「現場にいなくとも事件を解決できるなんて、
まるでミス・マープルか御手洗潔みたいじゃないか」
綾鹿警察署・五龍神田刑事が、次々と起こる事件の謎に挑む!
事件解決のヒントは、正体不明のホームレス十徳治郎が握る。
あまりにも意外で皮肉な12人の真犯人とは!?
そして、最後に残る物語最大の謎とは!?
ライト感覚の本格ミステリー。
★収録作品★
獅子身中の脅迫者
火中の栗と放火魔
堕天使はペテン師
張子の虎で窃盗犯
ひとりよがりにストーカー
敬虔過ぎた狂信者
その場しのぎが誘拐犯
目立ちたがりなスリ師
予見されし暴行魔
犬も歩けば密輸犯
虫が好かないテロリスト
猫も杓子も殺人鬼
申し分なき愉快犯
***
〝五龍神田〟の名前のとおり、五流の勘を冴え渡らせる(?)迷刑事のズレた活躍ぶりが
微笑ましい連作短編集。
文章はやや硬質ですが内容はコメディタッチ(多少ブラック)、一話一話が短いにも関わらず
二転三転する展開で読者の予想を小気味よくころころと裏切ってくれるので、
飽きが来ず最後まで楽しんで読める非常に良質のミステリです。
ただ五龍神田刑事、いくらそのオトボケっぷりが売り物でも、捜査中の事件の内容を
一般人に喋っちゃうのは小説とはいえ(&そうしないと話が始まらないとはいえ)さすがに
ルール違反だろ@
しかも案の定そのせいで犯罪者による被害が拡大、なのにほとんど反省の色もないし。
いくらコメディ色の強いミステリとはいえ、そこばっかりはちょっとシャレになってない気がした。
打ち明ける相手が一人だけ、そしてそれが事件解決のためというならまだしも、
単なる雑談の一環として「今こんな事件抱えててさあ」とか話しちゃうし。
敢えてそこに眼をつぶれば不満は一切ないですが。
ちなみに最後の一話を読んで初めて、本作がなんでこのタイトルなのかがわかった。
これって島田荘司氏の著作〝斜め屋敷の犯罪〟と同じ、〝タイトルそのものがヒントでありトリック〟
ってやつだなよなー。
そういえば作中に御手洗潔の名前が出たときは思わず笑ってしまいました。
著者はファンなんでしょうか。気が合いそうです(私のミステリ小説における初恋の相手は
御手洗です)。
単純にすごく面白いです。おすすめ。
まるでミス・マープルか御手洗潔みたいじゃないか」
綾鹿警察署・五龍神田刑事が、次々と起こる事件の謎に挑む!
事件解決のヒントは、正体不明のホームレス十徳治郎が握る。
あまりにも意外で皮肉な12人の真犯人とは!?
そして、最後に残る物語最大の謎とは!?
ライト感覚の本格ミステリー。
★収録作品★
獅子身中の脅迫者
火中の栗と放火魔
堕天使はペテン師
張子の虎で窃盗犯
ひとりよがりにストーカー
敬虔過ぎた狂信者
その場しのぎが誘拐犯
目立ちたがりなスリ師
予見されし暴行魔
犬も歩けば密輸犯
虫が好かないテロリスト
猫も杓子も殺人鬼
申し分なき愉快犯
***
〝五龍神田〟の名前のとおり、五流の勘を冴え渡らせる(?)迷刑事のズレた活躍ぶりが
微笑ましい連作短編集。
文章はやや硬質ですが内容はコメディタッチ(多少ブラック)、一話一話が短いにも関わらず
二転三転する展開で読者の予想を小気味よくころころと裏切ってくれるので、
飽きが来ず最後まで楽しんで読める非常に良質のミステリです。
ただ五龍神田刑事、いくらそのオトボケっぷりが売り物でも、捜査中の事件の内容を
一般人に喋っちゃうのは小説とはいえ(&そうしないと話が始まらないとはいえ)さすがに
ルール違反だろ@
しかも案の定そのせいで犯罪者による被害が拡大、なのにほとんど反省の色もないし。
いくらコメディ色の強いミステリとはいえ、そこばっかりはちょっとシャレになってない気がした。
打ち明ける相手が一人だけ、そしてそれが事件解決のためというならまだしも、
単なる雑談の一環として「今こんな事件抱えててさあ」とか話しちゃうし。
敢えてそこに眼をつぶれば不満は一切ないですが。
ちなみに最後の一話を読んで初めて、本作がなんでこのタイトルなのかがわかった。
これって島田荘司氏の著作〝斜め屋敷の犯罪〟と同じ、〝タイトルそのものがヒントでありトリック〟
ってやつだなよなー。
そういえば作中に御手洗潔の名前が出たときは思わず笑ってしまいました。
著者はファンなんでしょうか。気が合いそうです(私のミステリ小説における初恋の相手は
御手洗です)。
単純にすごく面白いです。おすすめ。
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「どこへ行くんですか?」
「もっと先だよぉ」
大学に入学して早々、廃部の危機に瀕した落語研究会に入部するはめになった越智健一。
勝手な先輩たちに振り回され、ろくに授業も出られず、そのうえキャンパスで
奇妙な事件が起きて…。
中篇2篇を収録した連作落語ミステリー。
★収録作品★
幽霊寿限無
馬術部の醜聞
***
どちらかというと中高生向きかなー。
