって判断するの? それだけが疑問。
仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。
地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。
千葉県北部を旅する天才幼児の物語。
東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、
奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女――。
物語に没入した“俺”は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。
***
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。
第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞。
第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞。
第15回電撃大賞銀賞受賞。
。。。なんかもう正直やる気失せますね、こういう人に出てこられると。
こういう人は創作の才能はもちろん、各賞ごとの傾向やカラーを読むのがうまいんだろうな。
それもかなり重要な才能だから。
というわけでどんなもんだろうと手にとってみた本作。
結論から言うと、そこらのプロよりずっとうまいです。
たまーに入る若者言葉が(私も一応二十代なのですが)鼻につきますが、それも
地図男の〝語り〟であって地の文ではないからまあ許容範囲。
ダ・ヴィンチ文学賞はミステリの賞じゃありませんが、
多分にミステリ要素を含んでいるのでミステリ好きの人にもおすすめ。
終わり方もさわやかでとても好きです。
本作や〝火薬と愛の星〟みたいな、遠回りな、あまりに遠回りな恋愛話はすごく好き。
ただ。。。著者の真藤氏、おそらく影響受けてるよね?
古川日出男と舞城王太郎に。
特に前者の。
だって古川氏の著作〝ロックンロール七部作〟に文体が激似なんだもん(そして会話のノリは
舞城氏)。
最近の新人さんは、筆力はすごいんだけど新鮮味がないって人が多いので
そこだけはちょっと残念。
彼の別の著作も読んで改めて判断したいところですが。
余談:
東京23区合戦で皆が自分の身体に入れてる刺青だけど、
どれがオリジナルでどれが勝利の結果入れたものだって
どうやって判断するの? それだけが疑問。
「不在」だけが、本当なのだ。
時間のねじれた村と大学街を往還する「わたし」の生活誌。
村と街のあいだにある計りきれない距離と時間を、繊細極まる文で綴る。
表題作ほか、「冬待ち」の全2作品を収録。
***
〝言葉〟というものに、とてもこだわる作家さんだと思う。
文章表現が凝っているという意味じゃなく、
〝言葉〟について常に深く考え、哲学している人に思える。
語れば語るほど、自分が口にするその対象が薄っぺらくなっていってしまう、
マガイモノになってしまう、その概念は例えるなら、
役者やミュージシャンの人気が上がれば上がるほど、そして
多くの人間がその存在について語るほど、
彼らが俗物化していく、本当の姿が見えなくなる、
その感覚に近い気がする。
私は常に物語を書いている人間なので、そういう感覚は
自分の脳内にあるキャラクターやストーリーを
文字にしてパソコンの画面上に打ち出したときに一番感じる。
頭の中では完璧だった物語や人物たちが、一文字一文字キーボードで打ち出すたびに
本来あるべきはずの姿からどんどんかけ離れていく。
下手をすると二度と手の届かない場所へ消えてしまう。
あのもどかしさと喪失感を思い出させられた小説だった。
現実にはあり得ないファンタジックな世界観に設定することで、
そういった〝大切なものを自分の手でニセモノにしてしまう、ときには失ってしまう悲しみ〟を、
著者は童話のように柔らかく、直感的に語りかけてくる。
おすすめです。
(二作目〝冬待ち〟は少し文章に気合が入りすぎというか気取りすぎな表現が目立ちますが
こちらも表題作とは違った味わいがあります。
どちらの話も、主人公が同性の友人に異常なまでの執着心を見せるのは
著者の心情の反映なのかな?
確かに女の友情は基本的には孤独であてにならないものだけど。。。)
時間のねじれた村と大学街を往還する「わたし」の生活誌。
村と街のあいだにある計りきれない距離と時間を、繊細極まる文で綴る。
表題作ほか、「冬待ち」の全2作品を収録。
***
〝言葉〟というものに、とてもこだわる作家さんだと思う。
文章表現が凝っているという意味じゃなく、
〝言葉〟について常に深く考え、哲学している人に思える。
語れば語るほど、自分が口にするその対象が薄っぺらくなっていってしまう、
マガイモノになってしまう、その概念は例えるなら、
役者やミュージシャンの人気が上がれば上がるほど、そして
多くの人間がその存在について語るほど、
彼らが俗物化していく、本当の姿が見えなくなる、
その感覚に近い気がする。
私は常に物語を書いている人間なので、そういう感覚は
自分の脳内にあるキャラクターやストーリーを
文字にしてパソコンの画面上に打ち出したときに一番感じる。
頭の中では完璧だった物語や人物たちが、一文字一文字キーボードで打ち出すたびに
本来あるべきはずの姿からどんどんかけ離れていく。
下手をすると二度と手の届かない場所へ消えてしまう。
あのもどかしさと喪失感を思い出させられた小説だった。
現実にはあり得ないファンタジックな世界観に設定することで、
そういった〝大切なものを自分の手でニセモノにしてしまう、ときには失ってしまう悲しみ〟を、
著者は童話のように柔らかく、直感的に語りかけてくる。
おすすめです。
(二作目〝冬待ち〟は少し文章に気合が入りすぎというか気取りすぎな表現が目立ちますが
こちらも表題作とは違った味わいがあります。
どちらの話も、主人公が同性の友人に異常なまでの執着心を見せるのは
著者の心情の反映なのかな?
