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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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さあ好きなだけ鳴らせ、聞きたくもない音を聞いてやるから。



海峡を目の前にする街に続く旧家・桜井家の梅代は、出戻ってきた娘美佐子と、
幼稚園児の孫娘の三人で暮している。
古びた屋敷の裏にある在日朝鮮人の教会に、梅代とその母はある憎悪を抱え、
烈しく嫌ってきた――。
注目の新鋭が圧倒的な筆致で描く芥川賞候補作。 

★収録作品★

 不意の償い
 蛹 
 切れた鎖

***

肩書きなんて対象を判断するための一つの指針でしかないし、
多分に出来レース的なところがあるとわかってはいても。
どうして彼の作品が芥川賞を受賞しないのか不思議。
収録作三作がどれも〝自分の生み出した妄執との葛藤〟を描いているという
モチーフの広がりのなさが原因??

まあそれは置いておくとして、
デビュー作〝冷たい水の羊〟のときから思ってはいたけど、この田中慎弥という作家の作品、
舞台が現代&割かし世俗的なテーマで書かれたものが多いのに、
文章を眼で追っていくうちになぜか神話を読んでいるような気分にさせられる。
どこか現実離れしているというか。
登場人物たちが生々しいほどに人間臭い割に同時にどこか人間離れした不思議な存在感をも
併せ持っているというか。
使う単語や、それを紡いで生み出す表現に非常な個性と抜群のセンスがあるというのも
その理由の一端でしょうが、著者は高校卒業後、定職にも就かずバイトもせずに
ただ自宅に籠もって淡々と読書と執筆の日々を繰り返してきたそうで、
そういった世間知のなさ、世間ずれしていない精神が、
神話を思い起こさせるような俗っぽいながらもどこか非現実的、かつ透明に美しい文章を
彼に書かせているのかもな、とも思ってみたりしてしまった。

ほんと、読むたびに「ああ美しいな」と思う、彼の物語は。
それは宝石とか美景とかに対するような外面的なものではなくて、
うまく言えないけど何かもっと根源的、心の深い深い部分で感じ取るようなそんな感覚で。

最近の純文作家さんの中では一番好きかもしれないな。
今後にかなり期待大だ。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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