文章は非常に読みやすく物語もテンポよく進んでいくのであっという間に読破できますが、
あまりに爽やか&シンプルにまとまりすぎていて二十代後半の自分には少し物足りなかった。
でも十分に楽しめます。
それにしても著者の大倉氏、〝周囲に振り回される主人公〟を書かせたら
右に出る者はいないよなーほんと。〝猟奇的な彼女〟のノベライズとかこの人にしてほしいです。
デビュー作〝ツール&ストール〟とほぼキャラがかぶり気味の振り回されキャラ・越智くんも、
なかなかいい味出してました(デビュー作の主人公・白戸くんには敵いませんが)。
ただそのぶん振り回す側、つまり〝受動キャラ〟じゃなくストーリーや主人公を引っ張っていく
〝能動キャラ〟の個性が弱いのが、この著者の欠点といえば欠点かもしれない。
〝福家警部補の挨拶〟の探偵役・福家警部補も、キャラが薄すぎて犯人を追い詰めるシーンも
迫力&爽快感があまりなかったし。
ストーリーテリング力と構成力はかなりある作家さんであるだけにそこはかなり残念なところ。
本編のあとに著者自身が触れていますが、同じ落語ミステリなら田中啓文氏の
〝笑酔亭梅寿謎解噺(しょうすいていばいじゅなぞときばなし)〟シリーズのほうが
圧倒的にレベルが高い(というか大人向け)。
唯一本作のほうが優れているのは、落語そのものをトリックに使っているところ。
そこは「へーなるほどねえ~!」とうならされました。
落語+ミステリが読みたい人は〝笑酔亭~〟、
落語ミステリが読みたい人は是非本作をどうぞ。
つまり、一つの物語。
僕は「片説家」。「小説」と違って、個人のリクエストで、その人のためだけに物語を書くのが仕事だ。
いや「片説家」だった。昨日、解雇されたのだ。
途方に暮れる僕の前に、自分のために「小説」を書いて欲しいという女性が現れた。
しかも、失踪しているという彼女の妹は、かつて僕がいた会社が、片説を渡した相手だという。
これが21世紀型「悩める作家」。日本文学一千年が、今夜新宿でビッグバン!
***
ある特定の個人に向けて書かれた小説を〝片説(へんせつ)〟と呼ぶのだとすれば、
本作はある意味〝小説家を志す人〟に向けて書かれた〝片説〟なんでしょう。
ありきたりな感想だけどほんとそう思う。
サラリーマンにとっての〝およげ!たいやきくん〟、
主婦にとっての〝韓流ドラマ〟、
そして〝作家志望者〟にとっての〝1000の小説とバックベアード〟。
一人の人間が作家になるまでの、そして一つの物語ができあがるまでの
苦悩と葛藤と憤りと開き直りと達観と混迷と絶望と狂気と狂喜、
そういった諸々の感情を疑似体験(もしくは追体験)することができます。
主人公を自分と比べることで、作家志望者としての現時点での己を客観的に見ることにも使える。
もちろんこれは小説指南書なんかじゃなくれっきとした小説(片説?)ですが。
ちなみに本作は三島由紀夫賞受賞作なのですが、
まあ設定の斬新さ等を見れば納得いかないこともないですが、
後半の展開が以前の同賞受賞作である舞城王太郎氏の〝阿修羅ガール〟とかぶり気味なのが
若干気になった(前半は多少現実離れしていながらも違和感なく読める世界観、ところが
半ばを過ぎたあたりで唐突にシュールかつファンタジックな物語運びに豹変、といった点)。
文体(というかところどころに出てくる言葉遊び)が西尾維新氏にかなり似ているのも少しあれ? と。
あくまで本作を、私が作家志望であることを抜きにして見た場合、
著者が一番言いたかったことが何だったのか、テーマも登場人物のキャラ立ちもおぼろげで
いまいち判然としないし。
これなら著者の前著〝子供たち怒る怒る怒る〟のほうがよっぽど面白かったし物語から伝わってくる
メッセージも明確だった。
まあでもプロの小説家を目指す人(もしくは既にプロの人でも)は読んでみて損はないです。
私もいろいろと気づかされたり感銘を受ける部分が多かった(納得いかないとこもあったけど、
それはそれで(心の中で)意見を戦わせるのが楽しかった)。
あ、あと二十代後半あたりの人にもいいかな。大人とも子供とも言えない、そんな中途半端な
年代についての同世代の主人公の語りにも、大いに共鳴できるところがあるので(ちなみに私は
著者の佐藤氏と生まれ年も出身地も同じなので、かなり感性や物の感じ方が近く読んでいて楽しい)。
最後に。〝バックベアード〟ってこんなやつです(手前は鬼太郎)↓
今気づいたけど白黒だあ~!
そういや鬼太郎の身体つきも自分が子供のころ観てたのと
微妙に違う。。。
それとも――やっぱり苦しかった?
堕ちていく女 驚愕の結末!
作家・辰巳まるみが書いた小説『機械の森』。
そのゲーム化をはかるスタッフ8人が湖畔の別荘に集まった。その夜に悲劇が起こる。
社長令嬢の香織が別荘の尖塔から墜落死したのだ。しかも彼女は妊娠していた。
自殺なのか、それとも?
誰もが驚くジグソー・ミステリ、著者自身による解説を加えた「完全版」で登場!