確かに女の友情は基本的には孤独であてにならないものだけど。。。)
きっとここに帰ってくる。
法で猟を規制され不満を募らせるハンターたち。
密猟でもいい。「害獣」を殺して欲しいと願う農家。
ヒステリックに動物愛護を叫ぶ団体。
親の利害関係が生み出した子供の苛め。
どうせエリートの腰掛け人事、と冷ややかに自分を見る部下。
そして、人間を餌にし始めた巨大野生動物。
心の闇が生み出した死亡事件。
──そんな四面楚歌の地に、男は孤独癖のある娘と二人でやってきた。
南アルプスの一見自然溢れ平和に見える小さな町を舞台に、
相容れぬ者が共に生きることを目指し前進する「普通の男」の葛藤と闘い。
凄まじいアクションシーンとやるせないヒューマニズムが融合した、
興奮と感動の書下ろし一大巨編!
2009年度、第二十七回日本冒険小説協会大賞受賞作。
***
ヘラヘラチャラチャラした人が多い今の世の中、
物語とはいえ久々に、矜持を持った人間というものを見せてもらった気がした。
本作はたとえるなら〝ハリウッド映画〟+〝もののけ姫〟。
迫力ある描写に息を飲む展開、けれどやや作りが単純で粗も目立ちオチも読めてしまう。
けれどそんな部分を〝もののけ姫〟的深いテーマが補ってくれている、そんな印象を受けた。
よりによって著者が一番言いたいこと、掘り下げて書きたかっただろう部分ばかりが
皆陳腐な表現になってしまっていたのはもったいないと思ったけれど、
500Pを超す長編であるにも関わらず、読んでいてだれるようなところは一箇所もなかった。
エンターテインメントとしては秀逸の作品だと思う。
特に(私もそうなのですが)
「人間はクマやイノシシを害獣害獣言うけどあっちから見たらこっちがそうだろ」と
常に思っている人間には本作はかなり共感できるので是非読んでほしい。
どうしてこうも人間ばかりが偉そうにのさばっているのか。
ほかの生き物よりほんのちょっと脳みそでかいだけの同じ動物なのに。
読んでいて改めて憤りを感じた。
人間(バカ)は死ななきゃ直らないだろうから私は人間の絶滅をだいぶ前から願ってますが、
こういう風に動物と関われるなら人間も動物もきっと少しは救われるはず。
そう思わせてくれる物語だった。
敢えて難を言うなら、じいちゃんとクマはもうちょっと活躍させてほしかったな(回想でもいいから)。
物事はそううまくは運ばないよ、という世の無常を描きたかったのかもしれないけど、それにしても
あまりにあっけなさすぎたので。
そして主人公、決して嫌いじゃないんだけど、ちょっとだけフェミニストすぎ。男性の無礼には
憤るくせに、女性の無礼は意にも介さない。そして鈍い。殺人事件の真相に気づくの遅すぎ。
殺人事件といえば、あの殺害方法じゃ明らかに警察にバレます。山梨県警何してたんだ?
最後に、マックのストローは曲がらない。
と、何だかんだ書いたけどおすすめです。
似た内容の〝シャトゥーン〟には皆さん決して手を出さないように(読後壁に全力投球しました)。
オマケ:
クマのブラフチャージ。0:15あたりから一度だけ見れます。
法で猟を規制され不満を募らせるハンターたち。
密猟でもいい。「害獣」を殺して欲しいと願う農家。
ヒステリックに動物愛護を叫ぶ団体。
親の利害関係が生み出した子供の苛め。
どうせエリートの腰掛け人事、と冷ややかに自分を見る部下。
そして、人間を餌にし始めた巨大野生動物。
心の闇が生み出した死亡事件。
──そんな四面楚歌の地に、男は孤独癖のある娘と二人でやってきた。
南アルプスの一見自然溢れ平和に見える小さな町を舞台に、
相容れぬ者が共に生きることを目指し前進する「普通の男」の葛藤と闘い。
凄まじいアクションシーンとやるせないヒューマニズムが融合した、
興奮と感動の書下ろし一大巨編!
2009年度、第二十七回日本冒険小説協会大賞受賞作。
***
ヘラヘラチャラチャラした人が多い今の世の中、
物語とはいえ久々に、矜持を持った人間というものを見せてもらった気がした。
本作はたとえるなら〝ハリウッド映画〟+〝もののけ姫〟。
迫力ある描写に息を飲む展開、けれどやや作りが単純で粗も目立ちオチも読めてしまう。
けれどそんな部分を〝もののけ姫〟的深いテーマが補ってくれている、そんな印象を受けた。
よりによって著者が一番言いたいこと、掘り下げて書きたかっただろう部分ばかりが
皆陳腐な表現になってしまっていたのはもったいないと思ったけれど、
500Pを超す長編であるにも関わらず、読んでいてだれるようなところは一箇所もなかった。
エンターテインメントとしては秀逸の作品だと思う。
特に(私もそうなのですが)
「人間はクマやイノシシを害獣害獣言うけどあっちから見たらこっちがそうだろ」と
常に思っている人間には本作はかなり共感できるので是非読んでほしい。
どうしてこうも人間ばかりが偉そうにのさばっているのか。
ほかの生き物よりほんのちょっと脳みそでかいだけの同じ動物なのに。
読んでいて改めて憤りを感じた。
人間(バカ)は死ななきゃ直らないだろうから私は人間の絶滅をだいぶ前から願ってますが、
こういう風に動物と関われるなら人間も動物もきっと少しは救われるはず。
そう思わせてくれる物語だった。
敢えて難を言うなら、じいちゃんとクマはもうちょっと活躍させてほしかったな(回想でもいいから)。
物事はそううまくは運ばないよ、という世の無常を描きたかったのかもしれないけど、それにしても
あまりにあっけなさすぎたので。
そして主人公、決して嫌いじゃないんだけど、ちょっとだけフェミニストすぎ。男性の無礼には
憤るくせに、女性の無礼は意にも介さない。そして鈍い。殺人事件の真相に気づくの遅すぎ。
殺人事件といえば、あの殺害方法じゃ明らかに警察にバレます。山梨県警何してたんだ?