***
ここで紹介しているのは文庫版ですが、私が読んだのは新書版。
あまりの無秩序&荒唐無稽さに物語の方向性を最後まで掴み切れないまま、欠伸を噛み殺しつつ
気づけば読み終わっていた、というのが正直なところなので、
著者の解説があればもうちょっと筋道だった読み方ができたのかもな、と残念に思い中です。
著者からのひと言に、「ジグソーパズルを組み立てるような感じで読んでいただければ」
というようなことが書いてありましたが、眼の前にあるのが絵柄がバラバラのピースでは
まったくやる気が起こりません。
仮にどうにか組み立てたところで、完成する絵があまりに前衛的というか抽象的なものというのでは、
何の驚きも感動も湧かない。
実際もう既に内容忘れかけてます。
辛うじて印象に残っているのは、
この著者の書く小説の登場人物は相変わらず利己的で自分本位で小賢しい連中だらけで
好きになれるキャラが一人もいないなあということ。
風景(特に建築物)の描写がくどくて読むのが億劫だったこと。
「どひー」といった台詞とかエヴァとか、全体的にオタク臭が漂っていたこと(その割には肝心の
〝機械の森〟というゲームの内容や、その制作チームのメンバーたちが開発に携わる描写が
「読者の想像に委ねるにもほどがあるだろ」と突っ込みたくなるほど皆無だったこと)。
そして何より、ハラ痛いときに普通わざわざアイスクリーム食べないだろ、ということ。
要するに不満ばかり憶えてる。
駄作、と切り捨てるのも何か違うような気がする。
よくも悪くもない、好きにも嫌いにもなれない、
要するに〝存在感のない〟物語なのかな、これは。
そんな小説に出会ったのは初めてなので、これはこれで貴重な作品なのかもしれない。
〝機械の森〟、こんな感じかな?
作中にギーガーのネタが出てこなかったらたぶん途中で読むの放棄してただろうな。
放棄してたほうが結果的にはよかったのかもしれないけど。。。
H.R.Giger。すごい好きなアーティストです(もはや小説の話から脱線してますが)。
堕ちていく女 驚愕の結末!
作家・辰巳まるみが書いた小説『機械の森』。
そのゲーム化をはかるスタッフ8人が湖畔の別荘に集まった。その夜に悲劇が起こる。
社長令嬢の香織が別荘の尖塔から墜落死したのだ。しかも彼女は妊娠していた。
自殺なのか、それとも?
誰もが驚くジグソー・ミステリ、著者自身による解説を加えた「完全版」で登場!
***
ここで紹介しているのは文庫版ですが、私が読んだのは新書版。
あまりの無秩序&荒唐無稽さに物語の方向性を最後まで掴み切れないまま、欠伸を噛み殺しつつ
気づけば読み終わっていた、というのが正直なところなので、
著者の解説があればもうちょっと筋道だった読み方ができたのかもな、と残念に思い中です。
著者からのひと言に、「ジグソーパズルを組み立てるような感じで読んでいただければ」
というようなことが書いてありましたが、眼の前にあるのが絵柄がバラバラのピースでは
まったくやる気が起こりません。
仮にどうにか組み立てたところで、完成する絵があまりに前衛的というか抽象的なものというのでは、
何の驚きも感動も湧かない。
実際もう既に内容忘れかけてます。
辛うじて印象に残っているのは、
この著者の書く小説の登場人物は相変わらず利己的で自分本位で小賢しい連中だらけで
好きになれるキャラが一人もいないなあということ。
風景(特に建築物)の描写がくどくて読むのが億劫だったこと。
「どひー」といった台詞とかエヴァとか、全体的にオタク臭が漂っていたこと(その割には肝心の
〝機械の森〟というゲームの内容や、その制作チームのメンバーたちが開発に携わる描写が
「読者の想像に委ねるにもほどがあるだろ」と突っ込みたくなるほど皆無だったこと)。
そして何より、ハラ痛いときに普通わざわざアイスクリーム食べないだろ、ということ。
要するに不満ばかり憶えてる。
駄作、と切り捨てるのも何か違うような気がする。
よくも悪くもない、好きにも嫌いにもなれない、
要するに〝存在感のない〟物語なのかな、これは。
そんな小説に出会ったのは初めてなので、これはこれで貴重な作品なのかもしれない。
〝機械の森〟、こんな感じかな?
作中にギーガーのネタが出てこなかったらたぶん途中で読むの放棄してただろうな。
放棄してたほうが結果的にはよかったのかもしれないけど。。。
H.R.Giger。すごい好きなアーティストです(もはや小説の話から脱線してますが)。
ワカッチャイルケド、ヤメテドウスル?
29歳、無職の〈俺〉。
寝たきりの祖母を自宅で介護し、大麻に耽る――。
饒舌な文体でリアルに介護と家族とを問う、衝撃のデビュー作。
***
アナーキー&ジャンキーな面と、家族思い&考え深い面を併せ持つ。
人間ってつくづく多面的な生き物だなあと思う。
テレビや新聞等のメディアはある人間の一側面だけを誇張して報道してばっかりだから
ともすれば忘れがちだけど。
お笑い芸人と純文作家の間にはある共通点があって、
それは相手に面と向かっては言いづらいこと、
頭の中ではわかっていても言葉ではうまく表現しかねることを、
的確かつズバっと口にしてくれるとこにある。
本作も要所要所にそういった快感ポイントが埋め込まれていて、
「そうそう、ほんとそうなんだよ!」
と笑ったり怒ったり時に泣いたり、共感・共鳴するのに忙しく
読んでいる最中ろくに休む暇もなかった。
本作が出版された当時話題になった〝ラップ調文体〟は正直ダサい。
でもおそらくモブ氏は狙ってやってるんだろうし、
その軽いノリで自らを律し、励まし、奮い立たせ、
ゆるゆると内に向かって崩れていく精神のアリ地獄に落ちていかないよう心掛ける様が
そのまま文章に顕れているのだと解釈すれば、
必死で逃げる深刻さじゃなくステップを踏んで軽妙に危機を脱する
彼なりのスタンスなのだと解釈すれば、
実に魅力的な表現に思えてくる。
仮にアリ地獄に飲み込まれたら飲み込まれたで、最後に地上へと伸ばした掌は
完全に沈み切る瞬間にビシっとピースサインを形作るに違いないと思えるような、
そんな明るさを感じさせてくれる。
自己陶酔&その場のテンションでどうにでもなる恋愛とは違って、
被介護者と介護者の間の愛情は真にその純度が要求される。
常に現実を目の当たりにしなければならないぶんその愛情は美しくも完璧でもないけど、
でもこの世のどんな愛より本物だ。
本作の主人公(まあ要するにモブ氏本人なんですが)を知って、
「本当にかっこいい人は何やってもかっこいいんだな」ということをしみじみ感じた。
そう思ったのは花村萬月氏の〝王国記シリーズ〟を読んだとき以来だな。
痴呆老人の介護をしようが牛糞まみれで農作業しようが。
小奇麗な身なりと言葉と周辺機器(Ex.♀=アクセサリー、♂=車)で
己を飾っている人間よりよっぽど。
余談ですが私にも寝たきりの父親を介護している友人♀がおり、
まだ若いのに下の世話までしてやり自分のパソコンを投げ壊されて
自腹で二台目を買いに行ったりと常に振り回されっぱなしで、
「正直今のお父さんは好きになれない」と涙と罪悪感の滲んだ声で
懺悔するように電話してきたりしますが、
それでも彼女の父親に対する愛はひしひしと感じるし
私はそんな彼女をとてもかっこいいと思う。
正直内面の格好よさって武器だよな。
本人たちが今どんなに辛くても、それが必ず力になる日が来る。
あ、モブ氏はもうなってるか。
本作は、彼のデビュー作であり同時に芥川賞受賞作でもあります。
29歳、無職の〈俺〉。
寝たきりの祖母を自宅で介護し、大麻に耽る――。
饒舌な文体でリアルに介護と家族とを問う、衝撃のデビュー作。
***
アナーキー&ジャンキーな面と、家族思い&考え深い面を併せ持つ。
人間ってつくづく多面的な生き物だなあと思う。
テレビや新聞等のメディアはある人間の一側面だけを誇張して報道してばっかりだから
ともすれば忘れがちだけど。
お笑い芸人と純文作家の間にはある共通点があって、
それは相手に面と向かっては言いづらいこと、
頭の中ではわかっていても言葉ではうまく表現しかねることを、
的確かつズバっと口にしてくれるとこにある。
本作も要所要所にそういった快感ポイントが埋め込まれていて、
「そうそう、ほんとそうなんだよ!」
と笑ったり怒ったり時に泣いたり、共感・共鳴するのに忙しく
読んでいる最中ろくに休む暇もなかった。
本作が出版された当時話題になった〝ラップ調文体〟は正直ダサい。
でもおそらくモブ氏は狙ってやってるんだろうし、
その軽いノリで自らを律し、励まし、奮い立たせ、
ゆるゆると内に向かって崩れていく精神のアリ地獄に落ちていかないよう心掛ける様が
そのまま文章に顕れているのだと解釈すれば、
必死で逃げる深刻さじゃなくステップを踏んで軽妙に危機を脱する
彼なりのスタンスなのだと解釈すれば、
実に魅力的な表現に思えてくる。
仮にアリ地獄に飲み込まれたら飲み込まれたで、最後に地上へと伸ばした掌は
完全に沈み切る瞬間にビシっとピースサインを形作るに違いないと思えるような、
そんな明るさを感じさせてくれる。
自己陶酔&その場のテンションでどうにでもなる恋愛とは違って、
被介護者と介護者の間の愛情は真にその純度が要求される。
常に現実を目の当たりにしなければならないぶんその愛情は美しくも完璧でもないけど、
でもこの世のどんな愛より本物だ。
本作の主人公(まあ要するにモブ氏本人なんですが)を知って、
「本当にかっこいい人は何やってもかっこいいんだな」ということをしみじみ感じた。
そう思ったのは花村萬月氏の〝王国記シリーズ〟を読んだとき以来だな。
痴呆老人の介護をしようが牛糞まみれで農作業しようが。
小奇麗な身なりと言葉と周辺機器(Ex.♀=アクセサリー、♂=車)で
己を飾っている人間よりよっぽど。
余談ですが私にも寝たきりの父親を介護している友人♀がおり、
まだ若いのに下の世話までしてやり自分のパソコンを投げ壊されて
自腹で二台目を買いに行ったりと常に振り回されっぱなしで、
「正直今のお父さんは好きになれない」と涙と罪悪感の滲んだ声で
懺悔するように電話してきたりしますが、
それでも彼女の父親に対する愛はひしひしと感じるし
私はそんな彼女をとてもかっこいいと思う。
正直内面の格好よさって武器だよな。
本人たちが今どんなに辛くても、それが必ず力になる日が来る。
あ、モブ氏はもうなってるか。
本作は、彼のデビュー作であり同時に芥川賞受賞作でもあります。
自分の世界へ戻るために。
類人猿の言語習得実験を行う霊長類研究センターを舞台に、
そこで働く研究者、実験をされるボノボを巡って引き起こされる人間ドラマを、
上質のミステリーとして描いた傑作。
***
昔ボノボってお菓子があったような。。。とか思ってよく考えたらボノボじゃなくてナボナでした。
なんてどうでもいいことは置いといて。。。
ミステリと銘打ってはいますが、どちらかと言えば人間(&猿)ドラマ。
ある研究施設で人一人が死亡する事件が発生。自殺? 事故? 他殺?