最後に、マックのストローは曲がらない。
と、何だかんだ書いたけどおすすめです。
似た内容の〝シャトゥーン〟には皆さん決して手を出さないように(読後壁に全力投球しました)。
オマケ:
クマのブラフチャージ。0:15あたりから一度だけ見れます。
すべて、綺麗なイーコールのために。
大学施設で女子大生が連続して殺された。
現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。
捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、
事件と彼の歌詞が似ていたのだ。
N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、
明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する。
***
これまでの〝S&Mシリーズ〟の中では一番ストーリーが面白かったと思う。
ただ、トリックがあまりにな。。。こんなの専門知識持ってる人じゃなきゃわかるわけないし。
でも、これまでの本シリーズの犯人が「別にこいつが犯人でも面白くもなんともないし」
みたいな人物ばかりだったのに対して、今回はおおっと唸らされたので、そしてその殺害動機も
残酷ながらも人間の哀しさを感じさせるものだったので、読んでいてかなり楽しかった。
(まあただ、犯人が〝殺人を犯した自分自身は許せるのか〟ってことは最後まで疑問だったけど。
完璧主義の人間はノートに書き間違いをするとそのページを破る、って作中で書かれてたけど、
本当の完璧主義者はノートごとゴミ箱に捨てるから←幼いころの私がそうだった。樹木よ、ごめん)
萌絵と犀川の仲が微妙に深みを増していっているのも読みどころ。
恋愛に積極的すぎる女性って同性の自分から見ても怖いけど(特に私は、
好きな人から全力で逃げ出す超ヘタレ消極人間なので)、萌絵はなんか微笑ましいから
このふたりの今後も暖かく見守りたくなる。
本作に関してひとつだけ難を言うなら、
最初のページに書かれた歌詞があまりにあんまりだってこと。
読もうとした瞬間に本閉じそうになりましたよ、森先生(ごめんなさい)。
ただ、本作のタイトルにもなっている〝Jack the poetical private〟の歌詞はまだよかったけど。
歌をやっている身としては評価が厳しくなることをお許しください。
ついでに言うなら、カレーをカレィと表現するのはかんべんしてください。
どうもサカナのほうが浮かんじゃうので。。。
ところでふと思ったんですが、
本作の登場人物・結城稔のあの趣味は、後の〝Vシリーズ〟誕生の発端でしょうか?
そして西尾維新氏の〝戯言シリーズ〟の〝クビシメロマンチスト〟のラスト一行は、
やはり本作に影響を受けたものなんでしょうか?
このふたつが知りたくてたまらない。
オマケ:
どうしても自力でトリックを解き明かしたい人にヒント画像。
さらにどうでもいいオマケ:
犯人が遺体に残したメッセージからこの人↓を想起したのはきっと私だけじゃないはず、きっと。。。
大学施設で女子大生が連続して殺された。
現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。
捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、
事件と彼の歌詞が似ていたのだ。
N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、
明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する。
***
これまでの〝S&Mシリーズ〟の中では一番ストーリーが面白かったと思う。
ただ、トリックがあまりにな。。。こんなの専門知識持ってる人じゃなきゃわかるわけないし。
でも、これまでの本シリーズの犯人が「別にこいつが犯人でも面白くもなんともないし」
みたいな人物ばかりだったのに対して、今回はおおっと唸らされたので、そしてその殺害動機も
残酷ながらも人間の哀しさを感じさせるものだったので、読んでいてかなり楽しかった。
(まあただ、犯人が〝殺人を犯した自分自身は許せるのか〟ってことは最後まで疑問だったけど。
完璧主義の人間はノートに書き間違いをするとそのページを破る、って作中で書かれてたけど、
本当の完璧主義者はノートごとゴミ箱に捨てるから←幼いころの私がそうだった。樹木よ、ごめん)
萌絵と犀川の仲が微妙に深みを増していっているのも読みどころ。
恋愛に積極的すぎる女性って同性の自分から見ても怖いけど(特に私は、
好きな人から全力で逃げ出す超ヘタレ消極人間なので)、萌絵はなんか微笑ましいから
このふたりの今後も暖かく見守りたくなる。
本作に関してひとつだけ難を言うなら、
最初のページに書かれた歌詞があまりにあんまりだってこと。
読もうとした瞬間に本閉じそうになりましたよ、森先生(ごめんなさい)。
ただ、本作のタイトルにもなっている〝Jack the poetical private〟の歌詞はまだよかったけど。
歌をやっている身としては評価が厳しくなることをお許しください。
ついでに言うなら、カレーをカレィと表現するのはかんべんしてください。
どうもサカナのほうが浮かんじゃうので。。。
ところでふと思ったんですが、
本作の登場人物・結城稔のあの趣味は、後の〝Vシリーズ〟誕生の発端でしょうか?
そして西尾維新氏の〝戯言シリーズ〟の〝クビシメロマンチスト〟のラスト一行は、
やはり本作に影響を受けたものなんでしょうか?
このふたつが知りたくてたまらない。
オマケ:
どうしても自力でトリックを解き明かしたい人にヒント画像。
さらにどうでもいいオマケ:
犯人が遺体に残したメッセージからこの人↓を想起したのはきっと私だけじゃないはず、きっと。。。
残光が見せる幻。
木はすべてを見ていた…。
ある町に、千年の時を生き続ける一本のくすの巨樹があった。
千年という長い時間を生き続ける一本の巨樹の生と、
その脇で繰り返される人間達の生と死のドラマが、時代を超えて交錯する。
★収録作品★
萌芽
瓶詰の約束
梢の呼ぶ声
蝉鳴くや
夜鳴き鳥
郭公の巣
バァバの石段
落枝
***
荻原氏は好きな作家の一人だけど、彼の作品は正直ほんと当たりはずれが大きい。
個人的には、
★当たり
神様からひと言(外出する母に貸したら電車で読んで吹き出し周りに見られたらしい。傑作)
明日の記憶(言うまでもなく大傑作。ラストは原作のほうが秀逸なので映画は観ないでください)
ハードボイルド・エッグ(大爆笑&号泣。とぼけた探偵とおばあちゃん助手のコンビが最高)
噂(傑作とまではいかないけどラスト一行で感じる寒気はかなりのもの)
★はずれ
誘拐ラプソディ(丁寧に書き込みすぎでテンポが悪い。普通にストーリーが面白くない)
メリーゴーランド(途中で寝た)
コールドゲーム(犯人は途中で読めるし全体的になんかいまいち)
★微妙
オロロ畑でつかまえて(ああそうですか、としか思わなかった)
さよならバースディ(まあまあ面白いのですがあまり残らない)
あの日にドライブ(競輪のおじさんのエピソードは好きだけどあとは冗長)
ママの狙撃銃(ナメクジを執拗に残酷に殺す描写が可哀想で途中で投げた)
四度目の氷河期(ありがちな話過ぎて&なぜか異様にむかつき読後壁に投げた←実話)
(あとは未読or特に感想なし)
で、本作は〝微妙〟と〝はずれ〟の中間地点。
妙に真面目で毒気がなく、内容もありふれていて、どことなく説教くさい。
ひと言でいえばまるで道徳の教科書を読んでいるみたいだった(いや、幼少時
道徳の教科書大好きでしたが。大人になるとさすがにね。。。)。
〝バァバの石段〟が唯一読んでじんわりきた話だったかな。
戦時中の恋愛っていいなあ、と妙に主人公のカップルふたりが微笑ましく思えたし、
終わり方もすがすがしい。
終わり方といえば、どうでもいいけど本の最後の一行に〝糞〟て言葉が入ってる小説を
初めて読んでちょっと新鮮だった(ほんとどうでもいいな。。。)。
でもやっぱり荻原氏はこういうシリアス路線じゃなくコメディを書いたほうが
実力を発揮できる人だよな。
そんな作風からの脱却をはかりたいのかもしれないけど、それはもう〝明日の記憶〟で
果たしてるんだから、感動系とかシリアス系じゃなく、またコミカルな話を書いてほしい。
木はすべてを見ていた…。
ある町に、千年の時を生き続ける一本のくすの巨樹があった。
千年という長い時間を生き続ける一本の巨樹の生と、
その脇で繰り返される人間達の生と死のドラマが、時代を超えて交錯する。
★収録作品★
萌芽
瓶詰の約束
梢の呼ぶ声
蝉鳴くや
夜鳴き鳥
郭公の巣
バァバの石段
落枝
***
荻原氏は好きな作家の一人だけど、彼の作品は正直ほんと当たりはずれが大きい。
個人的には、
★当たり
神様からひと言(外出する母に貸したら電車で読んで吹き出し周りに見られたらしい。傑作)
明日の記憶(言うまでもなく大傑作。ラストは原作のほうが秀逸なので映画は観ないでください)
ハードボイルド・エッグ(大爆笑&号泣。とぼけた探偵とおばあちゃん助手のコンビが最高)
噂(傑作とまではいかないけどラスト一行で感じる寒気はかなりのもの)
★はずれ
誘拐ラプソディ(丁寧に書き込みすぎでテンポが悪い。普通にストーリーが面白くない)
メリーゴーランド(途中で寝た)
コールドゲーム(犯人は途中で読めるし全体的になんかいまいち)
★微妙
オロロ畑でつかまえて(ああそうですか、としか思わなかった)
さよならバースディ(まあまあ面白いのですがあまり残らない)
あの日にドライブ(競輪のおじさんのエピソードは好きだけどあとは冗長)
ママの狙撃銃(ナメクジを執拗に残酷に殺す描写が可哀想で途中で投げた)
四度目の氷河期(ありがちな話過ぎて&なぜか異様にむかつき読後壁に投げた←実話)
(あとは未読or特に感想なし)
で、本作は〝微妙〟と〝はずれ〟の中間地点。
妙に真面目で毒気がなく、内容もありふれていて、どことなく説教くさい。
ひと言でいえばまるで道徳の教科書を読んでいるみたいだった(いや、幼少時
道徳の教科書大好きでしたが。大人になるとさすがにね。。。)。
〝バァバの石段〟が唯一読んでじんわりきた話だったかな。
戦時中の恋愛っていいなあ、と妙に主人公のカップルふたりが微笑ましく思えたし、