その真相を解き明かす鍵を握るのは、その人間の死の光景の唯一の目撃者である一匹のボノボ
(↓こんな動物です。かわいい)。
2~3歳の人間並みの語彙力しかないボノボのバースディから、
いかにして事の真相を訊き出すか。
そんな展開は、映画〝サウンド・オブ・サイレンス〟を髣髴とさせるものがあります(これの場合は
対象は猿ではなく精神病の少女ですが)。
真相部分はミステリとしては弱いですが、近ごろ割と多い気がする、無茶な大仕掛けを
作中に施して失敗しもはやカオスと化しているようなトンデモミステリよりはよっぽど好感が持てる、
極めて良質な物語です。
オチはベタだけど少し泣いちゃったしな。
敢えて難を言うなら、ラストの主人公の台詞が少し不自然だったことかな。
著者の荻原氏がどうしてもそれを言わせたかったのは分かるけど、なんかそれまでの話の流れに
そぐわなくて違和感があった。「それって今言う台詞じゃないだろ」と無意識的にツッコんでいた。
あとは、本作が〝ボノボとの会話から事件の糸口を掴む〟というある種神秘的な設定なのに、
そこにありがちでつまらない人間の汚職問題が関わってくるのが興ざめ。せっかくの世界観が
台無し。
ライトなミステリ好きにはおすすめです。もしバリバリのミステリフリークでも、人情モノや動物モノが
好きなら○。
ちなみに蛇足ですが、〝意思の疎通が難しい相手からどうにか事件の真相を聞き出す〟というような
話が好きな人には、〝まるいち的風景〟というマンガもおすすめ。泣けます。
追記:
本作を読むなら、BGMに是非これをどうぞ。
ていうかほんとこの曲は聴くたびに泣けるな。。。(TT)
いろんな作家さんが著作の中に登場させるのもわかるわ。
ホリー・コールの歌い方は正直あんま好きじゃないけど(--;
類人猿の言語習得実験を行う霊長類研究センターを舞台に、
そこで働く研究者、実験をされるボノボを巡って引き起こされる人間ドラマを、
上質のミステリーとして描いた傑作。
***
昔ボノボってお菓子があったような。。。とか思ってよく考えたらボノボじゃなくてナボナでした。
なんてどうでもいいことは置いといて。。。
ミステリと銘打ってはいますが、どちらかと言えば人間(&猿)ドラマ。
ある研究施設で人一人が死亡する事件が発生。自殺? 事故? 他殺?
その真相を解き明かす鍵を握るのは、その人間の死の光景の唯一の目撃者である一匹のボノボ
(↓こんな動物です。かわいい)。
2~3歳の人間並みの語彙力しかないボノボのバースディから、
いかにして事の真相を訊き出すか。
そんな展開は、映画〝サウンド・オブ・サイレンス〟を髣髴とさせるものがあります(これの場合は
対象は猿ではなく精神病の少女ですが)。
真相部分はミステリとしては弱いですが、近ごろ割と多い気がする、無茶な大仕掛けを
作中に施して失敗しもはやカオスと化しているようなトンデモミステリよりはよっぽど好感が持てる、
極めて良質な物語です。
オチはベタだけど少し泣いちゃったしな。
敢えて難を言うなら、ラストの主人公の台詞が少し不自然だったことかな。
著者の荻原氏がどうしてもそれを言わせたかったのは分かるけど、なんかそれまでの話の流れに
そぐわなくて違和感があった。「それって今言う台詞じゃないだろ」と無意識的にツッコんでいた。
あとは、本作が〝ボノボとの会話から事件の糸口を掴む〟というある種神秘的な設定なのに、
そこにありがちでつまらない人間の汚職問題が関わってくるのが興ざめ。せっかくの世界観が
台無し。
ライトなミステリ好きにはおすすめです。もしバリバリのミステリフリークでも、人情モノや動物モノが
好きなら○。
ちなみに蛇足ですが、〝意思の疎通が難しい相手からどうにか事件の真相を聞き出す〟というような
話が好きな人には、〝まるいち的風景〟というマンガもおすすめ。泣けます。
追記:
本作を読むなら、BGMに是非これをどうぞ。
ていうかほんとこの曲は聴くたびに泣けるな。。。(TT)
いろんな作家さんが著作の中に登場させるのもわかるわ。
ホリー・コールの歌い方は正直あんま好きじゃないけど(--;
さあ好きなだけ鳴らせ、聞きたくもない音を聞いてやるから。
海峡を目の前にする街に続く旧家・桜井家の梅代は、出戻ってきた娘美佐子と、
幼稚園児の孫娘の三人で暮している。
古びた屋敷の裏にある在日朝鮮人の教会に、梅代とその母はある憎悪を抱え、
烈しく嫌ってきた――。
注目の新鋭が圧倒的な筆致で描く芥川賞候補作。
★収録作品★
不意の償い
蛹
切れた鎖
***
肩書きなんて対象を判断するための一つの指針でしかないし、
多分に出来レース的なところがあるとわかってはいても。
どうして彼の作品が芥川賞を受賞しないのか不思議。
収録作三作がどれも〝自分の生み出した妄執との葛藤〟を描いているという
モチーフの広がりのなさが原因??
まあそれは置いておくとして、
デビュー作〝冷たい水の羊〟のときから思ってはいたけど、この田中慎弥という作家の作品、
舞台が現代&割かし世俗的なテーマで書かれたものが多いのに、
文章を眼で追っていくうちになぜか神話を読んでいるような気分にさせられる。
どこか現実離れしているというか。
登場人物たちが生々しいほどに人間臭い割に同時にどこか人間離れした不思議な存在感をも
併せ持っているというか。
使う単語や、それを紡いで生み出す表現に非常な個性と抜群のセンスがあるというのも
その理由の一端でしょうが、著者は高校卒業後、定職にも就かずバイトもせずに
ただ自宅に籠もって淡々と読書と執筆の日々を繰り返してきたそうで、
そういった世間知のなさ、世間ずれしていない精神が、
神話を思い起こさせるような俗っぽいながらもどこか非現実的、かつ透明に美しい文章を
彼に書かせているのかもな、とも思ってみたりしてしまった。
ほんと、読むたびに「ああ美しいな」と思う、彼の物語は。
それは宝石とか美景とかに対するような外面的なものではなくて、
うまく言えないけど何かもっと根源的、心の深い深い部分で感じ取るようなそんな感覚で。
最近の純文作家さんの中では一番好きかもしれないな。
今後にかなり期待大だ。
海峡を目の前にする街に続く旧家・桜井家の梅代は、出戻ってきた娘美佐子と、
幼稚園児の孫娘の三人で暮している。
古びた屋敷の裏にある在日朝鮮人の教会に、梅代とその母はある憎悪を抱え、
烈しく嫌ってきた――。
注目の新鋭が圧倒的な筆致で描く芥川賞候補作。
★収録作品★
不意の償い
蛹
切れた鎖
***
肩書きなんて対象を判断するための一つの指針でしかないし、
多分に出来レース的なところがあるとわかってはいても。
どうして彼の作品が芥川賞を受賞しないのか不思議。
収録作三作がどれも〝自分の生み出した妄執との葛藤〟を描いているという
モチーフの広がりのなさが原因??
まあそれは置いておくとして、
デビュー作〝冷たい水の羊〟のときから思ってはいたけど、この田中慎弥という作家の作品、
舞台が現代&割かし世俗的なテーマで書かれたものが多いのに、
文章を眼で追っていくうちになぜか神話を読んでいるような気分にさせられる。
どこか現実離れしているというか。
登場人物たちが生々しいほどに人間臭い割に同時にどこか人間離れした不思議な存在感をも
併せ持っているというか。
使う単語や、それを紡いで生み出す表現に非常な個性と抜群のセンスがあるというのも
その理由の一端でしょうが、著者は高校卒業後、定職にも就かずバイトもせずに
ただ自宅に籠もって淡々と読書と執筆の日々を繰り返してきたそうで、
そういった世間知のなさ、世間ずれしていない精神が、
神話を思い起こさせるような俗っぽいながらもどこか非現実的、かつ透明に美しい文章を
彼に書かせているのかもな、とも思ってみたりしてしまった。
ほんと、読むたびに「ああ美しいな」と思う、彼の物語は。
それは宝石とか美景とかに対するような外面的なものではなくて、
うまく言えないけど何かもっと根源的、心の深い深い部分で感じ取るようなそんな感覚で。
最近の純文作家さんの中では一番好きかもしれないな。
今後にかなり期待大だ。
ぼくは世界の終わりを夢想する。
北の街に、名もなき者たちの慟哭が響く――
憎しみ、哀しみ、愚かさ、やるせなさ…先の見えない日々を送る名もなき人々。
それぞれの鬱屈は、やがて…。
北海道を舞台に、生きることの暗部を描き切る、馳ワールドの新しい幕開けを告げる短編集。
★収録作品★
ちりちりと……
みゃあ、みゃあ、みゃあ
世界の終わり
雪は降る
青柳町こそかなしけれ
***
北海道出身の著者だけあって(ちなみにどうでもいいですが、私も北海道札幌出身です)
暖かくなり始めた今の季節に読んでもぞっと冷気を感じるような過酷な北の冬の描写はさすが。
しかしそれぞれの短編からはどれもテーマらしきテーマが見えて来ず(〝人の世の無常〟
という点は共通してるのですが、こんなベテラン作家がそんな陳腐なものをテーマにするとは
思いたくない)、
どれもありがちといえばありがちな話で深みがなく、物語の終わり方も似通っている。
〝ちりちりと……〟は唯一心揺さぶられましたが、それ以外は物語の雰囲気に適当に酔いつつ
ほぼ感情に変動のないまま最後まで淡々と流し読み。正直惹き付けられるものがなかった
(〝世界の終わり〟は、あんな平凡な終わり方でさえなければ
かなり好きな作品になったんだけどな*
本書の表紙のイメージもたぶんこの話なんだろうし、表題作と銘打つにふさわしいクオリティにまで
物語を仕上げてほしかった。と、偉そうだけどほんとそう思う)。
老人介護も少年犯罪も近親相姦もDVも、同じテーマでもそれぞれもっと上をいく物語を
書ける作家ならいくらでもいるし、そういう人たちの作品を知ったあとで本作を読んでも
物足りなさを感じてしまう。
失礼な話ですが、個人的に一番感動したのは中身じゃなくタイトルと表紙の写真だった。
決して駄作じゃないんだけど。可もなく不可もなく、といったところでしょうか。
北の街に、名もなき者たちの慟哭が響く――
憎しみ、哀しみ、愚かさ、やるせなさ…先の見えない日々を送る名もなき人々。
それぞれの鬱屈は、やがて…。
北海道を舞台に、生きることの暗部を描き切る、馳ワールドの新しい幕開けを告げる短編集。
★収録作品★
ちりちりと……
みゃあ、みゃあ、みゃあ
世界の終わり
雪は降る
青柳町こそかなしけれ