終わり方もすがすがしい。
終わり方といえば、どうでもいいけど本の最後の一行に〝糞〟て言葉が入ってる小説を
初めて読んでちょっと新鮮だった(ほんとどうでもいいな。。。)。
でもやっぱり荻原氏はこういうシリアス路線じゃなくコメディを書いたほうが
実力を発揮できる人だよな。
そんな作風からの脱却をはかりたいのかもしれないけど、それはもう〝明日の記憶〟で
果たしてるんだから、感動系とかシリアス系じゃなく、またコミカルな話を書いてほしい。
「蘇りつつあるのよ。三世紀がね」
若き考古学者・葦原志津夫は、前代未聞の土偶を発見したとの報を受け、
茨城県の石上遺跡へと向かった。
しかし、現場には無惨な焼死体が転がっており、情報提供者とも連絡が取れなくなってしまう。
彼は十年前に行方不明になった志津夫の父に関する情報も手に入れていたようだった。
志津夫はわずかな手掛かりを頼りに調査を始めるが、徐々に、この事件が
人類を破滅へと導く幕開けであることに気づかされる…。
前人未到のスケールでおくる、傑作サイファイ・ホラー。
***
初めて書店で見かけて以来、もう10年以上も前から「いつか読もう、いつか読もう」と
思いつつ何だかんだでここまで来てしまった一作。
〝ダヴィンチ・コード〟ならぬ〝ヤマタイ(邪馬台国)・コード〟とでも言うべき作品です。
科学+ホラー+SFなところが〝パラサイト・イヴ/瀬名秀明〟や〝ISOLA/貴志祐介〟に
似ているので、これらが肌に合う人は読んでいて楽しいのではと思う。
ただ、本作のクライマックスはホラーやSFというよりは最早RPGゲームの勢いなので(だって
普通にラスボス戦とかあるし、キャラがほぼ全員特殊能力持ってるし)、
読む人によっては馬鹿馬鹿しいと途中で本が壁に直行かもしれません。
大昔の日本にまつわる謎を著者が独自の観点で解き明かしている点も、
非常に興味深く読めはするのですが、「いくら何でもそりゃないだろ」という論理も展開されるので
頭が柔らかくない人には正直おすすめしません。
あと、蛇が苦手な人も本作はひかえたほうがいいです。
蛇がそこまで苦手じゃない私も、作中のウロコの表現にはじんましん出そうになったので。
全体に駄作ではないし取り上げているテーマもいいとは思うのですが、
この著者は物語の書き方にかなり癖があるので(といっても文章が読みづらいといったような
癖ではなく、読んでいて鬱陶しい&イライラするような癖)、
手にとるには注意が必要(何といっても上下巻二段組みでトータル800Pをゆうに超すので)。
★主人公の性格がムカつく(女好き、その女にすぐ騙されるバカ、自己中、ガキ、ビビリ、
とにかく普通に性格悪い)。
★同じ表現が何度も何度も出てくる(語彙が少ないのか、もうほんと同じ表現が頻発。
作中のヒロインを描写する際の〝可愛い丸顔〟なんて数十回は余裕で出てくる。
「わかったからもういいって」と言いたくなる。なんか山田悠介の〝リアル鬼ごっこ〟の
〝豪華〟〝真っ暗〟の連発を彷彿とさせた←これらについて詳しくはこちら)。
★矛盾多し(とんでもない超能力が幼少時から発現した子供は村から追い出されて
一生遠い土地で暮らす、って決まりはおかしい。「村の存在を知らないほうが超能力が
発現する確率が低い」とか言ってるけど、実際ふとしたきっかけで発現してる人が二人もいるし
そうなったときは村ぐるみでかくまったほうがよっぽど安全。そのあたり意味不明)。
★くだんの身勝手主人公が自分で勝手に不幸に陥っておいて、なのにあとになって
そんな自分の不幸を呪い、何とかそこから脱しようとする展開が馬鹿馬鹿しくて
正直同情する気にならない。
上記に耐えられそうもない人は読まないことを推奨します。
あと映画の〝ハムナプトラ〟のあのサソリ男(スコーピオン・キング)に
ビビるのではなく失笑を漏らした人にもおすすめしません。
要するに(論理がしっかりしている部分もたくさんあるのですが)基本的にはB級ホラーです。
まあそれなりに面白かったけどね。
三輪山。
若き考古学者・葦原志津夫は、前代未聞の土偶を発見したとの報を受け、
茨城県の石上遺跡へと向かった。
しかし、現場には無惨な焼死体が転がっており、情報提供者とも連絡が取れなくなってしまう。
彼は十年前に行方不明になった志津夫の父に関する情報も手に入れていたようだった。
志津夫はわずかな手掛かりを頼りに調査を始めるが、徐々に、この事件が
人類を破滅へと導く幕開けであることに気づかされる…。
前人未到のスケールでおくる、傑作サイファイ・ホラー。
***
初めて書店で見かけて以来、もう10年以上も前から「いつか読もう、いつか読もう」と
思いつつ何だかんだでここまで来てしまった一作。
〝ダヴィンチ・コード〟ならぬ〝ヤマタイ(邪馬台国)・コード〟とでも言うべき作品です。
科学+ホラー+SFなところが〝パラサイト・イヴ/瀬名秀明〟や〝ISOLA/貴志祐介〟に