***
北海道出身の著者だけあって(ちなみにどうでもいいですが、私も北海道札幌出身です)
暖かくなり始めた今の季節に読んでもぞっと冷気を感じるような過酷な北の冬の描写はさすが。
しかしそれぞれの短編からはどれもテーマらしきテーマが見えて来ず(〝人の世の無常〟
という点は共通してるのですが、こんなベテラン作家がそんな陳腐なものをテーマにするとは
思いたくない)、
どれもありがちといえばありがちな話で深みがなく、物語の終わり方も似通っている。
〝ちりちりと……〟は唯一心揺さぶられましたが、それ以外は物語の雰囲気に適当に酔いつつ
ほぼ感情に変動のないまま最後まで淡々と流し読み。正直惹き付けられるものがなかった
(〝世界の終わり〟は、あんな平凡な終わり方でさえなければ
かなり好きな作品になったんだけどな*
本書の表紙のイメージもたぶんこの話なんだろうし、表題作と銘打つにふさわしいクオリティにまで
物語を仕上げてほしかった。と、偉そうだけどほんとそう思う)。
老人介護も少年犯罪も近親相姦もDVも、同じテーマでもそれぞれもっと上をいく物語を
書ける作家ならいくらでもいるし、そういう人たちの作品を知ったあとで本作を読んでも
物足りなさを感じてしまう。
失礼な話ですが、個人的に一番感動したのは中身じゃなくタイトルと表紙の写真だった。
決して駄作じゃないんだけど。可もなく不可もなく、といったところでしょうか。
おまえに近づいてゆくために、力を。
1982年、8月17日、夜。暴風雨の首尾木村北西区で、ほとんどの村民が虐殺される
大量殺人の発生が警察に伝えられる。しかし悪天候と現場に通じる2脚の橋が流れたため
地区は孤立、警察の到着は翌日になってからだった。
かろうじて生き延びたのは中学3年の少年少女3人と彼らが通う分校の教諭ひとり。
被害者は、3人の家族ら14名で、そのうち11人が鎌で喉を掻き切られていた。
不明な点もあったが、犯人は、事件当日、逃走後に事故死した英会話教室の外国人講師と
断定された――。
そして9年後、ひとりのフリーライターが生き残った者たちへの取材を開始するや、
ふたたび猟奇的な殺人事件が起こる。凶器はまたもや鎌だった…。
***
性描写がすごいとのレビューが多かったので「純文学ならまだしも、ミステリでまでそういうのは
ちょっとなあ。。。」と微妙に構えていたのですが、純文の、既にエロというよりはグロの領域に
達している過激な描写に既に慣れてしまっていたらしく、それほどのインパクトは感じませんでした。
なのでよっぽど年齢が若い人以外は、その手の小説が苦手でもたぶん割かし平気で読めます。
文章も達筆なのにどこかラノベ的口語体で読みやすいし。
ただ、事件の真相がことごとく〝主人公たちが記憶喪失から醒める〝ことで明かされるという手法は
ちょっとあまりにあんまりな気が。それじゃ別に誰が何の努力をしなくても、
著者の明かしたいタイミングで記憶を取り戻させれば済むことになっちゃうし。
しかもこれだけの長編の割に、明かされる真相は短編推理小説並にシンプルで、どちらかといえば
陳腐なものだし(陳腐といえばラスト一行も、正直一度どこかで読んだことがあるような、
手垢のついた凡庸な文章でした)。
起きる出来事よりも人間心理に謎を解く鍵が隠されている物語なのに、その肝心の心理描写が
「普通そこでそういう心境になるか~?」「その感情の流れはおかしくないか~?」と
突っ込まずにはいられない不自然なものが多く(ヒロイン・繭子が特に)、
最後までどうにもすっきりしないまま読了。
終盤で、ダン・ブラウンやアダム・ファウアーあたりが書きそうな洋モノミステリ的シーンが
唐突に出てきたときには、それまでの古きよき日本的雰囲気をかもし出していた本作の和風世界が
コント並みに崩壊して思わず吹き出してしまったし。
多くの時間と精神力を費やしてまで読むほどの小説ではなかったというのが私の感想。
これでページ数が半分だったら普通におすすめなのですが。
600P分の収穫はないです。←うまいこと言ってみた
1982年、8月17日、夜。暴風雨の首尾木村北西区で、ほとんどの村民が虐殺される
大量殺人の発生が警察に伝えられる。しかし悪天候と現場に通じる2脚の橋が流れたため
地区は孤立、警察の到着は翌日になってからだった。
かろうじて生き延びたのは中学3年の少年少女3人と彼らが通う分校の教諭ひとり。
被害者は、3人の家族ら14名で、そのうち11人が鎌で喉を掻き切られていた。
不明な点もあったが、犯人は、事件当日、逃走後に事故死した英会話教室の外国人講師と
断定された――。
そして9年後、ひとりのフリーライターが生き残った者たちへの取材を開始するや、
ふたたび猟奇的な殺人事件が起こる。凶器はまたもや鎌だった…。
***
性描写がすごいとのレビューが多かったので「純文学ならまだしも、ミステリでまでそういうのは
ちょっとなあ。。。」と微妙に構えていたのですが、純文の、既にエロというよりはグロの領域に
達している過激な描写に既に慣れてしまっていたらしく、それほどのインパクトは感じませんでした。
なのでよっぽど年齢が若い人以外は、その手の小説が苦手でもたぶん割かし平気で読めます。
文章も達筆なのにどこかラノベ的口語体で読みやすいし。
ただ、事件の真相がことごとく〝主人公たちが記憶喪失から醒める〝ことで明かされるという手法は
ちょっとあまりにあんまりな気が。それじゃ別に誰が何の努力をしなくても、
著者の明かしたいタイミングで記憶を取り戻させれば済むことになっちゃうし。