似ているので、これらが肌に合う人は読んでいて楽しいのではと思う。
ただ、本作のクライマックスはホラーやSFというよりは最早RPGゲームの勢いなので(だって
普通にラスボス戦とかあるし、キャラがほぼ全員特殊能力持ってるし)、
読む人によっては馬鹿馬鹿しいと途中で本が壁に直行かもしれません。
大昔の日本にまつわる謎を著者が独自の観点で解き明かしている点も、
非常に興味深く読めはするのですが、「いくら何でもそりゃないだろ」という論理も展開されるので
頭が柔らかくない人には正直おすすめしません。
あと、蛇が苦手な人も本作はひかえたほうがいいです。
蛇がそこまで苦手じゃない私も、作中のウロコの表現にはじんましん出そうになったので。
全体に駄作ではないし取り上げているテーマもいいとは思うのですが、
この著者は物語の書き方にかなり癖があるので(といっても文章が読みづらいといったような
癖ではなく、読んでいて鬱陶しい&イライラするような癖)、
手にとるには注意が必要(何といっても上下巻二段組みでトータル800Pをゆうに超すので)。
★主人公の性格がムカつく(女好き、その女にすぐ騙されるバカ、自己中、ガキ、ビビリ、
とにかく普通に性格悪い)。
★同じ表現が何度も何度も出てくる(語彙が少ないのか、もうほんと同じ表現が頻発。
作中のヒロインを描写する際の〝可愛い丸顔〟なんて数十回は余裕で出てくる。
「わかったからもういいって」と言いたくなる。なんか山田悠介の〝リアル鬼ごっこ〟の
〝豪華〟〝真っ暗〟の連発を彷彿とさせた←これらについて詳しくはこちら)。
★矛盾多し(とんでもない超能力が幼少時から発現した子供は村から追い出されて
一生遠い土地で暮らす、って決まりはおかしい。「村の存在を知らないほうが超能力が
発現する確率が低い」とか言ってるけど、実際ふとしたきっかけで発現してる人が二人もいるし
そうなったときは村ぐるみでかくまったほうがよっぽど安全。そのあたり意味不明)。
★くだんの身勝手主人公が自分で勝手に不幸に陥っておいて、なのにあとになって
そんな自分の不幸を呪い、何とかそこから脱しようとする展開が馬鹿馬鹿しくて
正直同情する気にならない。
上記に耐えられそうもない人は読まないことを推奨します。
あと映画の〝ハムナプトラ〟のあのサソリ男(スコーピオン・キング)に
ビビるのではなく失笑を漏らした人にもおすすめしません。
要するに(論理がしっかりしている部分もたくさんあるのですが)基本的にはB級ホラーです。
まあそれなりに面白かったけどね。
三輪山。
私の声じゃ、届かない。
優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、
暗い恋の闇路へと迷い込んでしまった…。
同じ大学に通う仲間、浅葱と狐塚、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、
思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。
掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が待っているのか。
***
まだ10歳にも満たない、非常に若い作家さんです。
。。。嘘です。うるう年生まれってなんかいいよね。。。
くだらない冗談はさておき、今私が女性作家で一番ハマっているこの人。
相変わらず面白い面白い。上下巻組ですが長いなんて少しも感じず、むしろ
「何で〝中〟がないんだよ。。。」と物語が終わってしまうことを惜しく思ってしまったほど。
文章うまいわ構成力すごいわ憧れの作家さんです。とても同い年とは思えない(思いたくない。
眼をつぶらせてほしい。)
彼女がすごいのは、何より人間を描くその手腕。
個性的なキャラクターを生み出すことのできる作家さんはたくさんいますが、
この著者の書く人間はキャラクターが〝濃い〟んじゃなく〝深い〟。
登場人物それぞれが持つ人間性の描写力は、そこいらの純文学作家を凌駕するほど。
しかも、いそうでいない、いなさそうでいる、という境界ギリギリの性質のキャラばかりなので、
彼らと接しているうちに、自分が現実にいるのか想像の世界にいるのか、だんだんわからなく
なってくる。トリップする。それが非常に心地いい。物語自体もありそうでない、なさそうである、
全体にそんな雰囲気なので、要するに辻村深月という作家の生み出す世界そのものが
気持ちいいんだろうと思う。いつまでも浸っていたくなる。
〝見立て殺人〟に〝二重人格オチ〟というふたつのモチーフはありがちだけど、そして
月子と孝太が実は兄妹でしたオチにするには(一応伏線は張ってあるものの)アンフェアな点が
多々あったけど、それでも作中の一つひとつのエピソードがとても魅力的なので許せてしまう。
でも終盤の心理学うんちくは正直いらなかったかな。そのへんの精神科医やカウンセラーなんか
目じゃないほど人を見抜く感性を持っていることがその文章から伝わってくるのに、
この著者は文献なんかに頼る必要はなかった。終始一貫、辻村さんの想像で書いてほしかった。
想像といえば、本作一番最後のページが読み手への問いかけめいた終わり方になっているのに
ゾクっとした。作中の見立て殺人の〝クイズ〟はすべて最後のこれのためにあったんだな。
ラブストーリーが基本的に嫌いな私が思わず涙ぐみそうになってしまった一作。
浅葱(本作の登場人物)、あなたは格好いいです。どうか幸せになってほしい。
それにしても作中に出てくる数式、
iとθの間に〝sin〟の文字があるけど、これに〝罪〟の意味があるのが
偶然だろうけどとてもそうは思えない。あまりにこの作品を象徴しすぎていて。
余談ですが、私も小学生のとき超大切に飼ってたカイコにハエが卵産み付けて
死んじゃったという苦い記憶が。カイコがパンパンに膨らんで中から幼虫が出てきたのは
今でもいいトラウマです。。。
優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、
暗い恋の闇路へと迷い込んでしまった…。
同じ大学に通う仲間、浅葱と狐塚、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、
思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。
掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が待っているのか。
***
まだ10歳にも満たない、非常に若い作家さんです。
。。。嘘です。うるう年生まれってなんかいいよね。。。
くだらない冗談はさておき、今私が女性作家で一番ハマっているこの人。
相変わらず面白い面白い。上下巻組ですが長いなんて少しも感じず、むしろ
「何で〝中〟がないんだよ。。。」と物語が終わってしまうことを惜しく思ってしまったほど。
文章うまいわ構成力すごいわ憧れの作家さんです。とても同い年とは思えない(思いたくない。
眼をつぶらせてほしい。)
彼女がすごいのは、何より人間を描くその手腕。
個性的なキャラクターを生み出すことのできる作家さんはたくさんいますが、
この著者の書く人間はキャラクターが〝濃い〟んじゃなく〝深い〟。
登場人物それぞれが持つ人間性の描写力は、そこいらの純文学作家を凌駕するほど。
しかも、いそうでいない、いなさそうでいる、という境界ギリギリの性質のキャラばかりなので、
彼らと接しているうちに、自分が現実にいるのか想像の世界にいるのか、だんだんわからなく
なってくる。トリップする。それが非常に心地いい。物語自体もありそうでない、なさそうである、
全体にそんな雰囲気なので、要するに辻村深月という作家の生み出す世界そのものが
気持ちいいんだろうと思う。いつまでも浸っていたくなる。
〝見立て殺人〟に〝二重人格オチ〟というふたつのモチーフはありがちだけど、そして
月子と孝太が実は兄妹でしたオチにするには(一応伏線は張ってあるものの)アンフェアな点が
多々あったけど、それでも作中の一つひとつのエピソードがとても魅力的なので許せてしまう。
でも終盤の心理学うんちくは正直いらなかったかな。そのへんの精神科医やカウンセラーなんか
目じゃないほど人を見抜く感性を持っていることがその文章から伝わってくるのに、
この著者は文献なんかに頼る必要はなかった。終始一貫、辻村さんの想像で書いてほしかった。
想像といえば、本作一番最後のページが読み手への問いかけめいた終わり方になっているのに
ゾクっとした。作中の見立て殺人の〝クイズ〟はすべて最後のこれのためにあったんだな。
ラブストーリーが基本的に嫌いな私が思わず涙ぐみそうになってしまった一作。
浅葱(本作の登場人物)、あなたは格好いいです。どうか幸せになってほしい。
それにしても作中に出てくる数式、
iとθの間に〝sin〟の文字があるけど、これに〝罪〟の意味があるのが
偶然だろうけどとてもそうは思えない。あまりにこの作品を象徴しすぎていて。
余談ですが、私も小学生のとき超大切に飼ってたカイコにハエが卵産み付けて
死んじゃったという苦い記憶が。カイコがパンパンに膨らんで中から幼虫が出てきたのは
今でもいいトラウマです。。。
――なんて、遠い。
教育実習のため母校に戻った広瀬は、教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。
彼をいじめた者は“報復”ともいえる不慮の事故に遭うので、“高里は崇る”と恐れられているのだ。
広瀬は彼をかばおうとするが、次々に凄惨な事件が起こり始めた。
幼少の頃に高里が体験した“神隠し”が原因らしいのだが…。
彼の周りに現れる白い手は? 彼の本当の居場所は何拠なのだろうか?