しかもこれだけの長編の割に、明かされる真相は短編推理小説並にシンプルで、どちらかといえば
陳腐なものだし(陳腐といえばラスト一行も、正直一度どこかで読んだことがあるような、
手垢のついた凡庸な文章でした)。
起きる出来事よりも人間心理に謎を解く鍵が隠されている物語なのに、その肝心の心理描写が
「普通そこでそういう心境になるか~?」「その感情の流れはおかしくないか~?」と
突っ込まずにはいられない不自然なものが多く(ヒロイン・繭子が特に)、
最後までどうにもすっきりしないまま読了。
終盤で、ダン・ブラウンやアダム・ファウアーあたりが書きそうな洋モノミステリ的シーンが
唐突に出てきたときには、それまでの古きよき日本的雰囲気をかもし出していた本作の和風世界が
コント並みに崩壊して思わず吹き出してしまったし。
多くの時間と精神力を費やしてまで読むほどの小説ではなかったというのが私の感想。
これでページ数が半分だったら普通におすすめなのですが。
600P分の収穫はないです。←うまいこと言ってみた
〝森は青く深い……眠りに就くにはまだ遠い〟
前作『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)で推理作家協会賞を受賞、さらに
「このミステリーがすごい!2007年版」で第1位となるなど、
小説界の話題を席巻した異才の第二短編集。
テレクラで売春する女たちを殺して皮を剥ぐ快楽殺人者たちを主人公にした表題作をはじめ、
吸血鬼、食人鬼、人狼がこの最低な世界に跋扈する!
想像力と表現の限界に挑み続けた戦いの成果、7編を収録。
★収録作品★
テロルの創世
Necksucker Blues
けだもの
枷
それでもおまえは俺のハニー
或る彼岸の接近
ミサイルマン
***
グログロなのにどこか洒落ている、そんな不思議な世界観を描ける個性派の作家さんです。
脳みそのどの部分使ったらそんな発想が湧くの? と、〝枷〟を読んだときなどには
心底著者に訊いてみたくなったほど。
〝テロルの創世〟で描かれている、ミステリ作家が割りと話に取り入れがちな〝クローン〟ネタも、
平山氏の場合はひねりが効いていてオチにもおっと意表をつかれる。
全体にどこかゲーム的なにおいが漂っているものの決して子供向けというわけじゃなく、
何かの深遠に触れるような、静かで寂しい心地よさの中に読み手の心を誘ってくれる。
ただ一つ惜しむらくは、著者自身無意識なのか自覚的なのかはわからないけど、
あまりに奇を衒い過ぎて上滑りしている作品もあったりすること。
せっかくもともと持っている独創的な感性を不必要にごてごてと飾り立ててしまっているようで、
「素のままで十分なのに。。。」と、厚化粧をしている美人を見てしまったときのような気分になる。
前作〝独白するユニバーサル横メルカトル〟では〝すさまじき熱帯〟に、
本作では表題作〝ミサイルマン〟に、そんな印象を持ってしまった。
もっとシンプルでいいのにな、と(ただ、〝ミサイルマン〟のラストシーンだけは、あまりに凡庸に
過ぎて「そここそをもっと奇抜な展開にしてよ」と突っ込みましたが)。
本作を読む人は、BGMに是非これをどうぞ。
前作『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)で推理作家協会賞を受賞、さらに
「このミステリーがすごい!2007年版」で第1位となるなど、
小説界の話題を席巻した異才の第二短編集。
テレクラで売春する女たちを殺して皮を剥ぐ快楽殺人者たちを主人公にした表題作をはじめ、
吸血鬼、食人鬼、人狼がこの最低な世界に跋扈する!
想像力と表現の限界に挑み続けた戦いの成果、7編を収録。
★収録作品★
テロルの創世
Necksucker Blues
けだもの
枷
それでもおまえは俺のハニー
或る彼岸の接近
ミサイルマン
***
グログロなのにどこか洒落ている、そんな不思議な世界観を描ける個性派の作家さんです。
脳みそのどの部分使ったらそんな発想が湧くの? と、〝枷〟を読んだときなどには
心底著者に訊いてみたくなったほど。
〝テロルの創世〟で描かれている、ミステリ作家が割りと話に取り入れがちな〝クローン〟ネタも、
平山氏の場合はひねりが効いていてオチにもおっと意表をつかれる。
全体にどこかゲーム的なにおいが漂っているものの決して子供向けというわけじゃなく、
何かの深遠に触れるような、静かで寂しい心地よさの中に読み手の心を誘ってくれる。
ただ一つ惜しむらくは、著者自身無意識なのか自覚的なのかはわからないけど、
あまりに奇を衒い過ぎて上滑りしている作品もあったりすること。
せっかくもともと持っている独創的な感性を不必要にごてごてと飾り立ててしまっているようで、
「素のままで十分なのに。。。」と、厚化粧をしている美人を見てしまったときのような気分になる。
前作〝独白するユニバーサル横メルカトル〟では〝すさまじき熱帯〟に、
本作では表題作〝ミサイルマン〟に、そんな印象を持ってしまった。
もっとシンプルでいいのにな、と(ただ、〝ミサイルマン〟のラストシーンだけは、あまりに凡庸に
過ぎて「そここそをもっと奇抜な展開にしてよ」と突っ込みましたが)。
本作を読む人は、BGMに是非これをどうぞ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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