***
三国志の超マニアで、〝RED CLIFF〟を観るために半ば無理やり私を引っ張ってくほど
中国系バナシが好きな友人が薦めてきた〝十二国記〟の事実上のシリーズ第一作(一応本作は
サイドストーリーとして発売されているようです)。
でも中国系の話とかファンタジーとかはちょっと。。。という人でもすらすら読めます。
さすが奇才・小野不由美さん、ストーリー運びも人間描写も秀逸。
異端を嫌う人間に受け入れられず排除される〝人ならざる者〟、そして
その〝人ならざる者〟と同じ存在になりたいと願いながらも果たされない〝はみ出した人間〟、
そんな哀しい矛盾が巧妙な筆致で描かれていて、単なる伝奇を超えた作品に仕上がっている。
読者の想像に委ねられたラストもかなりいい感じ(背筋ぞっとした)。
大人にもおすすめの一作です。
続編も読んでみるつもり。
アニメ化もされているようです。
↓は白汕子。
教育実習のため母校に戻った広瀬は、教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。
彼をいじめた者は“報復”ともいえる不慮の事故に遭うので、“高里は崇る”と恐れられているのだ。
広瀬は彼をかばおうとするが、次々に凄惨な事件が起こり始めた。
幼少の頃に高里が体験した“神隠し”が原因らしいのだが…。
彼の周りに現れる白い手は? 彼の本当の居場所は何拠なのだろうか?
***
三国志の超マニアで、〝RED CLIFF〟を観るために半ば無理やり私を引っ張ってくほど
中国系バナシが好きな友人が薦めてきた〝十二国記〟の事実上のシリーズ第一作(一応本作は
サイドストーリーとして発売されているようです)。
でも中国系の話とかファンタジーとかはちょっと。。。という人でもすらすら読めます。
さすが奇才・小野不由美さん、ストーリー運びも人間描写も秀逸。
異端を嫌う人間に受け入れられず排除される〝人ならざる者〟、そして
その〝人ならざる者〟と同じ存在になりたいと願いながらも果たされない〝はみ出した人間〟、
そんな哀しい矛盾が巧妙な筆致で描かれていて、単なる伝奇を超えた作品に仕上がっている。
読者の想像に委ねられたラストもかなりいい感じ(背筋ぞっとした)。
大人にもおすすめの一作です。
続編も読んでみるつもり。
アニメ化もされているようです。
↓は白汕子。
それは、自分自身の中の無限。
偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。
そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。
一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され…。
犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。
超絶の森ミステリィ第3弾。
***
犯人は速攻、トリックはなおさら速攻見破ってしまったけど、
なかなかに壮大で爽快感のある物語だった。
シリーズ前作〝冷たい密室と博士たち〟よりは筋立てもシンプルで読みやすかったし。
ただ、物語の要となる天才が部屋にこもって出てこないっていうのは
ちょっと〝すべてがFになる〟とかぶってて新鮮味がなかった。
そして本作のトリック、そんな十何年も誰も見破れないはずがないし。
名探偵なんか来なくても、普通の人がちょっと考えたら一発でわかる。
ただ、著者がそのトリックの着想を得た対象があまりに深遠かつ巨大なものなので、
そこらへんは「ああ、うまく繋げたなあ」と唸らされた。
その他ちっちゃい突っ込みを入れるなら、
萌絵が作ったサンドイッチが作中であまりに不自然で浮いていることと、
皆やたらと微笑みすぎ(特に犀川)。微笑む以外に動きのバリエーションを増やしてください、
森先生。
ラスト一行はすごく好きです。
〝彼〟が、〝内側〟の世界に入っていくという心境の変化を見せたところも。
森作品は、登場人物が読者に馴れ合ってこず、いい意味で突き放してくるから好き。
ちなみに本作、引きこもりの人は読んだら元気づけられるかも。
(伊坂幸太郎氏も〝陽気なギャングが地球を回す〟で似たようなこと書いてたけど)
蛇足だけどそういえば、神様ってキリストを初めあんまり笑わないよなー。
(仏様は薄っすら笑ってるけど)
何かの頂点を極めた人は笑わないんだろうか。だったら極められる能力と器があっても
極めたいとは思わない。
偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。
そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。
一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され…。
犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。
超絶の森ミステリィ第3弾。
***
犯人は速攻、トリックはなおさら速攻見破ってしまったけど、
なかなかに壮大で爽快感のある物語だった。
シリーズ前作〝冷たい密室と博士たち〟よりは筋立てもシンプルで読みやすかったし。
ただ、物語の要となる天才が部屋にこもって出てこないっていうのは
ちょっと〝すべてがFになる〟とかぶってて新鮮味がなかった。
そして本作のトリック、そんな十何年も誰も見破れないはずがないし。
名探偵なんか来なくても、普通の人がちょっと考えたら一発でわかる。
ただ、著者がそのトリックの着想を得た対象があまりに深遠かつ巨大なものなので、
そこらへんは「ああ、うまく繋げたなあ」と唸らされた。
その他ちっちゃい突っ込みを入れるなら、
萌絵が作ったサンドイッチが作中であまりに不自然で浮いていることと、
皆やたらと微笑みすぎ(特に犀川)。微笑む以外に動きのバリエーションを増やしてください、
森先生。
ラスト一行はすごく好きです。
〝彼〟が、〝内側〟の世界に入っていくという心境の変化を見せたところも。
森作品は、登場人物が読者に馴れ合ってこず、いい意味で突き放してくるから好き。
ちなみに本作、引きこもりの人は読んだら元気づけられるかも。
(伊坂幸太郎氏も〝陽気なギャングが地球を回す〟で似たようなこと書いてたけど)
蛇足だけどそういえば、神様ってキリストを初めあんまり笑わないよなー。
(仏様は薄っすら笑ってるけど)
何かの頂点を極めた人は笑わないんだろうか。だったら極められる能力と器があっても
極めたいとは思わない。
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kovo
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女性
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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